Xと云う患者 龍之介幻想

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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163910017

作品紹介・あらすじ

あの文豪の生涯と作品を織りまぜて、リシャッフルし、夢見直して、12の妖しい、美しいピースに仕立てた本。それだけで十分すごいが、さらにこの日本語版は、原文の独特のリズムを緻密に再現し、等しく妖美な作品を再創造している。奇跡のような一冊。――柴田元幸本書を読む者は 必ずや二度三度と 芥川の文学的狂気に侵される。イギリス暗黒文学の旗手が、芥川龍之介の生涯を恐るべきヴィジョンと魔術的な語りを通じて幻想文学として語り直す。芥川龍之介。東方と西方の物語と伝承と信仰に魅せられた男。そのなかで静かに渦を巻く不安。それがページから少しずつ滲み出す。半透明の歯車が帝都を襲った震災の瓦礫の彼方にうごめき、頽廃の上海の川面には死んだ犬が浮き沈み、長崎には切支丹の影が落ち、己が生み出した虚構の分身が動き出し、そして漱石がロンドンでの怪異を語る。河童。ポオ。堀川保吉。ドッペルゲンゲル。鴉。マリア像。歯車。羅生門、藪の中、蜘蛛の糸、西方の人――キリスト。私のキリスト。ジェイ・ルービン訳の芥川作品をピース自身の呪術的な語りとコラージュし/マッシュアップし/リミックスして生み出した幻想と不安のタペストリーを、コーマック・マッカーシーやリチャード・パワーズらを手がけた黒原敏行が芥川自身の文章と精密によりあわせて完成させた日本語版。芥川と幻想ノワールの結合として、原語版以上の衝撃をもって読者を眩惑する。 災厄と文学、狂気と詩情、日本文学と英国文学、現代文学と近代文学、現実と幻覚……すべての境界をおぼろに融かしてゆく文学と翻訳のはなれわざ。

感想・レビュー・書評

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  • R. A 様
    拝啓
    貴方が命を絶ってから長い年月が経ちました。地獄でいかがお過ごしでしょうか。

    先日、奇妙な小説を読了致しましたので、御報告させて頂きます。『Xと云う患者 龍之介幻想』というこの小説は、気鋭の幻想小説家として知られる英国人作家、デイヴィッド・ピイス氏によって書かれたものです。貴方に心酔する彼は、貴方の作品や生涯をコラージュし、詩情を加えて、幻想短編小説集として甦らせました。つまり貴方へのオマージュ作品であり、パスティーシュ文学と見なすことも出来るでしょう。

    死後このような形で自分が戯画化されることについて、貴方がどう思うのか私には分かりません。憤慨、嫌悪、絶望、それとも自虐的な愉悦?「これもまた地獄の形」と、自分自身すら軽蔑するように、貴方は片頬をゆがめて笑うのでしょうか。

    地獄。貴方にとっては、人間の愚鈍さと共に延々と続く日常こそが地獄でした。例え皆がそれを幸福と呼んでいたとしても。葱のはみ出た買い物袋を抱えて家路を急ぐ、そんな日常にも美は宿る…、そう考える芸術家は決して少なくありません。しかし、それは貴方にとっての美ではなかった。

    貴方にとって芸術とは、極限まで研ぎ澄まされた刃のようなものでした。これ以上そぎ落としたら崩壊してしまう、そんな脆さと紙一重の鋭さこそ芸術家の証と貴方は考えた。でも、それは生活とは致命的に相容れない資質でした。事実、芸術か生活か、片方を取らねばならなくなった時、貴方は芸術を選び、その業に殉じたのでした。

    本のレビュウになっていないじゃないか、と思われますか?しかし、この本の内容を説明するに、私にはこのような書き方しか思いつかなかったのです。漠然とした不安が倫敦の深い霧のように漂う、この不穏な小説の前では。

    内容をお知りになりたければ、御自身で一読されるのが宜しいでしょう。貴方はこの本の中で、貴方が創造した登場人物や、貴方自身のドッペルゲンゲルや、在りし日の夏目先生にさえ、会う事が出来るでしょう。尤も、読み終えた時に正気を保てているか、保証は致しかねますが。

