秋の花火

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 25
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  • Amazon.co.jp ・本 (309ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163231204

感想・レビュー・書評

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  • 短編集。様々な女性の物語。

  • 2022.5.10-518

  • 『人生の盛夏を過ぎた頃の恋情は、静かで儚い花火のよう。』学生時代から密かに想い続け今ようやく心が通い合う…。
    五編からなる短編集ですが、最後の表題作の印象が非常に強く、それまでに読んだ他のお話が飛んでしまいました。
    素晴らしい音楽家だが、人としては全く
    尊敬できない、だが愛すべき恩師。女性から嫌われ男性から苦笑される、
    そんな先生の老いを真正面から捉えた姿が恋情より何より強烈。誰しも老いるが、なんとも残酷に感じられた。

  • 短編集。
    観覧車に閉じ込められた男梅沢の話、観覧車。
    天才ピアニストに振り回される旧友修子の話、ソリスト。
    若くして義母の介護に明け暮れる恵美子の話、灯油が尽きるとき。
    アフガニスタンに渡り戦場の悲劇を撮影しようとしていたカメラマン孝太郎の話、戦場の鴨たち。
    天才指揮者の晩年を見届けた楽団のセカンドバイオリン奏者の話、秋の花火。

    初読みの作家さん。
    読みやすくスラスラ進みますが、どこかがいつも暗い感じ。
    色々な方面の話でお得感のある短編集だったとは思います。
    介護の話は切実。少し前の話で、今とは少し違うかなとは思いますが、若い主婦が一人で背負うには重すぎる事実と悲しくなりました。
    戦場の鴨たちが一番好きでした。

  • 「観覧者」はまっとうに働いてるとはいえ孤独極まる男女に焦点が当てられ、しかし夜間に観覧車に閉じ込められるという非現実的なシチュエーションだけど、ユーモアと救いのあるラストでなかなか。この二人は今後一緒にお祓いに行って良い仲になるといいね、いや、なってくれ!

    「ソリスト」はこれぞ篠田節子!クラシックものの読みごたえは保証付きな感じ。

    「灯油の尽きるとき」は介護のしんどさが描かれていて、ただただ哀しい…。一筋の光明のように思えた不倫さえもこの結末。夫や小姑(居ない方がどれだけよいか)の無理解と厚かましさ、主人公の孤独と苦労を分かちやって助けてくれる人間は誰もいない。友達だって何の役にも立ちやしない。(女の友情は~云々といわれるのは、そもそも男は友人にせめて愚痴でも聞いてほしいというほど家庭内で切羽詰まる境遇に追い込まれることが少ないからかもね?)
    灯油を重そうに運んでる近所の人を見つけたら車に乗せてやればいいのに、素通りしたクソドライバーが男だったというのもまた腹立たしいね…。つらい…。

    「戦争の鴨たち」タイトル通りだったwwww
    滑稽でグッド!!私が妻の立場でも勝手に死んでくれと思うwwナイスなやりとりww

    「秋の花火」これまた読ませる短編で大満足。音楽の描写だけじゃなくて、人物描写もくどくなくて巧いんだよなぁ。

  • この著者の本はいつも物悲しい中年女性が主人公のように思われます。やはり女性の心理描写に長けているのでしょうか。遊園地で出会い、観覧車に閉じ込められた寂しい中年男女の「観覧車」。義母の介護に疲れてしまった女性の密やかな不倫と悲劇の「灯油の尽きるとき」。弦楽6重奏の練習中に思わず2人だけ、叙情に走って感情が出てしまうシーンの描写が美しい「秋の花火」。マルタ・アルゲリッチを思い出させる天才女性ピアニストの張り詰めた緊張感を描く「ソリスト」など。どうしても自分自身の年齢に合った女性の気持ちを表現していると思ってしまいます。

  • 5編の短編集ですが、どれも読みごたえがあり良かったです。特に「ソリスト」と表題作の「秋の花火」の音楽

  • 観覧車
    ソリスト
    灯油の尽きるとき
    戦争の鴨たち
    秋の花火

    一番秋の花火が良かった。
    篠田さんの独特さを盛り込みながらもどこか色艶を帯びている。戦争の鴨たちの後だから尚更そう感じたのかもしれない。

  • なんとなくチクリと来るものがある短編集。
    どの作品も、どこか遠くを思うというか、果てしなさを感じさせられた。

  • 【灯油のつきるとき】
    最期に彼女がしたことが、甘美な復讐だと思った。

    母とわかり合えたのにその道を選ぶか。
    男達への復讐じゃなく、彼女を檻に閉じ込めた世間への復讐も含まれていそう。

    恨みの籠もった復讐じゃなくて衝動だと思う。

    「ソリスト」
    ・演奏中に起こった事は、現実にはあるわけないと思える事なんだが、彼女が抱える時代背景と芸術家という職業ならそういうことも起こりうるんだという説得力がある。

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著者プロフィール

篠田節子 (しのだ・せつこ)
1955年東京都生まれ。90年『絹の変容』で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。97年『ゴサインタン‐神の座‐』で山本周五郎賞、『女たちのジハード』で直木賞、2009年『仮想儀礼』で柴田錬三郎賞、11年『スターバト・マーテル』で芸術選奨文部科学大臣賞、15年『インドクリスタル』で中央公論文芸賞、19年『鏡の背面』で吉川英治文学賞を受賞。ほかの著書に『夏の災厄』『弥勒』『田舎のポルシェ』『失われた岬』、エッセイ『介護のうしろから「がん」が来た!』など多数。20年紫綬褒章受章。

「2022年 『セカンドチャンス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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