- Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
- / ISBN・EAN: 9784163712505
作品紹介・あらすじ
戦中・戦後の「窒息しそうな時代」に港町ヨコハマで過ごした多感な少年期を愛してやまない活字の思い出とともに振りかえる。
感想・レビュー・書評
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ふむ
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「週刊ブックレビュー」で、横浜開港150年の特集がありました。
紀田順一郎さんは横浜生まれです。
神奈川近代文学館の館長を務められています。
というわけで、自伝を読んでみました。
本は地域の図書館にありました。
刊行から半年後の初レビューということです。
紀田順一郎さんは1935年横浜生まれです。
10歳で終戦を迎えます。
この本では、終戦までの戦時体験、そして戦後の1951年までの日々が語られます。
江戸時代までの横浜は寒村だったようですが、ペリーの来航で開港して以来栄えたということです。
1944年8月から紀田さんは箱根に疎開します。
そこでの食糧不足、子どもの間のいじめなどの体験が生々しく語られます。
1945年1月に紀田さんの父が亡くなり、紀田さんは横浜に戻ります。
このころから空襲がひどくなります。
紀田さん親子は小田原に家族で疎開します。
5月29日に横浜は焼け野原になります。
戦争が終わると、子供たちは親や教師のいうことを聞かなくなったということです。
暴力やいじめがはびこり、止めようがなかったと紀田さんは述懐しています。
1947年、6年生の時に学校で戦後最初のホームルームが開かれます。
60人のクラスの生徒全員が自由に意見を言い合います。
何が決まったかは覚えていないが、自由闊達に意見が言えたことでこどもたちは満足したと紀田さんは語っています。
中学3年の頃の紀田さんの読書体験も語られています。
永井隆の被爆手記「長崎の鐘」「この子を残して」、小泉信三「共産主義批判の常識」、谷崎潤一郎の「細雪」、石坂洋次郎の作品、吉川英治の「宮本武蔵」、ミッチェルの「風と共に去りぬ」などが必読本だったようです。
「新唐詩選」や魯迅の「故郷」などについても語られています。
図書館の記憶も描かれています。
当時の図書館は利用者第一ではなく、お役所的な「読ませてやる」という姿勢だったそうです。
図書館の変遷は戦後、開館日、開館時間も含めて、一般市民が利用しやすいように変化していきます。
紀田さんが神奈川近代文学館をどのような理念で運営しているかを感じられるところです。
「週刊ブックレビュー」の特集をきっかけに、神奈川近代文学館を訪れました。
気持ちのよい文学館でした。
展示も分かりやすく、神奈川県ゆかりの文学者の紹介も明解でした。
「港の見える丘公園」からの眺めも良かったです。 -
紀田順一郎といえば博覧強記で知られる着物姿の似合う渋いダンディな紳士ですが、中学生の私は、どういう訳か権田萬治と尾崎秀樹と彼とを、姿形において、ごっちゃにしていました。お顔も全然違うし、もちろん著作の質もまったく異なるものなのに。まさに博物学的な守備範囲で、ビブリオグラフィー(書誌学)からミステリー・SF・幻想文学
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横浜・本牧の佐藤家(作者)の歴史、自らの戦前、戦中、戦後の生活・風景を描いた作品。読み応えありました。