風に恋う

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (310ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163908526

作品紹介・あらすじ

かつては全国大会連続金賞、その象徴的存在としてマスコミにも頻繁に取り上げられた黄金時代を持つ、名門高校吹奏楽部。子供の頃に演奏会で魅了された幼馴染の茶園基(ちゃえん・もとき)と鳴神玲於奈(なるかみ・れおな)は入部したものの、現在の吹奏楽部にかつての栄光は見る影もない。そこへ突然、黄金時代の部長だったレジェンド・不破瑛太郎(ふわ・えいたろう)がコーチとして戻ってきて、一年生の基を部長に任命した。部に渦巻く嫉妬とプライド、大学受験のプレッシャー、才能への不安と選抜オーディションの恐怖。一年生部長を擁する名門吹奏楽部は今年、全国大会開催の地・名古屋への切符を手にする事ができるのか。「高校時代が一番輝いてた、なんて言う大人にはなるなよ」―-コーチとして部活の真剣な舞台に戻ってきた瑛太郎は高校生との時間に何を見つけられるのか。悔いのない高校生活とは。部活動にすべてを賭ける「今」は、どんな未来へと繋がっているのか。青春小説の名手・額賀澪が紡ぎだすリアルで美しい言葉たちが奔流のごとくあふれ出し、高校時代の輝きを懐かしむ全ての大人たち、部活動に青春をささげる中高生の胸に突き刺さる!涙腺決壊の王道青春エンタメ小説!

感想・レビュー・書評

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  •  西関東吹奏楽コンクール。茶園基の中学校の吹奏楽部はそこから全日本吹奏楽コンクールに進めずに終わった。もう燃え尽きたと感じていた基は,中学校で吹奏楽をやめるつもりでいた。
     二歳上の幼馴染,鳴神玲於奈には,千間学院高校に来るなら吹奏楽部に入りなよと言われていたけれども,それでも決意は堅かった。

     だが,入学式の日,千間学院高校のチャペルで憧れていた人に会ったとき。
     かつて千間学園高校が全日本吹奏楽コンクールに出たときの部長。不破瑛太郎。

     「君達を全日本吹奏楽コンクールに出場させるために千学に戻ってきた」



     全日本吹奏楽コンクールに出場経験もある高校。吹奏楽部のコーチとして戻ってきた伝説のOB。
     全国を目指す派と,楽しく仲良く演奏ができればいいと考える派の部内での温度差。
     コンクールに出場できる55人を選抜するためのオーディション。
     希望の大学に進学するために,勉強もしなければならない,塾の講習や模擬試験などにも行かなければならない。
     学業と,全国レベルを目標にする練習との両立の難しさ。

     吹奏楽あるある。
     謂わば,吹奏楽の王道ストーリー。

     それなのに,出てくる登場人物の心情が,痛いほど描かれている。

     主人公の茶園基に関しては,誰よりもアルトサックスが上手くて,どのように表現するか,演奏でどのような世界を描くのか,理想の音楽とは何かをストイックに追求する子。
     自分の演奏を高めることに注力するあまり,周りが見えない。
     そんな未熟な部分も含めたまらなく可愛い。 

     心筋梗塞で倒れ,復職はしたけれども以前のように指導できない三好先生に代わり,吹奏楽部の外部指導者となった不破瑛太郎。
     高校生の前では自信を持って指導に当たるけれども,陰でこれで良いのかと悩む姿。
     また,大学四年のときに教員採用試験に落ちてから,中途半端な立場でずるずる二年間を過ごしてしまったことへの後悔。
     ブラック部活と言われてしまうことへの怒りや,それでも部活に力を入れることは生徒のためになっているのかと迷い,自問自答する思い。

     他の登場人物も,それぞれ心にどこか悩みを持ちながらも,音楽とはなにかを追求している。

     そのあたりの描写がなんとも心に刺さる。でも,悪くない。

     千間学院がコンクールで演奏する自由曲が《狂詩曲『風を見つめるもの』》。
     
     小説内,物語が動くときに風が吹きます。
     あるときは強く。あるときは華やかに。あるときは優しく。

  • 額賀澪の風に恋うを読みました。
    主人公は、中学時代、吹奏楽部でアルトサックスを吹いていました。
    全国を目指しましたが叶わず、高校はかつて全国優勝した高校に入学しました。
    高校は帰宅部で吹奏楽部には入らないと決めていたのですが、2つ年上の幼なじみの女の子は部長をしていました。
    7年間優勝とは程遠い吹奏楽部ですが、7年前優勝に導いた憧れの先輩がコーチとしてやってきました。
    それから全国を目指して切磋琢磨していく姿を描いています。
    課題曲は、運動会達でもよく使われると言うので、調べてみたら、初めて聴く曲で、こちらでは運動会では使われない曲だと思いました。
    中学校の時に吹奏楽部に入っていたので、レベルは違いますが、懐かしい感じがしました。
    映画になってほしい一冊でした。

