- Amazon.co.jp ・本 (150ページ)
- / ISBN・EAN: 9784163273600
作品紹介・あらすじ
天安門事件前夜から北京五輪前夜まで。中国民主化勢力の青春と挫折。デビュー作「ワンちゃん」で第138回芥川賞候補になった在日中国人作家、注目の最新作。
感想・レビュー・書評
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1989年6月4日の天安門事件の頃、傷害事件を起こし退学処分を受けた民主化運動に参加する地方大学の2人の学生の
その後の人生の物語。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
1989年北京天安門での民主化デモに対して戒厳令を敷いた中国政府は、人民解放軍による弾圧を実施し、犠牲者が出るまでの惨事となった。いわゆる天安門事件である。
戦車の前に立ちふさがり進路妨害をする男性の姿がテレビで世界に流れ、人々の記憶に残る出来事となった。
物語は、事件そのものでは無く地方大学へ入学したのち慕っている先生や憧れの先輩の影響から天安門まで参加した二人の若者の青春と挫折が描かれている。
外国語を母国語とする作家が日本語で書いた物語として初の芥川賞を受賞していることで有名。
最近の著書『我が敵「習近平」 中国共産党の「大罪」を許さない』では、中華人民共和国政府の「香港弾圧」や「コロナ隠蔽疑惑」に対して痛烈な批判を展開しているが、この頃はまだそこまで政治色を出していない。
それよりも、芥川賞応募で枚数の限られた中、当時の地方の一般市民の心情が素直に語られた物語。
母国語で長編小説としたとき、もっと深く描かれていたかも…。 -
2019/09/05
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天安門事件の頃?
若き大学生の半生を綴った小説。
驚いたのが、この作家さんの母国語が中国語であり、この小説は成人後に渡来して習得した日本語で書かれたものだったということ。
終始素朴な、朴訥とした文章で書かれていたので、翻訳家が敢えてその表現を選んだのかと思っていた。
純粋で真っ直ぐな愛国家の若者を表現するのにピッタリだったから。
そして知り得ることの無い他国政情の雰囲気や、息苦しさが、簡素な文章からリアルに伝わってきた。
wikiで調べてみたら、かなりバイタリティに溢れた方のようで、しかもこの小説の主人公を連想させるような軌跡であり、ある意味私小説なのかもしれないと思うとまた味わい深い。 -
2008年の芥川賞受賞作品。主人公の梁浩遠と同郷の親友謝志強が秦漢大学への受験から始まり、入学してからの中国の民主化運動に奔走した青春時代。そして結婚し子供を持って、他国である日本でも運動を起こすも、挫折や時代の流れを感じさせる後半部分に大きく分かれている。
著者の脳内ではどういったことが起こっているのかと考えてみた。まず中国語で考えて日本語に変換するのか、日本語のまま考えそのまま作るのか。日本語で描かれているからか、全体的に柔らかい表現になっているように思う。
中国詩などは出てくるが、特段に中国特有の作品としてではなく捉えられ、また尾崎豊の歌が果たして中国人の心を捉えているのかは疑問であるが、この作品上においては青春の代弁的で、時代への反抗さを表すメタファーとしての材料として主人公らの心に刻み込まれているのには評価されよう。
現代においても、ますます中国の強権化が目を覆うほどになってきているが、日本が忘れてしまった学生運動を通した政治へのある意味真摯な情熱と、終盤における個々人の幸福との折り合いや、挫折とそれでも変わらない政治へのなんとも居心地の悪いやるせ無さが作品全体を通して訴えかけていよう。
こういった作品を在日の中国人が、日本語で描いたことに一つの価値があり、今の中国人に読んでみて感想を知りたいものである。 -
2008年の芥川賞受賞作でありリーマンショック直前というタイミングであったと改めて感慨深い作品。中国、日本それぞれが天安門事件以降に辿った軌跡は当時は誰も予想出来なかったと思うが、中国人である著者の目にはその後の20年は日本の停滞よりも中国、中国人の不甲斐の無さを無念に感じ、共産党支配による抗い難い抑圧の結果と受け止めていると理解をした。
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何かと縁を感じる著者。
歴史小説を読んでいる感覚で読み進める。登場人物の名前などはなかなか頭に入ってこないし、天安門事件などの知識もないと、面白さは半減するかもしれない。
それでも、ラストのあたりは涙が抑えられなかった。やるせなさというか、悔しさというのか。 -
2023.02.21読了
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2010年1月18日読了