日本の農業が必ず復活する45の理由

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163740805

感想・レビュー・書評

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  • 東日本大震災後の考察。TPP関連もあり。

  • ・日本は世界第5位の農業大国である。
    先進国ではアメリカに次いで2位、オーストラリアの約3倍。
    その背景に農機業界、農薬業界、種苗業界が、おのおのの業界で世界第三位と支えていることが大きい。

    ・「農家」は、販売、主業、兼業、自給、サービス、経営・・・と20種類に分類されている。新聞等でよく

    見かける「農家が減った」はどの農家か定義されていない。増えている農家もあれば、農地を持っていても

    カウントされない世帯もある。農業法人に雇われてる人も数えられてません。
    重要なのは「食べらる生産量」の増減ではないだろうか。

    ・「農家の高齢化」が危惧されるが、世帯主の年齢で計算する為、高齢化するのは当たり前。

    ・日本の農業は一貫してグローバル製造業である。
    燃料、種、肥料、飼料、資材を輸入し、生産して付加価値をつけている。自由化の必然性、TPPのメリット

    は言うまでもない。

    ・日本の農地全体は約460万ヘクタールで、津波による被害を受けたのは推定2万3600ヘクタール。よっ

    て99.5%は無事だった。

    ・食料自給率とは、“消費カロリー”で計算されるのではなく“供給カロリー”で計算される。
    その供給カロリーの4分の1は破棄されている。これは自給率を低く見せる為に分母のカロリーを大きくす

    る為である。
    更に販売をしていない自給農家(200万戸)、輸入飼料を使っている畜産家も、国産として計上されていま

    せん。
    日本の食料自給率は約40%だが、輸入がストップすると6割の人が飢えるのではなく、食品自給率が10

    0%になるだけ。輸入が出来ない貧しい発展途上国などは軒並み100%の自給率です。
    因みにカロリーベースの自給率を計算しているのは日本だけで、その広報活動の為に年間70億円の予算が使

    われている。

    ・2011年より『花粉症緩和米』の実証実験が始まった。
    これは減感作療法を利用し、米の中に花粉症の原因ななるタンパク質(アレルゲン)を作り出し、身体に慣

    れさせ、花粉症を緩和させていきます。
    それ以外にも稲のバイオ技術を駆使して食物アレルギーやリウマチ、気管支喘息、など自己免疫疾患に対応

    できるコメ。更には高血圧や糖尿病、肥満に効果があるコメの開発も完了しています。
    花粉症緩和米は当初は2010年には実用化される予定でしたが農水省と厚労省の綱引きにより、10年遅れの

    2020年になった。
    コメは室温で1年以上保存出来、ウィルス混入などのリスクが少なく、移送が簡単。
    生産性も世代を重ねる毎に大量増殖が出来、種籾が普及すれば一般のコメと同じコストで生産出来る。医薬

    品のような成分抽出や精製の為の工場、製造に携わる従業員も不要で、医薬品メーカーにとっては脅威でし

    ょう。

    ・日本の種は農業界の隠れた輸出ヒット商品で、野菜の輸出総額25億円に対して、4倍の101億円を世

    界80カ国へ輸出している。

    ・中国野菜の危険性が叫ばれてますが、輸入品の方が国産よりも厳格に検閲されています。
    農薬の検出が多いのも国産で、輸入品0.18%に対し国産は0.32%あります。
    世界各国の輸入食品の違反頻度の平均は0.07%ですが、中国産は0.05%と平均以下です。因みにア

    メリカは1.1%です。
    中国は世界的にスタンダードなGAP認証農場数は日本の倍の2000あり、面積で42500ヘクタールと日本の

    15倍あります。これは国際的に世界が認識している事実です。
    中国産野菜は日本に厳しく品質基準が鍛えられ、輸出が大きく伸びました。今では世界のほうれん草の8割

    、全野菜の5割が中国産です。中国野菜への偏見は風評以外のなにものでもありません。

    ・中国産野菜と並び偏見を持たれてるのが遺伝子組み換え(GM)食品です。
    実際にはGMは、農作物の中で唯一安全性が公認されている食品です。
    一般の作物や野生種は、毒性のある作物やソバのように一部にアレルギーを引き起こす食品でも厳密な安全

    審査は行われていません。
    そもそも家畜の飼料のトウモロコシは大部分がGMですし、食用油の原料になる大豆や菜種も大半がGMです。

    豆腐や醤油、納豆の大豆にもGMが使われてことがありますが、5%以下は表示義務が無い為、告知はされま

    せん。私達は既に多くのGM食品を摂っております。

    ・GMを作る最大理由は「農薬を撒かなくてすむ」という点です。
    農薬が人体に悪影響なのは言うまでもないが、平均5回撒くことの手間と燃料費と人件費のコストを大幅に

    軽減出来ます。
    また栄養失調の蔓延する発展途上国はビタミン等を強化した食物は役立つはずです。

    ・分配を正常化するだけで今すぐ食料不足は解決出来る。
    食料供給量の増加も人口増加分を上回っている為、食糧危機が来る可能性は限りなくゼロである。

  • あえて「国際」にカテゴリ分けします。

    帯の宣伝だけ読むと、あたかも震災でダメージを受けた農業がどうすれば復活できるかについて、その処方箋が書かれているように思えてしまいますが、放射能で汚染された野菜や耕作地に関する記述は、実は冒頭の数章のみです。
    それ以外は、著者が過去の著作でもたびたび触れている、農水省の役人の数字のトリックによる食糧自給率のウソや規格外の野菜を売買することの是非、マスコミがこぞって取り上げるフードマイレージ理論の考えの浅はかさや日本だけ世界の常識とまったく違う土俵で話がされている食糧安全保障のこと、あるいは旬の話題であるTPPに関する実際的な理論などで占められています。

