メアリ・ジキルとマッド・サイエンティストの娘たち (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)
- 早川書房 (2020年7月16日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
- / ISBN・EAN: 9784153350489
作品紹介・あらすじ
両親の死を契機に、父親の謎めいた過去を調べ始めたメアリ・ジキル嬢。父の旧友ハイド氏とは何者なのか? ホームズとワトソンの助けを借りて調査するうち、彼女は科学者が狂気の研究の末に生み出した娘たちと出会い!? 19世紀ロンドンで展開するSFミステリ
感想・レビュー・書評
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『メアリ・ジキルとマッド・サイエンティストの娘たち』はい!もう面白い!もう楽しい!
え?わからない?
なんだよもう勘の悪い子たちだなー!
じゃあ、大負けに負けて登場人物紹介しますね
メアリ・ジキル…主人公。ジキル博士の娘。原典はスティーヴンソン(1850〜1894)の『ジキル博士とハイド氏』(1886)ジキル博士は優秀な科学者という設定で、メアリも聡明なレディ
ダイアナ・ハイド…ハイド氏の娘。ハイド氏の血を受け継いでか小柄で粗暴。ご存知の通りジキル博士とハイド氏は同一人物なので…
キャサリン・モロー…本作の執筆者(という設定)。モロー博士の娘。元ピューマの猫娘。原典はH・G・ウェルズ(1866〜1946)の『モロー博士の島』(1896)
ジュスティーヌ・フランケンシュタイン…フランケンシュタインの娘。女巨人。原典はメアリー・シェリー(1797〜1851)の『フランケンシュタイン』(1818)誤解されることが多いがフランケンシュタインはモンスターを生み出した創造者の名前で怪物は名無し
ベアトリーチェ・ラパチーニ…ラパチーニの娘。毒娘。ラパチーニは植物学者。原典はホーソーン(1804〜1864)の『ラパチーニの娘』という短編。
ホームズ&ワトスン…言わずとしれた名探偵と助手。原典はコナン・ドイル(1859〜1930)の『緋色の研究』(1887)
この登場人物がロンドンを舞台に繰り広げる冒険活劇なわけです!
ね、面白くないわけがないでしょ?w
それにしてもこの設定ですよ
これ、プロには無理な設定ですよね
この大ぶろしきはプロには無理
実際作者のシオドラ・ゴスは本作が第一長編なので、これを書いたときにはほとんど素人みたいな感じだったんだと思うんです
もう作品全体から漂う同人誌臭
え?誉め言葉ですよ?
同人誌ってめちゃくちゃ楽しいでしょ! -
早川書房さん、続刊お願いします。 #日本SF読者クラブ 時と所はビクトリア朝のロンドン。メアリ・ジキルが母を亡くしたところから、物語は始まる。メアリ嬢はジキル博士の娘。さらにハイド氏、ドクター・モロー、フランケンシュタイン(科学者の方)、ラパチーニ教授の「娘」たちが次々と登場。「娘」の中には、その出生に由来する常ならざる力を持つ者もいる。そして名探偵ホームズとワトソンも加えての推理劇というか冒険譚だなこれ。
この物語は、ドクター・モローの猫娘キャサリンが書いている小説という設定で、所々で各人のツッコミが入るのが面白い。これだけいわく付きの人物を登場させて1巻で完結させるのは、やはり難しいのだろう。三部作の最初の巻ということで、いろいろ謎が残されたままになっている。そして、いかにも「次巻を乞うご期待」みたいな終わり方になっている。あと原題は"The Strange Case of Dr. Jekyll and Mr. Hyde"からとっている(おそらく)。 -
風変わりな娘たち シオドラ・ゴス『メアリ・ジキルとマッド・サイエンティストの娘たち』 | 奇妙な世界の片隅で
http://kimyo.blog50.fc2.com/blog-entry-1574.html?sp
“モンスター”令嬢とホームズ、ヴィクトリア朝ロンドンで大冒険!『メアリ・ジキルとマッド・サイエンティストの娘たち』北原尚彦氏解説|Hayakawa Books & Magazines(β)
https://www.hayakawabooks.com/n/n9192d15665bc
メアリ・ジキルとマッド・サイエンティストの娘たち | 種類,単行本 | ハヤカワ・オンライン
https://www.hayakawa-online.co.jp/shopdetail/000000014517/pc_detail/ -
これは、高橋留美子作品では?
