- Amazon.co.jp ・本 (292ページ)
- / ISBN・EAN: 9784163907338
作品紹介・あらすじ
人情の町・深川に巨大安売り市場がやってくる!?不況の嵐が吹き荒れる江戸。同心を辞し、庶民相手に鍋釜や小銭を貸す「損料屋」として暮らす喜八郎。ある日、地元の広大な空き地に大掛かりな作事が始まる。どうやら巨大安売り市場が建てられるらしい。このままでは地元の店が打撃を受け、人の繋がりも断ち切られてしまう。大切な故郷を守るため、頭脳と人脈を駆使して、喜八郎が動き出す-ー目次 うしお汁 つけのぼせ 仲町のおぼろ月 にごり酒 春仕込み 牛天神時代小説に新風を吹き込んだ累計65万部の人気シリーズ最新刊!
感想・レビュー・書評
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喜八郎のまっとうな生き方に、力が湧いてきます。
牛天神 ― 損料屋喜八郎始末控えシリーズの4作目
2018.01発行。字の大きさは…小。
うしお汁。つけのぼせ。仲町のおぼろ月、にごり酒、春仕込み、牛天神の6話。
損料屋喜八郎は、恩義の有る先代米屋政八の頼みで、札差の2代目米屋政八を守るために奮闘する物語です。損料屋とは、鍋、釜などの生活必需品の賃貸業です。
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【うしお汁】
寛政五年(1793年)一月二十三日に、損料屋の道を挟んだ向かいにある大店の質屋・小島屋の主人が、喜八郎に放蕩が過ぎる息子の与一朗がこのままでは、店を潰してしまう。ついでは、店を喜八郎に譲ると行って来ます。
『感想』喜八郎は、店を譲る話を断り、与一朗を預かり、ひとつの物事をやり遂げることが如何に大切かを分からせます。
【つけのぼせ】
両替商の大店・近江屋の三番番頭・以蔵は、近江の実家の母が危篤との便りを受けてから落ち着きがない。帰りたいのはやまやまだが、店の決まりで帰ることが出来ない。そんな時に、以蔵がいつも面倒をみている祐助が、店の集金の金を人助けのために使ってしまって店を辞めることとなる。
『感想』店を辞める祐助を、実家の近江まで以蔵が連れて行って、使った金を弁済させる事となる。この企ては、近江屋の決まりを守りながら、以蔵を実家の母に会わせるために喜八郎と近江屋の者が企てたもので。祐助の働き口は、喜八郎がすでに決めている。
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【仲町のおぼろ月、にごり酒、春仕込み、牛天神】
この4話は、繋がったひとつの物語です。
深川の地元の店を潰すために鬼右衛門は、大きな安売りの店を作るが、いち早くこの動きを知った喜八郎が、深川の者を結束させて鬼右衛門に対応したため、鬼右衛門は、大損をする。喜八郎に復讐を考えていた鬼右衛門が、途中で考えを変える。それは……。
『感想』江戸屋のすずよを見た、鬼右衛門は、その姿が亡き母に生き写しなので、すずよと話すうち信条としている考えが「見ぬものきよし」と言われて。鬼右衛門は、いままで人より早く知って生きてきたことを悔いる。
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【読後】
テンポがよく、喜八郎の動きも良く読むのが楽しみな一冊です。
恩義の有る先輩のために身を犠牲にする祐助の心意気を書いた「つけのぼせ」がいいです。
【豆知識】
「見ぬものきよし」とは、見なければ、汚いものも汚く感じることもない。見たら気になりがまんできないものも、見なければ平気でいられる。
2021.06.03読了
2021.06.06感想文記入
※シリーズ作品レビュー
粗茶を一服 ― 損料屋喜八郎始末控えシリーズの3作目 2021.03.08読了
https://booklog.jp/users/kw19/archives/1/4163275401#
赤絵の桜 ― 損料屋喜八郎始末控えシリーズの2作目 2021.02.02読了
https://booklog.jp/users/kw19/archives/1/4163240802#comment
損料屋喜八郎始末控えシリーズの1作目 2020.12.10読了
https://booklog.jp/users/kw19/archives/1/4167670011#comment詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
