- Amazon.co.jp ・本 (302ページ)
- / ISBN・EAN: 9784163902821
作品紹介・あらすじ
太陽が気絶したら、人間はどんな言い訳をするのか器用には生きることができなかったが、懸命に生きた男と女たち。その人生の最終カーブを端正な筆致で切り取った珠玉の現代短篇集。
感想・レビュー・書評
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端正な筆致で人生の分岐点を書いた十四の至宝の短編集でした。でも本来の時代小説を書いてほしかった。
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「あの日の午後、太陽は気を失ったような気がする。そうでなかったら‥‥」。
絶え間ない余震に継ぐ余震、空腹と不安と絶望感に呆然とする主人公に、放射線の恐怖が追い討ちをかける。「生まれた家をなくし、帰る家をなくし、頼る家をなくした」女性の話は、実際に著者の知人の経験談を元にして書かれている。
東日本大震災を正面から扱った彼の作品をはじめて読む気がするが、"太陽が気を失っていたに違いない"という述懐は、経験者だからこそ感じられる思いなのだろうと感慨深く、生々しくもあった。
表題作を含め、初出は『オール讀物』連載の14篇。
よくもここまで書き分けたなと感心するくらい、木釘師やヘラ浮子師、舞台女優、ジャズシンガー、元運輸官僚と、登場する人々の肩書きは幅広い。
最後の国家官僚をリタイアし、天下り先も渡り歩いた悠々自適の男だけが異色で感情移入の難しい主人公だが、こういう人物も加えないと、短編集としては味わいが似てしまって駄目なのだろう。
死が間近に迫った、ある種の諦観や侘しさばかりではなく、老いてなお一花を咲かすべく新たな挑戦に向かう男女の姿も描かれ、時代小説から現代小説と60歳を目処にレールを乗り換えた著者の生き様とも重なってくる。 -
老いや病気をテーマにした短編集。
こういう小説はやっぱり若者には理解できないんだろうな… -
作者の表現力に、いつもながら驚いた。
でも読んでくうちに、ちょっと形容がくどいと感じてくる。小説とはいえ人とその様をここまで刻むのかと言う感じ。映画に例えればクローズアップのし過ぎ。ちょっと疲れる。 -
現代が舞台の短編集。
どれもどこにでもあり得る話だけに、読後は重く感じてしまう。ただその中でも、時代小説で培われたものだと思うが、明日や未来をメッセージを残して終わっていて、力強く感じた。
特に良かったのは、売れないジャズ歌手が学友の独立を機に、歌い手として幸せを感じ、珍しくハッピーエンドで終わった短編「ろくに味わいもしないで」のラストで歌うシーンが情景が良かった。
短編最後の「夕暮れから」も、女将さんとしての凛々しさがなんとも良かった。 -
なんというか、現代社会の生き辛さがなんとも。
毎日を生きても、辿り着くのはこういう老い先なのかと思うと、悲しい。
人はなぜ、生きるのか。
一筋の光が差しているのかいないのか、最終一歩前の様々な人々。
歳を重ね、日々を生きてきた。
それが人生で、でも、それは何になるのか。
何ともならなくても、それでも人は生きていく。
そういう話をこれだけ読むと、結構しんどい。
未来に希望なんて持てない。
でも、そこになぜか美しさを感じさせられてしまう。
恐い作家だなあ。
端正な文章だから後味も悪くない。
突きつけられたのは現実。
そうやって受け入れられてしまうのが怖ろしい。