浮遊霊ブラジル

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (180ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163905426

作品紹介・あらすじ

初の海外旅行を前に死んでしまった私。幽霊となって念願の地を目指すが、なぜかブラジルに到着し……。川端賞受賞作「給水塔と亀」を含む、会心の短篇集!【収録作】「給水塔と亀」…定年を迎え製麺所と海のある故郷に帰った男。静謐で新しい人生が始まる。〈2013年川端康成文学賞受賞作〉「うどん屋のジェンダー、またはコルネさん」…静けさのないうどん屋での、とある光景。「アイトール・ベラスコの新しい妻」…ウルグアイ人サッカー選手の再婚の思わぬ波紋。「地獄」…「物語消費しすぎ地獄」に落ちた女性小説家を待つ、世にも恐ろしい試練とは。「運命」…どんなに落ち込んでいても外国でも、必ず道を尋ねられてしまうのはなぜ?「個性」…もの静かな友人が突然、ドクロ侍のパーカーやトラ柄で夏期講習に現われて…「浮遊霊ブラジル」…海外旅行を前に急逝した私。幽霊となって念願の地をめざすが。

感想・レビュー・書評

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  • 津村さん2冊目。お仕事小説とは違うタイプの短編集。これも楽しかった。『給水塔と亀』私と全く違う人生を追体験させてもらう。『地獄』笑った笑った‼︎『浮遊霊ブラジル』も似たテイスト。『アイトール〜』スクールカーストの苦味。

    • たださん
      111108さん

      こんばんは。いつも、いいね、ありがとうございます。

      「地獄」は私も完全にツボでした。オフビートな雰囲気で笑い転げるって...
      111108さん

      こんばんは。いつも、いいね、ありがとうございます。

      「地獄」は私も完全にツボでした。オフビートな雰囲気で笑い転げるって、案外、難しそうですけど、そこは津村さんのすごさだと思っております。

      「浮遊霊ブラジル」は、私がこうなって欲しいと思っていたオチに、本当になったので、それが可笑しくて印象に残ってますね。
      2021/08/07
    • 111108さん
      たださん こんばんは

      こちらこそいつも いいねありがとうございます。

      本当に津村さんさすがですよね!本読んで声出して笑うのは久々でした。...
      たださん こんばんは

      こちらこそいつも いいねありがとうございます。

      本当に津村さんさすがですよね!本読んで声出して笑うのは久々でした。『ブラジル』の憑依するための決めセリフも面白すぎる!

      私はちょっと現実逃避したくて読書してる感があるので、日本の今を直視するような本は苦手なのですが、津村さんみたいな立ち位置はいいなぁとしみじみ思ってます‥
      2021/08/07
  • 短編集。
    読んでいて一番面白かったのは「地獄」。
    映像も書物もとにかく沢山の物語を見て読んで書いた主人公は「物語消費しすぎ地獄」へ落とされ、試練の日々を送っている。その試練というのが肉体労働とかじゃなくて、物語を消費しすぎたことを悔い改めるような変わった内容で、発想がすごいなあと思うと同時にご褒美にもなりそうじゃないかとも思う。
    それに一緒に地獄へ落ちた友人との交流もあって、なんだか楽しそうだ。
    地獄の鬼も人間くさいというか俗だ。色々大変ですなと同情してしまったり、いやこれ地獄の話だよねと思わず確認したくなったり、ゆるっと面白かった。

