看取り先生の遺言 がんで安らかな最期を迎えるために

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (303ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163760100

作品紹介・あらすじ

治らないがん患者のために在宅緩和ケアを立ち上げたが、自身もがんで昨年9月に逝去。最期まで説きつづけた「日本人の死の迎えかた」。2000人以上を看取った、がん専門医の「往生伝」。

感想・レビュー・書評

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  • 人間は100%死ぬ。「死」を目前にしたとき「医療」は無力だ。
    看取りから一番遠くにいたような医師だった岡部先生がたくさんの患者さんから多くのことを学んで在宅医療に邁進され、そして自分自身もガンで亡くなるまでの死にざまが描かれていた。
    在宅医療や介護保険について書かれている部分には本当に共感しとても勉強になった。
    ただ現役ケアマネとしては、「家族」のあり方が昔とは違っており、どれだけ在宅で看取りできる環境を整えても誰もが家族に看取られて最後を迎えられるようにはならないと思う。

  • 「自然な死」のイメージから逆算して、終末ケアを考えるという岡部医師の考え方にとても共感しました。私自身にも身近な親族にも、抗がん剤、胃ろう、点滴などの医療行為をしないですむような最期を考えたい。

  • 動物から植物に近くなっていく事が死なのかもしれない。そして死は孤独なことではなく受け入れられる事なんだと思った。

  • ふむ

  • 抜粋…日本の科学は不合理で不条理なものを否定することから始まっている、欧米ならそこをキリスト教に任せ、その上で判断するが、合理的な論理構造だけで生きていると、不合理で不条理なものはないことにしてしまう。
    日本人は無宗教であることが近代人の証だと信じているが、それが日本の医療を特殊なものにしていることに気がついていない。
    治療の科学的方法論にEBMとNBMがあり、アメリカきら導入されたとき、本来はセットのはずなのに、日本ではEBMが全てという風潮になった。日本の医療は合理性一辺倒だから、曖昧なナラティブよりも数値化できるエビデンスの方が信じやすいのだろう。

    人が生きていくのに、そしてこの世から旅立つときに、とても大切なことを教えてもらいました。

  • 肺がんの専門医として、東北大学付属病院、静岡県立総合病院、宮城県立がんセンターで専門医として確固たる地位を築いていた故岡部健医師。

    著者が共通の友人を通じて死のその時までインタビューを続けた渾身の記録。

    岡部氏は、医師として数多の患者の死の現場に立ち会う中で、その治療の限界を痛感。

    在宅緩和ケアへと転身。

    「治らないがん患者のための医師」になることを決断する。

    ①QOL(クオリティオブライフ。生活、生命の質)を考える。
    ②患者さんのニーズから考える。
    ③死から逆算して考える。

    縦割り、タコツボ型の治療でなく、看護士、保健士らとのチームワーク。

    文化運動としての在宅医療。

    100点満点でなくて良い。
    70点の医療を目指す。

    その彼自身ががん患者となる。

    自身が作った在宅医療の医院で治療を受けながら、あの日を迎える。

    2011年3月11日。
    東日本大震災。

    大事な医療の同志を失い、多くの生命が一瞬で消えてしまった大災害に、彼の価値観はひっくり返る。

    がん患者となって「自分が死ぬこと」ばかり考えていたのが、「人間は自然の大きな命の下につながっているのだ」という感覚が舞い降りたのだという。

    自信も被災者でありながら、人々と語り合う。

    最後は心の問題。現代日本が目を背けてきた宗教的ケアの重要性を痛感する。
    臨床宗教士こそ必要なのだと。

    蔵の宝よりも身の宝。
    身の宝よりも心の宝。

    軍事的競争から経済的競争を走りぬいてきた現代。

    今こそ人道的競争で、一人ひとりの歩んできた人生、生命の本質に焦点を当てていくべきなのだとの渾身のメッセージ。

  • 抗がん剤が効くかどうかは使ってみないとわからないとのこと。運が良ければ効くし副作用が無いこともあるらしい。下手をすると寿命を縮めるらしいが、それでも他に手がなければ使うしかないのだろう。

  • 新着図書コーナー展示は、2週間です。通常の配架場所は、3階開架 請求記号:490.14//O56

  • 2014/12/7

  • 宮城県でがん患者の終末期医療に専心されていた岡部健医師のことを書いた本です。
    宮城県で在宅で看取られる患者数は年間約600人ですが、そのうち約400人を岡部先生が看取ったというのですから凄いですね。

    自宅に帰ることを不安に思う患者さんや家族に対して3つの約束をされたそうです。
    ① 医療レベルをおとさない。
    ② サポートする介護体制を整える。
    ③ 再入院をすれば受け入れる。

    http://ameblo.jp/nancli/entry-11925098481.html

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著者プロフィール

奥野 修司(おくの しゅうじ)
大阪府出身。立命館大学経済学部卒業。
1978年より移民史研究者で評論家の藤崎康夫に師事して南米で日系移民調査を行う。
帰国後、フリージャーナリストとして女性誌などに執筆。
1998年「28年前の『酒鬼薔薇』は今」(文藝春秋1997年12月号)で、第4回編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞受賞。
2006年『ナツコ 沖縄密貿易の女王』で、第27回講談社ノンフィクション賞・第37回大宅壮一ノンフィクション賞受賞。
同年発行の『心にナイフをしのばせて』は高校生首切り殺人事件を取り上げ、8万部を超えるベストセラーとなった。
「ねじれた絆―赤ちゃん取り違え事件の十七年」は25年、「ナツコ 沖縄密貿易の女王」は12年と、長期間取材を行った作品が多い。
2011年3月11日の東北太平洋沖地震の取材過程で、被災児童のメンタルケアの必要性を感じ取り、支援金を募って、児童達の学期休みに
沖縄のホームステイへ招くティーダキッズプロジェクトを推進している。
2014年度より大宅壮一ノンフィクション賞選考委員(雑誌部門)。

「2023年 『102歳の医師が教えてくれた満足な生と死』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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