    こうした点から、「震災から立ち直る農業の姿」をミクロの視点で、この本から満足いくまで読み取るのは難しいです。一方、騙されずに日本の農業の真の姿を捉えるという、マクロの視座から「農」について学ぶには好適。現時点の農業を考えるにあたって、とりあえず知っておくべき情報と真相は、かなり幅広く網羅されていると思われます。

    刊行が民主党政権が存在していた頃の話なので、今の政策にはそぐわないかもしれませんが、そこはそれ、本というメディアの限界なので仕方ないでしょう。

  • 日本の農業の現状を知るとともにその打開策を丁寧に述べている、
    今後の日本の農業を考えるのにはもってこいの一冊。

    若干、
    ”日本の農業が必ず復活する理由”なのか?これは…
    という節もあったが、
    それを考えなければすべての章が、そうだったのかと新しい見解を得られるものである。

    特に今の補助金制度に対する見方が変わった。
    いかに今の制度が意味のなさないものなのか思い知らされた。

  • 稲の直播
    湛水直播
    乾田直播

  • 若い農家や学生の方々は、ぜひ読んでみてください。
    希望が出てくるはずです。

    農業も、科学技術、マネジメント、マーケティング、ブランディング語学、国際交流を学ぶ時代なのですね。

  • 浅川さんの本を読むのはこれで2回目になります。

    やはり政府が出しているデータがいかに国民を騙しているかがよくわかります。

    ただ日本の農業が必ず復活する45の理由というタイトルだけど、そもそも私は日本の農業が衰退しているとは考えていない。

    震災を経て新たな1ページを切り拓いていることに変わりはないからである。

    今度は浅川さん以外の農業の本を読んでみたいと思う。

  • 私が農業関連の知識がないこともありますが、大変参考になりました。TTPの問題にしても、マスコミで語られている話がいかに適当なデータを基にした扇動論かよく分かります。私のような農業のことをよく知らない人こそ本書を読むべきかと思います。

  •  東日本大震災は、農業県、漁業県がやられたので、農業、漁業の勉強もしなくてはいけないと思って買った本。

     浅川さんは、農業関係のジャーナリストでやや過激な感じの文章だが論旨は明快。

    (1)農業の戸別補償は、不採算の農産物の増産を促している。(p100)

    (2)農家男性は自殺率が全職種でもっとも低い。(3.8%)もっとも高いのが公務員(17.8%)

     これは、アタマが痛い。土にさわって、自ら経営することのやりがいが農家の場合高いということか。

    (3)指定野菜は、廃棄すると4割基金から補填、出荷後、平均価格が最低価格を下回るとその差額の70から90%が補填される。

     なんかなあ、ここまでしないと野菜が守れないのかな。ちなみに、もやしやモロヘイヤ、芽キャベツは対象外だそうです。なんか対象外の野菜はやすいような気がする。

     他の製造業が血の出るような努力をしているのに、こんなにあまえた産業政策だと、農家もやる気がでないのではないか。

     もう少し、農業政策、漁業政策を勉強してみます。

  • 稲作と言ったら「田植え」だが、技術の進化から世界の潮流は直播になりつつある。コストは減るし輪作もしやすい。
    大豆の自給率は4%。しかし、明治以来史上最高の大正9年でも自給率は26%(重量ベース)でもともと低い。さらに戦後自給率が低下したのも、日本人が油を消費するようになったから(大豆消費量の80%が大豆油)である。アメリカで大豆生産が始まったのは1920年代で、初期の中心人物はあの自動車王ヘンリー・フォード。大豆を絞って食用油にしたり繊維するなどという発想が生まれ、生産技術・加工技術で今や日本を圧倒。醤油・味噌・豆腐といった加工食品にそれぞれむいた大豆を生産。つまり大豆の自給率4%は正味の実力であり、もし凶作になったら油の消費量を減らし食事に回せばよい。(ついでにいうとイタリアは小麦の世界最大の輸入国である)。
    オランダ農業の強さは生産性の高さにある。製造効率、原価計算等徹底している。
    和郷園の木内氏が海外進出のため最初に取り組んだのは、何と築地から香港の寿司屋やレストランへの魚の輸送仕組みつくりである。良好な信頼関係を築いた後で、野菜を売り込んだ。野菜は単価が安いので、いきなり物流費をかけることはできないから。農家だから野菜しか売らないという考え方は商売をまるでわかっていない。農業の基本は適地適作と旬の生産である。であれば、無理に時期をずらすのではなく旬の時期に大量生産し、一部を加工品にまわせばよい。加工用ならスーパーの規格の2倍の大きさのホウレン草の方が効率的だし旨いのでよい。この考え方を海外に展開すればよい。

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著者プロフィール

1974年山口県生まれ。作家、翻訳家、ジャーナリスト

「2017年 『これからの地域再生』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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