  • まったりのほほんとしていて、滑稽で、時にしみじみと味わい深くて…津村さんらしさが存分に味わえる短編集だ。大満足でした。
    ずっと読みたかった川端康成文学賞受賞の「給水塔と亀」。淡々とした文章から滲み出る慎ましい幸福感が、静かに心を満たす。この「純文学」な空気がたまらなく好きだ~と思った。
    「うどん屋のジェンダー、またはコルネさん」、喜怒哀楽が絶妙なバランスで詰まっている。お見事。
    「アイトール・ベラスコの新しい妻」、サッカー選手の再婚話かと思いきや…あんな話だとは全く想像できなかった…スクールカーストのエピソードがちょっと怖かった。「この世界こそはクラスだと綾は思う。(中略)ママ友の集まりはもちろんクラス、PTAだってクラスだ。クラスでないものなど世の中にはない、と断言していいぐらい。」とは、全くもってその通りと、軽い絶望を感じながら同意する。女性ならよくわかるだろう…このカーストから逃れられないんだよなぁ結局。色々な意味で印象に残る短編だった。
    「地獄」「運命」「個性」、シュールでコミカルな展開に人生の悲哀を感じさせるところがさすが。特に「運命」で描かれるトホホ感には大いに共感します。
    「浮遊霊ブラジル」、浮遊する霊だからロードノベルとは言わないだろうけど、憑りつく相手を替えながら、生前叶えられなかった旅行先・アラン諸島への上陸を目指す…という展開が斬新。私は津村文学の、いい意味でのみみっちさが大好きだ。褒め言葉ではないだろうけど、最終話ではそのよさが十二分に表現されているなと思った。ふわっとした空気感が心地よく、読了後はいつもほのかに幸せを感じる。

  • ’21年9月14日、読了。津村記久子さん、4作目。

    素晴らしかったです!以前の3作も全て、ですが。

    中でも好きなのは、「給水塔と亀」、「うどん屋のジェンダー、またはコルネさん」、表題作「浮遊霊ブラジル」あたりかな…。

    「給水塔と亀」…川端賞受賞作。いかにも川端賞らしい小説、と感じました。淡々と綴られる日常の中に、確かな輝きがある、みたいな。
    川端賞には思い入れがあって…三浦哲郎さんの「じねんじょ」を読んで打たれて、もう20年以上前かな?当時の歴代の受賞作の初版本を、神田神保町をめぐって、集めてました。全部ではないけれど、今でも本棚に収まってます。読了済みの受賞作は、殆ど好きで…僕の大切な読書経験になってます。本作も、その一つに加わりました。素晴らしい!

    「うどん屋の〜」…収録作の中では、なぜか(?)一番好きかも。僕には、本作中で、「一番津村さんらしい」と、思えました。

    「浮遊霊ブラジル」…何故か、カーヴァーの「大聖堂」を思い出しました。奇跡のような物語が綴られていますね!

    図書館で借りて読みましたが…これも、初版本を、コレクションに加えて、繰り返し、味わいたくなりました。津村記久子さん、次は何を…。

  • 『地獄』を読んでいて笑いそうになった。妻のために出世コースを諦めて新設の地獄に異動してきた鬼って!!
    短編集とはいえ、ぎゅぎゅっと詰まった津村ワールドを堪能した。

  • 大好きな津村さんの短編集の新刊だけど、死んで幽霊になって、っていう話が入っているときいて、うーんあんまり読みたくないかも、と思っていたのだけど、読んでみたら最高におもしろかった。津村さんやっぱり大好きだ。
    確かに、なぜだかこの短編集は、死後の世界とかの話がたくさん出てくるんだけれども、全然暗くないどころかむしろす本気で笑える話で。わたしも落ちるとしたら「地獄」の主人公と同じ、「物語消費しすぎ地獄」だろう、と強く思った。「飽食」ならぬ、「飽・物語」の罪で、ドラマや映画、小説、あとスポーツなど、架空の世界やドラマティックな世界にのめり込んだ罪。自分はまったく平穏地味な生活をしておいて、人のドラマを消費しすぎっていう。まさにそのとおり。
    あと、「給水塔の亀」では、「人間が家族や子供を必要とするのは、義務がなければあまりに人生を長く平たく感じるからだ」っていうのにこのうえなく深く深く深く深く深く共感。
    でも、そういう、自分はなにもしないでおいて人のドラマを消費する、地味な人生を送る、ことを、ダメと言われている気はしない。むしろ、それが人生、といわれているような気もして、なんだか安心するような。

    津村さんは発想がすごいな、と。どこかで読んだような話は全然なくて、どれもこれも斬新というか。それでいて妙にリアルで。わたしは、基本、ファンタジーめいた話とか奇想といわれるような小説が苦手なんだけれども、津村さんだと嫌じゃない、こんなこともありえそうだな、と思う。
    すごく笑えるんだけれども、ふざけているようでまじめというか、人の好さそうな笑いというか、この笑いのここちよさは津村さんの持ち味なんだろうな。人を貶めるところがないというか。

