赤い博物館

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (267ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163903347

作品紹介・あらすじ

『密室蒐集家』で第13回本格ミステリ大賞を射止めた著者がミステリ人生のすべてを賭けて贈る渾身作。キャリアながら《警視庁付属犯罪資料館》の館長に甘んじる謎多き美女と、一刻も早く汚名を返上し捜査一課に戻りたい巡査部長。図らずも「迷宮入り、絶対阻止」に向けて共闘することになった二人が挑む難事件とは――。予測不能の神業トリックが冴え渡る、著者初の本格警察小説!

感想・レビュー・書評

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  • 続編が出たのでその前に久しぶりの再読。

    <警視庁付属犯罪資料館>なる、事件発生から一定期間(例えば殺人事件の場合は十五年)過ぎると持ち込まれる証拠品や捜査資料を保管する部署に左遷された寺田聡元捜査一課刑事と『落ちこぼれキャリア』と揶揄される緋色冴子館長が迷宮入り事件を解き明かす短編集。

    寺田がワトソン役で緋色の手足となって聞き込みなどの動の部分を請け負い、緋色はその成果と捜査資料、証拠品などから事件の真相を見抜くホームズ役であり安楽椅子探偵。
    これまでのワトソン役は無能…というか、やる気のない人間ばかりだったらしいのだが、寺田という頼れる助手を得たから彼が来てからというもの次々と迷宮入り事件を解決している。

    ミステリーの類としては本格、パズル物になるのだろうか。
    捜査資料や証拠品を見直していくうちにちょっとした違和感や矛盾に気付いた緋色が寺田を使って事件の関係者に確認してもらい、その結果から真相を見抜くというパターン。

    事件の構図が違ったものになるという展開が続くのでややマンネリ感と強引さはあったものの、ミステリーそのものは楽しめた。

    シリーズとしては、緋色冴子がなぜ『落ちこぼれ』となり閑職と言われる犯罪資料館に八年も塩漬けになっているのか、コミュニケーション能力が低いことが関連しているのか、ちらっと出てきた父親との関係の拗れのようなものは何なのかという疑問に関しては全く触れられないままなので続編で少しでも明かされるのかが気になるところ。
    また寺田が犯罪資料館に左遷されることになった失態と緋色がある事件を解き明かしたことで拗れた元上司・今尾捜査一課係長との関係は気まずいままなのか、寺田は再び捜査畑に戻れるようになるのか。

    守衛の大塚老人や清掃員の中川おばちゃんも良い味出しているし、監察官で緋色と同期どいう兵藤も今後どう絡んで来るのかにも注目したい。

  • 初めての作家さん。今まで読んでなくて損した。
    「記憶の中の誘拐」を手に取り、前作があるということでこの本を読むことになった。TVドラマがあったそうだが、そちらもみていない。
    短編で、どれも「うーん」と唸らせる上出来の作品。おすすめできます。

  • アンソロジー集「神様の罠」にて、著者の短編を読んだことがきっかけで手にした1冊。
    そのアンソロジー集の短編は、読んでいるときからシリーズ物の短編ぽいなとおもっていたのだが、やはりこの「赤い博物館」シリーズのお話だった。

    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

    有能な刑事である寺田聡は、捜査中にある重大なミスを侵し、閑職である警視庁付属犯罪資料館に異動させられてしまう。
    その館長はキャリアである緋色冴子。
    しかし彼女はキャリアにも関わらず出世するわけでもなく、犯罪資料館の館長を8年も勤めているという。

    警視庁犯罪資料館とは、さまざまな事件の証拠品・捜査資料を一定期間が過ぎたあとに保管する場所だ。
    受け取った品をラベリングしデータ入力するのが寺田の仕事。
    しかしときおり緋色は、その資料から気になる事件を再捜査する。
    その助手として寺田は、緋色の指示で事件の重要人物と会ったり、聞き込みをしたりするのだった。

    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

    ライトにサクサク読める刑事ミステリー。
    クールビューティーである緋色は、館内から出てくる気配がなく、動くのはもっぱらワトソンポジションの寺田である。
    話運びもわりと淡々としていて、人物たちの心理を想像させるような描写はかなり少なく、セリフ劇のようであることも特徴かもしれない。
    そのため、濃厚な心理ドラマの刑事物語を期待しながら読んでしまうと、物足りなさが残るだろう。
    ただ2本めの「復讐日記」は、物語の進み方が“日記”から始まるため、意外性があった。
    事件の真相は思いもよらないものばかりで、「そうきたか…」といった感じだった。

    シリーズ2作目も出版されているよう。
    緋色がキャリアなのになぜ閑職にとどまっているのかも気になるし、2作目も読んでみようとおもう。

  • 以前何かのアンソロジーで読んで印象に残った『炎』を含む短編集。犯罪資料館の二人が迷宮入り事件を再捜査。トリックに唸り楽しんだ。続編期待!

