リヴァイアサン クジラと蒸気機関 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784153350014

作品紹介・あらすじ

1914年、ヨーロッパではふたつの勢力が拮抗していた。遺伝子操作された動物を基盤とする、英国などの「ダーウィニスト」と、蒸気機関やディーゼル駆動の機械文明を発達させたドイツら「クランカー」。両者の対立は深まり、オーストリア大公夫妻の暗殺につながった…。両親を殺した一派に追われる公子アレックと、空への憧れから男装し英国海軍航空隊に志願した少女デリン。ふたりの運命は、やがて巨大飛行獣リヴァイアサンで邂逅する。奇妙なテクノロジーが彩る第一次大戦下の世界で、少年と少女の成長と絆を描く、ローカス賞受賞の冒険スチームパンク三部作、開幕篇。

感想・レビュー・書評

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  • 遺伝子操作された動物を基盤とする、英国などの‹ダーウィニスト›陣営と、蒸気科学を発達させたドイツら‹クランカー›陣営が対立する第一次世界大戦。
    1914年、サラエヴォ事件で暗殺された大公夫妻の息子アレックは、両親を殺した一派に追われ、数名の忠実な家臣とともにストームウォーカー(二足歩行戦闘メカ)で逃げ延びる。
    一方、空への憧れから男装し英国海軍航空隊に志願した少女デリンは、とあるアクシデントを経てクジラを遺伝子改造した巨大飛行獣リヴァイアサンに乗り込むことになった。
    やがてふたりは、クランカー軍の空襲により墜落した「リヴァイアサン」で邂逅する……

    少年少女の成長と絆を描く冒険活劇は大好きな分野のひとつです。
    そして、このスチームパンクの世界観。フューチャー的でありながらノスタルジーを感じる、空想好きにはたまらない舞台設定でした。

    世界が戦争へと突き進む暗澹たる時代のなかで、アレックとデリンは、今自分の出来ること、やるべきことを懸命に考え行動します。とはいえ、未熟な少年たちです。当然、向こう見ずな行動に出て失敗することもありました。それでも、彼らの勇気や熱量には、何かが変わる……そんな希望と期待を持つことができ、自然と応援したくなるふたりです。
    当初、彼らは‹クランカー›側‹ダーウィニスト›側として、考え方や感覚の違いに反目しあいます。それでも、ともに困難を乗り越えていくうちに、相手にも抱える悲しみや恐怖、夢があること知り、お互いを理解しあっていきます。
    それらが少年たちの視点でストレートに語られることによって、大人たちが引き起こす戦争の愚かさが、語らずとも浮かび上がってくる結果になってるんじゃないかなと思いました。

    物語の終盤、瀕死の「リヴァイアサン」が生き延びるために、アレックはある進言をします。
    それは、両親を暗殺されるまでの公子アレックでは、決して思いつきもしなかっただろう着想でした。だから私は、彼が国を追われ、デリンと出会い過ごし、さまざまなことを経験した上での彼なりの成長の証にもなるんじゃないかなぁと思えました。

    アレックの進言を受け入れること。それはある意味「リヴァイアサン」が今までの「リヴァイアサン」ではなくなる究極の選択となることにもなります。生き延びた「リヴァイアサン」を見下ろしながらデリンは言います。
    「俺たちは、なんか、べつのもんになったんだよ」
    そこには、今までのままではいられなくなったことに対する哀愁と、未知の世界への期待、不安。他者を理解し受け入れることの難しさと大切さ……そんな彼女の複雑な心境を表しているようで、とても心に残った一文でした。

    物語は三部作の開幕篇。今回はスチームパンクの世界を堪能するというよりは、アレックとデリンの冒険物語として読むことができました。これから、どんどんSF色が強くなっていったらいいなぁ。ますます面白くなりそうで楽しみです。

  • 機械文明のクランカーvs遺伝子操作で人造獣を操るダーウィニスト。その設定だけでもうメロメロ。そして史実と空想の絶妙なバランス!願わくばこの三部作をきちんと最後まで刊行してくれることを望む。誰が読んでも楽しめる、最高のスチームパンク。

  • アレクシア女史以外のスチームパンクというものを、初めて読みました。男装、というかがらっぱちな少年そのままの、むしろテツオなノリだったので。(なので、何!?)
    やはり世の中へたれを動かすのは強い少女なのか、と思ったり。

