動物園にできること: 種の方舟のゆくえ

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (301ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163549200

作品紹介・あらすじ

野生から切り離されて幸福なゾウは、クマは、ライオンはいるのか?動物本来の棲息地の景観をできるだけ再現する「ランドスケープ・イマージョン」。飼育下にある動物の精神的な健康をケアする「エンリッチメント」。絶滅危惧種の試験管ベイビー、代理母による繁殖、クローニング…。環境問題の啓蒙、生態系保全への積極的な関与という目標を掲げ、過激に変わりつつあるアメリカの動物園をめぐった、新感覚フィールドワーク。

感想・レビュー・書評

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  •  電子書籍で第3版が発売されてるので、可能な方はそちらを読んでいただきたい。
     水族館で働くものであれば読むべき一冊であるとオススメされ、読んだ本。
     『動物園から未来を変える』とともに、動物園・水族館関係者には読んでほしい一冊。
     動物園とは水族館とは、関わるスタッフとして我々に何ができるのか、読み終えたあとはしばらく頭の中がぐるぐると思考で埋め尽くされるし、スッキリとした解答が出るわけでもない。
     でも、そうして思考することこそが大切であるし、そのヒントを示してくれるとともに、自分の考えは間違ってなかったと自信も得られる一方、自分の考えは改めるべきだと今後の指針を改善できるきっかけにもなるかもしれない。
     野生動物を捕獲し、連れてきて隔離し、来館者に見てもらう。特殊な施設だからこそ、様々な意見が出てくるし、あって当然だと思う。
     繰り返しになってしまうが、動物園・水族館で働くということについて、いろんなことを考えさせられる。ただ、生物を連れてきて、その命を預かっている以上、漫然と過ごすことは許されない。忘れていたわけではないが、ある種、なれてしまっていた熱や初心を思い出せた。

  • 「動物翻訳家」関連本。
    エンリッチメント大賞の審査員でもあり、「我々はなぜ我々だけなのか」の著者でもある川端裕人さんのアメリカ動物園ルポ。

    コロンビア大学の研究員としてニューヨークに滞在中に、アメリカ各地の35箇所の動物園を取材したとのこと。広さも展示方針も様々な各地の動物園の描写は圧巻。

    動物園はよく行くほうだし、好きだ。しかし、動物を見るのが楽しいだけで「動物園は必要なのか」「動物園は正当化できるか」なんて考えたこともなかった。書かれたのは1999年。ここから20年で日本の動物園も変わっているはず、と思いながら、動物園を巡ろうと思う。

  • アメリカの動物園での新しい取組みを取材し、理想の動物園のあり方を模索している本。
    この本を読んでしばらくしてから、初めて旭山動物園を訪れましたが、まさに旭山動物園はこの本の理想の動物園を目指している!と思いました。

    ここでは、理想の動物園として、
    1.動物本来の棲息地の景観をできるだけ再現「ランドスケープ・イマージョン」
    2.飼育下にある動物の精神的な健康をケアする「エンリッチメント」
    3.絶滅危惧種の繁殖。また、繁殖した個体を野生に戻す試み
    4.動物園を訪れる人たちへの教育

    昔から動物園好きだった私が、「動物園オタク」へと変貌をとげるきっかけになった1冊です。

  • 旭山動物園について調べていて、生徒から紹介されて図書館から借りて読んだ本。
    旭山動物園に関わることは書いていないけど、アメリカの動物園の状況や、日本の動物園の遅れ、動物園の存在意義などについて書いてあった。
    勉強になった。

  • 帰省中に地元の図書館で借りて読んだ。
    同著者は小説『夏のロケット』を高校時代に読んだことがある程度で、本書のような幅広いフィールドで活動されている人物とは存じなかった次第である。

    この本だけではなんとも言えないが、驚きとショックが大きかった。
    とりあえず類似したテーマの本をいくつか読み、また今までより多くの動物園・水族園に足を運び、またいま現在の自分の某大学某学部という立場を利用して関連の人たちと話をする機会を得られたらと思う。それだけの衝撃があったし、また自分の将来のためにもただちにそれぐらいの行動をとる価値はある。きっと。

  • 種の保存計画(Species Survival Plans)の目的は、二つあります。
    野生からの捕獲が難しくなっているので、動物園で飼育する動物を自家供給するためと、繁殖による種の保存です。
    種の保存には、血統登録書の整備が必要です。
    飼育下繁殖は動物園の最大の機能ですが、これをもって動物園を正当化できるのでしょうか。
    動物園は現代版方舟なのでしょうか。

  • ■著者、アメリカ滞在中の動物園ルポ。動物園の存在意義とは?<BR>
    この時点ではアメリカの動物園は日本よりずいぶんと先を行っていたようで、最近日本でも聞くようになった、ランドスケープ・イマージョン、エンリッチメント、SSP(Species Survival Plans「種の保存計画」)なんてのがポンポンと出てきます。<BR>
    <BR>
    ■冷凍動物園、エコ・フォビア(生態系嫌悪症)とか先端技術や心理学が絡んでくるのもアメリカらしいというか…。<BR>
    <BR>
    ■そこにはアメリカらしい活発さがあって、自ら動物や生態系にダメージを与えてきた罪の意識も見えます。そして前者と通じるかもしれませんが、人が多いからこそだろう考え方の多様さがあります。<BR>
    今の日本で肉と乳製品を食べるのをやめようという他、魚まで禁止するほど徹底したベジタリアンは多分、個人の域を出ないのではないでしょうか。<BR>
    (そう主張する PeTA というアニマルライツ団体はアメリカで最大で、世界では60万人の会員がいるとか…)<BR>
    <BR>
    ■この本では、動物園に諸手をあげて賛成しているわけではありませんが、否定的な結論を出しているわけでもありません。多くの動物を苦しめるかもしれないけど多くの動物を救うかもしれない、と。いろいろな考え方があり、どちらももっともだと思えます。<BR><BR>
    結果が見え始めるのはいつ頃になるのでしょう。<BR>
    <BR>
    <BR>
    ■レッサーパンダが立ったとかで騒ぐ客が日本の動物園を支えている部分もあるでしょうが、ただ癒されたいわけではなく、積極的に動物が好きという人には必読!<BR>
    ちょうど今、日本の動物園が考えているんじゃないか、というようなことが載ってます。<BR>
    あと十年したらまた続きが読みたい!

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著者プロフィール

1964年兵庫県明石市生まれ、千葉県千葉市育ち。文筆家。東京大学教養学部卒業。日本テレビ勤務中、1995年『クジラを捕って、考えた』でノンフィクション作家としてデビュー。退社後、1998年『夏のロケット』で小説家デビュー。小説に『せちやん 星を聴く人』『銀河のワールドカップ』『算数宇宙の冒険』『ギャングエイジ』『雲の王』『12月の夏休み』など。ノンフィクションに『PTA再活用論』『動物園にできること』『ペンギン、日本人と出会う』『イルカと泳ぎ、イルカを食べる』など、著書多数。現在、ナショナル ジオグラフィック日本版および日経ビジネスオンラインのウェブサイトで「・研究室・に行ってみた。」を連載中。

「2020年 『「色のふしぎ」と不思議な社会』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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