鵜頭川村事件

著者 :
  • 文藝春秋
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  • / ISBN・EAN: 9784163908281

作品紹介・あらすじ

父と娘は、閉ざされた村での狂乱から逃げられるのか――狂気が狂気を呼ぶ、パニック・ミステリー!一九七九年、夏。亡き妻・節子の田舎である鵜頭川村へ、三年ぶりに墓参りにやってきた岩森明と娘の愛子。突如、山間の村は豪雨に見舞われ、一人の若者の死体が発見される。村の有力者・矢萩吉郎の息子で問題児の大助が犯人だと若者たちは息巻くが、矢萩家に誰も反抗できず、事件はうやむやとなる。抱えていた家同士の対立が顕在化し出し、若者たちは自警団を結成する。動き始めた狂気がさらなる狂気を生み、村は騒乱に巻き込まれていく――

感想・レビュー・書評

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  • 亡き妻の墓参りに鵜頭川村を訪れた岩森と娘の愛子。その夜に大雨から大規模な土砂崩れが起こり、村は孤立することになる。
    そんな中、村の1人の青年の刺殺された遺体が発見され、犯人捜しから村人同士の対立が始まる。
    閉鎖された空間の中で、都会に憧れながらも村を出ることを許されなかった、青年達の大人へ対する憎悪に、根深い男尊女卑。
    自分も田舎出身だが、ずっと地元に残っている同級生達を見ると、狭いコミュニティの中で学生時代の上下関係、いわゆるスクールカーストがいい歳した大人になってもまかり通る地域がある。
    子連れの元後輩に、帰省先のスーパーでペコペコ頭を下げられ、その場から逃げ出したくなった事がある。
    個々には親思いの良い青年達が、集団になり団結し我を忘れ牙を向く、逃げ場の無いパニックミステリー。
    青年達の憧れだった辰樹と、よそ者の岩森のバトルの描写が、自分の身体に痛みを感じるようで辛かった。やっぱり人が一番怖い!

  • #読了 #鵜頭川村事件 #櫛木理宇
    亡き妻の田舎である鵜頭川村へ、三年ぶりに墓参りにやってきた父娘。突如、豪雨に見舞われ一人の若者の死体が発見される…
    集団心理を利用してやすやすと暴動をおこす頭脳があるなら、何か解決策は無かったのか?と思ってしまうが、真相を聞くと同情もしてしまった。

  • ★3.5

    父と娘は、閉ざされた村での狂乱から逃げられるのか――
    狂気が狂気を呼ぶ、パニック・ミステリー!

    一九七九年、夏。亡き妻・節子の田舎である鵜頭川村へ、
    三年ぶりに墓参りにやってきた岩森明と娘の愛子。
    突如、山間の村は豪雨に見舞われ、一人の若者の死体が発見される。
    村の有力者・矢萩吉郎の息子で問題児の大助が犯人だと若者たちは息巻くが、
    矢萩家に誰も反抗できず、事件はうやむやとなる。
    抱えていた家同士の対立が顕在化し出し、若者たちは自警団を結成する。
    動き始めた狂気がさらなる狂気を生み、村は騒乱に巻き込まれていく――

    昭和54年、豪雨による土砂崩れで山間の村が孤立する。
    そんな中、一人の青年の刺殺死体が発見される。
    村で絶対的な力を持っている「矢萩一族」。
    それに従わなければ生きていけない「降谷一族」。
    孤立し、電気も水道も電話も使えなくなり救助もいつ来るかわからない。
    極限状態に陥った時、村人たちの不満は膨れ上がり、
    さらに大人と若者たちの間にも亀裂が入る。
    幼い娘を連れて妻の墓参りのために偶然村に居合わせた岩森は巻き込まれていく。

    読む度にどんよりとした気持ちにさせられる櫛木さんの作品。
    でもやっぱり読まずにはいられない櫛木さん…(笑)
    読み始めはいつも暗さがなく普通のミステリーの様で
    どうなるのか先が気になってワクワクしながら読んでいました。
    しかし、やはり読み進めれば進めるほどいつもの櫛木さんらしさがーー。
    閉鎖的な村における、人間の狂気や醜さをこれでもかって描いていた。
    田舎特有のいやらしさ。
    登場するほとんどの男性の嫌な事٩(๑òωó๑)۶腹の立つこと(*`Д´*)
    何なのこの男尊女卑(-`ェ´-怒)

    以前も櫛木さんの「避雷針の夏」でこんな町に絶対に暮らしたくない
    って思った事がありますが、
    今回もこんな村絶対に暮らしたくない。
    若者たちもそんなに不満を抱いていたのなら、
    村が嫌いなら出て行けばいいのにって思った。
    洗脳や集団心理って怖いね。

    ここ数年豪雨被害が多く、孤立集落って言葉を良く耳にします。
    そして数日前には村八分があるって新聞の記事を読みました。
    こういう村、ここまでいかなくっても似た様な村あるのかもしれない。
    そんな風に感じました。