今回の敵、鬼右衛門はなかなかの知恵もの。安売り市場から始まる企み。深川の小商人たちを深川住民の固い結束!で守るやりようは、コロナの今とても感じるものがあります
もう一つ、仲居すずよの言葉
自分も身に染みました。望めばとことんが増える現代。自分の悩みも増やしてる?でしょう。これが言いたいがための物語だったかぁ
牛天神のねがい石、行かなくては -
損料屋喜八郎始末控え・4
深川っ子の心意気が気持ち良い、このシリーズ。前作からけっこう間が空きましたね。
ある日、深川の広大な空き地に、謎の巨大安売り市場が造られるのですが、地元の商店を潰そうという狙いに気づいた喜八郎達が黒幕に対抗すべく動き出します・・。
相変わらず、喜八郎はじめ、損料屋のメンバーがカッコイイです。そして江戸屋の女将・秀弥さんも素敵です。
地元を守ろうという住民の一体感も清々しく、今回も心地よく読み終えました。 -
シリーズで間が空くと設定、人物が分からなくなる(^^;
しっかりした時代物は好きで、山本一力の作品は人物がシンプルなのも読み易い。設定が複雑で込み入っているのもあるが、このシリーズは嫌味がない。質屋の一人息子問題から、深川を敵とする悪役登場になるが・・ラストが物足りない。展開じゃなく、もう少しページというか、エピソードを加えた方が良かったのじゃないかと・・人情物だと、余韻が欲しいものなぁ~ -
時代小説に、深川 富岡八幡宮が、毎度登場してくる。
ついこの間東京へ行って来て、深川を歩いてみた。
木場の辺りも、食事処に入ったら、富岡八幡宮の神輿のポスターが、貼られていた。
事件があった富岡八幡宮であるが、どうして、そんなに財力があるのか?不思議だったが、この本を読んで、深川住人の心意気が、覗われた。
又、山本一力氏の描く、損料屋喜八郎もカッコイイ!
棄捐令で、不況の嵐の中、店仕舞いをしなくてはいけないのを見越して、次から次へとを土地を買い漁る黒幕の檜問屋 鬼右衛門。
6つの話に分けてあるのだが、、、
「仲町のおぼろ月」の所で、深川の質屋会所から御輿惣代、年配者から、住人一人ずつに指令が伝達されて行き、お金に目をくれる者が、一人も出ずに、皆の意志が、一つになって行く様が、心に響く。
富岡八幡宮の祭礼で、培った伝達手段というもの凄さと、信心深さ、賛助金400両というお金を惜しむことなく、いざという時に使う心意気。
「にごり酒」では、どのように、鬼右衛門が、反発してくるか・・・ドキドキしながら、一気読んでしまった。
本の題名と同じ、最後の「牛天神」では、江戸屋の秀弥の話で、棄捐令が発令されても、誰一人リストラされずに、店を守って来た正念さ、そして、その恩を大事に覆う中居頭のすずよの話。
鬼右衛門も父親が、簀巻きにされて殺されていなかったら、、、、あくどい商いをしなかっただろう。
すずよの話で、意趣返しも取りやめて、昔の福太郎に返って来た鬼右衛門も、最後にほっとする終わり方であった。
誰もが、悪人にならずにすんで良かった。
深川の良さが、感じられる小説でもあった。 -
オール讀物2012年5月号〜2017年8月号掲載のものを2018年1月文藝春秋から刊行。シリーズ4作目。思いもよらない展開で、一本取られたとも言えます。しかし、ぐだぐだなストーリーのように見えるので、あまりやって欲しくない展開です。
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損料屋喜八郎シリーズの最新作でしたが、今回の作品も良かったですね!
深川の団結力の強さで難局を一丸となって乗り切る姿や鬼右衛門と喜八郎の対峙が良かったです!また喜八郎と江戸屋の秀弥との仲睦まじさもさることながら、対峙していた鬼右衛門が江戸屋の仲居頭であるすずよとのやり取りで改心して故郷である深川に想いを寄せる姿が最高でした!
知恵を絞って難局を乗り越える喜八郎チームの面々の活躍をまた続編で見てみたいと思います! -
初出 2015〜17年「オール讀物」
棄捐令後の不況を高利貸の検校と組んで阿漕な商売をしてきた檜問屋妻籠屋の鬼右衛門が、他の土地でもやった利益度外視の安売市場を作って深川の地元商店を潰しにかかって来た。
この危機を察知した喜八郎は深川の人々に呼びかけ、結束して安売市場をボイコットすることで跳ね除けたため、鬼右衛門は意趣返しとして江戸屋に害を成そうと企む。
ここまでの展開は非常にスリリングで一力節も滑らかなのだが、いつもなら相手にギャフンと言わせる喜八郎の活躍はなく、江戸屋の女中頭の行いによって鬼右衛門が改心して終わるという、まことに尻すぼみで終わってしまい、一力ファンは物足りなさを覚えてしまう。