アレルギー医療革命 花粉症も食物アレルギーも治せる時代に!

  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (219ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163904306

作品紹介・あらすじ

大反響の「NHKスペシャル」を書籍化!これまでアレルギーの”常識”とされてきた数々の情報。「一度発症した花粉症は治らない」「アレルギーになりたくないなら、アレルゲンをとにかく排除する」「アレルギー予防のために、離乳食はゆっくり進める」「卵などのアレルギー食品は赤ちゃんに食べさせないのがベター」「妊娠中、授乳中の母親の食事が子どもをアレルギーにする」……。これらはすべて、間違いでした!20世紀後半から、先進国で爆発的に増加したアレルギー。日本では国民の4人に1人が花粉症を、赤ちゃんの10人に1人が食物アレルギーを発症しています。アレルギーパンデミックとも言われるこの状況を打開する手はないのだろうか?最新研究に迫ろうと始動した取材班が直面したのは、医療の常識が根底から覆ろうとしている衝撃の事実でした。カギを握る存在として注目されるのが、日本人研究者が発見した新たな免疫細胞「Tレグ」です。この細胞の働きが分かったことで、アレルギー発症メカニズムの解明が進み、完治を目指す根治療法の研究が世界中で始まっています。世界中の最新研究を丹念に取材し、アレルギーの予防と完治に向けた実践的な情報が詰まった一冊です。【目次】第1章 アレルギー患者のいないコミュニティーを追って 家畜との生活に秘密を発見第2章 免疫の常識を大きく変えた「Tレグ」 日本人研究者が発見! 唯一の制御細胞第3章 アレルギー予防の“常識”は間違いだらけだった! 根拠のない指針が患者を激増させたという真実第4章 アレルギーの本当の原因に迫れ 「いつ」「どこから」入り込むかが分かれ道第5章 アレルギーを完治させる! 驚きの最新治療法 体内の“天秤”をコントロールせよ!

感想・レビュー・書評

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  • この春、私は花粉症になった。もう一生ならないものだと思っていたから、かなりショックだった。周りの反応はふた通り、「ようこそ花粉症の世界へ」と「まぁ大変ね」である。2016年刊行のこの本では、日本国民の4人に1人は発症しているらしい(友人情報だと2人に1人だとも言う)。4人に1人以上は仲間意識で一言を言っていたので、実態に合っている。みんなが信じていたのは、「体内に取り込まれた花粉があるレベルを超えると発症する」と言う説だ。しかし、NHKは、それは「間違いだった」と断定する。しかも、治らないと言われた花粉症の治療薬が来年あたりから出回るとの情報も。驚きである。

    免疫細胞の役割は、戦争の攻撃そのものだ。偵察隊のマクロファージが情報をもたらし、司令官のT細胞が敵(栄養等の有益なものではない)と判断を下し、現場に出向き命令のサイトカインを出す。実働部隊が武器の活性酸素を放出し、B細胞の抗体で防衛する。しかし、司令官の判断は時々間違いを犯す。だから膵臓のβ細胞を攻撃して1型糖尿病になったりする。でも、簡単に間違うようでは人間は直ぐに病気で亡くなるだろう。そこで間違いを正す司令官が存在するはずだと研究して、見つけたのがTレグ細胞だ。これを応用すればガン特効薬にもなる。この本ではノーベル賞を受賞した本庶佑さんは登場しないが、あゝこの流れだったのだ、と腹落ちた。

    さて問題は、いかに花粉症を防ぐTレグ細胞を増やすかだ。そこで再び注目されたのが「衛生仮説=都市化して衛生的になったからアレルギー発症が増えた」説だ。私の幼少期は、家でニワトリを飼うような片田舎で育った。衛生的でなかったから今まで発症しなかった、といえば確かにそうかもしれないとも思う。実際、都会から養豚業に鞍替えした重症の花粉症患者は、多くの場合根治したらしい。しかし、大人の根治には大きな環境変化と時間が必要だ。

    では希望はないのか?有る。舌下治療法と花粉症を治療するお米。2015年現在、農水省が2020年の早期実用化を目指していると言う。他にも3回の注射投与だけで劇的に治るとか、日々治療は進歩している。遅れてきた私は、その恩恵を易々と受けれそうだ。これも幼少時の非衛生的な環境のおかげである。

  • アレルギー医療に関する最新状況のまとめ。

    アレルギー医療の3つの新常識。
    アレルギーの発症が少ない人は、家畜との接触や生乳の摂取が多い人であり、制御性T細胞「Tレグ」という免疫細胞が増えていることによる。
    幼少期にアレルギー食品を摂取することも有効。
    皮膚からアレルゲンが入ると、アレルギーを発症する。

