デブを捨てに

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (215ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163901992

作品紹介・あらすじ

「どれだけ読んでもOkcal!!」シュールで最悪の状況を暴走するブラックユーモアの数々。『暗くて静かでロックな娘』から2年ぶりとなる待望の小説集がついに刊行。「うでがでぶか」。借金まみれの俺は、わけのわからぬまま、“デブ”を、黄色いスパイダーに乗せて北へ向かった……表題作の「デブを捨てに」をはじめ、〈シュール〉な設定、乾いた〈ユーモア〉と、エッジの効いた〈表現〉で、〈最悪の状況〉に巻き込まれた男たちを、独特のスピード感あふれる文体で、泥沼のような日常を疾走するように描く。どこへ行くのかわからないスリルをあなたにお届けする、全四編の平山夢明〈最悪劇場〉。これぞ、小説表現の極北を目指す著者の真骨頂。「まあ、大変、買わなくちゃだわ」・他の収録作「いんちき小僧」腹が減って腹が減ってしかたのない俺は、コンビニでキャラメルひと箱をくすねるが、店の女に捕まった。女は、警察には突き出さず公園に連れて行くと、一発ぶん殴ったら許してやると言う。やがて、その様子を見ていた男から奇妙な提案をされる……。「マミーボコボコ」捨てた娘から三十五年ぶりに手紙をもらったおっさんに頼まれて、ついて行った先は、娘が嫁いだ大家族の家。そこでは、"ビックパヒー"なる父親以下、大家族の密着テレビ番組が収録中で……。「顔が不自由で素敵な売女」行きつけのバー「でべそ」で酎ハイ二杯を飲んで、いい気分になった俺は、公衆便所のような臭いのするヘルスの個室で、ハラミという夏の日のコーラフロートのような頭のブスに、とびきりのサービスを受けていた。「デブを捨てに」借金の返済期限が来たが、金を返せなかった俺は、事務所につけていかれボコボコに締め上げられたあげく、「腕とデブ、どっちがいい」か選ばされる。俺は、よくわからず「デブ」のほうを選ぶが……。

感想・レビュー・書評

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  • 久しぶりの平山作品。タイトルから表紙のポップさから楽しみになってくる。
    「いんちき小僧」金が無くあまりの空腹で、キャラメルを盗んだ男と知り合った、親子。
    父親のジュンイチローと、12歳の息子キチザに誘われて始めた偽ヤクの売人の仕事。それがバレた時に...。「嘘でも良い、嘘でも良いんだ!ぼくは」ジュンイチローとの親子ごっこを辞めたキチザの言葉が切なかった。

    「マミーボゴボゴ」生き別れた娘からきた、手紙をきっかけに再会すると、娘は子沢山の大家族になっていた。何となくモデルになっている大家族は...と考えとしまった。
    「顔が不自由で素敵な売女」ヤク中の彼氏に尽くす為に売女を生業にするチョチョミ。
    マンキューの店で働く俺と、三人は次第に仲良くなる。ある日ウチダという人物が来てから、マンキューは壊れて行った。
    チョチョミが良い女過ぎて泣けてくる。

    「デブを捨てに」一年前に腕を折られた俺は、一年後にまた同じ場所を折られる場面に出くわす。
    「デブか腕か」選べと言われて選んだデブ。
    車に乗り約束の場所へデブを捨てに行くまでが仕事だったが...。
    いつもの平山作品にしては、グロと暴力は少なめだったが、1短編を読み終わる頃には、登場人物の誰かを好きになる。
    冒頭、嫌悪感さえあったデブも、終盤はいとおしくて仕方なく、何とも言えない中毒性のある話だった。
    森に消えた彼女には幸せになって欲しい!

  • 著者の作品は計3冊目の読了となり、読後につけた☆は全てが3つ。

    まだとんでもない作品と出会えていないのに、何故か手にしてしまう。

    クセがあるので、読者を選びますが、著者にしか表現出来ない「言葉」「文字」「表現」「空気感」「登場人物」「世界観」...は、ある種の中毒性があるようです^^;

    「いんちき小僧」「マミーボコボコ」「顔が不自由で素敵な売女」「デブを捨てに」の4作がおさめられていましたが、なんとも言えない不快感なのに、どこか爽快感のようなものがあり、そんな終わらせ方するんだ~って感じです。



    どこかのタイミングでホラー作品も読んでみよう。


    説明
    内容紹介
    “シュール"かつ“泥沼"のような状況を乾いた“ユーモア"とともにお届けする、異才の作家・平山夢明“最悪劇場"全四話。
    内容(「BOOK」データベースより)
    「どれだけ読んでもOkcal!!」
    シュールで最悪の状況を暴走するブラックユーモアの数々。
    『暗くて静かでロックな娘』から2年ぶりとなる待望の小説集がついに刊行。

