幻想絵画館

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (164ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163629209

感想・レビュー・書評

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  • Wikipediaで桂子さんシリーズと題されている作品集のうち、第三作品目。四作品目を手に取る前に、桂子さんの物語の方を読まねばならない笑

    また家系図が少し更新され、俊・ゑり子(後妻)の子が慧君ということで、いとこの舞さんには慧君より数か月先に生まれた翔君という弟がいる。ゑり子さんは慧くんにとっての藤壺であり、美弥子さんという年上のフルートの先生が六条御息所、夕顔のようなゆふ子、そして絶世の美少女にして最後には別の世界に移動した華世さん…と選り取り見取りの百花繚乱の体。そんな慧君の、20の絵画を巡る20の神秘の世界。

    短編に入る前に掲題の絵がカラーで挿絵されているのだが、それを眺めてみても、どういう化学変化でこの短編になっているのか皆目見当がつかない笑。

    好きだったのはまず「サントロペ湾」。
    …遺体はまだ見つかりません。明け方、Qは夢を見ました。彼のノウ(脳)が融けてノウ(膿)になり、ウミ(膿)はそのまま黄色いウミ(海)にあるのです。海も空も狂気の色です。彼はその中に入つて溶けてしまつたのだと思ひます。…

    「穹」
    …それは夜の鳥のやうに飛んでくる。その黒い翼の動きを見ながら、慧君は眠りに落ちてしまふ。鳥は温かい体温を伝へながら慧君に蔽ひかぶさつて、その金色の目を慧君に重ね、漆黒の長い嘴を慧君の喉の奥深く差しこむ。そして慧君は女のやうに犯されるのである。…
    正直ここの文章は性的な意味で久しぶりにテンションが上がった。女をやわらかくするのが大得意の美少年が、なすがままにされ犯されるというイメージ、自分で作り上げたイメージを自分の手で破壊する快感。ストレートにテンション上がると思わなかったですが、私もまだまだ通常の人間のやうだ(?)

  • 1991年。初読だな。
    古今の名画からの物語。本がでかい。厚いんじゃなくて、サイズがでかい。物語の前に絵があるから。
    主人公は慧くん。入江さんの孫。従妹は舞さん。舞さんの弟は翔くんで、翔くんとつるんでる話が多い。
    ネットワーク駆使して、いろんなソサエティを開催している。まーナンパなんだがw 10代らしい好奇心と性欲、行動力、そして入江さんの家系。最強だね。
    舞さんは、慧くんより結婚を選ぶ。
    てか、作家の造詣の深さには驚く。古今東西の絵画もご存じなのね。

  • ダイヤモンドのように光輝を放った言葉で、会話の中に天衣無縫と気品の好いユーモアを沈潜させ、深奥な秘密をあらわにしている人間性を魅せている。心の琴線に触れて、自分自身の内部に語りかけてくる言葉たちを、飲み下すときの音と鼓膜の間にあるものを、しんみりと噛みしめ、より幻想的な高いところへ浮かび上がるための踏み台にした。
    形のないところに秘められた不朽性と才能に接する壮麗な王宮がある。
    気分にあわせて選べる多彩な二十の名画のうち、『林檎の樹Ⅰ/クリムト』、『仮面たちに囲まれた自画像/アンソール』に彩られた物語が好き。

  • インターネットの主、彗くんが主人公の短編集です。
    毎回1枚の絵画があって、それをお題にお話があります。
    彗くんと桂子さんが初対面の場面もあり、個人的に嬉しかったです。
    桂子さんは「愛人」ですが。
    倉橋さんの作品を読んでいていつも思うのですが、漢詩や漢文についての造詣が深くて勉強になるなぁ。。。

  • おそらく中学生の時だったと思うが、読み始めてはまった倉橋氏の小説の数々が絶妙に絵画と組み合わされて、芸術の表現の奥深さを知った本。選ばれた数々の絵画も素晴らしく、同時に収められた小説が絵画自身への想像力をかきたてる。これが読みたくて図書館へ通った。大人になって、この本を購買できて、なんだか夢の一つがかなった気がした。

  • 収録作: 神秘的な動物 /ピフル通り/夜色樓臺雪萬屋 /化物山水図 /サントロペ湾 /星月夜/選ばれた場所 /岑蔚居産芝図 /倣元四大家山水図 /眠れるボヘミア女/町のあけぼの/林檎の樹Ⅰ/黄山図巻 /穹/仮面たちに囲まれた自画像 /黒い貨物船 /青山紅林図 /赤いアトリエ /フラワー・アブストラクション/灰色のものと海岸


    ■文藝春秋 1991.9.30
     装釘 柴永文夫+岡崎さゆり
     オビコピー「おのずから誘う 神秘の世界!」「キリコ、クレー、ゴッホ。蕪村、木米、王原祀---。二十の名画に彩られた二十の短篇が、読者をおのずから神秘の世界へ誘う……。」

  • 十年以上前、図書館で読んでからずっと欲しいと思っている。

  • 絵に遊ぶ心遊ぶそして人は惑う。

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著者プロフィール

1935年高知県生まれ。大学在学中に『パルタイ』でデビュー、翌年女流文学賞を受賞。62年田村俊子賞、78年に 『アマノン国往還記』で泉鏡花文学賞を受賞。2005年6月逝去。

「2012年 『完本 酔郷譚』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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