白墨人形

  • 文藝春秋
3.68
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  • Amazon.co.jp ・本 (367ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163908496

作品紹介・あらすじ

スティーヴン・キング強力推薦。 少年時代の美しい思い出と、そこに隠された忌まわしい秘密。 最終ページに待ち受けるおそるべき真相。 世界36か国で刊行決定、叙情とたくらみに満ちた新鋭の傑作サスペンス。 あの日。僕たちが見つけた死体。そのはじまりは何だったのか。僕たちにもわからない。みんなで遊園地に出かけ、あの悲惨な事故を目撃したときか。白墨のように真っ白なハローラン先生が町にやってきたときか。それとも僕たちがチョークで描いた人形の絵で秘密のやりとりをはじめたときか―― あの夏。僕には四人の友達がいた。太り気味のギャヴ、不良を兄に持つミッキー、シングルマザーの息子ホッポ、そして牧師の娘ニッキー。不良たちに襲撃されることも、僕がニッキーへの恋に胸を焦がすこともあったが、この日々が終わるなんて考えたこともなかった。でも町では悲劇に至る不和が広がりはじめていたのだ。僕の母の診療所への反対運動をニッキーの父が煽り、ミッキーの兄に悲劇が降りかかり、少女の妊娠騒ぎが起こり、大人たちのあいだにも僕たちのあいだにもヒビが入りはじめた。そして、あの事件が起きた。あの子が殺された。森で。バラバラになって。見つけたのは僕たちだった。頭部はいまも見つかっていない。 そして現在。白墨人形の絵とともに、あの事件が甦る。あの人が死んだことで、事件は解決したはずなのに。僕はかつての友人たちとともに、あの夏の秘密を探りはじめる…… 光に満ちた少年の物語と、痛ましい犯罪悲劇とが交錯し、最終ページに待ち受ける最後の一撃。

感想・レビュー・書評

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  • うだつが上がらない中年の教師として過ごす語り手の目線を中心に、物語は現在と過去を行ったり来たりして進みながら、1つ1つの出来事の真相を明らかにしていく。バラバラにされた少女、移動遊園地の無残な事故の記憶、いじめ、暴力……死が身近で連鎖する中で描かれるチョークの棒人形が、恐怖感を巧みにあおり、最後まで飽きずに読めた。町全体が負の吹き溜まりになっているような状態というか、人々の抱える不満がもたらす空気の重さがある意味リアルで、読んでいるこちらも終始テンションが低空飛行だったが、読後にまで鬱屈を引きずるほどの衝撃はなかった。

  • 仲間と過ごした少年時代。そこに少しずつ変化が出始め、事件が起き、少年の日々が終わりへと向かう。先入観、後悔、怒り、悲しみ。そういったものが事件の前後で次々とつみかさなっていく。ホラー的な恐怖と人の心の中にある恐怖。色々なものに支配され抜け出せない。誰でも嘘をついたり、隠し事をしたり、秘密を持ったりはするけれど、それがどういう結果を招くのかまではなかなか想像できない。現在と過去、情報を少しずつ明かしていきながら展開されるけれどその小出し感が絶妙。恐怖とともに面白さがある。真相とそのあとにある本当のラスト。一気読みのサスペンス。

  • 1986年イギリスの小さな町に住む4人の少年エディ、ギャブ、ミッキー、ホッポと1人の少女ニッキー。彼らはいつも一緒に遊ぶ仲間。
    それほど裕福でもない家族が集まった小さな町で、少しずつ事件が起きる。
    移動遊園地で遊具に乗っていた金髪の少女を襲った不幸な事故。少し影のある新任のハローラン先生、乱暴者のミッキーの兄の溺死、中絶手術を行うエディの母親に対してニッキーの父親の牧師が行う反対運動の過激化、、、そして金髪の少女のバラバラ死体を森で発見するエディたち。
    2018年、すっかり中年の域入ったエディのところにメッセージが。決着がついたようで、謎のままに終わった少年時代の記憶を辿りながら、エディは真相に迫ろうとする。