  • 閉ざされた環境で、まさに生きるか死ぬかの極限状態。よそ者の岩森さんやエツ子さんがいたのが救い。ちょうど大雨で、余計怖かった。
    読むのに、すごく時間がかかった。

  • 本当にあった話かと思うくらいリアル。そして、残酷な描写も多く、本当にリアルでゾッとする。
    人間の狂気がすごく見事に描かれています。
    エツ子さん、愛子、港人の存在だけが唯一の心の救い。

  • 人って怖いなーって思える作品。
    群集心理とそれを操る方法と。
    今もこういう村があるのかもしれないって思えるくらいに日本の閉鎖的な部分が濃く出てる。
    話も昭和の話だしね。
    最後は暴力的な方向へ進んで。
    読後の爽快感はなし。
    所々の新聞描写。
    裏ではこんな事があったんだってのは記事からは伝わらない。
    それが一番怖いってちょっと思った。

  • 主人公は妻を亡くし、まだ幼い一人娘を男手ひとつで育てている男性。
    彼は妻の墓参りのため、久しぶりに妻の故郷である鵜頭川村を訪れる。
    妻の生家はその村では有力者の家で、村全体が男尊女卑な風潮の上に、その家の男たちは輪をかけて横暴だった。
    それは、嫁だけでなく、使用人として使う村の人々に対しても同様で、村には一家への反感が募っていた。
    そんな折、一人の男性が村で殺されるという事件が起きる。
    容疑者として浮かび上がったのは一家の末っ子である男。
    だが、その事件の容疑者は有耶無耶にされかかった、それと時を同じくして大水害による土砂崩れにより村は孤立状態となってしまう。
    その後、商店では売り惜しみが始まり、村の若者たちは自警団を結成。
    その自警団は団長の男の扇動により、狂暴な方向へと向かう。
    その矛先は日頃の憤懣を抱える先、村を支配する一家へと向かう。

    何となく読んでいて入りこめない本で、読んでいる途中にすぐに寝てしまった。
    櫛木理宇さんの書いてる本にしては珍しい。
    たくさん登場人物がいるために心情が分散されたからかもしれない。
    夢中になって読むまではいかないけれど、考える所はある本だった。

    まず、読んでいて、この本に出てくる男共が嫌でしょうがなかった。
    横暴で、知性の感じられない言動、そのくせいざとなると弱い人間。
    それと比べて主人公の子供の愛らしいこと。
    醜い男共の中にいて、その無邪気さや健気さが却って際立って見えた。
    さらに、最初からおかしいのがもっとおかしくなっていく男共の中において、理性的にふるまう主人公男性や他の青年の姿。
    自分の中の獣に負けてしまう人間とそうでない人間が見事に描かれていた。

    それと、読んでいて自然と思ったのは学生運動について。
    この物語の時代設定は昭和50年代。
    学生運動の記憶がまだ生々しく残る時代でもあり、それがこの村の人々にも影響を与えている。
    私は昔から学生運動の事がどうにもよく分からなかった。
    何であの時代の若者があんな事をしたのか、概要を聞かされてもさっぱり理解できない。
    よほど頭が悪いからだと思っていたら歳をとって何となく分かってきた・・・が、やはり何であんな事をしたのか分からない。
    ただ、集団心理って恐いと思う。
    責任の所在がはっきりしない状況では人間は獣になりやすい。
    それも自分は「正しい」という根拠ない信念があればさらに・・・。

    折も折で、今オウムの教祖が死刑になり、外は大雨。
    この本を読むには絶好の条件が揃って読んだ本だったと思う。

  • 怖かったぁ。災害で陸の孤島と化した小さな村。家長制度が色濃く残っていて、良くも悪くも日本の風土や風習が人々をがんじがらめにしている。時代背景が昭和54年ということも相まって不気味さが増していました。ゾンビだとか未知の細菌でパニックに陥る話は良くあるけれど、これは普通の人間がいろいろな条件環境などで狂気を生み出していく。じわじわと怖くなっていって、早く逃げて逃げてと思いながら読み進めました。夢を諦めた青年は、自らの手で未来を変えようと思いそして未来を壊した。最後は可哀想だったな。

  •  亡き妻の墓参りのため、6歳の娘を連れて鵜頭川村を訪れた岩森。折しも豪雨による土砂崩れが発生し、村は陸の孤島と化す。
     なかなか来ない救援、停電、食料と水の不足。村に焦燥と悪意が漂い始め、ついに事件が。若者たちは自警団を結成し警戒に当たるが、以前からあった村の顔役・矢萩一族への反感は深まる一方で……。


