- Amazon.co.jp ・本 (206ページ)
- / ISBN・EAN: 9784163905938
作品紹介・あらすじ
サンフランシスコで暮らす移民三世のレイは、旅の途中にかつて日系人収容所であった博物館を訪れる。日本と世界のリアルがここに!「カブールの園」は、友人とITベンチャー企業を立ち上げた日系アメリカ人女性の物語。ヨセミテ国立公園にひとりで訪れるはずが、青いフォードを運転するうちに、かつて祖父母が収容されていた日系人強制収容キャンプの跡地に向かって……。「日系女性三代の確執の物語、あるいは、マイノリティとしての私たちのこと」と宮内さんも語るように、日本人とアメリカのセンシティヴな状況をクールな文体で描きます。「半地下」は、宮内さんが22歳の頃の処女作に手を入れたもので、ニューヨークの少年少女たちを描いています。「打算なしに、ただ裸で皆様の目の前に立つような作品」と宮内さんは言いますが、80年代という過ぎ去った時間への愛惜がこめられています。その瑞々しさには胸を打たれるのではないでしょうか。2017年、三島由紀夫賞受賞作。
感想・レビュー・書評
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”ヨハネスブルグの天使たち” では ディストピアを描きながらもコスモポリタンな世界観を映していた宮内氏。
マルチカルチャルな土台を持つからこその作品だったと思う。
本作は、もっとストレートに1人の人間が日本と米国を内在させることの違和感を書き出している。
表題作は 日系三世の女性が、子供の頃に受けた心的外傷の治療を受けながら ITベンチャーで頑張っているのだけれども、あるとき、上司にオーバーワークを指摘されて強制的に休暇を取らされる。
その休暇の間に、戦時中の日系人収容所を訪れて、当時の人たちの選択や精神活動を知り、自分の心の傷の根っこや母親との関係を乗り越えていく。
主人公が数学が得意なアジア人で、クラスメイトからひどいいじめに遭ってたわけだが、これは宮内氏自身の経験が元なんだろうと想像してしまう。。中学くらいで数学のできる日本人がいじめられる、あまりにも典型的なパターンなので。。
それだけに、そのことを知る身としてはささるものがある。
簡単にバイリンガル・バイカルチャーと言うが、どちらかが軸である、と寄りきれない場合の難しさよ .....
半地下、はもっと過酷な設定。
不法移民の幼い姉弟が NY の低所得者層が住む地域で生きて行く。
NY に自分たちを連れてきた父はいない。
これも、父親が少しも家庭に関与しない日本人的な設定か?
幼くて右も左もわからないのに、ぽんっと言葉もわからない学校(社会)に放り込まれる心ボソさ ...
どちらも言葉数も少なめで、情景描写なども薄い。
もっと書き込んでくれたらと思うのだが、空気感だけはピンと伝わってくる。 -
中編2編
「半地下」が良かった.壮絶でありながら当たり前の学校生活の中に溶け込み,あちこちが痛いと言う感覚に包まれながら読み終わった.子供時代のヒリヒリするような友情(?)が印象的だ.父親は逃げたのか死んだのかがわからないのが気になる.そして,姉の献身ともいえる生き方が悲しかった. -
旅先のホーチミンシティで読んだ。
自分のいる場所と本の場所、グルグル回って、
深く読めた気がした。
自分の国籍とアイデンティティと、人生の、ちょっと切ない話。
残るのは希望。