ジキルとハイドの娘(2名)
Dr.モローの娘(ピューマの獣人)
フランケンシュタインの娘(巨大)
ラパチーニの娘(毒女)
それぞれ暗い過去を背負っていて、ある連続殺人事件がきっかけで集結、更にホームズやワトソンも加わりドタバタと奮闘するお話
嫌な予感がして、途中で解説を読むと…的中。三部作の一作目でした。
この一作目では彼女達がチームとなるきっかけとなった事件と、彼女達が生まれるきっかけとなった謎の研究組織を追う(シリーズを通しての謎)
冒頭にも書いたのですが、この半分モンスター(彼女達の中では控えている表現)という設定が、この本を読んでいる途中に妻が好きで大量に見た「犬夜叉」の半妖や呪われた女性達と重なり、脳内でキャラクターを高橋留美子タッチで想像してしまい。むしろスッと入って来ました。
「副音声」この作品はモローの娘であるキャサリンが執筆(部分的に各キャラクターが執筆)した小説と言う設定で、途中小説の内容に対して、当時何を考えてたか?私はこんなセリフ言ってない!とか文句を言ったりキャラクターの会話が挟み込まれます。コレを不要なものとして捉えてしまうかどうかで評価が分かれます。(最初かなり戸惑いました。話の腰がバキバキ折られるので)
会話の中には"小説では過剰に表現されているだけで"本来はどういう性格なのか?や、キャサリンが要約して本当はもっと混乱してたことを隠していたりする仕掛けがあります。
面白くはあるのだけれど、SFとミステリーという枠で捉えていたので、スチームパンク寄りかと思いきやSF要素も控えめ、ミステリーも控えめ、アクションシーンも乱闘が起こった後に駆けつけるみたいな展開が2回ほどあったためとても中途半端な気がしました。
作者が伝えたかった「女性について」権利が強く無かった時代背景とマッドサイエンティスト達が女性を実験材料にしがちな点についての要素も、わかる部分はあれど、なんかぼんやりとしていたように思います。
どちらかと言うとキャラクター性を楽しむ事がメインなのかな?楽しいけどミステリーの謎も先を読みたくなるモノではなく、アクションも複数名で行動するため文に人物名が並びゴチャゴチャ感が強い。
ホームズは…ヒロインとのロマンスに今後発展させようとしているのかわかりませんが…主人公がお嬢様のため「探偵」という立ち位置の人がいないと捜査が進められない、話が進まないから「装置」として使われていたような…
うーん、なんというか「解決に向かう安定感」が強すぎてドキドキしなかったのかも
ちょっと私には合いませんでした。
キャサリンが作者であることを良いことに自分のアクションシーン等を他の人より数倍カッコよく描写してるのがちょっと面白かったです。
一風変わったワチャワチャした女子会感は良いけど完結しないと知りつつ読むのが辛かったです。
完結する話だったら星一つ増やしたいところ。 -
『ジキル博士とハイド氏』『モロー博士の島』『フランケンシュタイン』『ドラキュラ』等、かつて胸を躍らせたSF黎明期の傑作群。その登場人物たちに、もしも娘がいたら? しかも、彼女たちがある事件に巻き込まれ、シャーロック・ホームズやワトソンと一緒に事件の解決に乗り出したら?
本書はまさに夢のような企画である。おどろおどろしいタイトルのオマージュではあるが、本書は別にホラーではない。どちらかと言うとライトノベル。幕間に挟まれるモンスター令嬢たちの楽屋話も楽しい。
私の評価がやや辛いのは、ローカス賞作品とあるにも関わらずミステリだと思って読み出したことと、ホームズが好き過ぎるから。これらの傑作に耽溺したかつての子どもは一度手に取ってみてほしい。 -
ジキル博士の娘が、ハイドやフランケンシュタインらの娘たち、更にホームズ&ワトソンと共に連続殺人の謎を追う!
というあらすじに、軽いコメディだろうと思って読み始めたのだけど、これはフェミニズムSFなんだな…!
