未解決事件 オウム真理教秘録

  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (438ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163759203

作品紹介・あらすじ

オウム対警察の知られざる攻防とは放送直後に逃亡犯逮捕の衝撃作! 700本の麻原テープや死刑囚手記、捜査関係者150人への取材でわかったサリン事件までの真相。

感想・レビュー・書評

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  • 抜群に面白い。一気に読んだ。麻原彰晃が、衆院議員選挙の後にオウム真理教を武装化した説が有力だったが、教団発足時から、武装化・政権転覆を目論んでいたことがテープや幹部の証言から明らかになった。

  • 本書はNHK取材班による著作物であり、長期に渡るその詳細で丁寧な取材での記述により、教団組織や警察組織が各々の立場でどのように向き合って来たのか、報道の立場で事件を客観的に説明しようとする努力を感じました。一方でNHK自体も組織であり、その事情がどのように反映しているのかは分かりません。しかしながら事件を直接知らない若い世代による取材での再考察は、事件を忘れない為にも、重要であると思いました。また膨大なテープの入手や警察当事者の聞き取りなど、さすがNHKの取材力と感じる部分も多くその取材のご苦労に敬服すると共に、その取材元のご協力によりこうして私のような一庶民にも考える機会を与えて頂き感謝いたします。

  • 平成を振り返る意味で読んだ一冊。
    事件当時、小学校低学年で理解できていなかったが麻原の異様な風貌、連日のショッキングな報道は未だに記憶に残っている。
    改めて全容を知ると「こんなことが本当にあったのか」という衝撃と何とも言えない不安感が出てくる。
    麻原の真意は今となっては誰にも分からないが、集団洗脳の恐ろしさや危機管理の重要性などいくつも考えさせられることがあった。

  • 警察の負けが良くわかる

  •  昨年放映され、実録ドラマ仕立ての構成が話題を読んだ「NHKスペシャル」の単行本化。
     といっても、本書はドラマ仕立てではなく、取材の舞台裏を詳細に明かした内容となっている。取材にあたった記者やディレクターが、各章を分担して執筆。番組に描ききれなかった部分も盛り込まれている。
     私は元の番組を観ていないが、この本だけでも十分に独立した価値をもつ内容である。

     「NHKスペシャル」はNHKの看板番組だから、取材には時間も予算もマンパワーも潤沢に注ぎ込むことができる。本書を読んでも、我々ライターが雑誌等で行う取材とはケタ違いの手間ヒマがかけられているとわかる。たとえば、オウム事件にかかわった捜査関係者だけでも150人以上を取材しているという。

     また、NHKという看板のもつ力も、やはり相当なものなのだろう。本作はテーマからして警察批判の側面を持たざるを得ないわけだが、にもかかわらず、すでに定年退職している人を中心に、多数の警察関係者が取材に応じている。NHKの看板の力ゆえだろう。

     つまり、これは二重の意味で「NHKにしかなし得ない仕事」であった。また、「NHKがやってしかるべき仕事」でもあった。オウム的なテロの危険性は今後いっそう高まるはずで、その検証作業には我が国にとっても高い意義があるからだ。

     どの章も読み応えがあるが、圧巻は警察のオウム捜査の舞台裏を明かした第2章「オウムVS警察 知られざる攻防」。それに次ぐのが、第3章「オウム武装化の真相」である。

     第2章では、坂本弁護士一家失踪事件を捜査した神奈川県警、松本サリン事件を捜査した長野県警、オウムの拠点があった波野村で捜査にあたった熊本県警などが、地下鉄サリン事件の前からオウムの危険性を十分認識していたことが明かされる。
     にもかかわらず、各県警と警視庁がタテ割りになった組織体制ゆえ、情報が共有されず、踏み込んだ捜査には至らなかった。

    《今回の取材で、捜査の最前線にいた捜査員たちはオウムの闇に早い段階で気付き、強い危機感を持っていたことが見えてきた。その危機感が警察組織のなかで共有され生かされていれば、地下鉄サリン事件は防げたかもしれない。事件から十七年を経て、取材班が達した結論だ。》

     第3章は、NHKが独自に入手した700本以上に及ぶ録音テープ(麻原の説法や幹部との対話などを記録したもの。元は記録魔の教団幹部が所有していたもので、その幹部はあまりになんでも録音することが理由で危険視され、左遷されたという)の詳細な解析を中心とした内容。

