無縁社会

  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163733807

作品紹介・あらすじ

地縁、社縁、血縁が崩壊し、"ひとりぼっち"が急増するニッポン。無縁死はもはや他人事ではない。

感想・レビュー・書評

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  • 家族や引き取り手がなく、時には身元不明のまま自治体によって火葬され、共同墓地に葬られる人々(=行旅死亡人こうりょしぼうにん)
    実際にその道をたどった人のことは勿論、近い将来そうなることを想って生きる人々、「消えた老人」問題、「呼び寄せ高齢者」に迫った取材記録。
    (これはのちにNHKスペシャルにて放送された内容に+αしたものだそう)

    家族と疎遠になる、身寄りがない、独身で兄弟がいない、などの理由から孤独に立たされた彼ら(取材対象)の置かれた状況に対して、本著では「無縁社会」と表現しています。
    昔は当たり前にあった家族との縁、職場での縁、そういったものが希薄になってきた結果、この無縁社会になってしまった、と本書は言います。

    コミュニケーションを取らずに不自由なく過ごせる社会になったことが、間接的にしろ無縁社会を広げた可能性については否めません。

    しかし、読み進めるうちに「ん?」となることがありました。

    ある一人の男性は会社一筋で過ごしてきて家族をないがしろにしていたため離婚することに。娘や息子とも疎遠なため、勇気を持って面会に行っても迷惑そうにされるだけ。-家族の縁が切れてしまった、という内容。
    『やり直しても、また同じになったかもしれないし』(p.185)と男性は語っているのですが、これは無縁なのか……? (持っていた縁を自らの過ちで断ち切っただけでは?)

    また、
    ある男性は、四十代半ばに職を失い、家のローンがあったため借金を重ねることになった。ひきこもりになり、自殺を考えた、というもの。
    この内容の後、このような記者コメントがあります。
    『社会とのつながり、すなわち「働く」というつながりを失った時、死を選ぶ人たちがいるという現実を目の当たりにした瞬間だった。』(p.321)
    「働く」というつながり(=縁)を失ったから死のうと思ったのではなく、どう考えても原因は「貧困」でしょう。

    大抵の人は「寂しい」だけでは死なないと思うのですが違うのでしょうか。寂しくても、何か一つ楽しみがあったり最低限生きていけるなら「死ぬ」という選択肢をするのはどちらかというと稀ではないでしょうか?
    そこに追加要素として「病」や「貧困」が関わってくるから、人は「死のう」と思うのだと思います。病気だけれども病院代が支払えないから苦しいとか、介護をしている家族がいるのだけれども自分が生きているだけで精一杯で苦しいとか、就職していたけれど身体を壊して失業、うつ病を患い、(縁を失ったからではなく)生活費にも困って死のうと考えた、とか……取材していて具体的な背景を知っているにも関わらず、こうも記者たちが”縁”に原因を持って来ようとするのは何故なのでしょう?
    私にはとても疑問でした。

    確かに僅かでも誰かとの”縁”を感じることができたら生きる張り合いにはなるのだろうと思います。
    そう思うとともに、(終盤でNPO法人の活動と共同生活について触れられていましたが)何かしら人の縁を持てばそれで安泰、ではないのです。
    貧困は縁だけでは解決できません。コミュニケーション能力だけが就職を成功させることがないのと同じです。

    最早誰にとっても他人事ではない孤独死に対して、これから「整えていける対策は整えましょう」とはならないのが不思議です。
    ”ネット縁”を提案した方の意見を実際に聞いておきながら、「じゃあ新しいつながりを作る仕組みはどんなものがあるだろう」とか「一人でも最後には発見して弔ってもらえるようにこういう仕組みがあります」とか「まだ仕組みはないけどこういう考えを持っている人がいます」とか……そういう方向にはならないのでしょうか。
    『無縁社会の拡がりを食い止めようとしても、時計の針を逆に戻すことはできない。私たちに必要なことは、ひとりで生きていくことが当たり前の時代となった今、無縁社会と向き合って生きる覚悟、そして、無縁社会を乗り越えて生きていく覚悟ではないか――それが取材を通じて、スタッフの皆が感じてきたことである。』(p.339)
    とありますが……いやいや、”覚悟”だけでどうにかなるなら、”根性だ!”って水も飲まずに運動しているのと同じじゃないですか。スタッフの皆が感じたのに、皆そこには至らなかったってことなんでしょうか。

