強父論

著者 :
  • 文藝春秋
3.58
  • (17)
  • (44)
  • (42)
  • (8)
  • (2)
本棚登録 : 342
感想 : 45
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (268ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163904917

作品紹介・あらすじ

阿川弘之氏が94歳で大往生されてから、今年八月で一年。娘佐和子が、強父語録とともに、父との62年間を振り返ります。たとえば――。「なんという贅沢な子だ。ふざけるな!」……4歳のサワコ嬢は、「このイチゴ、生クリームで食べたい」と口にしただけで、このようにと怒鳴られます。以来、罵倒され通しの日々が続くことになるのでした。「勉強なんかするな。学校へ行くな」……弘之氏は、特に娘は、勉強なんかしなくてもいいから、家でうまい食事を作れ、という主義でした。大学のテスト期間中も、サワコ嬢はお酌の相手をさせられたのでした。「子供に人権はないと思え。文句があるなら出ていけ。のたれ死のうが女郎屋に行こうが、俺の知ったこっちゃない」……娘のちょっとした口応えに対して、弘之氏は烈火のごとく怒り、このように言い放ちます。これは弘之氏の口癖でした。「老人ホームに入れたら、自殺してやる!」……元気な頃の父は、こうくり返していました。足腰が弱ってからは渋々、老人病院に入院しましたが、そこでも「すきやきが食べたい」「ワインが飲みたい」とわがまま放題なのは変わりませんでした。 いまや絶滅寸前の、怖くて強い父親ぶりが存分に描かれます。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 朋奈ちゃんに読ませたいと思った。
    俺より共感出来る事がたくさんあるだろう。笑
    あと僕はこういうおじさんをやはり嫌いになれない。

  • 阿川さん、軽快でユーモアのある文章が読みやすく、やっぱり上手です。最近女優デビューもしてるけど演技もうまくって。。多才ですね。
    なによりこの、横暴で気難しい父親とのエピソードを読み手に不快な気分を与えずに最後まで読ませたのは、文章力+愛情のお蔭でしょう。

    とはいえ、それを差し引いてもこの父親の理不尽さには唖然としましたけどね。
    具体例は省きますが普通なら絶縁してもおかしくないと思う。よくもまあ屈折せずに生きてきましたね、と声を掛けてあげたいくらいです。
    そればかりか父親の晩年は甲斐甲斐しく入院のお世話までしているのだから、何十年も積み重なったあれだけの出来事をうまく昇華している阿川さんの懐の広さ、肉親に対しての無条件の愛の深さには恐れ入りました。

    ただ、内容には一切口を挟まず、日本語の表現の指導のみを自ら行う作家としてのプロ根性には感銘を受けたし、父親なりの愛情を感じました。

    親子の関係は色々ですからね。そういう関係もあるのかもしれません。。
    でも、私の父親は普通に優しい常識人でよかったです。大事にしなきゃ☆

  • まず「キョウフ論」って…阿川さんがつけたのじゃないだろうなと。それとも「恐父論」じゃあんまりだと思ったか…(笑)

    論とついていますけどもまぁ、エッセイですよね。
    阿川さん流の供養の一つとも言えるような気も。

    こんなお父さんだったら大変だろうなぁ、自分なら耐えられないなぁと思いつつも行間から父娘のやり取りの何とも言えない愛情が伝わってきます。
    お父さんは昔の男だしちょっと男尊女卑も入っていて、愛情がないわけじゃなくてその表現というのができない人だったのじゃないかなと感じましたね。
    本来の親子の愛情表現なんて、ドラマで見るようないかにもなものじゃなくてもっとさらっとした日常的なものなのじゃないかなと思うのです。その意味でも阿川さんの文章には阿川父娘なりの愛情がちゃんと現われていると感じるのです。

    娘が文章を書きだした時、父がそのことには一切反対をせずにその文章を推敲し続けた、というところに私はグッときましたね。
    作家として、たとえ娘であってもおかしな文章を出されてはたまらないという気持ちもこのお父さんならあったかもしれませんが、自分と同じような文筆の道を歩みだしたことがきっとまずは嬉しかったのだろうなと思うのです。
    だから少しでもいいものを、自分も納得のできるものを娘が文章を出すならそういうものを世に出してやりたいという親心があったのではと思います。

    思い返したとき、良くしてもらったことや褒められたことよりも、叱られたり嫌な思いをした時の方をより多く鮮明に思い出してしまう。けれどもそれがたまらなく懐かしいというのがいいだけ大人になってから親を亡くした子供の気持ち、という気もします。

  • 似てます。。。舅に。。。

  • このお父さん、うちの祖父と似た面があったようで発売後すぐ母が買って来て文字通り泣いたり笑ったりしながら読んでいました。

    そしてせっかくだから私もと読んで見たのですがこれ大変。

    本当に泣けて笑えて泣ける。
    外に持ってって読んじゃダメなやつです。

    私には特に横暴な姿を見せなかった祖父だけどなんだか全てが祖父の顔で想像できました。

    ちょうどこれを読んだ日に観た映画ではないけれど、亡くなってから初めてその人を想うこともあるのだと最近感じます。

  • 「阿川弘之と言うより、阿川佐和子の父と言う方が通りが良い」と阿川弘之が言っていたのを
    何かで読んだことがある。
    娘思いの良い父だと勝手に思い込んでいたのだが、
    そうでもなさそうだ。
    書名の強父論は恐怖論、恐父論に通じるのだろう。

    でも表紙の写真も裏表紙の写真も父娘とも良い顔、良い表情をしている。
    少なくとも、DV親父ではないだろう。

  • 阿川佐和子が父阿川弘之との思い出を綴ったエッセイ。
    平成生まれの私からすると信じられないほどの阿川弘之横暴ぶり。よくもまあ阿川佐和子はグレなかったこと。
    そんな弘之の暴君ぶりに、いかに困らされたかという数々のエピソードが綴られているわけだが、不思議と愚痴っぽさや悲壮感を感じない。普通の人が書いたら愚痴っぽくなりそうなところを軽妙洒脱にまとめあげてしまうあたり、阿川佐和子さすがだなぁと思う。

  • 阿川佐和子さんが描く、父、阿川弘之さんとの日々。今ではなかなかお目に係れない亭主関白で癇癪持ち。さらには男尊女卑な弘之さんのインパクトがスゴイ。佐和子さんも幼いころから、叱られ、怒鳴られて過ごしてきたらしい。でも、作品中、ところどころに覗く、お父様への愛情。お父様からの愛情。特に、文章を佐和子さんに教える時のやさしさが印象的でした。本書では弘之さんと佐和子さんの何枚かの写真が紹介されていますが、どれも幸せそうな雰囲気を醸し出しているように思います。たしかに頑固おやじさんで大変だったのだろうけど、固い絆で結ばれた家族だったのだろうな。そういえば、我が亡き父も同じような気性の持ち主だったっけ。

  • 強烈なお父さんかもしれないけれど、寂しくなりますよね。

  • 相変わらず凄いお父上様!?

全45件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

作家

「2023年 『ベスト・エッセイ2023』 で使われていた紹介文から引用しています。」

阿川佐和子の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×