- Amazon.co.jp ・本 (144ページ)
- / ISBN・EAN: 9784163904122
作品紹介・あらすじ
秋のある日、大往生を遂げた男の通夜に親類たちが集った。子ども、孫、ひ孫たち30人あまり。一人ひとりが死に思いをめぐらせ、互いを思い、家族の記憶が広がってゆく。生の断片が重なり合って永遠の時間がたちがある奇跡の一夜。第154回芥川賞受賞作。
感想・レビュー・書評
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2024年新年一冊目、滝口さんの本が読みたくて選んだ。祖父の葬式に集う(一部集わない)大勢の親戚たち。頭の中の思考と現実の出来事、人から人へ、人から風景などへ自然に移ろっていく感じがとても好き。大きな出来事が起こっているわけではないのだけれど、読んでいて自分の中に染み込んでいく感じ。
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家族、親戚について考えさせられる。
それぞれの生き様が折り重なり、記憶という曖昧なものを回想しながら、現実の長い一夜を過ごしていく。
人が抱えているものは、他の人からは表面上しか見えず、いかにイメージや少ない情報で、決めつけてしまっている可能性が高いのか。
それは赤の他人だけではなく、家族ですらそうなのだと気付く。
様々な想いを汲んで、話したり、聴いたりしようと決心する。 -
登場人物が多くて頭がこんがらがるので、手製の人物相関図を作ってから読み直すというマメな行動に出てしまった。読後、Googleしてみたら相関図出てきた...。自分で作る必要無かった...。というか、やっぱり頭こんがらがる!って思う人少なくないんだなと思いました。
大往生したおじいちゃんのお通夜で集まった子供達やその配偶者、孫たちやその配偶者、そしてひ孫、彼らのこの夜の行動が飄々と描かれています。結局何が言いたいのか?と問われると何とも答えが出ない小説だけど、本当にどこの親族にもいそうな面々が揃っていて不思議な親近感が湧いてくる。 -
祖父が亡くなり通夜が開かれる。集まったのは総勢20人ほどの親族・関係者。ひと晩で語られる家族模様。
はじめは誰が誰だかわからなかったが、読み進めるうちに理解できた。孫(10人)とひ孫(3人)の比率が高いので、自然と彼らに焦点が当たることが多い。視点が人物から神様、またその逆とスライドするがあまり違和感はない。面白いというよりはしんみりとした小説だった。(深いことを言おうとしてあまりピンとこないところもあったが。)終わり方が尻切れトンボな感じがしたので、続きがあれば読みたい。(おそらく無いんだけど) -
おもしろかった。芥川賞と聞くと難しそうと身構えてしまうのだが、とても読みやすかった。
親族と言われると、誰しもやっぱり自分の親族しか基本的にはわからない。でも、うちの親族にも隣の家に集まっている親族にもいそうな面々が揃っていて、不思議な親近感が湧いてくる。これが筆力というものか。 -
始めすごく読み辛かった。
何かを感じるにはこの小説短過ぎると思った。
こんな親戚多くする必要あったのか?
全てのことに深く考えていない人ばかりで退屈した感じ。
本来そういう人ばかりなんだろうけど、小説として読むには物足りなく感じました。 -
葬式の夜がしんしんと伝わる。
死んだ祖父は大きな樹のよう。
お葬式に身内が集まると、他人ではないが他者である兄弟や親への思いが、それぞれ、こんこんと湧き出る。
あいまいな記憶ほど優しい。
家族とは、「したこと」より、「そこにいた」という思い出ばかりだ。
ときに一文がとても長く、太宰の書きようを思わせ、それは収束することのない気持ちをあらわしているようだ。
いつか再読したい作品。 -
2016年第1回の芥川賞受賞作。
亡くなった老人の通夜に集まった子・孫・ひ孫たちと近所の人。普段疎遠な親戚が久し振りに、あるいは初めて顔を合わせ、誰が誰の子だとか、何歳で何をしているかといったことが話され、確認される。そんな葬儀や法事ならではの一夜に、故人の子孫たちのそれぞれの事情が語られる。中には、失踪したり、引きこもりになった者もいるが、そういう者についても作者は語り落とさずに丁寧に物語を拾っていく。
語り手の視点は次々と移っていき、中には、誰が語っているのかよく分からない話もあったりする。「死んでいない者」を文字どおり未だ生きている者と読めば、残された者の様々なベクトルを持った様々なエネルギーの物語ということになるのだろうか。生者には生者の暮らしがあり、生者の営みに沿って時間は過ぎていく。雑然とした中に、生きることの意味のようなものが感じられた。 -
視点がゆらりゆらり動くのに違和感なく読めてしまうな。親戚がごたまぜになったときのカオスと、だけど親戚だからつながりも感じられるとことか。それぞれの記憶が混じり合う。正規のルートから外れてしまった者もいて、だけどみんなどこかでちゃんと気にかけている。
誰が誰の子でどこが兄弟でどこが従兄弟なのか、わからなくなってしまうときもありつつなんだかそれでいいような気がしてきた。
人間同士の距離感がなんだか心地いい。子ども同士のやりとりも微笑ましかった。
鐘の音はなんだったんだろう。でもそれも大したことではないような気がする。
滝口悠生さんの小説好きだな。 -
視点の切り替わり、会話の表現、心情の表し方などなど、とても独特な文体で新鮮。身内の死に向き合うそれぞれ姿や思いが、この文体と相まって、一種の爽やかさも感じる。死が題材なのに何だか不思議。