    しかし一方で、取材記録として純粋に見るのなら、価値ある情報であるとも感じました。
    NHKだけあって人員、日数、費用ともに普通では難しい基準のものを達成しているのではないでしょうか。
    (単なる推測にすぎませんが……悪しからず)

  • 無縁社会読み終わった。

    賛否両論出そうな本だ。と思って調べると池田信夫氏が批判してた。
    http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51677145.html

    社会(日本?世界?)の根本的な問題は何だろうと考えてみるいいきっかけになった。

  •  老人の単身世帯が増え、孤独死が問題とされています。

     孤独死の起こる背景にはどんなものがあるのか。「行旅死亡人」とされ官報に載った方や、遺族に遺骨の引き取りを拒否された方、結婚をしないまま年老いてしまった方、いくつかの事例を元に、NHKの無縁社会スタッフが、聞き取り調査をしたドキュメンタリーです。 

     ごく普通に勤め上げて、退職をした人でも、連れ合いに先立たれた後、子ども夫婦に迷惑が掛かることを恐れて単身で暮らして結果として孤独死になることもある。
     個を大切にした社会の中で普通に暮らしていても地縁、血縁が薄れ、社会との繋がりがなくなってしまって孤独死を迎えるという事実。普段、田舎での濃い付き合いはちょっと遠慮したいと思っていたのですが、そんな薄い人間関係が孤独死の原因となっている。

     他人事とは思えないなあと感じました。読後感がとても重いです。

  • 切実すぎる!
    今ある家族・親戚・会社など・・・
    無縁死が取りだたされているけれども、死だけが問題ではないことが良く理解できた。

    今の現役世代、未婚(男女問わず)や離婚の果ての頼る引き取り手無き将来・・・
    正に自分自身にも近々当てはまるかもしれない・・・

    無縁=絆の大切さ

    皆さには是非読んでいただきたい!

  • NHK「無縁社会プロジェクト」の副産物というか、取材手記。引き取り手のない死体は行旅死亡人として官報に載り、お役所の手によって葬られる。取材班は数珠を片手に、供養するようなつもりで取材した、とある。終わりよければ……という言葉はあるが、しかし人生を意味あるものとして生きられたかどうかは、死ぬときに一人だったかどうかだけで決まるものではないと思う。誰でも死ぬのだし、死ぬときはひとり、というのも真実だろう。一人で死ぬことを悲劇としてとらえすぎなところ、家族といっしょの墓に葬られることがあたりまえであるという固定観念が、読んでいて正直、鼻についた。自分としては、一人で死んで上等であるし、死後は散骨でも合葬でも、かまわないと考えている。

  • 無縁死した人と、無縁死予備軍の人を追ったドキュメンタリーの書籍化。
    自分自身も無縁死しそうなファクター(社交性ない、親戚少ないなど)を持っているだけに他人事ではないのだけど、必然的な時代の流れだから殊更問題とは思っていなかった。
    みんなで足並み揃えて死ぬことは出来ないのだし、誰にも看取られず一人で死ぬことや、死んでしまえば墓に納骨されようが野ざらしにされようが大して変わらないとも。

    でもそれは私がまだ比較的若く信仰心もないからで、歳を取って死が実感として迫ってくるとまた違うものなのかも知れないな。

  • 死に方や、人とのつながりについて考えさせられた。
    自分は今まで、家族や地縁のようなつながりを疎ましく感じていた。だけど、自分のことを忘れずに覚えていてくれるという安心感は、得難いものなんだなと実感する。
    生きている間ですら存在を誰にも覚えてもらえなかったら、社会的に死んでいるも同然といった旨の発言を読み、あぁそうだなぁと実感した。
    年を取ってからの生き方を考えないと、自殺してしまいそう。このタイミングでこの本を読めて良かった。

  • 今までと、そしてこれからの生き方を考えさせられる本でした。
    一人でいると確かに気楽です。一度一人でいることになれると、なかなかエネルギーを使ってまで他人と関わる気になれません。
    それが自分の将来の可能性をせばめ、無縁へのリスクを高めているとわかっていても。

  • 孤独死ってこんなに頻繁に起きているのか。
    日本人の人との繋がりってこんなもんなんだろうか。
    高齢化社会が一層問題になるであろう日本の将来に大きく影響する社会問題をテーマにした良い本だと思う。

  • 一つ歯車が狂えば誰でも転落してしまう可能性がある無縁化という現実。以前からあったのだろうけど、核家族化、単身化が進んでより現実的な問題になってきたんだろう。

    どんより重くて、背筋が寒くなった。

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