    最近の子どもにアレルギーが多いのは、乳児期に摂取する食物が変わってきていることが原因との予想がある。
    治療法も開発されてきており、花粉を攻撃しないTレグ細胞を増やすこと、細菌のDNAを注射すること、治療米を食べること、などがある。

    2015年4月のNHKスペシャルでの放映内容を基礎としているため、現在はさらに研究が進んでいると良いですね。

  • 2016年刊行だが、今でも参考になる内容。2015/04にNHKスペシャル『新アレルギー治療』の取材内容が基礎となっている。

  • 人間がまだその食べ物や毛、将来のアレルゲンに触れていないくらい幼い頃、皮膚のバリアが壊れている状態でアレルゲンを塗ると、皮膚表面で警戒状態で待ち構えている免疫細胞がアレルゲンを掴み、T細胞に伝える。するとT細胞が攻撃をはじめ「この物質は敵だ」と体が記憶する。身体症状としては、次に同じ物質が身体に入った場合(今度は腸からでも)アナフィラキシーショックが起こりやすくなる。

    本書のピーナッツアレルギーを持つ家族の下の子が赤子の時、ピーナッツを避けて育てるか、ピーナッツを食べさせて育てるかに分けて追った研究が興味深い。結果は食べさせて育てたほうが、ピーナッツアレルギーの発症が極めて少ない。これは腸から吸収した物質に対して、T細胞が反応するが、同時にT細胞を抑えるためのTレグ細胞が増殖し、一定数を保っていることにより、アレルギー反応が起こらないのではないかという仮説だった。

  • 20世紀後半から先進国では爆発的にアレルギー患者数が増大した。世界ではアレルギーの完治を目指す根治療法の研究が進められており、世界の最新研究を綿密に取材し、アレルギーの予防と完治の実践的な情報が読みやすくわかりやすくまとめている一冊となっている。

  • アレルギーは予防できるし、治すこともできる。アレルギーになるのは、アレルゲンが腸から入るか、皮膚から入るかで決まる。なるべく早く、いろいろな物を食べさせた方がいい。先に異物を腸から吸収できれば、攻撃を止めるTレグが作られ、体は異物を受け入れる。皮膚から先に入ると、免疫は攻撃対象として記憶してしまう。
    妊娠中にもいろいろな物を食べた方がいい。
    花粉症は花粉を腸から取り入れることで、改善できる。細菌などをアレルゲンと混ぜて注射することによって、アレルギーを治すこともできそうだ。
    アーミッシュは子どもの頃から家畜たちと濃密な接触があるので、細菌などを取り込んでアレルギーに強い。アーミッシュの生活は自給自足で、お金は欲の象徴として使用しない。

  • 備忘録としてネタバレ記録です。

    1/乳児期なるべく早期にアレルゲン食品を食べることで、食物アレルギー予防になる。

    2/アレルゲン食品を食べるより前に、肌荒れ部分など皮膚からアレルゲン物質やそれが含まれるクリームなどを塗っていると、食物アレルギーの原因になる。
    食べるのと、皮膚とどちらが先かで結果が大きく変わる。

    3/妊娠中にアレルゲン物質を避けていると、子どもはアレルギーになりやすい。
    避けずに何でも食べたほうがいい。

    4/妊娠中に低栄養だと、胎児が記憶してしまい、産後、エネルギーを消費しない子どもになる。将来、肥満や生活習慣病
    などになりやすい。妊娠中のダイエットはよくない。

  •  Tレグ細胞(制御性T細胞)。

     ナイーブTレグ。

     経皮感作。

     アレルギー食品を避けずに食べる。

     花粉症免疫療法①舌下免疫療法②皮下注射免疫療法
     さまざまな工夫①花粉成分米②細菌DNAと一緒に注入③リンパ節直接注入

     アトピー性皮膚炎治療法は未開発。

  • アレルギーになる原因になる可能性のあるものはお腹にいる間からなど、早くから食べさせることがよいのでは!
    アレルゲンを食べることや、注射することでアレルギーを治療できる可能性があるということなど、大きく進歩したアレルギーに関する情報が載っています。

  • 最新情報は得ておかないと。まだなってない子(生まれる前)の予防策と、実際にアレルギー発症している子の治療については、区別しておかないと大変なことになるが。(中でも強調しているんだけど、急いで読むと混同する恐れあり)

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著者プロフィール

長年「ひきこもり」をテーマに取材を続けてきたメンバーを中心とする、全国で広がる「ひきこもり死」の実態を調査・取材するプロジェクトチーム。2020年11月に放送されたNHKスペシャル「ある、ひきこもりの死 扉の向こうの家族」の制作およびドラマ「こもりびと」の取材を担当。中高年ひきこもりの実像を伝え、大きな反響を呼んだ。

「2021年 『NHKスペシャル ルポ 中高年ひきこもり 親亡き後の現実』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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