作中にはっきりと、女性の服装と父権社会についてなどの娘たちの意見が書かれているからでもあるけれど、それ以上にこの作り。
「女性の方が実験に順応しやすい」と男性科学者たちが決めつけたことによって、それぞれ辛い重荷を背負うことになった娘たち。
父権社会に役割を決められ、押し付けられてきた女性たちの比喩なのだろう。
その中で、個性豊かで魅力的な娘たちが共に戦い、守り合う姿はとても勇気づけられる。
今作自体が作中人物の一人が書いている小説という設定で、そこに他のキャラクターが口を出してくる作りも面白かった。
元ネタを全て知らなくても、十分楽しめる。
ミセス・プール最高。 -
原題は"The Strange Case of the Alchemist's Daughter"(錬金術師の娘の奇妙な事件)。
舞台はヴィクトリア朝のロンドン。主人公はメアリ・ジキル。
かの高名なヘンリー・ジキル博士の娘である。
そう、『ジキルとハイド』("The Strange Case of Dr Jekyll and Mr Hyde")のジキル博士だ。
父はとうに亡くなり、さらには母も亡くなって生活に困窮するメアリ。
母がハイドという人物に送金していたことを知り、その謎を解くべく、評判の私立探偵、シャーロック・ホームズを訪ねる。
折しもロンドンでは謎の猟奇的連続殺人事件が起こっていた。いつの間にかホームズに協力してこちらの捜査にも関わっていくメアリ。事件にはどうやら、「錬金術師協会」なるものが関わっているようだった。捜査が進むにつれ、彼女の元に、次々と変わった出自の娘たちが集まってくる。
母が送金していたハイドの娘ダイアナ。
毒を体に帯びたベアトリーチェ(『ラパチーニの娘』ホーソーン)。
猫のような肢体のキャサリン(『モロー博士の島』H.G.ウェルズ)。
女巨人ジュスティーヌ(『フランケンシュタイン』メアリ・シェリー)。
彼女たちには共通点があった。錬金術師協会に関わるそれぞれの「父」により、一風変わった人生を送ることになった点である。メアリとダイアナは父が常人でなく、他の娘たちは自身が「怪物(モンスター)」である。
さて、連続殺人事件と錬金術師協会の関わりやいかに。そして娘たちは事件を解決できるのか。
英文学で博士号を得たという著者らしく、ベースとなっている作品をほどよい匙加減で取り上げて組み合わせている。
巻末の北原尚彦の解説に詳しいが、『ジキルとハイド』、『ラパチーニの娘』、『モロー博士の島』、「シャーロック・ホームズ」シリーズはいずれもほぼ同時代に書かれている。唯一、『フランケンシュタイン』のみ、若干早い時代の作品なのだが、そのタイムラグもうまく処理している。
主人公をメアリとしているのも、ワトソン夫人がメアリだったことを思うと空想を誘う。もっとも本作のメアリはどちらかというとホームズに気がありそうなのだが。
物語はキャサリンが書いている体裁で、内容について、他の娘たちがやかましく口ばしを入れるメタな構成も楽しい。
軸となる事件そのものの展開は大して意外とは言えず、ミステリとしてのおもしろさは薄い。
だが、「父」ゆえに苦労する娘たちが、困難にへこたれず、冒険・活躍する様には快哉を叫びたくなるだろう。
ヴィクトリア朝のロンドンで、実際にこうした境遇の娘たちが本当に生き延びられたのか、若干の疑問は残るが、にぎやかな共同生活が可能であったと想像するのはなかなか楽しい。
父のせいで人生にハンデを負った娘たちが人生に立ち向かうとなれば、ある意味、これはパターナリズムに立ち向かうフェミニズムのお話とも言えるのかもしれない。そう思うと、本作が21世紀のアメリカで書かれ、一定の評価を得たというのは象徴的なことであるようにも思う。
3作シリーズの1作目。2作目以降は邦訳未刊行で、実際出るかどうかは未定のようである。
*以下、雑感です。
原題の「錬金術師」が邦題では「マッド・サイエンティスト」になっているわけですが、著者自身もこの2つを同じ意味として使っていたようです。本作の元になった短編は"The Mad Scientist's Daughter"というタイトルだったようですし。個人的にはここに出てくるような「実験」は「科学」というより「魔術」に近い気がして少々違和感があります。それをサイエンティストというなよ、と。まぁそこに目くじらを立てるべきではないのでしょうが。