    「うでがでぶか」。借金まみれの俺は、わけのわからぬまま、“デブ"を、黄色いスパイダーに乗せて北へ向かった……表題作の「デブを捨てに」をはじめ、〈シュール〉な設定、乾いた〈ユーモア〉と、エッジの効いた〈表現〉で、〈最悪の状況〉に巻き込まれた男たちを、独特のスピード感あふれる文体で、泥沼のような日常を疾走するように描く。
    どこへ行くのかわからないスリルをあなたにお届けする、全四編の平山夢明〈最悪劇場〉。これぞ、小説表現の極北を目指す著者の真骨頂。
    「まあ、大変、買わなくちゃだわ」

    ・他の収録作
    「いんちき小僧」腹が減って腹が減ってしかたのない俺は、コンビニでキャラメルひと箱をくすねるが、店の女に捕まった。女は、警察には突き出さず公園に連れて行くと、一発ぶん殴ったら許してやると言う。やがて、その様子を見ていた男から奇妙な提案をされる……。
    「マミーボコボコ」捨てた娘から三十五年ぶりに手紙をもらったおっさんに頼まれて、ついて行った先は、娘が嫁いだ大家族の家。そこでは、"ビックパヒー"なる父親以下、大家族の密着テレビ番組が収録中で……。
    「顔が不自由で素敵な売女」行きつけのバー「でべそ」で酎ハイ二杯を飲んで、いい気分になった俺は、公衆便所のような臭いのするヘルスの個室で、ハラミという夏の日のコーラフロートのような頭のブスに、とびきりのサービスを受けていた。
    「デブを捨てに」借金の返済期限が来たが、金を返せなかった俺は、事務所につけていかれボコボコに締め上げられたあげく、「腕とデブ、どっちがいい」か選ばされる。俺は、よくわからず「デブ」のほうを選ぶが……。
    著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
    平山/夢明
    1961年、神奈川県生まれ。“デルモンテ平山”名義で、映画・ビデオ批評から執筆活動をスタートし、1996年、『SINKER―沈むもの』で小説家としてデビュー。2006年、短編「独白するユニバーサル横メルカトル」で、第59回日本推理作家協会賞を受賞。また、本作を表題作とした短編集は、2007年版「このミステリーがすごい!」で1位を獲得。2010年、ポプラ社刊『ダイナー』で第31回吉川英治文学新人賞候補、第28回日本冒険小説協会大賞、翌2011年に第13回大藪春彦賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

  •  タイトルといい、カバーデザインといい、一目で強烈な印象を残す最新短篇集。洋書のペーパーバックを模した製本もカッコイイ。

     収録作品は、広い意味ではホラー小説なのだろうが、化け物のたぐいはまったく出てこない。ただ、どの作品の登場人物も人間としてのタガが外れていて、化け物じみているのだ。

     下品さ、グロさは、相変わらず日本最高クラス。ただし、その下品とグロは突き抜けたユーモアに昇華されており、けっして不快ではない。むしろ、時に爽快ですらある(読者を選ぶ作家であり、生理的に受け付けない人も多いだろうが)。

     また、下品でグロなのに、読み終えたあとに不思議な寂寥感、哀切さが胸に残るのも、平山作品の特徴である。本書所収の4編もしかり。

     4編のうちでは、「痛快! ビッグダディ」のどす黒いパロディ「マミーボコボコ」が、いちばん面白かった(出てくる番組の名前が「痛恨! ジャンボぱぴー」w)。
     「ビッグダディ」的な大家族ドキュメンタリーをネタにブラックコメディを書く……というところまでは並の作家にも思いつくだろうが、ここまで荒涼とした作品に仕上げられるのは平山夢明だけだろう。

     独創的なぶっ飛んだ言語感覚も、相変わらず冴え渡っている。たとえば――。

    《男は全て一気に呷った。丁度、喉の奥にキャッチャーが居れば、こんな感じに投げ込むんだぜという飲みっぷりだった。(「顔が不自由で素敵な売女」)》

     ほかの誰がこんな表現を思いつくだろう。

  • ホントに全くこの人は…(好き)

  • 「デブを捨てに」
    果たして読み切れるか。


    果たして読み切れるだろうか。残りの平山夢明を。ホラー作品は得意ではないが、偏りを無くす目的の一環として手にとるようにしている。そして、ホラージャンルにもこの人の作品は全部読む!と最大目標を立てようかと思っているのだが、果たして平山夢明の作品とした場合、読み切れるか。