    敬具
    令和元年 四月某日 貴方の愛読者より

    • 佐藤史緒さん
      アテナイエさん、いらっしゃいませ
      ( ^ω^ )_旦 お茶ドーゾ
      こちらこそ、いつもレビュー楽しみに読ませてもらってます。

      書簡レ...
      アテナイエさん、いらっしゃいませ
      ( ^ω^ )_旦 お茶ドーゾ
      こちらこそ、いつもレビュー楽しみに読ませてもらってます。

      書簡レビュー楽しんで頂けたなら良かったです。故人をネタにするな!とお叱りを受けたらどーしよ…と、内心ちょっとどきどきしていたので(笑)。R.A氏を貶める意図はなく、むしろ愛ゆえなのですけれど。私も作者の毒気と茶目っ気に、少しばかり当てられてしまったようです。
      2019/04/04
    • アテナイエさん
      もちろん佐藤さんのレビュー内容は、全体から行間からR.A様への愛が溢れていますゆえ、私もいたく感激した次第。私は学生のころからR.A様の地獄...
      もちろん佐藤さんのレビュー内容は、全体から行間からR.A様への愛が溢れていますゆえ、私もいたく感激した次第。私は学生のころからR.A様の地獄はじめただならぬ暗黒短編群(?)が好きなのですが、佐藤さんのレビューのおかげで久しぶりに再読してみたくなりました。本作も面白そうです。余談ながら黒原さん訳、帯は柴田さん、となるとますます興味が湧いて近いうちに眺めてみようと思います。レビューありがとうございました(^^♪
      2019/04/05
    • 佐藤史緒さん
      アテナイエさんもA様お好きですか!私も昔から好きです。それも晩年の遺書めいた作品が好きな悪い読者ですσ(^_^;)
      さておき、本作は翻訳が...
      アテナイエさんもA様お好きですか!私も昔から好きです。それも晩年の遺書めいた作品が好きな悪い読者ですσ(^_^;)
      さておき、本作は翻訳が凝っているので機会があれば是非チラ見してみて下さい。元ネタと比較するとさらに楽しさ倍増です!
      2019/04/05
  • 芥川龍之介をモチーフにした幻想小説。こちらのレビューを拝見しておもしろそうだったので読んでみました。
    いや~巧いですね。さらさらさらと流れるように読ませます。芥川の作品をあまり知らない人でも十分楽しめますし、彼の作品が好きな人であれば、あっ! 『羅生門』、ふふふ『蜘蛛の糸』、この本の表題からして『河童』……なんて宝探しの気分も味わえて楽しい♪

    残された短編群や書簡などから実在の芥川龍之介という男を探究し、その繊細な心の機微をくみとり、心象をひろげながら丁寧に再創造した、芥川へのあこがれや賛辞/オマージュ作品なのでしょう。そこには芥川が敬愛していた師匠の夏目漱石や、私淑してやまないゲーテの作品もたくさん出てきます。ほかに森鴎外、谷崎潤一郎といった明治の文豪たちも登場してわくわくします。芥川もさることながら、わりと漱石も好きな私は、親子ほど離れた、この似て非なる二人の才人のやりとりがとても興味深い。

    また短編集なので気張らず読めます。彼の狂気を短い断章のように仕立てながら、これらを有機的に繋げて、ある種の長編に仕上げているともいえます。まるでミラン・クンデラの音楽のような作風になっていて、全体には青灰色の霧がもやるような面妖さが漂います。そこへもってきて黒原敏行さんの翻訳ですからね……美しいですわ~♪

    「龍之介は夏を嫌っていた。赤い太陽は白熱する鉄と化して、渇いた土地に光と熱を注ぎ、土地は血走った目で雲一つない広大な空を見上げた。……龍之介は書斎で汗を流し、蚊に食われながら、乾ドックにはいっている船の垢っぽい甲板に落ちた不運な飛魚の気分を味わっていた。蝉の絶叫と蚊にさいなまれて死んでいくような心もちだった」

