このやさしき大地

  • 早川書房
4.16
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本棚登録 : 191
感想 : 27
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  • Amazon.co.jp ・本 (488ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152101747

作品紹介・あらすじ

1932年、ミネソタ。教護院に暮らすオディは、ある日、暴力を振るう職員を殺してしまう。彼はおばに会うため、兄や親友、竜巻で母親を失ったばかりのエミーと施設から逃げ出し、一路カヌーでミシシッピ川を目指すが――。少年たちのひと夏の冒険と成長の物語。

感想・レビュー・書評

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  • すごく読みやすくて深く没入でき、爽やかな読後感。
    子どもがその年ごろになったらぜひ読んでもらいたい話でもある。
    頼れる家族、仲間という括り、どんなに大変な環境でもへこたれず、他人に手を差し伸べられる人々(逆の人もいるが)、勇気をもらえる話だと思う。
    1930年代のアメリカのことは無知だったが、インディアンなど、急に生きづらくなった人が多かったんだなぁ、、
    あと過去が見えたり未来が見えたりという人もいるが、最初こそ"リアルさとは…"と思ったが、だんだん抵抗がなくなっていく不思議。
    折を見て読み返したい。

  • 素敵★5 幼く貧しい少年少女たちの逃避行… 人生と家族について学び多き物語 #このやさしき大地

    ■あらすじ
    1932年のアメリカの小さな街。ある教護院でネイティブアメリカンや孤児たちが、貧しくも辛い労働を強いられる暮らしをしていた。主人公の兄弟と友人たちは、問題を起こしてしまい教護院から逃げることを余儀なくされてしまう。
    彼らは自分たちの家族を見つけるため、密かにカヌーで川を下っていく…

    ■きっと読みたくなるレビュー
    めっちゃいい話★5
    さすがはアメリカ産のミステリー、物語として完成度がバチクソ高い。彼らの人生をずっと傍から見ていたくなるような素敵な小説でした。

    本作の良いところをあげるとキリがないのですが、もっとも私の心を打ったのは家族と仲間の描き方。主人公の少年少女たちはもちろん、この物語に出てくるすべての人たちが大事にしている価値観。

    こんな不遇の時代、辛く貧しい環境だからこそ、大切な人と寄り添って、それこそ必死に生きていく。いま我々が生きている豊かで個人至上主義の時代では忘れがちな、とても重要なことを教えてくれます。

    そして主人公である少年少女たちへの想い…
    彼らを応援したり、生活を支えるなど何かをしてあげるというよりも、私はただ手を握ってあげたくなりました。

    〇児童虐待
    私がこれを許せない理由は二つ。
    ・暴力と恐怖によって子どもたちの主義主張を奪い、未来が閉ざされてしまうから
    ・力の強い者が全て正しいという理屈を子どもたちが学んでしまうから

    古の時代も、現代も、これから未来も、絶対に許したくない。

    〇人種差別
    アメリカのリアルな歴史を学ばせていただきました。
    何処の国でもある社会問題ですが、偏った価値観に縛られずに、話し合い助け合うことが不可欠です。

    〇経済格差
    いつの世にも存在する、その時代や環境に馴染まない人たち。
    特に現代では顕著な、自分だけが得をすれば良いという考え方…手を取り合って生きていけないものなんでしょうか。

    〇豊かなキャラクター
    登場人物の全員が個性をもって生き生きと描かれていてスゴイ。
    強みや弱み、後悔している過去、恨み… ひとりひとりの人生をまるっと感じることができました。

    〇仲間との関係性
    それぞれが大事にしている価値観や信条。仲間を大切に思いながらも少しずつすれ違っていく。子どもたちが新しい人との出会いや環境変化によって、どれほど影響をあたえ、成長に寄与するのか。
    微妙な心の揺れが胸を打ち、ただみんな幸せになって欲しいと願いました。

    ■推しポイント
    人は何のために生きているんでしょうか。

    本作の主人公である彼らは、川を下りながら、街を転々とし、様々な人々と出会い、別れながら生き抜いていく。そこには楽しいことばかりでなく、むしろ辛いことや悲しいことばかりで、涙を流すことも多い。