  • アナザー・ヒストリーもの。第一次大戦前夜のサラエボの銃声からの物語開始だが、人工の巨大怪物が飛行船になっていたり、その一方ではガンダムのような人が乗り組める戦闘ロボットなど、スチームパンクムードタップリの期待のSFニューウェーブ作品。三部作のこれが第一作。

  • 最後の一行を読んだとき、思わず言ってしまった。
    「バーキング・スパイダーズ!ここで終わりかよ!」
    早く続編が読みたい、まさに page turner なスチームパンク。

  • ホッブズの超有名な著書・・・ではなくSFファンタジー。日本語訳が発刊される前からネットで話題になっていたので気になっていた。本屋で見かけて買うのに迷った方は最初のあたりのページにあるヨーロッパ地図を見ていただきたい。これで「おおっ」と思った方は是非読んでみましょう。

    スチームパンクとか遺伝子操作生物兵器とかは、アニメやらマンガやらでおなじみのネタなので新鮮味は薄いかも。でもそれらを第一次世界大戦の舞台にもってきたところが面白い。主人公たちも魅力的。少年と少女(ただし性別を偽り男のふりをしている)の友情。なんてベタな展開。だがそれがいい笑

    個人的には生物兵器の細かなギミックまでもっと書いてほしかったなあと思うが、全3部作らしいので今後に期待。

    あと、最後の○○と○○の合体シーンは、燃えます。

  • スチームパンクというジャンルだそうで、その世界設定に慣れるまで少しかかりましたが、あとはどんどん引き込まれました。

    戦闘場面や、機械&遺伝子改変生物の描写が長いのですが、この手のものはそこが「肝」。男の人には楽しいところでしょう。

    リヴァイアサンの艦長の名が「ホッブス」というのには(笑)

    フェミニストも突っ込めない(と思う)米国産時代物SF冒険活劇。

    次巻「ベヒモス」に続く。

  • 2012年1月21日読了。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      実は「リヴァイアサン」に始まる三部作、文庫になるのを待っているのですが、、、まだ先だろうなぁ~
      実は「リヴァイアサン」に始まる三部作、文庫になるのを待っているのですが、、、まだ先だろうなぁ~
      2013/01/22
  • この本は、第一次世界大戦を舞台にしたスチームパンクSFで、ローカス賞を受賞した三部作の第一巻です。この世界では、バイオテクノロジーと機械工学という二つの対立する文明をリアルに描き出しているからです。この本の世界では、英国やフランスなどの「ダーウィニスト」と呼ばれる国々は、遺伝子操作で生み出した巨大な動物たちを兵器や乗り物として使っています。一方、ドイツやオーストリアなどの「クランカー」と呼ばれる国々は、蒸気機関やディーゼル駆動の機械文明を発展させています。この二つの文明は、オーストリア大公夫妻の暗殺をきっかけに戦争に突入します。

    そんな本作の主人公は、二人の少年少女です。一人は、暗殺されたオーストリア大公の息子であるアレック。彼は、両親を殺した一派に追われる途中で、数名の家臣と共にストームウォーカーという多脚マシンで追っ手からの逃亡を余儀なくされます。もう一人は、空への憧れから男装して英国海軍航空隊に志願した少女デリン。彼女は、リヴァイアサンの乗組員として、アレックと出会います。二人は、敵味方の立場にあるにもかかわらず、次第に友情を育んでいくことになります。しかし、彼らの周りでは、ダーウィニストとクランカーの戦争が激化していきます。彼らは、自分たちの属する文明と、自分たちの信じる正義と、自分たちの絆との間で、どう選択するのでしょうか。

    私が思う本書の魅力は、やはり、対象的な二つの文明の描写です。作者は、バイオテクノロジーと機械工学という二つのテーマを、非常に独創的なアイデアで物語に落とし込んでいます。例えば、リヴァイアサンは、クジラだけではなく、他の動物の遺伝子を組み合わせて作られた飛行獣で、その体内には、様々な生き物が共生しています。また、クランカーの機械は、二脚歩行兵器や八脚歩行兵器だけではなく、巨大な飛行船や潜水艦なども登場します。これらの文明は、現実の歴史とも関連付けられており、例えば、ダーウィニストは、進化論の発展によって生まれた文明であり、クランカーは、産業革命の発展によって生まれた文明であるという設定になっています。

    ジャンルとしては、スチームパンクSFになる本作。しかし、歴史と科学と空想と冒険と人間という要素を組み合わせた、ジャンルに留まらない魅力が詰まっています。

  • 933-W-1
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