- Amazon.co.jp ・本 (438ページ)
- / ISBN・EAN: 9784163902135
作品紹介・あらすじ
箱館・五稜郭の戦いを指揮したフランス軍人徳川幕府に軍事顧問として雇われ、陸軍の近代化にあたっていたフランス陸軍士官、ジュール・ブリュネ。大政奉還が行われ、幕府が終焉するとともに軍事顧問団は解任されるが、幕臣・榎本武揚や新選組副長・土方歳三らとの関わりのなかで、日本人の士道(エスプリ)に心をうたれたブリュネは、母国での輝かしい未来を捨て、戊辰戦争に身を投じることを決意する。映画「ラストサムライ」主人公のモデルになったといわれる男を描いた、歴史エンターテイメント大作。
感想・レビュー・書評
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徳川幕府がその最末期にフランスから招聘した軍事顧問の砲兵将校で、箱館戦争ではフランス軍籍を捨て旧幕府脱走軍・榎本政権に参加したジュール・ブリュネを描いた歴史小説。
フランス軍事顧問団の存在は、横須賀製鉄所やガルトネル事件などとともに、末期徳川幕府の買弁性の指標として、歴史学では古くから否定的に捉えられているが(ただし近年は一部見直されているようだ)、いかに主観的には騎士道的な情熱からの「善意の協力」であっても、客観的には植民地主義的な内政干渉でしかないブリュネの行動を「正当化」するために、本書では新政府・薩長勢力こそ英国の傀儡であったという「英国陰謀論」を採用している。グラバー商会のような英国資本が薩長側に軍事援助したり、江戸開城交渉に英国公使パークスが関係したことは事実だが、薩長の指揮官が英国人ばかりとか、英国軍が参戦していたというあからさまな虚構は、いかに「小説」であっても感心できない。フランスの外交路線の変転(特にロッシュの親幕路線の転換をめぐる混乱)や軍事技術の急速な変化(「五稜郭」はすでに時代遅れの要塞)については、史実に比較的忠実な上に、それが物語の展開にうまく結びついているだけに、安易な陰謀論の利用は非常に残念である。
意図的な史実改変とは別に、初歩的な考証ミスが散見されるのも問題である。例えば「日本語にいう『目から鱗が落ちる』ような思いがした」(p.111)という下りがあるが、この諺は『新約聖書』の「使徒行伝」からの直訳に由来し、当時の日本語にはなく、ましてやフランス人カトリック教徒の心理表現としてありえない。あるいは大鳥圭介が妻を離縁して「旧姓を名乗らせることにしました」(p.138)という台詞があるが、江戸時代の武家女性は結婚後も「父姓」であり、離婚による「旧姓」復帰は原則としてない。歴史小説の場合、こうした基本的なミスは命取りであり、本書の価値を著しく落としていると言わざるをえない。 -
今年読んだ中で、今のところ、1番!
小説には、筆者の伝えたいことがある。しかし、それが何であるかを読み取ることは、読者に委ねられる。
「エスプリ」自らの信じた道を貫き通すべし。
土方の救済。 -
フランス物に比べて面白くナイ。
スケールはあるのになあ。
思い入れがありすぎ?
登場人物が格好良くない。
ダイナミックじゃない。
愛しく感じられない。 -
ラスト・サムライのモデルとも言われる、ブリュネを主人公にした一冊。
3つの視点が味わえる。①軍事顧問という、一線を画した立場でありながら、義を重んじ、旧幕臣の戦いに身を投じる。ラストサムライであるブリュネの生き様。②フランス人から見た戊辰戦争以降の幕末史。③英仏を中心とした幕末の国際事情。
400ページ強の本でありながら、テンポよく読める。しかし、土方のあの終わりは。。。賛否両論あろうが、「お話」が過ぎて、私は「否」です。 -
「ラ・ミッション」
たまたま本屋で「小説・フランス革命」の著者・佐藤賢一の本を見つけたので、面白いのではないかと思って購入した。
幕府側フランス軍事顧問団・ブリュネ中尉の見た日本の戊辰戦争と言っていいだろう。
幕府側に軍事顧問団としてフランスから派遣されたブリュネたちは、伝習隊という陸軍を組織して日本人を指導していたが、彼らが鳥羽伏見の戦いで大阪にいたところから話しが始まる。
ところが、大阪城にいたはずの徳川慶喜がさっさと江戸に帰ってしまい、その後、幕府側は軍事顧問団解任してしまう。立場がなくなった彼らはその後悶々としてしていたが、自分たちが指導した伝習隊、そして幕府側の榎本武揚、大鳥圭介、土方歳三らの親交から箱館戦争にフランス軍を自ら辞めて参加することになる。
歴史のとおり勝ち目がどんどんなくなっていき、厳しい状況に巻き込まれていく様はなんとも読んでいて苦しい。しかし、その戦いを最後まで支えているのは幕府側の武士道とフランス革命を支えた国民国家としてのフランスの大義だったように思える。
戊辰戦争の前からイギリスとフランスの外交戦があり、フランスは幕府にイギリスは薩長を支援しており、小説の中ではイギリスは戊辰戦争の間に、軍籍を一時離脱した軍人が薩長軍を公然と指導していたと描かれている。
そして、列強各国、英米仏独露が局外中立を守ったため日本が独立を保たれたと言うように描かれている。それは、イギリス側が日本では中国のようにはうまく行かないと言って嘆いている点にも表れている。確かに明治維新の話は日本内部の戦いばかりが物語になってよく知られているが、列強の外交的な面はあまり語られることが少ないのでなかなか面白い視点だと思う。
しかし、やはり負け戦ばかりで話は暗くなんともやりきれない思いだ。結果的には函館は落ちブリュレはフランスに戻ることになる。
エピローグではマルセイユに帰るとブリュネは英雄として迎えられ、なんと土方歳三がフランスに落ち延びていたという結末は、函館の硝煙の臭う重い雰囲気と明るい地中海のマルセイユの青空の対比がまぶしい心憎い結末だった。 -
江戸幕府に雇用されたフランス軍事顧問団が五稜郭まで付き合っていたとはつゆ知らず。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%96%E3%83%AA%E3%83%A5%E3%83%8D
前作の庄内藩といい明治維新ですら知らないエピソードがたくさんあるんだと痛感する次第。