  • 2016・本格ミステリベスト10、第6位作品。

    キャリアながら警視庁付属犯罪資料館(通称、赤い博物館)の館長に甘んじる謎多き美女(雪女)・緋色冴子と、一刻も早く汚名を返上し捜査一課に戻りたい巡査部長・寺田聡。ふたりは犯罪資料館に収められた迷宮入りの難事件を次々と解決していく。著者初の本格警察小説!

    これぞ推理小説と思える良質の連作短編集。
    ふたりで捜査資料を読んで調査をしてという感じなので派手な殺人もかっこいいアクションも奇抜なキャラもない。シンプルに読んで解く、ただそれだけ。それだけなのに面白い!
    解決編を読むとなるほど〜と思うことばかり。この作品は犯人より、隠された真実や動機が凄い。ひとつの作品の中で何度も驚かされた。

    好きな作品は「炎」と「死に至る問い」。

    • 杜のうさこさん
      けいたんさん、ここにもコメントしてごめんね!
      最近ずっとお話しできなかったから(#^^#)。
      この作家さん、初めましてだわ。
      本格警察...
      けいたんさん、ここにもコメントしてごめんね!
      最近ずっとお話しできなかったから(#^^#)。
      この作家さん、初めましてだわ。
      本格警察小説なんて~。
      警察モノ大好きだから、メモメモです!
      2016/02/20
    • あいさん
      杜のうさこさん、こちらにもありがとう(^-^)/
      全然謝る事ないのに〜嬉しいよ♪
      私の読むのが遅いので出現率低くてごめんね(〃∀〃)ゞ...
      杜のうさこさん、こちらにもありがとう(^-^)/
      全然謝る事ないのに〜嬉しいよ♪
      私の読むのが遅いので出現率低くてごめんね(〃∀〃)ゞ

      私も初めて知った作家さん。
      あらすじに本格警察小説って書いてあったから私も紹介文として書いたけど、実は私、警察小説あまり読まなくて…
      だから、本格警察小説じゃなかったらごめんなさい。
      警察小説の縄張り争いみたいなのが苦手なんだ。
      そこで張り合う時間があるなら早く事件を解決して〜と思っちゃうの(笑)
      この作品はほとんど二人だし誰かと張り合う事はなかったんだよね。
      1話で少しあったくらい。
      だから、私にはとても読みやすくて、面白かったです。
      それでもよかったら、いつか機会があれば読んでくださいませ。
      2016/02/22
  • この作者さんは大好きなのにとても寡作なので、新刊が出たことによってこの作品を読み逃していることに気づいた次第。
    大変面白く、安楽椅子探偵ものとしてシリーズ化を願いたいのですが、その後出ていないようですね。

    短編が5作、どれも中身が濃く、切れ味がすごいです。
    動機があっと言わせるものが多く、秀逸。うーん、もっと読みたい。

  • キャリアながら《警視庁付属犯罪資料館》の館長に甘んじる謎多き美女と、一刻も早く汚名を返上し捜査一課に戻りたい巡査部長。図らずも「迷宮入り、絶対阻止」に向けて共闘することになった二人が挑む難事件とは――。予測不能の神業トリックが冴え渡る、著者初の本格警察小説!

    推理に出てくる人物が多すぎて訳分からなくなった。
    出てくる人は何となく魅力的なんだけど・・・魅力が伝わる暇が無いって感じだった。

  • 連作短編集。
     東京三鷹にある、警視庁付属犯罪資料館。通称「赤い博物館」。館長は緋色冴子。キャリアだが、コミュニケーション力がないので、8年間ここにいる。白衣と白い肌が雪女のようだ。新しく配属されてきたのは寺田聡。警視庁捜査一課の刑事だったが、捜査資料を関係者宅に置き忘れるという失態で異動になった。二人は冴子が突然「再捜査する」事件について調べていく。

    ・「パンの身代金」・・・大手パン製造会社の社長殺人事件。商品に針を入れる事件が続き、脅迫状、身代金の運搬か係として社長が指名される。しかし、身代金は置いたまま、社長は別の場所で殺害された。
    《感想》1話目でいきなり捜査員が事件に関わっている事件ということでびっくり。短編だが話が入り組んでいて工夫されている印象。