    イギリスに住む女性が書いた作品。
    そして、スティーブン・キングが「わたしの書くものが好きなら、この本も好きになるはず」とツイートしたというのも肯ける。「スタンド・バイ・ミー(原題 “The Body”)」と「IT」を足したような味わいだ。

    登場人物たちの家庭は、どの家庭もそれほど裕福とは言えず、何かバランスを描いた不安定さがある。
    少年たちの境遇が彼らの将来に暗い陰を落としているが、それでもまだそれを知らない少年時代を楽しんでいる。そこは「スタンド・バイ・ミー」だ。
    そして、その陰が現実になったことを確認するかのように、30年後の2018年の彼らの話が交互に語られる。その構成は「IT」だ。
    こういう貧困にあって、半ば将来を諦めつつも明るく振る舞う少年時代を描くのはキングの得意なところだが、それをイギリス人の女性が書いたというのが凄い。

  • キングが「私の書くものが好きなら、この本を気に入るはずだ」と言ったと帯にあり読んでみました。他の方のレビューにもありましたが読んでいると『IT』を思い出させる雰囲気、恐怖を直接書くのではなく恐怖を感じる空気というか緊張感を書けるというのがキングに通じると思いました。42歳になった主人公が12歳の時に経験した一連の事件を振り返るのですが現在と30年前の章が入れ替わりながら進むという構成も巧み。主な登場人物のほぼ全員がなにがしかの嘘や誤魔化し悪癖又は病や罪を抱えているという救いの無い世界でやりきれなさはあるものの、作品に散りばめられたいろいろの謎は小さなものまでかなりきちんと解説してくれたので読後にモヤモヤすることは無かったです。とはいえ、重要人物の一人であるある人物が、キング作品にも見られる「マジカル・ニグロ」のような役割(黒人ではないけれどマイノリティの属性)の設定だったのは気になりました。アメリカ人のキングの作風に通じるところがありつつ、イギリス人らしい斜に構えたシニカルさもあって、読みごたえがありました。

  • 図書館本。

    スティーブン・キングがおすすめしているこの本。
    キングの作品が好きなら好きなはず、らしい。
    キング…読んだ事は無いんだけれど…いや、常々気にはしているの…本当。

    主人公の少年時代、そして、現代を行き来しつつ、不気味に描かれる本作。

    読み終えた時、一瞬「長いよー」と思ってしまうのはそれだけ息を詰めて読んでいたからかも。

    少年時代に起きたいくつかの出来事、人生に大きな影を落とした事件。
    あらすじをざっとチェックしていたのもあり、読み始めは「スタンド・バイ・ミー?」のような雰囲気を感じていた。
    主人公、エドと一緒に不可思議な空気を感じながら物語を読み始める。

    読み終えて。
    登場人物全員が悪意の有無に関わらず、何かしらの“罪”を犯していたんだと。
    周りにもたらした害の大きさなどはそれぞれ違うとはいえ。
    ハローラン先生の言う、業(カルマ)…。
    それがちゃんと返ってくる…。
    そういう人間の内面の黒い部分を描いていた。

    いくつかの謎が解かれていく。
    最後の大きな謎が暴かれるその時がやってくる。

    登場人物の中ではハローラン先生がカッコ良かった。
    あと、クロエが彼女は彼女で罪は犯しているんだけれど、基本的な性格は真っすぐで好感が持てた。
    ギャヴもジャイアンみたいで良かった。
    エドがまさかまさかでなかなか恐い奴だった。

    エドとクロエのやりとりを見ていると、『ミレニアム』シリーズのミカエルとリスベットを思い出し、そちらをまた読みたくなってしまった…。

    それはさておき、次作も読みたい!