    氏曰く、ありふれた話は書かないようにしていることと読者が読む前と読んだ後で心情が変化するような作品を書くことが念頭に置いているらしいが、見事に具現化されている。ホラージャンルの枠組の中でも間違いなくありふれた話じゃないし、読んだ後で心境は変化する。クセが凄い。次の平山作品を読むにはインターバルを要するクセ。だから残りを読み切れるか不安だ。


    クセの強い本作には「いんちき小僧」「マミーボコボコ」「顔が不自由で素敵な売女」「デブを捨てに」の4篇が収録されている。表題を除けば、皆後味が良いとは言えない。序盤からどんよりとした絶望感だったり残酷さだったり、じとっとしたネガティヴが漂う。


    唯一表題は平山夢明新たな切口なのだろうか。この手が苦手な人にも勧めることが出来る。とは言え、ところどころ(実質ほぼずっと)暴力性・残虐性があるストーリーで、根本的なものは解決していないし、デブは山に消えていくし、出てくるキャラも粗暴だから、微妙なラインではあるが。


    しかし、そこを我慢すると、半ば辺りからコメディぽさやほろり寄りな展開になっていく。自分が捨てられるのを理解しながらそれは嬉しいと言うデブが、1人の少女を助け、主人公との友情?愛?が生まれちゃう。こんなちょいラブ要素は平山作品では珍しい気がする。


    とはいえ、表題だけでじゃあ平山作品の残りを読もう!とポジティブになるのではない。当然、本作よりどえらいのが沢山あるわけで、ホラージャンルは平山夢明を軸に読み進めるかは要検討となる。そう、読み切れるか不安なのです。

  • タイトルと見た目が面白くて手が伸びた。さくさく読める短編集。貧しくて綺麗!みたいなフィクションは、貧しさを消費させるポルノ作っとけばウケるだろって魂胆がいけ好かない。一方、貧しさ自体の扱われ方は軽くて、面白いフィクションはだいぶ好きだなと気付かされた。好きな作家さんかも。いんちき小僧は、悲観と悲哀の反対で生きて終わる孤高小僧が出てくる話。マミーボコボコは、貧乏大家族をdisってくれる話。顔が不自由で素敵な売女も悲惨で明るくて、私にとっては読了感が爽やかなお話。デブを捨てには文字通り。2,3が特に好きかな。

  • 陰惨でグロくて、気分が悪くなることうけあいの平山作品の中では読みやすい方でしょうか。
    人間のクズ達の中で、きらりと光るピュアさがいい。姥捨て山ならぬデブ捨ての表題作は
    罵詈雑言と汚いモノにまみれ読み進め、あら不思議、最後にはほっこりしちゃいます。笑

  • ドン底なのにユーモアと微かな希望があった。醜く不気味に思えていたデブが気がつけば愛おしい。

  • (図書館本)お勧め度:☆4個(満点10個)。最初、読んでいて嫌気がさしてきた。意味不明だし、エロ・グロ織り交ぜてなんとなく読みにくく、途中で棄権しようかと思うくらいハズレな作品だと思ったが、ラストの表題「デブを捨てに」だけは、ちょぅとだけホロッとさせられた。前の3編がすごく読み辛かったが、この作品だけは何となく理解できた。ある意味デブの彼女が可哀想にも思えてくる。最後の最後で主人公のジョーが言う言葉、「瘦せろよ!」というのが凄くかっこよく思えてきた。結局、ジョーはデブが好きになったのかもしれないなあ。

  • 面白かった!ビッグダディのパクリ「ジャンボパピー」、大丈夫これ?と思いながらも見るたび感じるモヤモヤがバッサリ斬られてスッキリ!表題作もほんわか終わって微笑ましいです。登場人物の行く末を思うと微笑ましいどころではないけれど。グロテスクな描写も多いですが、ユーモアでうまく救われている気がします。「いんちき小僧」だけがちょっと可哀想だったかな。平山さん初めて読みましたがクセになりそうです。

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著者プロフィール

1961(昭和36)年、神奈川県川崎市生まれ。法政大学中退。デルモンテ平山名義でZ級ホラー映画のビデオ評論を手がけた後、1993年より本格的に執筆活動を開始。実話怪談のシリーズおよび、短編小説も多数発表。短編『独白するユニバーサル横メルカトル』(光文社文庫)により、2006年日本推理作家協会賞を受賞。2010年『ダイナー』(ポプラ文庫)で日本冒険小説協会大賞を受賞。最新刊は『俺が公園でペリカンにした話』(光文社)。

「2023年 『「狂い」の調教 違和感を捨てない勇気が正気を保つ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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