    思えば河童という存在は妙に気になるもので、中学のころに芥川の『河童』に出会ってすっかり心を捕まれてしまいました。とりわけお腹の中の子どもに父河童が呼びかけるところ、
    「お~い! おまえはこの世に生まれたいか?」
    「否」
    と子河童が答えると、すっーーと子河童は消えてしまいます。はじめから存在すらしなかったように。でえぇ~これはまったくもって衝撃以外のなにものでもない、つたない価値観や固定観念の転換!? ちなみに、そのころほかにも驚天動地の本がありました。カフカの『変身』。わたしの存在とは一体ぜんたいなんなのだ?? 以降の人生でも、河童や虫にわたしの魂は捕まったままかもしれない……。

    「河童はあらゆるものに対する――就中(なかんずく)僕自身に対するデグウ(嫌悪:仏語)から生まれました」(芥川龍之介)               

    ああ~あと10年、いやせめて5年でもいい、鬼才芥川が作品を書き続けてくれたならなぁ……まったくせんない想いに、ないものねだりで読み終えた本を閉じると、ちょっぴりもの悲しくなってきて、いきおい書架から『河童』を連れだしました。その作品群をしげしげと眺めていると、芥川との邂逅に懐かしさがこみあげます。ひたすら哀しくて、滑稽で、可笑しくて、びっくりするような芥川ワールドで遊んでいるうちに――なんだ、彼はいまでもしっかり生きているじゃないか。本さえひらけば彼の地獄世界で会えるではないか……あまり人に自慢できることでもないですが、これって密やかな幸せです。Qua,Qua,Qua!

    • 佐藤史緒さん
      こんにちは!
      アテナイエさんのレビューを読んで、また本棚から引っ張り出して読みたくなっちゃいました♪
      河童、歯車、或阿呆の一生。遺稿...
      こんにちは!
      アテナイエさんのレビューを読んで、また本棚から引っ張り出して読みたくなっちゃいました♪
      河童、歯車、或阿呆の一生。遺稿やそれに近い作品を「好き!」というのは、作者にとって残酷なのか幸福なのか、いまだに判断つきかねるのですが、少なくとも同好の士とこうして繋がれるのは、実に愉快であるなあと思う次第です。
      Quaaa!
      2019/07/16
    • アテナイエさん
      佐藤さん、レビューをお読みいただき、またコメントもいただきありがとうございます♪
       
      先日、まさに佐藤さんのレビューを契機に読んでみました。...
      佐藤さん、レビューをお読みいただき、またコメントもいただきありがとうございます♪
       
      先日、まさに佐藤さんのレビューを契機に読んでみました。いい本の出会いに感謝しています♪

      丁寧によく調べられていてびっくりしましたし、いったいどこが芥川作品からの引用で、どこが作者の創造なのか、まるで溶け込んでしまって、しかも翻訳のトーンも芥川に合せるように美しくて、もはや全体から妖艶な雰囲気さえ漂っていますね。

      その後、久しぶりに芥川の作品をながめてみましたが、やっぱり巧いですよね。私も佐藤さんと同じくどちらかといえば中期から晩年作品が深みが増して好きですね。だからこそ漱石が芥川にアドバイスしたように、ひたすら牛のように図太くうんうん押して欲しかったな……綺羅星のように流れてしまった彼にちょっぴりもの悲しさを覚えました。

      さてさて、佐藤さんと芥川で意気投合できたことに感謝しつつ、河童語に堪能な(笑)佐藤さんの今後のレビューも楽しみにしています。よろしくお願いします(^^♪
      2019/07/16
    • 佐藤史緒さん
      こちらこそ、アテナイエさんのニッチな書籍セレクトと、読みごたえのあるレビューを楽しみにしております(*´∇`*)
      私は集中力にムラがあり、...
      こちらこそ、アテナイエさんのニッチな書籍セレクトと、読みごたえのあるレビューを楽しみにしております(*´∇`*)
      私は集中力にムラがあり、たくさん読んでたくさんブクログに遊びにくる時期と、全く読まずブクログも更新しない時期の差がはげしいのですけれど、今後ともおつきあいいただければ幸いですー♪
      2019/07/17
  • 面白そうと勧められ、なんとなく、これは読んだ方が良さそうだな、と思って購入。

