極夜行前

著者 :
  • 文藝春秋
4.02
  • (25)
  • (49)
  • (13)
  • (5)
  • (0)
本棚登録 : 342
感想 : 38
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163909745

作品紹介・あらすじ

2018年の超話題作『極夜行』の“エピソード1”といえる、本番前に要した3年間の準備の旅。2018年、ノンフィクション界の話題をさらった『極夜行』。太陽の昇らない冬の北極を一匹の犬とともに旅をし、4か月ぶりに太陽を見るという誰も真似できない大冒険を描いた作品でした。新作『極夜行前』はその名の通り、『極夜行』を完遂させるために要したプロセスを描いたものです。角幡さんは言います。何事にもプロセスが大事なんだと。本番の旅を迎えるためには3年の月日がかかりました。その間、毎年北極に行き、自分が計画している極夜の旅が実現可能なものなのか、様々な面から試行しました。いよいよ本番と位置付けた年の春~夏には、事前に自分と犬の食料や燃料をカヌーで遠くのいくつかの小屋に運びました。その過程ではセイウチ(海象)に襲われて危機一髪の局面もありました。この3年に何があったのかもぜひ皆さんに知ってもらいたい。そしてこの準備があったから『極夜行』が書けたのだということも。『極夜行』と同様、一度読みだしたら止まりません。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • タイトル通り『極夜行』を遂行するための準備編。

    カナダ北極圏の太陽が昇らない季節、極夜。
    角幡さんは「太陽が昇る世界で暮らす私たちにとって、太陽が昇らない世界には想像もつかない未知が広がっている気がする。だから行ってみたい。それだけのことである」と言う。
    さすがは早稲田大学探検部OB。やることがデカイ。
    太陽は全く昇ることなく、一日中漆黒の闇に包まれる。
    静寂ばかりが広がり、音と言えば自分の息遣いのみ。
    暗闇の中に僅かばかり瞬く星のみが頼り。
    そんな世界とはどんなだろう。
    凡人の私には想像もつかない。
    長い旅が終わりを告げた後でようやく拝める太陽を、角幡さんはどんな気持ちで迎えるのだろう。
    いつか『極夜行』で確認したい。

    白熊対策用の番犬・ウヤミリックとの珍道中が特に面白かった。
    疲れてすぐに座り込んで休憩してしまう甘えん坊エピソードに笑えた。
    ペットとしては愛嬌があって可愛いけれど、過酷な極夜行でのたった一匹の相棒としてはどんなだろう。
    いざ白熊に遭遇した時、角幡さんを一人置いて逃げてしまったりして…。
    角幡さんよりウヤミリックのことが心配だ。

  • 冒険家として文明機器は使わない。星で位置を確認し連絡を断つ自力で歩いて極寒に身を委ね死と隣り合わせなのは本当にすごいの一言。
    こういう体験談が好きでのめり込んでしまう。

  • 極夜行とカブる文章が散見されるのがご愛嬌だが、相変わらず彼ならではのパワーと努力には脱帽。

  • 1日中太陽が昇らない「極夜」の北極を
    単独で、GPSも持たずに、星の位置から
    自分の位置を導き出す「測量」で、横断
    を果たした内容を綴ったノンフィクショ
    ン作品「極夜行」の前日談です。

    当然、測量方法の技術習得や、ソリを
    曳く、犬の調達、さらに中継地点のデポ
    への食料蔵置など、何日もかけて準備
    する姿は素晴らしいです。

    決して無謀な冒険ではなく、入念な準備
    の上で成し遂げられた探検であり、それ
    でも過酷な行程であったことを思い知ら
    される一冊です。

  • 冒険者・・・それは変態だ。
    こんな生活、どうやって無理だー。
    でも、人間が体力・経験値ともにフルで活動できるのは、
    30代後半から40代前半だというのは、分かる。
    その間に、どんな働きができるか。
    自分自身を試してみたいんだろうなぁ。

  • 数カ月間、太陽が昇らない暗闇の氷の世界、北極。そんな土地を、GPSや衛星電話、地図、コンパスなど文明の器具を使わずに旅をしたい。結婚し、娘も生まれたばかりで、こんな決断をすることにあきれつつも、著者の冒険心に感動。世界の果てを見たいという若い頃からの思いが著者を動かす。

    本書は、極夜への冒険を目前に控えて、様々な準備に四苦八苦する著者の行動の記録。ちなみに本番の極夜記は本書より前に発表されている。

    まずは何度も現地を訪れて、準備および旅のシミュレーション。現代の最先端ツールを自ら禁じたため、方角と現在地を知るために六分儀の使い方を学ぶ。荷物を運ぶための橇を木材から自作し、その橇を引っ張る犬を調教。現地で狩猟して、干し肉や毛皮を作ったり、旅の予想コースに物資を先行配置しておく。

    冒険前の準備だけで、相当な見せ場だらけで、過酷な現場。カヤックに乗っていてセイウチに追いかけられる。貯蔵していた食料を盗まれる。動物愛護団体が絶句しそうな犬への調教もある。本番前に遭難しそうなエピソードばかり。

    そんなこんなで準備完了、あとは極夜の時期を待つだけ。しかし、その直前に意外な展開。ここからどうやって「極夜行」につながるのだろうか。そんな疑問を感じながら、本書は唐突なエンディング。

  • 『極夜行』の準備期間の数年を描いた一冊。『極夜行』の中で、折に触れて登場する、準備期間のいろいろな検討や事件などが詳しく記載されていて楽しいです。
    また、『極夜行』は基本的に単独行だったけど、こちらのほうはタッグを組んで旅をしていたり、シオラパルクの人たちとのいろいろなやりとりもあったりして、それも楽しいところかなと思います。
    『極夜行』を読んだ後だから楽しめる部分も大きいと思うけど、『極夜行前』を読むとまた『極夜行』を読みたくなります。どっちから読んでも結局はとても面白いと思います。

  • 自分のオススメは『極夜行』読後に本作を読むこと。
    『極夜行』は予備知識などなく、いきなり読んで感じて欲しい。


  • 2章、犬との旅でドン引きした…

  • 極夜行を読む前に読めばよかった…

    最後の章、シーカヤックに乗る人は3倍楽しく読めるかも。

全38件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

角幡唯介(かくはた・ゆうすけ)
 1976(昭和51)年北海道生まれ。早稲田大学卒業。同大探検部OB。新聞記者を経て探検家・作家に。
 チベット奥地にあるツアンポー峡谷を探検した記録『空白の五マイル』で開高健ノンフィクション賞、大宅壮一ノンフィクション賞などを受賞。その後、北極で全滅した英国フランクリン探検隊の足跡を追った『アグルーカの行方』や、行方不明になった沖縄のマグロ漁船を追った『漂流』など、自身の冒険旅行と取材調査を融合した作品を発表する。2018年には、太陽が昇らない北極の極夜を探検した『極夜行』でYahoo!ニュース | 本屋大賞 ノンフィクション本大賞、大佛次郎賞を受賞し話題となった。翌年、『極夜行』の準備活動をつづった『極夜行前』を刊行。2019年1月からグリーンランド最北の村シオラパルクで犬橇を開始し、毎年二カ月近くの長期旅行を継続している。

「2021年 『狩りの思考法』 で使われていた紹介文から引用しています。」

角幡唯介の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×