天皇の原理

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (316ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163477107

感想・レビュー・書評

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  •  安倍政権になり、近隣諸国との歴史認識の違いをネタにしたニュースが増えている。本書は1993年に出版されたものであるが、人文・社会科学の分野で高い学識を持たれてい小室氏が「天皇」をどのように捉えているのか興味がわいて読んでみた。
     本書は全8章からなるが、最初の6章では天皇を理解する伏線としてユダヤ教、キリスト教、仏教について詳細に特徴が論じられており、天皇の話は出てこない。残りの2章でようやく天皇について論旨の展開が始まるが、幕末に「崎門の学」に端を発する尊王思想が高まったところで本書は終わる。
     近代以降の天皇に関する著者の見解を期待して本書を読んだ人は他にもいると思うが、おそらく自分と同じように「肩すかし」をくらったように感じたのではないだろうか。
     実は本書の序文に『(皇太子殿下の)御成婚記念にとしたい希望により急いだため、崎門の学の展開過程についての「詳論」は次回にまわさざるを得なかった。乞御了承。』との断りがある。天皇に関する論述の少ない本書が御成婚記念にふさわしのか、やや疑問ではあるが、諸般の事情があったようだ。
     よって、本書は天皇論としてではなく、宗教論として読む方が適切であろう。小室氏は2000年に「日本人のための宗教原論」を執筆しているが、おそらく本書がその原型になっていると思われる。
     では、天皇に関する論述を期待していた人はどうすればよいか?そのような方には2005年にワック出版から出版された「日本国民に告ぐ~誇りなき国家は滅亡する」をお薦めしたい。第4章に幕末以降の天皇の位置づけについて詳細な解説がある。また、この本では天皇論だけでなく、歴史認識問題を含め、現代日本の諸問題の本質が指摘されている。こちらはタイトル通りの憂国の書である。

  • ユダヤ教、キリスト教、イスラム教、仏教と儒教、この違いを比較分析しながら、日本における天皇の歴史的位置付けを解説してくれる。各宗教の救済の対象が個人と集団(国家)と異なる点や、神や天皇の位置付けを予定説と因果律で説明してくれる点が興味深い。

  • 奇跡の有無を論じる前に 140818

    知識の宝庫としては面白い内容だと思う
    しかし奇跡に対して短絡的で傲慢すぎるのではないか
    例えば
    わたしの無知な領域を利用しただけの
    奇跡だと考えれば
    どんな奇跡だろうが答えを見つけるまで
    保留しておく意外にないだろう

    もしもキリスト教やユダヤ教が
    この程度のトリックで相手を依存させて
    信者を募らなかばならないのだとすれば
    その依存心以上に大自然の真理に足る内容の無さを
    自ら暴露しているようなものであって
    その事の方が余程底が浅く学ぶに値しないと思うのだけれど

    例えば日食を計算出来ない社会に対してのみ有効な予言をしたり
    その日食の瞬間を奇跡に見せ掛ける如くのことである

    自分の無知を棚に上げて非科学的だと奇跡の具体的な現象を
    否定出来るだけの証明もできずに
    NOと言える無知さのほうが恥ずかしい

    知らないことやわからないことは差し当たって
    ペンディングにしておくべきなのだと思う
    自分を知るために自分が理解も納得もできないままに
    知っている気になっている自分を見つめる必要がある
    これを傲慢と謙虚の違いと見ることができるまで・・

  • 承久の乱の敗北により天皇(上皇)が神性を失ってから、江戸の終りに、再び神格化されるとともに、明治維新の断行を可能ならしめたのは何故かを、キリスト教、ユダヤ教の教義を補助線として、説明してみせた怪書。歴史に疎い私にその適否は直ちに判断できないが、面白い視座であることは間違いない。

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著者プロフィール

1932年、東京生まれ。京都大学理学部数学科卒。大阪大学大学院経済学研究科中退、東京大学大学院法学政治学研究科修了。マサチューセッツ工科大学、ミシガン大学、ハーバード大学に留学。1972年、東京大学から法学博士号を授与される。2010年没。著書は『ソビエト帝国の崩壊』『韓国の悲劇』『日本人のための経済原論』『日本人のための宗教原論』『戦争と国際法を知らない日本人へ』他多数。渡部昇一氏との共著に『自ら国を潰すのか』『封印の昭和史』がある。

「2023年 『「天皇」の原理』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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