  • スティーヴン・キング強力推薦!とな。読まねばなるまい!ということで、スーパーナチュラル登場いつよ?と読み進めたらミステリだったのね。嘘をついたり秘密を抱えていたりの人物描写がリアリティがある。ラストの捻りが諸行無常というかなんというか残酷。面白かったです。

  • 少年時代を描いた作品で光がマキャモン、闇がケッチャムだとすれば、本作は闇寄りかな。中庸に見えた語り手が実は最も病んでいたのではないかという…未来にも光より闇が待ち受けていることが暗示。

  • たしかにこれ……スティーヴン・キングの作品を好きな人は好きだろうなあ。どことなく「IT」っぽい雰囲気があって、子供パートと大人パートになっているのも「IT」に似てる。けれどもちろん、作品としては全然違います。こちらは超常的なものがなく、いたって現実的なミステリでありサスペンスなのだけれど。漂う雰囲気はややホラーかも。チョークで描かれた「白墨人形」がなんともいえず禍々しい印象です。
    少年たちの友情と冒険にあふれた楽しい日々、と思いきや。さまざまな事件が起きて仲間たちと彼らを取り巻く状況が変わっていき、孤独になっていく主人公。そして大人になった彼らに突きつけられた、過去の事件。過去に何が起こったのかも小出しにして語られるため、読む手が止まりません。最後までサスペンスたっぷり。
    大人になった彼らは決して不幸だというわけではないのだけれど。何とはなしに、失ってしまったものの多さを感じさせられる切ない読後感でした。そして知らないほうがよかったこともいろいろあるなあ。

  • スティーヴン・キング氏の本を読むのを躊躇い、彼が絶賛したとのことで読んでみようと思った。
    過去と現在が交互に出てくる作品で、早く先を読ませてくれと思う作品。おばけ、幽霊、ピエロ、怪物、得体の知れないものも怖いけど、やっぱり1番怖いのは人間だと思い知らされる作品。

  •  1986年、まだ少年だった僕たちは月並みな日々を送っていた。 友人達とやんちゃもしたし、喧嘩もした。 甘酸っぱい恋に憧れることもあった。 大人たちの難しい話は無視したし、友達の体に付いた痣の意味もまだ分からなかったけど、それなりに平穏な日々を送っていたはずだった、あの時までは。 事件の始まりはいつだったのか、僕が移動遊園地で凄惨な事故を目撃した時なのか、友達の兄貴が溺死した時? それともチョークの落書きで伝言を始めた時?
     2016年、42歳になった僕に投げられた言葉。 誰もが間違っていたし、誰もが秘密を抱えていたあの事件の真相を明らかにする時が来たのか。 「あの事件の真犯人を知っている。」

     スティーヴン・キング推薦という強力な後ろ盾を以て日本でも刊行された本作。 スタンドバイミーを彷彿とさせるようなティーンエージャーを中心とした物語。 彼らは年相応に未熟であって、それ故に事件の大きさも方向性も変わってゆく。
     点と点が結ばれて隠された線を探偵役が見つけ出すようなかっこいい物語ではない。 色々な事件が起き、過去でも未来でも、殺人も起きたしそうじゃない事件も起きていた。 それらのほとんど線は2016年に回収される。 振り返れば些細なことだが当時の未熟な少年たちと大人たちの蟠りの前では有耶無耶になった。 
     <本物の友達じゃないから。子供のころから知っているっていうだけ。> そう、確かに彼らは親友ではなかった。 秘密を共有するには身分が違い過ぎた。 ただ近所に住んでいるだけでは明かせない事実あった。 もし彼らが強固な絆で結ばれた親友同士で合ったら事件はこんなにも複雑に残酷にはならなかったのかもしれない。 でも小学生時代の友人関係なんてそんなもんだと思う。
     複雑な人間関係、身分違いの個性的な人物たちを多彩に書き分け最終ページに恐るべき秘密を隠してみせた本作。 キング氏のサスペンスな作風が好きなら一読の価値ありです。

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