    「蜘蛛の糸」が芥川自身と重なって、下を見下ろすと、自分が関わってきた人々、モチーフ、登場人物の蠢きを知る。
    このままでは、追いつかれてしまうな。
    そう分かって、手を離す時の芥川が、なぜか鮮やかに思い浮かべられて、切なくなる。

    明治天皇の崩御や、関東大震災、夏目漱石や文豪たちとの交流、自殺。
    彼を形作った、様々な出来事。
    「蜘蛛の糸」で見下ろした光景の一つ一つを、芥川の作品とコラージュさせながら、紡いでゆく。

    作者と作品の関係性とは、何か。
    人としての儚い時間を終えた彼だが、もう一度、他者の手によって、作品の中で存在し直す。
    し直す、という言葉が適当かどうかは分からないけれど、誰かによって生み直されたのだから、まあ、そう言っても間違いではないとしよう(笑)

    なかでも。
    河童のトックが芥川に、芥川がトックに重なっていくシーンを、作品として落とし込んだ。
    そんな、いつぞやの空想を現実に生み出してくれたことに、感謝したい。

    さて。
    デイヴィッド・ピースとは実は初めての出会いではなかったようで。
    巻末に『それでも三月は、また』というアンソロジーに寄稿した「惨事のあと、惨事のまえ」が「災禍の後、災禍の前」と変更され、載せられている。

  • 芥川龍之介の作品を使っての幻想文学(著者はイギリス人。ということでもちろん原書は英文なわけで、本書はそれの『翻訳本』)という点だけ知っていて、それ以上は前情報仕入れずに読んでみましたがこれがビックリ。
    これは「芥川の人生」と「作品」を素材として使って、芥川龍之介を主人公に据え、史実と幻覚と妄想と文学の境界をあいまいにしてコラージュした結果、一級の幻想文学エンタメとして仕上がった作品でした。とても面白い。ドグラ・マグラなどが好きな人はハマると思う。
    さらに、ほぼ芥川の人生を辿るストーリーなので、芥川龍之介の各作品だけでなく彼自身の人生も押さえた上で読むと何倍も面白い。史実と作品が渾然一体となって組合さった結果、芥川の人生がこんな風に「文学と狂気」に染まるのか、と。(もちろん、あくまでこれは「創作」であって「評伝」ではないです。なので彼の人生の中で色々な重要な出来事が描かれてないので、史実とはごっちゃにしないように注意……でも、そうかも?と思わせる魅力がある…凄い)
    英文を翻訳するときに、あえて新規に翻訳するのではなく、元作品の芥川の文章を引き直すことで日本語へと戻していく様もお見事。これによってとても芥川作品味が増して、溺れるように濃厚な芥川ワールドになってました。

    ドッペルゲンゲルに河童に歯車、そしてマリア観音はじめとするキリスト教…と芥川に詳しい人ほどこの作品の細部に散らされた構成の妙に感心すると思います。特に、芥川の作品の「○○もの」とされるアレをああいう風に扱ったのには感心しました。(ホント実際に読んで堪能してほしい……)
    本書には漱石、久米、菊池、茂吉、川端、内田百閒、永見徳太郎等々も登場し、基本的に彼らの動きは随筆等で知られている通りの動きをしてますので(細部には創作がみられますが!)、近代文学ファン的にはそんなところにもゾクゾクする一品でした。

  • 日本在住のイギリス人著者が芥川作品の英訳を多数引用して作品を構成しているわけだが、その部分も含んで日本語に訳す、という単純ならざる訳業。
    「戻し訳」ではなく芥川の文章そのものを使ったことや、当時の表記(エドガア・アラン・ポオ、レエン・コオト、ジョオンズ、洋燈と書いてランプとルビをふるなど)にも細やかに配慮されたこと、更に引用や出典も無理なく収められていることなど、訳者の力量に恐れ入る。文壇の人名や明治から大正の時代の雰囲気もよく盛り込まれ、誰が書いたのか戸惑うほど。
    こうなると半分は訳者の作品だよね。うん。