    しかし人が苦労しながら暮らしているこの大地は、きっと優しさに包まれている。何故なら、苦労している人のとなりにも、また人がいるから。

    やっぱり私は、人の笑顔を見るために生きていたいな。

  • 1932年夏、ミネソタ
    物語の舞台は大恐慌時代のアメリカです

    主人公は12歳の少年、オディ。
    ネイティヴアメリカンの子供たちが集団生活を送るリンカーン教護院で暮らしていた。
    施設の中で唯一の白人である孤児のオディと兄のアルバートは、ある事件から施設に居られなくなり、逃亡することになる。

    親友でスー族のモーズと、竜巻で母親を失ったばかりの幼いエミーと共に、兄弟の叔母がいるセントルイスへ向かう。
    4人はカヌーで川を下り、ミシシッピ川を目指すのだが…

    ひと夏の冒険物語なんて甘い話じゃない
    これは本気で命懸けなんだ


    私はこの本を読み進めていくうちに、アメリカの歴史的背景についての様々を知ることになる。
    彼らが受けてきた虐待、ネイティヴアメリカンに対する人種差別、大恐慌という困難で貧しい時代等…

    知れば知るほど苦しかったが、旅の途中で出会う人々の優しさ、交流を通して成長していく彼らの逞しさに胸がいっぱいになる。

    彼らが出会った人々は、自身も困難な生活をしているにも関わらず、手を差し伸べ、導き、家族の大切さを教えてくれた。
    どの登場人物も魅力的で、まるで私の目の前に存在するかのように生き生きと描かれているのが印象的。

    これはおよそ90年も前のアメリカの物語だが、現代の日本に住む私達にとっても決して遠い国の話ではないと思った。


    *大切な場面で、オディのハーモニカが出てくるのだけど、それらの曲をYouTubeで聴いてみました
    より物語に入り込めるのでオススメです*

    • aoi-soraさん
      ほん3さん、おはようございます♪
      すごく良い作品でしたよ~(⁠*⁠˘⁠︶⁠˘⁠*⁠)⁠
      是非ハーモニカと共に♪
      「ありふれた祈り」という姉妹...
      ほん3さん、おはようございます♪
      すごく良い作品でしたよ~(⁠*⁠˘⁠︶⁠˘⁠*⁠)⁠
      是非ハーモニカと共に♪
      「ありふれた祈り」という姉妹編?のような作品もあるようなので、今度読んでみたいなぁ、と思ってます。
      2023/08/30
  • 1932年、ネイティヴアメリカンの子どもたちが集団生活を送るリンカーン教護院の施設から逃げたオディと兄のアルバートにモーズとエミーの4人。
    彼らが、オディとアルバートのおばさんが住むセントポールを目指して、カヌーで川を下り旅に出る。

    劣悪で過酷な労働を強いられた苦痛から逃れ、新しい人生へと希望を持っていた旅であったが、行く先々でもさまざまな試練があった。

    冒険ということばよりももっと深くて重くてそして、貴重で価値がある体験のようだ。

    いろんな家族や大人たちと出会うたびに彼らにとっては敵なのか見方なのかを探りながら、助けたり援助してもらったり、そして導いてもらいながら成長していく姿は感動でしかない。

    終盤からは予想外の展開になり、読む速度も増す。4人の絆の深さに凄さを感じながら時には対立し、離別するのかと思ったがラストは良かった。

    時折挟むオディの物語やハーモニカのメロディが情緒を増して人生の旅という感じがした。

    どんなに厳しい環境であっても諦めずに進んで行くという力強さやお互いの思いやりなどの優しさ、信頼関係などたくさんのことを気づかされた。

  • これは超絶好きなやつ。
    アメリカ中西部を舞台とする、悲運にまみれた少年少女達が旅路の中で過酷な現実をくぐり抜けつつ逞しく、そして眩しいほど真っ当に成長してゆく物語。
    いわゆるロードノベル。

    似たような雰囲気の作品でぱっと思いつくのは『東の果て、夜へ』なのだけれど、あれは前半がいまいちだったのに対して、本作はもう最初から最後まで胸を掴まれっぱなし。
    いじらしい展開、残酷なまでの運命の悲劇という点では『われら闇より天を見る』の色合いも持っているが、あちらよりも幾分穏やかな心持ちで少年少女の顛末を見守ることができる。