錬金術にはニュートンも傾倒していたといいますが、そこから近代科学が発展していく際に、マジカルな部分は切り捨てられていったのではないのかな・・・? 機会があればそのあたりをもう少し追ってみたいところです。
*おそらく著者を動かした執筆の1つの「核」は『フランケンシュタイン』の「ジュスティーヌ」だと思います。彼女の独白は読ませどころ。原典を読んだ人は「ああ、だから”ジュスティーヌ”なのか」と納得するところでしょう。一方で、”アダム”が悪者として描かれ過ぎていて気の毒には感じましたが。 -
母を亡くしたジキル博士の娘メアリが、死んだはずのハイド氏の行方(指名手配犯である彼に掛けられた報奨金)を求めて「怪物」と呼ばれる女性たちと出会い、次第に或るひとつの大きな目的のもとに「アテナ・クラブ」という怪物娘たちのチームを結成するまでの話。
三部作の第一作目として、これ単品で読める一方しっかりと次作への布石も打っており(今作で提示された「錬金術師協会」なるものの謎は未解決のまま)、第二作、第三作が楽しみな展開。是非残りの二作も邦訳されてほしいところ。
本作には様々な大衆小説の登場人物たちの「娘」が出てくるが、彼女達のパーソナリティもそれぞれ個性的で面白い味付けになっています。
母亡き後の屋敷の資金繰りに四苦八苦しつつ「怪物娘」達の(ある種の)リーダー役をするメアリ(ジキル博士の娘)
蓮っ葉で、父のように凶暴な面を持ち口も悪いが、行動力と好奇心はピカイチのダイアナ(ハイド氏の娘)
美貌の中に強い毒を持つ「毒吐き娘」にして理知的な科学者の面を持つベアトリーチェ(ラパチーニ博士の娘)
人間の女性に改造されたピューマの「獣人」で、のちに「アテナ・クラブ」の活躍を物語にして書き表す作家となるキャサリン(モロー博士の娘)
無実の罪で絞首刑になったフランケンシュタイン家のお手伝いの娘が、のちにヴィクター・フランケンシュタインの手で人造人間として蘇り、高い上背、優しい気性と「怪物娘」達の誰よりも強いパワーを持つジュスティーヌ(フランケンシュタインの娘)
それぞれの原典を読まずとも物語そのものは勿論楽しめるけれど、一読しておくと「ああ、ここはこういう風にアレンジしたんだな」という視点でも読めるので面白いと思います。特にジュスティーヌに関しては、原典に登場したあのジュスティーヌをそういう風に活かしたか!という新鮮な驚きがあったので印象深かったです。
ラパチーニの話とドクター・モローの話が未読なので、他の積み本を消化した後にでも読みたいと思います。
なお、この「怪物娘」達のサポート役としてシャーロック・ホームズとワトスン博士が絡んでくるので、ホームズものが好きな人にもお勧めできる作品。
本編はキャサリンが当時を振り返りながら事件について経緯を描き出す形式で(ホームズ物語におけるワトソンのスタンスと似たようなもの)、特徴としては物語の随所にキャサリンの執筆について仲間達がツッコミを入れてくる描写が数行挟まったりするもの。文章に慣れるまでは若干癖が強いと思います。
キャサリンが真面目に書いている横で娘たちがかしましく突っ込みや(時には)仲が良いがゆえの難癖をつけてきたりするので、本編だけ読みたいタイプの人間には少し集中力が削がれるつくりかもなあとも思います。
が、読んでいるうちにいずれ「この突っ込みの数々も含めて本編」という風に慣れていくのでそこまで読みづらいことはないかと。
物語の最後の最後にまた新たな「怪物娘」の登場を示唆する場面が挿入されるので、初めの繰り返しにはなりますが、是非二作目、三作目と邦訳が出版されてほしいシリーズです。
ラノベが何かがあんまよく分かってないですw
のぞみかなえたまえ?それはわらべ
一Qさん
文学史に残る作家たちの名著から引っ張っ...
ラノベが何かがあんまよく分かってないですw
のぞみかなえたまえ?それはわらべ
一Qさん
文学史に残る作家たちの名著から引っ張ってきてます
ある意味恐ろしいことしてますw
あと、『ドラキュラ』に出てきた脇役とかも登場してたり、次回作で新たな娘が登場するのも匂わせてます
まだオールスターを揃えるつもりですかw
まだオールスターを揃えるつもりですかw