    • たまもひさん
      こんにちは。これおもしろそうですね。
      「物語消費しすぎ地獄」!! 私も間違いなくここだなあ。でもお仲間が多くてちょっと楽しいかも。
      こんにちは。これおもしろそうですね。
      「物語消費しすぎ地獄」!! 私も間違いなくここだなあ。でもお仲間が多くてちょっと楽しいかも。
      2016/10/24
    • niwatokoさん
      すごくおもしろかったです!
      この「地獄」は本当に笑えました。楽しいです。
      わたしがほかを知らないだけかもしれませんが、発想が斬新というか...
      すごくおもしろかったです!
      この「地獄」は本当に笑えました。楽しいです。
      わたしがほかを知らないだけかもしれませんが、発想が斬新というか、こんなタイプの話ってあんまり読んだことなくて感心しました。妄想だけど、そのなかに、会社生活とか、ものすごくリアルな細かい現実が描かれていて。自分の人生について考えさせられるような。
      2016/10/24
  • 初めて読む津村記久子作品。
    7つの短編が収められています。

    「地獄」の面白さにやられました。
    地味にストレスがたまりそうなぬるい地獄。
    主人公もご友人も、刑罰にやや苦しみつつも、生きてたときとそう変わらずに地獄の生活を送っているのがなんともシュール。
    鬼の不倫関係に一枚かんでみたりしているし。

    「給水塔と亀」の淡々とした感じ。
    「アイトール·ベラスコの新しい妻」に描かれた三者三様の人生に女性の怖さをにじませる感じ。
    「運命」の当人の半ば諦めも含んだやるせなさを、他人だからこそ味わえるユーモアにしてしまう感じ。
    どの作品もとても好みだったので、ほかの津村作品も読んでみたくなりました。

    最初は「何の絵だろう?」と不思議に思いながら眺めていた表紙が、読後にじわじわ効いてくるのも面白かったです。
    それぞれの短編のエッセンスが詰めこまれた、遊び心の感じられる絵にふくふくと楽しい気分になりました。

  • 妙なタイトルに惹かれました。本当であれば避けそうなんですが、体調が悪かったのか良かったのか脳内に「読め」という言葉が響いたような気がしました。
    シュールで小市民的、それでいて異次元の的な話ばかりです。でも妙に貧乏臭くていい感じ。
    中島京子と川上弘美が酔っ払って共作したような、なんとも味わい深い短編集になっております。
    特に好きだったのは、親友同士で事故死してしまって、一緒に地獄に送られる話です。地獄の鬼もサラリーマンで悲喜こもごもあり、微妙に辛い地獄の責め苦も、妙にしょぼくて笑える。死ぬ前に読んだら失笑しながらあの世に行けそうなバカバカしさが好きです。

  • 初めて津村さんの著作を読みましたが、かなり好きな短編集でした。
    シュールだけど地に足がついている感じがするところが、とても不思議です。ディテールに生活感があるからでしょうか。
    7編とも甲乙つけがたいのですが、「地獄」が可笑しくて堪らなかったなあ。あと表題作もユニークで好きです。

  • やっぱりこの人天才だ。
    細かいネタが好きすぎる。
    全話好きだけど、とくに『うどん屋のジェンダー、またはコルネさん』『地獄』『個性』『浮遊霊ブラジル』が大好き(絞ったつもりが絞りきれなかった)

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著者プロフィール

1978年大阪市生まれ。2005年「マンイーター」(のちに『君は永遠にそいつらより若い』に改題)で第21回太宰治賞。2009年「ポトスライムの舟」で第140回芥川賞、2016年『この世にたやすい仕事はない』で芸術選奨新人賞、2019年『ディス・イズ・ザ・デイ』でサッカー本大賞など。他著作に『ミュージック・ブレス・ユー!!』『ワーカーズ・ダイジェスト』『サキの忘れ物』『つまらない住宅地のすべての家』『現代生活独習ノート』『やりなおし世界文学』『水車小屋のネネ』などがある。

「2023年 『うどん陣営の受難』 で使われていた紹介文から引用しています。」

津村記久子の作品

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