    時は1932年ミネソタ。
    幼くして父母を失った兄弟(兄アルバートと弟オディ)は当時先住民達の浄化政策としてアメリカ各地に設立された寄宿施設のひとつであるリンカーン救護院に身を寄せることになる。

    行儀よく生活するアルバートをよそに、オディはイタズラや懲りない言動で心無い悪徳職員に目をつけられ、余計な難癖を自ら呼び寄せるような日々を過ごす。
    徐々にではあるが悪化の一途を辿る生活の中、一縷の光が見えたと思いきや、絶望的な嵐に見舞われ大切な人とつかの間の希望を失う。
    さらにはふとしたはずみで悪徳職員を殺めてしまう。

    表面的にはいい子ぶっているが誰よりも弟思いで機械にめっぽう強い兄アルバート、親友で先住民をルーツとするモーズ、嵐で母を失った不思議な力を持つ妹的存在のエミーと共に、セントルイスへと続くギレアド川を下り逃亡する生活が始まるさすらいの4人。

    もうとにかく行く先々で出会う困難、過ち、悟り、裏切り、真実との対面、ときに甘酸っぱい恋の展開が秀逸。
    彼らの境遇を寓意で包み込み、美しく核心的な”おはなし”に仕立て上げるオディの語り、オディが奏でるハーモニカから溢れる音楽が物語の魅力をさらに引き立てている。

    『名探偵のいけにえ』で感じた、史実をベースとするフィクションに対するエクスキューズの違和感についても、「私が語った話のうち、ある部分は真実であり、あとは…そう、薔薇の茂みに咲いた花と呼んでおこう。」なんて巧みな表現をしてくれており、何もかも満足。
    この物語を執筆するきっかけとなった『ありふれた祈り』もおすすめ。

  • 1932年、ミネソタ。ネイティヴアメリカンの子供たちが集団生活を送るリンカーン教護院。施設の中で、唯一の白人である孤児のオディとアルバート兄弟は、生意気な態度で日頃から院長に目を付けられていた。ある日、横暴な管理人をふとしたことから殺してしまったオディは、兄のアルバート、親友でスー族のモーズ、竜巻で母親を失い孤児になったばかりの幼いエミーと共に、教護院から逃げることを余儀なくされてしまう。オディとアルバートのおばが住んでいるというセントポールに行くため、四人はカヌーで川を下り、一路ミシシッピ川を目指す。旅の途中、出会いと別れを繰り返した四人が知った秘密とは―?

    著者の作品を読むのは、「ありふれた祈り」以来。少年たちの成長物語として、強くお勧め。

  • この世界観にしばらく浸ってたいな。

  • ロードムービー見ているよう。少年と少女が川を下り、町にたどり着く。そこでの人との出会いでいやおうなく成長する、風景やハーモニカの音を背景に壮大なストーリーが繰り広げられました。第6部の展開に胸を打たれました。エピローグも大変印象的。こんな少年たちに出会うことはないだろうけれど、手を差し伸べられる大人でありたいと思いました。

  • “ひとりじゃないから”

    “ぼく”ことオデイら4人は、孤児院から脱走してミシシッピ川をカヌーで下りセントルイスへ旅をする。
    その道中でさまざまな出来事と遭遇し、やがて4人はそれぞれの道を探し始める。

    少年たちの成長を描くロードムービーとして、王道を進む物語だが、さすが「ありふれた祈り」の作者で読み進めることに飽きさせない。

    ネイティブ・アメリカンの処遇や世界恐慌がもたらした農民たちの貧困と流浪など、20世紀初頭の出来事が挿入されており、読後感は濃厚。

    ただ、同時代を描いたスタインベック『怒りの葡萄』と比べてしまい、力強さに物足りなさを感じた。

    でも、面白かったです。

  • 過酷で劣悪な教護院から逃げ出した4人の少年少女の魂の旅路。追っ手から逃れながら様々な出会いと別れを経験し、次第に変化を遂げていく若者たち。変わってしまった自分、変わっていく仲間たちを目の当たりにして心揺れる主人公の語りに、生きることの意味を問いかけられている気分だった。要所要所で音楽が果たす役割がとてもよかった。

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