    ・「復讐日記」・・・犯人の手記から始まる。元恋人が殺された。自室から転落したらしい。彼女は妊娠していて、新しい恋人が犯人だと思う。復讐をやりとげた。・・・という内容。復讐をやり遂げた男はその後車にはねられ死亡。しかし、冴子は再捜査の結果、元恋人が新しい彼氏を殺害したこと、元彼氏はそれを隠すため、新しい彼氏の部屋の温度を調節し、死亡時間の予想をずらしたことを指摘した。彼女は自殺したのだった。

    ・「死が共犯者を別つまで」・・・寺田、交通事故の現場に居合わせる。男が亡くなる間際、交換殺人を行った過去を告白する。被害者は誰か、共犯者はだれだったのか。
    《感想》交換殺人の上に、身分乗っ取り殺人まで重なっていて、短編なのに中身が詰まっている。事件の時系列などを丁寧に見直して事件を解決していく冴子は手際がいいな。

    ・「炎」・・・若い写真家の思い出。幼い頃、幼稚園のお泊まり保育に行っていた間、両親と母の妹が毒殺、家は全焼した。母は妊娠中だった。叔母の元彼がくるという話をしていたらしい。しかし真相は、父親と叔母が不倫、写真家は二人の子供で、妊娠もまた叔母だった。毒殺したのは母親で、最後に自分も殺されたように見せかけたのだった。
    《感想》あっさり書かれているけど、本作で一番ドロドロ具合が強い作品だと思う。

    ・「死に至る問い」・・・26年前の河川敷男性殺害事件とそっくりな事件が発生。二人の被害者につながりはない。違うのは、袖に付いた、犯人のものと思われる血。あまりに似ていることから、警視庁監察のトップ、緋色の同期から捜査を依頼される。警察内部の犯行を疑って。
    真相は記者会見で質問した新聞記者。26年前の事件の犯人であった。血は現場にいた父。暴力的な父との血縁関係を知りたいがための犯行であった。
    《感想》犯行動機は現実的にはありえないだろうけど、段階を踏んで推理を積んでいけばたどりつく。まさに本格ミステリーという感じ。冴子の推理部分、長いセリフが小気味いい。

     全体的に、推理を楽しめる作品。途中、寺田のトンチンカン推理(結果的に)部分が入った時には、「寺田に新しい才能が開花したかな」と思ったが冴子に一蹴されていた。探偵役はやはり一人だな。

  • 最初の出会いは、TVドラマ化されたものだった。
    続編も見て、原作を読んでみたくなった。

    ネットや古本屋を探して、ある店舗で見つけたときは、
    「やった」と思った。

    いわゆる安楽椅子探偵ものだ。

    警視庁付属の「犯罪資料館」、通称「赤い博物館」の館長である緋色冴子が、過去に起きた事件の資料を読み感じた疑問を、警視庁捜一から異動させられた寺田聡が手足となり解明していく。

    このコンビプレーで、埋もれていた事件の真相を掘り起こす。

    館長自体、謎の多い人物。

    最大の謎は、警視というエリート階級でありながら、8年も館長をつとめているということ。

    これから先、その謎が明らかにされるのか。

    続編に期待だ。

  • 犯罪事件の証拠や資料を保管する「犯罪資料館」の館長と、そこに左遷された元捜査一課の刑事が、資料を整理する中で未解決事件の真相を暴くという連作短編集。
    捜査資料を読み込み、関係者に二、三質問するだけで真相に到達するので、主人公は警察官だが安楽椅子探偵。こじつけや決めつけすぎ?と思うところもあったが、真相がわかると事件の様相がガラッと変わって見えるのはカタルシス。
    なお、「死に至る問い」は2時間ドラマ化されて視聴したが、個人的にはドラマでも原作でも動機がいまいち納得できなかった。

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著者プロフィール

1971年、埼玉県生まれ。京都大学推理小説研究会出身。サークル在籍中は「犯人当て」の名手として知られた。2004年、『アルファベット・パズラーズ』でデビュー。13年、『密室蒐集家』で第13回本格ミステリ大賞を受賞。18年刊行『アリバイ崩し承ります』は「2019本格ミステリ・ベスト10」国内ランキング第1位に、20年には連続ドラマ化され、大きな反響を呼ぶ。著書に『仮面幻双曲』『赤い博物館』『ワトソン力』『記憶の中の誘拐 赤い博物館』、訳書にエドマンド・クリスピン『永久の別れのために』、ニコラス・ブレイク『死の殻』がある。

「2022年 『時計屋探偵の冒険 アリバイ崩し承ります2』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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