- Amazon.co.jp ・本 (178ページ)
- / ISBN・EAN: 9784163908205
作品紹介・あらすじ
いまの東京に重なって、あの戦争が見えてしまう――。茶の間と重なりあったリビングの、ソファと重なりあった半透明のちゃぶ台に、曾祖父がいた。その家には、まだ少女だった祖母もいる。あの戦争のときの暮らしが、2020年の日常と重なっているのだ。大混乱に陥った東京で、静かに暮らしている主人公に、昭和20年3月10日の下町空襲が迫っている。少女のおかあさんである曾祖母は、もうすぐ焼け死んでしまうのだ。わたしたちは幻の吹雪に包まれたオフィスで仕事をしながら、落ち着かない心持ちで、そのときを待っている……。表題作「ディレイ・エフェクト」の他、「空蝉」と「阿呆神社」を収録した驚愕の短篇集。いま最も注目されている宮内悠介が、時の流れをこえて、この世界の真実に迫る!芥川賞候補作品
感想・レビュー・書評
-
面白かったです。
生活、を感じました。人が生きている世界。
「ディレイ・エフェクト」の世界は体験してみたいです。幻の雪が降る中、炎上する東京……そしてこの世界、丁度今頃なのですね。
ディレイ・エフェクトはリバース・ディレイに変化したのですが(音楽の機材?は疎いのでこれがどういうのかはいまいちわからない…)、永遠に終戦の年を繰り返すのかな。。
「空蝉」はバンドの一生を垣間見ました。
「阿呆神社」は人物関係を掴むのにまごつきましたが、誰を守っているのか…が見えてくるとじーんとしました。神様も大変です。
宮内さん、これからも読んでいきたいです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
表題作を含む短編3編。第二次大戦最後の1年が幻のように現れている東京が舞台の話、JR大塚駅周辺を舞台にかつて活躍したバンドの話、大塚の神社の話。話の設定と展開が巧みで爽快感(?)あり。面白い作家を知れた。
ランカウイの家の前庭にて。2019年の大晦日の午前中の読書。 -
短い文章で、ここまで読ませるのは素晴らしい。
世にも奇妙な物語みたいと言ってしまえばそれまでだが、プロット以上に語るものがある。
ちょっと泣かせるというか、哀愁漂う一冊。 -
芥川賞候補になった表題作を含めた短編集。 戦時中の景色が重なった現代の東京を描いた『ディレイ・エフェクト』。大きな主張に繋がりそうな設定ですが、あくまでそこに生きる人々の生活と心情にスポットを当てていて好印象。それにしても私は特殊設定によって浮かび上がるものがあまりにも好きなのだと自覚させられた。 かつて活躍していたバンドの取材からバンドマンが浮かび上がる『空蝉』。神社への相談が繋がり大きな物語が浮かび上がる『阿呆神社』。どの短編も物語が進む中で浮かび上がるものに心動かされる傑作集でした。
-
内容(「BOOK」データベースより)
茶の間と重なりあったリビングの、ソファと重なりあった半透明のチャブ台に、曾祖父がいる―。戦時下の日常の光景が、二〇二〇年の現在と重なっている!大混乱に陥った東京で、静かに暮らしている男に、昭和二十年三月十日の下町空襲が迫っている。曾祖母は、もうすぐ焼け死ぬのだ。わたしたちは幻の吹雪に包まれたオフィスで仕事をしながら、静かにそのときを待った―。
何故このアイディアで短編を書いたかという事が最も疑問に思った所です。大長編ではなくていいので短めで1冊にまとめ上げたらいい作品になった可能性もある。過去の出来事がホログラムのように現代に重なって未来から見えているというアイディアは秀逸だし、群像劇にするに足るテーマだと思いました。夫婦の葛藤や子供とのやり取りが希薄なのはやはり尺の問題なのではないかと。有機的なつながりの無い中で、過去との邂逅をさらりと済ませてしまっているのが残念な気がしました。アイディア勝負でいる段階は過ぎた作家さんだと思っています。
小さくまとめてしまうにはもったいない題材だし、そもそもこの表題作はなかなか良かった。これだけなら星3あげてもいいと思いました。しかし他の短編がだめ、独りよがりな独白のようなものと、おちゃらけ切れないコメディーブラックユーモア。この2編については吉田修一と筒井康隆を読んで出直せと言いたいです。 -
ディレイというのはギターをやってるひとならエフェクターのひとつは使ったり聞いたことがある代物で,プログラミングするひとには入力信号を数十msecバッファで遅延さたコピーを出力すると得られる音響効果の一種でこれが数ミリsecになるとフランジャーになるわけでけど,小説内時間をテープ音楽のテープ的にとらえるというそもそもの発想がまず,いち音楽ファンとしておもしろい.もちろんそれだけで書けるわけではないのはもちろんだけど.
-
同じ景色なのに2つの時代の風景がシンクロして見える。現代から過去へのメッセージ?それとも過去から現代への何かの警鐘?