円 劉慈欣短篇集

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152100627

作品紹介・あらすじ

十万桁まで円周率を求めよという秦の始皇帝の命により、学者の荊軻は始皇帝の三百万の軍隊を用いた驚異の人間計算機を編みだすのだが……『三体』抜粋改作にして星雲賞受賞作「円」、デビュー短篇「鯨歌」など、全13篇を収録した中国SFの至宝がおくる短篇集

感想・レビュー・書評

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  • 劉慈欣、日本初の短篇集!『円 劉慈欣短篇集』書影&収録作公開!|Hayakawa Books & Magazines(β)
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    円──劉慈欣短篇集 | 種類,単行本 | ハヤカワ・オンライン
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  • 「三体」の劉慈欣の短編小説集。
    「地火」は石炭のガス化、というプラントでやることを自然圧力環境下でやろうとした試み。ダイナミックさと炭鉱の復活にかける思いと技術者としての葛藤があり、なかなか面白い。
    「詩雲」は世界観がなじめなさ過ぎてまったく入ってこなかった。
    「円」の”軍隊計算機”は三体の中でも出てきたアイデア。
    一作品当たりは短いので比較的軽く読めるが、読みやすさとしてもアイデアの練度としても、?なものもあり。テッド・チャンあたりの方が読み応えあったかな

    「鯨歌」
    クジラを操作し麻薬取引を行う者たちを襲った思いがけないトラブルに遭遇する。

    「地火」
    炭鉱の町で、寂れていく炭鉱の中で、生まれ育った町を救うため、地中での大規模な石炭のガス化を図る。

    「郷村教師」
    中国の貧しい村で教育に情熱を注ぐ教師。彼は村の大人たちの無理解を嘆きながら、次世代の子供を変えようと必死に藻掻く。
    病に苦しむ彼が倒れたとき、高度な宇宙文明が地球を訪れ、地球人のレベルを測ろうとする。

    「繊維」
    パラレルワールドもの。複数の異なる世界から迷い込んだ人たちが一堂に会し、奇妙な”地球”を語り始める。男は教養はないが可愛い、ピンクの地球出身のワワニと一緒の世界に戻るのか、選択を迫られる。

    「メッセンジャー」
    ヴァイオリンを愛する老人のもとに不思議な青年が現れ、不思議なヴァイオリンを置いていく。老人はアインシュタインだった。

    「カオスの蝶」
    旧ユーゴスラヴィアの”バルカンの火薬庫”と呼ばれた地で、空襲を恐れる一家。父は全球モデルに基づく気象モデルを作り上げ、スパコンにより”カオス”を起こせる場所を探す。

    「詩雲」
    高度文明に出会った恐竜型の地球文明の生命体。その滅亡をかけた場で漢詩の美しさを問い、高度文明は李白のクローンを作りだし、より優れた漢詩を追う。

    「栄光と夢」
    戦争の代わりにオリンピックが開催された世界で、荒廃したシーア共和国とアメリカ合衆国が戦う。恵まれないマラソン・ランナーのシニは夢見たオリンピックの舞台で、その競技の名にふさわしい、決死の走りを見せる。

    「円円のシャボン玉」
    シャボン玉を愛し、その不思議な光に魅了された少女は大人になり、巨大なシャボン玉つくりにさらにエネルギーを注ぐ。「役に立つ研究を」と父に口酸っぱく言われた彼女は砂漠の街に光をもたらす。

    「二〇一八年四月一日」
    長寿命化技術の発達した世界。主人公の男は会社の経理システムの改変をし、横領をして大金を手にする。犯罪覚悟で長寿命化に踏み切る。彼の恋人は人工冬眠をする。一つ一つの選択で人は変わり続ける。それでも、”永遠”を望む。

    「月の光」
    未来の自分から、地球温暖化による破滅的な影響を避けるために電話がくる。地球の未来を救ういくつかのアイデアが提示される。しかし、必ずしもテクノロジーが思うように作用しない。歴史はどんどん悪化する。

    「人生」
    新生児に記憶を引き継げるようになった世界。「今の記憶をそのままに若返ることができたら」というのは多くの人が想像する世界と思いますが、個体間での記憶が遺伝的に引き継がれたとき、胎児はなにを思うのか?

    「円」
    秦の始皇帝の時代。燕の使者・荊軻は円周率に”無限の命”の姿を求め、大規模な”人間コンピュータ”を使い、円周率の計算を行う。
    数百万の大軍を用い、円周率を計算したそのとき、北部からの燕・斉・匈奴の軍勢が迫る。

  • 有名な中国のSF作家ということで名前を目にしたことがあったので、手にとって借りてみた。
    なんとなく読みづらくて結局全部読み終わる前に期間が来て返しちゃったんだけど。。。またいつか読みたい、特に表題作の"円"は気になってる。

  • 中国の方である劉慈欣が描くSF短編集。『三体』も文庫化されたらすぐ書いたいと思う。「鯨歌」「詩雲」「円」が特に面白かった。

    「鯨歌」鯨にチップを埋め込むことにより外部からの制御ができるようになった世界。その技術を利用して薬物の密輸をするマフィアとその技術者。密輸自体は成功したものの密猟者たちによって鯨が狩られて2人とも死んでしまうというもの。新旧の価値観の皮肉が描かれていた。