  • 芥川龍之介が書いた作品と伝記的エピソードをコラージュし、この世という地獄を彷徨う作家の姿を描いた〈芥川版ドグラ・マグラ〉のような幻想怪奇小説。


    日本在住のイギリス人作家が英訳された芥川作品を使って書いた小説の邦訳、というひねった成り立ちで、発売当時から気になっていた一冊。とにかく黒原敏行の訳文が格好良すぎる! この小説は芥川をそのまま引用してるところも多いけど、だからこそ芥川とピースの文体をつなぐ役割を見事に果たしている訳文に痺れずにいられない。
    そしてやはり語りの声こそ、この小説の肝だ。芥川の文章を切り貼りしたコラージュが、いつのまにか呪詛のような、読経のようなグルーヴを持つピースの声に変わったかと思えば、また芥川に戻っている。描きだされるのは芥川が幻視したのかもしれない地獄の世界。そこは、幽界と二重写しになったこの世そのものなのだ。
    物語は、「蜘蛛の糸」のカンダタを芥川に入れ替えた「糸の後、糸の前」から始まる。蜘蛛の糸を離した芥川は地獄へ戻り、次の章「地獄変の屏風」では、虚も実も取り混ぜた芥川の前半生が語られていく。ということは、これも地獄の続きなのか? 以降の章は一応時系列どおりに芥川の生涯をなぞっていくが、常に死と滅びの予感が満ち、幽霊はすぐ触れられるところにいる。いや、これはむしろ幽霊の芥川がふらふらと現世を彷徨いながらみている半透明な夢なのかもしれない。だから読んでいて『ドグラ・マグラ』を、胎児がみている夢を書いたあの小説の面影を感じるのだ。
    芥川だけでなく、ポーのモチーフも繰り返し現れる。特に名前がでてくるわけではないが、私の頭には『大鴉』のイメージが何度も浮かんできた("ネーモー"にも通じている気がする)。もちろん、漱石をはじめとして、菊池寛、斎藤茂吉、内田百閒ほか明治大正の有名人たちも登場。芥川の創作キャラクターも現実世界に侵食し、ドッペルゲンガーを演じる。
    オブセッションに駆られたような"騙り"の呪力が漲る「地獄変の屏風」、漱石のロンドン留学時代とジャック・ザ・リッパーを絡めた「切り裂きジャックの寝室」、〈芥川のキリスト教〉を描いた「黄いろい基督」「悪魔祓い師たち」は特に好きだった。
    2年前に初めて芥川作品にしっかりと向き合ったにわかの私には、下敷きになっている作品のうち本当に有名どころのものしかまだわからないが、だからこそ芥川の魔力とピースの魔力のミクスチャーに幻惑され、その暗黒世界にどっぷりと酔い痴れる体験ができたと思う。好き嫌いだけで言ったら、今年読んだなかでは一番好きな小説だ。こんなふうに私好みの地獄に出会いたくて、私は小説を読んでいるのだ。

  • 芥川龍之介の世界観を積み重ねて、
    独自の世界を築くという
    小説でしかなしえない離れ業を成し遂げている。

    最後にあげられた日本文学の英訳の
    列挙をみて、日本人、もっと
    日本文学読もうよ、と思った。

    脇を固める、斎藤茂吉などの作品も
    改めて読み返したいと思った。

  • 小説、久しぶりに読みました。

    購入します、面白かった、また読みたい(あっ、借りた本なので)。
    芥川龍之介作品で1番好きなのは、「白」。

  • 素晴らしかった。芥川龍之介リミックス/文学マッシュアップ。文体も見事に芥川をコピーしていて翻訳と逆翻訳を繰り返す手法はかなり斬新。芥川ファンであればより楽しむことができ必読であろう。

  • 芥川龍之介の作品とその人の生涯を織り交ぜた12編の物語。芥川龍之介の作品が持つ精緻で端正な美しさ、彼の言葉遣いをそのままに、デイヴィッド・ピースの音楽的な文章へと練り上げてるのは素晴らしい。全く新しい芥川龍之介文学と言っても差し支えないだろう。作中には夏目漱石、久米正雄、斎藤茂吉、川端康成、内田百閒なども登場。作品ひとつひとつが迷宮的な幻想性に包まれており、幻惑される。芥川龍之介が好きな人はきっと好きだろうし、それ程彼の著作を読んだことがない人は本書を読むと芥川文学を読みたくなること請け合い。とても素晴らしい本でした。

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