  • 読んでいるうちに羨ましくて自分が嫌になってしまった
    自分は何もしていない
    それを思い知らされました
    読んで力をもらいました
    もっとこんな本読みたいですね

  • 思えばデビュー作も吹奏楽の話だった。青春キラキラな話だと思って読んだら想像以上に痛みと泥臭さも感じる(もちろんキラキラもちょっとはしている)佳作でした。うかつにも泣かされた。
    そして本作は表紙がキラキラしているのですが、額賀作品だしきっとキラキラしていないだろうと思ったら、今まででもトップクラスにキラキラしていた。眩しい、おじさん浄化されて成仏してしまいそうだよ。
    いつものように、ままならない人生の縮図が書かれているのが、いつもながらその辺の青春作品とは一線を画します。普通だったらとにかく仲間と突っ走りながら、乗り越える対象も怪我だったり人間関係だったりですが、この本は突っ走った青春のその先の人生の方が長い、それをどう生きるのか、というテーマが通底しています。これは競歩王でもタスキメシでもとても強く感じた部分でした。
    部内でのポジション争いにも胸抉られるし、みんなに吹かせてあげたいなあと読みながら強く想いました。娘も中学時代、一生懸命毎日練習していました。公立校でしたが結構な強豪校だったので練習厳しかったようです。毎日毎日朝早くから夜までですからね。
    娘もアルトサックスだったのでなんだか色々と思いだしてしまいました。
    それにしても額賀澪作品のクオリティーの高さは凄いと思う。少なくとも彼女の本でつまらない本読んだ事無いですからね。コンスタントに名作を出す事が出来る安定感が彼女の武器だと思っています。信頼感があるというのかな。
    そろそろ森絵都さんのように、若者向けの本からの直木賞っていう流れもあり得るのではないか。その前にめざせ本屋大賞!

  • 額賀澪さんの書く若者が頑張るお話しは、どうやら私の琴線に触れるようだ。
    頑張る高校生、眩しい!!
    焼き肉奢りたいわ~

  • 素直に感動できます!

  • 吹部やはり熱いです! 
    中学で夢破れ、高校では吹奏楽部には入らないと決めていた茶園登。 
    私立千間学院高校の音楽室で運命的な出会いをはたす。 
    登が吹奏楽を始めるきっかけを作った、高校OB不破瑛太郎が吹奏楽部のコーチとして帰ってきたのだ。 
    挫折から立ち上がる少年とそのメンター。 
    そして、部員達との軋轢葛藤そして友情。 
    もちろん、吹部小説ではおなじみの『全国大会への道』が主軸です。 
    「今日という時間がどれだけいいものだったかを決めるのは、明日以降の自分だ。だから、今日のためだけに生きるなよ。明日の自分のために生きろよ」 
    完全に擦れてしまったオジサンには、何もかもが眩しい。 
    さぁ、テンポ60、 B♭でロングトーンだ!!

  • 【今日を後悔しないために明日を生きる】
    12分を、大切に大切に読んだ。
    早く読みたいけど、読み終わりたくなくて。
    たくさん、挫折した人たちが出てくる。
    キラキラ青春物語なんて言えないなって思った。
    でも、だからこそ、その挫折に価値があったと思える今日を、明日を生きろと、いろんな人の物語を追体験して思わされる。

  • ゆっくり大切に読みました。
    主人公を含む吹奏楽部メンバーがお互いに切磋琢磨しながら全日本コンクールを目指すストーリー。
    進路や家族のことも絡んで、悩みながらも音楽に対する想いで突き進んでいく主人公たちが、どうしてもやりたい仕事に就くためにできること全部やって頑張った自分の大学時代と重なって最後は感動し、読み終えました。
    図書館本で読んだので、手元に置いておきたい一冊です。

  • 予想がつく展開でしたが、楽しめました。

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著者プロフィール

1990年、茨城県生まれ。日本大学芸術学部卒業。2015年、「ウインドノーツ」(刊行時に『屋上のウインドノーツ』と改題)で第22回松本清張賞、同年、『ヒトリコ』で第16回小学館文庫小説賞を受賞する。著書に、『ラベンダーとソプラノ』『モノクロの夏に帰る』『弊社は買収されました!』『世界の美しさを思い知れ』『風は山から吹いている』『沖晴くんの涙を殺して』、「タスキメシ」シリーズなど。

「2023年 『転職の魔王様』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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