     図書館本。
     表紙で何となくお察しの通り、ムナクソ系。
     パニックホラーというよりはバイオレンスと言った方がしっくり来る感じかな? かなり凄惨な描写もあるので、スプラッタとか苦手な人は読まない方が……。
     ミステリー要素はほんのオマケ程度で、真相はともかく、犯人がアレじゃないのは大体察しがつく人も多いはず。

     言っちゃ悪いが、読後に残るものの無い小説だった。
     序盤から嫌味とマウンティング、偏見、暴力のオンパレード。スッキリする展開は無い。
     これに加えて世代ウケを狙っているのか、昭和の懐かしキーワードがズラズラと登場。しかし、固有名詞を並べただけでその時代の空気は全く感じられず、懐かしさの押し売りとしか思えなかった。作者もよく知らないのかな?という印象。


     村の設定も甘く、ストーリー展開に都合の良い構造になっている。

    ・村には小学校も中学校も無い→救援ヘリが着陸できない(義務教育どこ行った?!)
    ・矢萩工業の重機は隣の鷺見市に置いてある→孤立状態を維持、矢萩一族の対抗手段を無くす
    (普通は街中に事務所、郊外に重機置き場となるのでは?)
    ・村にヤンキーやいじめのリーダー格がいない→辰樹が簡単にリーダーシップを取れる
    (権力を持っている方が村に残る率が高いと思う)
    ・村の規模のわりに店が多い→暴徒のターゲットとしてわかりやすい
    (人口900人程度の村に、小間物屋や乾物屋といった特化型の店はまず無いのでは?)

     そういう村なんだと言われればそれまでだが、幼児・児童がそれなりにいるのに小学校すら無い自治体って……。ちょっとあり得ないでしょ。


     主役級の元優等生・辰樹の設定もよくわからん。
     東京の大学に進学するはずだったのが、兄の死により急遽家を継ぐことになり、進学はお流れ。という気の毒な人物ではあるのだが。
     てっきり農家かと思ったら、父親は村にある矢萩工業の社員。亡くなった兄も矢萩工業。で、わざわざ進学を諦めた辰樹は……同じく矢萩工業勤務。後継ぎって?!
     むしろ進学させて士業にでも就いてもらった方が、収入も増えて将来安泰なんじゃないの??? 村で開業すれば後継ぎ問題も解決するし。
     また、村の若者の英雄としてカリスマ性を発揮する辰樹だが、弁が立ってもインテリ優等生って田舎じゃあまりウケないと思うんだけど。“勉強ができる”のは田舎じゃ大したステータスにはならんよ。使い道が無いんだもの。一緒にバカやってくれて、理屈をこねないタイプじゃないと敬遠される。

     終盤、鵜頭川村のオタク王・白鳥が自分のことを指して「オカルトやSFに傾倒して世をすねて、『犯罪に走りそう』と思われやすい人物」といった趣旨のセリフを吐く。
     しかし、創作物(主にアニメや漫画)の犯罪への影響が世間一般で取り沙汰されるようになったのは、もっと後では?
     それに早川SF文庫だと、田舎なら「難しい本を読んでる!」程度の扱いでしょ。下手すると“真面目な人”って言われちゃうよ。実際、私が経験済み(笑)。

     そういった田舎の傾向などのリサーチも不十分に感じた。


     内容はさておき、状況描写をほどよく交えた文体はスッキリとしてテンポが良く、実に読みやすかった。
     私の場合「ゴールデンカムイ」くらいでしか接することのなかった新潟方言の会話も、味があって良かった。
     ホラー系ではなく、もうちょっと穏やかなストーリーの方が向いてそうな作家さんのように思うんだけど。

  • WOWOWでドラマ化(2022年10月から松田龍平主演)されているので読んでみる。筆者の作品はリームダスト・モンスターズは面白かったが、「チェインドッグ」は私好みの作品じゃなかったし、ホラーってことだったので覚悟はしていたが、ホラーじゃなくてヴァイオレンス小説やった。ホラー以上に苦手。雰囲気は横溝正史の村ものって感じだが、舞台が1979年で、出てくる若者と私の年が変わらないことが怖い。スターウォーズにインベーダーゲームだもんね。それが一番怖かった

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著者プロフィール

1972年新潟県生まれ。2012年『ホーンテッド・キャンパス』で第19回日本ホラー小説大賞・読者賞を受賞。同年、「赤と白」で第25回小説すばる新人賞を受賞し、二冠を達成。著作には「ホーンテッド・キャンパス」シリーズ、『侵蝕 壊される家族の記録』、『瑕死物件 209号室のアオイ』(角川ホラー文庫)、『虎を追う』(光文社文庫)、『死刑にいたる病』(ハヤカワ文庫JA)、『鵜頭川村事件』(文春文庫)、『虜囚の犬』(KADOKAWA)、『灰いろの鴉 捜査一課強行犯係・鳥越恭一郎』(ハルキ文庫)など多数。

「2023年 『ホーンテッド・キャンパス 黒い影が揺れる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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