    「地火」石炭労働をメインとした話。技術革新により炭鉱夫の仕事が楽になるはずであったが、技術を過信しすぎたために自然にやられてしまう。父親と局長の言葉が刺さった。

    「郷村教師」中国の農村地で一生を終えようとしている老教師。周りから変な目で見られても彼は農村地の少年少女たちに学問を教えることをやめなかった。一方で、天の川銀河の中心地では超高度に栄えた文明があった。彼らは宇宙間戦争で疲弊しており、新たな火種が生まれないように宇宙を整理しているところであった。
    老教師の最後の教えが、地球を救うことになるというのが、教育の大切さを説いており、また、超高度文明の人たちが純粋さ、素朴さに気付いたのも作者が伝えたかったことなのかな。

    「繊維」量子力学に基づく平行世界がたくさんあり、その世界が一堂に介してしまう話。いろんな地球の色があったり、同じだが違う人がいたりと面白かった。

    「メッセンジャー」アインシュタインの過去を元にした話。彼が未来の人と交信した、という話を元にしているのだろう。

    「カオスの蝶」バタフライ効果を解明し、一種の気象兵器として用いる話

    「詩雲」高度に発展したテクノロジー文明に飲み込まれた地球文明。その高度に発展したテクノロジーよりも発展したテクノロジーを持つ神との邂逅。精神的な文化はテクノロジーによって越えることはできない、と伝えてている。将棋などのAIの進化も一手の評価は教えてくれるが、全体としての評価や価値は教えてくれない、というのと似ている。

    「栄光と夢」オリンピックが戦争の代わりになった世界。競技での勝利が戦争の行方を左右するというもの。1人のアスリートにより国が一つにまとまるも、競技での勝利が戦争での勝利という勝者の理論には響かず、泥沼化していってしまう。

    「円円のシャボン玉」シャボン玉が好きで美しいと感じる円円が科学者となってシャボン玉によって街を救う話。他に比べて暖かい話だった。

    「2018年4月1日」改延という遺伝子的な延命ができるようになった時代にその手術を受けるという決断をした主人公の話。IT共和国なるものが建国され、実社会に宣戦布告をした。が、これはエイプリルフールのネタであった。この話のどこまでが虚実なのかがわからないのが、この話の面白さなのだろう。

    「月の光」未来の自分から科学のアドバイスをもらうもそれを実行に移そうとすると、さらなる悲劇的な未来になってしまう話。最初に呈示されたせんたくしがやはりベストだったのかもしれない。それを知るためには、他の時間線を旅するしかない。どんな決断にも後悔があるというこれが真理であろう。

    「人生」前世の母親の記憶を持った胎児と母親と研究者が会話をする話。『ドグラ・マグラ』の胎児の歌のような話に感じた。

    「円」円周率には不老不死が宿っているとされるため、秦の始皇帝により、円周率を求めよ命令される。人間を使って0と1の二進法によって円周率を求めようとする。それは、コンピュータの先駆けであったが、人間コンピュータにも裏があったという話。

  • 『三体』がハードル高いと思っている人向け、というはるさめまんさんのレビューを見て読んでみましたが面白かったです。
    個人的には鯨で麻薬を密輸する「鯨歌」と、炭鉱に代わる石炭ガスを採掘しようとする「地火」、300万の兵士で円周率を計算させようとする表題作「円」が好みでした。
    この三作は特に絵か浮かびやすく、優れたおとぎ話のようでした。
    いくつか苦手な要素もありましたが、次は『三体』に挑戦しようと思う私でした。

  • 三体でわかりきった劉慈欣の現代SF最強の脳が短編でも炸裂。どれもこれも凄かったけど「繊維」は筒井康隆っぽくて特に好きだった。

  • 明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。

    昨年末から読み始めて一緒に年を越すことになった。そして先日ようやく読み終わったこちら。劉慈欣さんの短編集。劉慈欣さんと言えば「三体」。もちろん未読。全然知らなかったけどSFなのね。でこちらの「円」ももちろんSF。まず中国とSFの融合が私の中ではなく、相当に面食らった。いうなればキングダム×SFなんて感じ。全くイメージがなかった。凄い。どの短編も趣向が違ったSFの物語でとても面白かった。ちょっと今までにない様相。

    こうなってはあの「三体」を手に取らなければいけないのか。あの厚みにひるんでしまう私…どうしよう。

  • 三体の著者のデビュー作はじめ、13編が収録された短編集。長い作品でも50頁くらいなので、サクサク読める。タイトル作の「円」はSFアンソロジー「折りたたみ北京」で読んではいたものの、こちらは原文からの翻訳となるそうだ。「流浪地球」に再録されている「詩雲」は改めて読んでも楽しめた。他、「カオスの蝶」、「円円のシャボン玉」が印象的だった。

  • 短編集。「カオスの蝶」圧倒的な無力感。人の力はちっぽけだ。「月の光」何も出来ない。何も変わらない。「人生」始まる前に絶望して終えてしまった人生。

  • 劉慈欣さんのエッセンスが詰まりに詰まった短編集。三体はハードル高いと尻込みしている方には、まずはこの本から手に取ってもいいのかもしれません。

    特に好みの短編は「栄光と夢」と「円円のシャボン玉」。特に円円のシャボン玉は、ひたすらポジティブになれる短編で、劉慈欣さんはこんな話も書けるのかと驚かされました。次の短編集も期待!

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著者プロフィール

1963年、山西省陽泉生まれ。発電所でエンジニアとして働くかたわら、SF短篇を執筆。2008年に刊行された『三体』で人気に火が付き、“三体”三部作(『三体』『黒暗森林』『死神永生』)は中国で2100万部以上を売り上げた。2014年にはケン・リュウ訳の英訳版が刊行され、2015年、アジア人作家として初めてSF最大の賞であるヒューゴー賞を受賞。2019年には日本語訳版が刊行され、11万部を超える大ヒット。

「2023年 『神様の介護係』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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