磯崎新の「都庁」―戦後日本最大のコンペ

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (476ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163702902

作品紹介・あらすじ

「ぶっちぎりで勝とう!ぶっちぎりで勝とう!」連呼する建築界の天皇・丹下健三。そのかつての師に、腰痛・腹痛・大スランプ中、満身創痍の磯崎新が、闘いを挑んだ!1985年、バブル前夜の東京で行われた新宿の新都庁舎案コンペ(設計競技)。磯崎新が提出した幻の「低層案」、そのキーワードは「広場」と「錯綜体」だった…。建築界の知の巨人の夢と格闘の軌跡を追う、建築ノンフィクションの大作。

感想・レビュー・書評

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  • 1985年の新宿新都庁舎コンペをめぐるノンフィクション。結局実現したのは丹下健三の超高層案だったが、主人公はあえて低層案(なので当初から勝ち目がない)を出した磯崎新、つまり丹下の弟子である。

    本書は都庁コンペの内幕を詳細に描くと同時に、そこにまで至る近代日本建築史の流れが丁寧に辿られているのが面白い。なので、広島平和記念公園、東京計画1960、大阪万博や前衛建築などについても知ることができた。岡本太郎も登場するし、建築と政治との関係(とくに丹下と鈴木俊一都知事)も描かれるなど、盛りだくさんの内容。

    装丁は書影にあるように和田誠で、表紙は磯崎。そして裏表紙には、蝶ネクタイの丹下が描かれている。たしかに、「ぶっちぎりで勝とう! ぶっちぎりで勝とう!」とスタッフに連呼して邁進する丹下の姿は、磯崎に劣らず魅力的であった。

  •  知人のSNSで紹介されていたので気になった本です。
     磯崎新さんについては著名な建築家という程度しか知りませんが、昨年(2022年)暮に訃報が流れ、改めてその人となりの一端なりともたどってみようと思いました。
     本書は、現都庁建築時のコンペの場を舞台に、磯崎さんの魅力的な人物像と彼を取り巻く様々な人たちとの営みの様を描き出しています。
     当時の時代感の描写や人間関係・師弟関係の妙がとても面白く、密度の濃いとても刺激に満ちた内容でしたね。

  • ふむ

  • 余談が多く読了に時間がかかったが、磯崎新という建築家を理解するにはこのくらいのまわり道をしなければ説明するのは難しいだろう
    小説のような本で建築の業界でない方でも楽しめる一冊である

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    磯崎新の「都庁」―戦後日本最大のコンペ
    (和書)2009年12月09日 20:36
    平松 剛 文藝春秋 2008年6月


    なかなか面白かった。建築デザインの形成過程が良く解る。決して神秘主義ではないし、権威主義でもないところが面白かった。磯崎新と丹下健三の関係なども良く書かれていた。フジテレビ本社ビルと磯崎新の「都庁」の関係なども知らなかったので参考になった。

  • 磯崎新の「都庁」―戦後日本最大のコンペ

  • 新宿にある都庁、辺りを睥睨して何だか偉そうで実はまだ行ったことがない。年明けにEテレの番組「ランドマークで見る戦後70年」で都庁コンペで低層案を出してきた磯崎新のエピソードが印象深くて、何かないかなと見つけたこの本。すごく面白かった。都庁コンペでの磯崎とその師丹下健三の動きを起点に、それぞれの戦後の歩みを綴る。建築は”アート”では済まされず、政治的であり、社会と密接に関係するものであり、金もコネも運も必要。そういえば「大聖堂」も同じだ。低層にしたのは、仕事の流れ=書類の動きが必ずしも高層型(ツリー)にはなっておらず、いろんな関係省庁を動き回る「リゾーム」構造からというところはものすごく腑に落ちた。旧都庁の悪口とか、鈴木俊一都政時代に建ったいろんな建物の話も印象に残る。この本の白眉は「伝丹下健三とでもしておいてもらいたい」磯崎新のこの言葉に尽きる。

  • ☆信州大学附属図書館の所蔵はこちらです☆http://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BA86162214

  • 審査委員や方法について候補者であった丹下健三が一枚噛んでこともあり、出来レースと呼ばれていた新宿副都心に建設予定の都庁舎コンペに取り組む磯崎、丹下の様子を彼らの背景や芸術的な尺度を紹介しつつ書き表した本。磯崎が師丹下の元を離れて独立してからも、丹下の建築に対する考え方が自分の中に染み込んでいることを実感させられていたこと、政治、建築業界での評判といった、建築士の技能ではコントロールできないところで建築士たちが活躍できるか、あるいは晩年の丹下のように浦島太郎状態になるかといった社会の面倒臭さといったところが特に印象に残った。磯崎自身は言葉を大事にする芸術家であり、彼が著わした本は50冊ほどにのぼるとか。

  • 戦前の岸田日出刀から前川、そして丹下、本書の主人公たる磯崎と、日本の近代建築のメインストリームをその各時代で代表する建築家達の関係を縦糸に、東京都庁という「日本最大のコンペ」における建築家たちの奮闘ぶりを横糸として、非常にコンパクトに多くの内容を詰め込んだ、エンターテイメントとしての建築書。なんだかんだと小難しい理屈を振り回しながらも、結局は「かっこいいから」この形を選ぶ、あるいはなんだか良くわからないまま選んだ形にあとづけでそれらしい説明をくっつける、リアルな建築家たちの息遣いを赤裸々に綴った文章にも好感が持てる。

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