     解析によって、「オウムは衆院選惨敗を契機に武装化路線に転じた」とするこれまでの定説が覆されるところが衝撃的だ。麻原は教団発足当初から、すでに武装化を考えていたというのだ。

     数あるオウム関連本の中でも、屈指の充実した内容をもつ一書。

  • 取材班の原稿の寄せ集めなのでバラバラな印象。番組見た方がよい?
    また、秘録と言っても、選挙に敗ける前から麻原は武装化・国家破壊(ハルマゲドンの成就)を志向し、戦う王(キリスト)を目指していたという。

  • かなり昔だったが番組も面白かった。改めてまとまった書籍で読むとオウムの愚かそうな表面に隠された残忍性が社会がオウムを面白がっていた頃から強く育っていたのがよくわかる。人は容易に騙される。
    麻原彰晃のカリスマ性は説法テープを延々と聞いた取材班も感じていたように否定出来ないものだったのだろう。この本の論調はその影響力を使ってもともと持っていたオウムの危険な望みを実現するために弟子を動かした、つまりオウムの危険性は麻原彰晃の思想と直結していることを示唆していると感じるし、死刑囚となった弟子たちの証言はそれを補強するものになっている。
    それは事実なのかもしれない。ただそうでない可能性、麻原彰晃がその危険な思想を彼の内部ではなく別の誰かから受け入れたという可能性、麻原彰晃自身が何者かに操られ動かされていた可能性はないのか、という若干陰謀論めいた疑問が少し残る。
    多分その可能性はひくいのだけど、この本の終盤にもふれられているまだ残る闇の部分、村井刺殺と警視庁長官狙撃に対する警察の不自然に見える対応が、まだなにか本当の黒幕がいて今も社会の中で笑っているのではないか、という妄想を掻き立てる。

  • NHK「未解決事件シリーズ」の第2弾として放送されたオウム真理教に迫る本です。
    テレビでは放送しきれなかったものや取材背景を知ることができました。

    テレビ番組は本放送も再放送も観ていたので「あぁこの場面か」と思いながら読めました。
    定説とは違う事実の発見に合計900本ものテープを聴くという執念の取材とはさすがNHK。

    松本サリン事件当時、私は5歳くらいだったので当然覚えていません。
    多分興味もなかったでしょう。
    それでも凶悪犯罪番組などで見るたび「徐々におかしくなったカルト集団」「麻原彰晃は自信があるからこんなことできるんだ」と思ってました。

    でも最初から武装化は予定内で自信がないから偉大な宗教は全部自分とつながっているという歪んだ人間だと驚きでした。
    心が弱い者同士が集まっちゃったのかな…。

    警察ももっと目を光らせ情報を重視して欲しいです。
    せめて情報共有を変なプライドを持たずに徹底してくれていれば…。

  •  警察の押収を免れた膨大な量の麻原彰晃の肉声録音や、第一線で捜査に当たった元警察幹部の新証言、獄中の死刑囚らの未公開手記など、あまたの新出の資料から一連のオウム真理教事件の過程を再検証した書。従来から批判のあった「衆院選敗北を契機に武装化した」という麻原訴訟の確定判決の見方を改めて覆したことや、坂本弁護士一家殺害事件にせよ、松本サリン事件にせよ、捜査現場レベルでは早くからオウムに肉薄していたにもかかわらず、縦割りの警察組織の構造的欠陥や上層部の「政治的」な予断のせいで本格捜査が遅延したことを明確化したことなどは評価できる。また警察庁長官狙撃事件(本書ではオウムと無関係の別の「真犯人」が強く示唆されている)について、公安当局のフレームアップ手法を厳しく指弾しているのも注意に値する。ただし、取材した記者の大半が事件をリアルタイムで経験していない若い世代のせいか、せっかくの貴重な資料を使いこなせていない感が若干あるのは残念。

  • 闇の深さを知る

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著者プロフィール

長年「ひきこもり」をテーマに取材を続けてきたメンバーを中心とする、全国で広がる「ひきこもり死」の実態を調査・取材するプロジェクトチーム。2020年11月に放送されたNHKスペシャル「ある、ひきこもりの死 扉の向こうの家族」の制作およびドラマ「こもりびと」の取材を担当。中高年ひきこもりの実像を伝え、大きな反響を呼んだ。

「2021年 『NHKスペシャル ルポ 中高年ひきこもり 親亡き後の現実』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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