胆斗の人 太田垣士郎 黒四(クロヨン)で龍になった男

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (392ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163909035

作品紹介・あらすじ

世紀の難工事、黒部第四ダム建設はいかにして成し遂げられたのか。いまの時代にこそ求められるリーダーの覚悟とは――“経営の神様”松下幸之助をも脱帽させた稀代の経営者の生き様がいま鮮烈に甦る!兵庫県城崎の町医者の家に長男として生まれた太田垣士郎は、幼い頃に誤って鋲を飲み、その影響から生涯病身であった。京都帝国大学経済学部卒業すると、日本信託銀行を経て阪急電鉄入社、参禅による精神修養と創業者小林一三の薫陶によって経営者の基礎を形作る。五年間阪急電鉄社長を務めた後、請われて関西電力の初代社長に就任すると、戦後の電力不足の解決のために奔走し、〝現代のピラミッド〟と呼ばれた黒部第四ダム建設の難工事に文字通り命をかけて挑むことになるのだが……。降りかかる幾多の試練に士郎はいかなる覚悟で立ち向かっていったのか。徹底して現場主義を貫いた士郎の信念は「怒らず、焦らず、恐れず」。社会のためにその身を捧げ尽くし、黒四竣工の九ヵ月後にこの世を去った稀代の経営者の知られざる生涯を描く渾身の評伝。

感想・レビュー・書評

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  • 北さんの書く男性は、不思議と可愛らしさがあります。
    可笑しさや情けなさも見えることで親近感があるし、心底応援したくなってしまいます。
    そして皆さんとにかく格好良い!

    黒部ダムが観光地として有名な事は知っていましたが、こんなにもたくさんの方が苦しみながら、命がけで作り上げた物だとは知りませんでした。
    その先頭で指揮を取り続けた太田垣さんの姿を追いながら読んでいったこの本、ラストは涙を流しながら読んでました。

    危険な現場に自ら入っていく太田垣さんの姿。
    自分が人々に危険な仕事をさせているのだからという言葉に、
    こういう男の背中ならみんな着いていくのが解るんだよなぁと
    古き良き男の姿を見た気持ちでした。

    黒部ダムに行って手を合わせたい、頑張ってくださった方々にお礼を言いたい。
    先人の作り上げてくださった物の上に今の便利な社会がある事を思い知ると共に、感謝の気持ちがこみ上げる本でした。


    「黒部の太陽」という映画になっていて観ようと思ったのですが、演者の石原裕次郎さんの「劇場で観てほしい」という言葉に納得したのでまだ観ていません。
    読んでいても圧倒される土と水と岩の圧力、劇場で観られる機会があると良いなぁ。

  • 期待に十分応えてくれる北さんの著作。今回は関西電力の社長だった太田垣士郎氏。恥ずかしながら詳しく存じあげませんでしたが、これは知っておくべき経営者。小林一三の後継者として戦中戦後の阪急グループを率いただけでなく、とても複雑な事情が絡み合い魑魅魍魎が跋扈するような戦後の電力事業に身を投じ、関西電力の立ち上げを成功させた力量や人柄には強く惹かれる。何と言ってもクライマックスは黒四ダムの建設だが、手に汗握り、涙無くしては読めない。豪胆と人情。まさに理想のボスという感じか。映画もぜひ見てみたい。この本のもう一つの楽しみ方として、北氏の他の著作に出てくる人物との絡みが興味深い。小林一三、白洲次郎、松下幸之助など。

  • 経営者評伝の第一人者、北康利氏。目にするたびに手に取っているが、本書は最新作。
    題名の「胆斗」は聞き慣れない言葉だったが、主人公の太田垣氏の名も寡聞にして馴染みがなかった。
    阪急電鉄社長、関電の初代社長として、電力再編後の関電の経営基盤を確立し、黒四ダムを作り上げた方だという。
    当たり前だろうが、最初から大経営者になるべく一直線に進んだわけではなく、個人的な不幸を乗り越えながら、自らを磨き上げてこられたことがよくわかる。
    改めて、筆致は少しかっこ良すぎるが、北氏は卓筆の書き手だ。よい本を読んだ。

  • 関西電力の初代社長。
    怒らず焦らず恐れず。

  •  関西電力初代社長で黒部第四発電所の建設を決断した太田垣士郎氏の電気です。個人的にはくろよん建設の頃のエピソードは知っていることが多かったのですが,生誕の頃や幼少の頃,関西電力社長就任前のことなどははじめて知ることも多く,考える内容が多くありました。戦後復興の礎を築かれた偉大な方ということは間違いないと思います。

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著者プロフィール

昭和35年12月24日愛知県名古屋市生まれ。東京大学法学部卒業後、富士銀行入行。資産証券化の専門家として富士証券投資戦略部長、みずほ証券財務開発部長等を歴任。平成20年6月末でみずほ証券退職。本格的に作家活動に入る。
著書に『白洲次郎 占領を背負った男』(第14回山本七平賞受賞)、『福沢諭吉 国を支えて国を頼らず』『吉田茂 ポピュリズムに背を向けて』『佐治敬三と開高健 最強のふたり』(以上、講談社)、『陰徳を積む―銀行王・安田善次郎伝』(新潮社)、『松下幸之助 経営の神様とよばれた男』(PHP研究所)、『西郷隆盛 命もいらず名もいらず』(WAC)、『胆斗の人 太田垣士郎―黒四(クロヨン)で龍になった男』(文藝春秋)、『乃公出でずんば 渋沢栄一伝』(KADOKAWA)、『本多静六―若者よ、人生に投資せよ』(実業之日本社)などがある。

「2022年 『稲盛和夫伝 利他の心を永久に』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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