インタヴュー・ウィズ・ザ・プリズナー (ハヤカワ・ミステリワールド)

著者 :
  • 早川書房
3.78
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本棚登録 : 385
感想 : 43
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152100313

作品紹介・あらすじ

1775年、独立戦争中のアメリカ。収監された謎の男エドワード・ターナーを記者ロディが訪ねた。ロディはエドに、何故コロニストとモホーク族の息子アシュリー・アーデンを殺害したのか訊ねるが……本格歴史ミステリ『開かせていただき光栄です』シリーズ最終作

感想・レビュー・書評

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  • 1929年生まれの皆川博子先生の作品、5冊目の読了となりました♪

    本書は、皆川作品との出会いとなった「開かせていただき光栄です」から始まったエドワード・ターナーシリーズ第3弾の完結編です。

    ロンドンから始まった本シリーズ、終幕の舞台は独立戦争真っ只中のアメリカ。

    本シリーズの主人公エドワード・ターナーは英国兵士としてアメリカに渡り、先住民族の息子アシュリーを殺害した罪で投獄されます。

    エドは何故アシュリーを殺したのか?
    しかし、かたくなに口を閉ざすエド、そんなエドにロディ(記者)はインタヴューを申し込みます。

    隠されたアシュリーの死の謎を追う物語。

    まだ5冊しか読み終えていませんし、皆川作品の積読もまだまだありますが、いつもながら自分の読書力の未熟さを痛感させられます(> <。)

    本当に皆川作品を楽しめる力をつける為にもこれからも大切に読み進めていきたいと思います(*^^*)

    <あらすじ>
    18世紀、独立戦争中のアメリカ。記者ロディは、植民地開拓者と先住民族の息子アシュリーを殺害したとして投獄された英国兵エドワード・ターナーにインタビューを申し込みます。エドはかつてロンドンで解剖医ダニエルの弟子だった天才探偵でしたが、なぜアシュリーを殺したのか、その動機は一切明かしません。しかし、アシュリーの遺した手記に不審な点を見つけたエドは、ロディに協力を求めて、牢屋の中で驚くべき推理を展開します。エドの推理によって、アシュリーの死には、部隊で続発する不審死やスパイの存在、さらには国家の陰謀が関係していることが明らかになります。エドは真相を暴くことができるのでしょうか?そして、エドの運命は?

    この作品は、エドワード・ターナー三部作の完結編であり、『開かせていただき光栄です』『アルモニカ・ディアボリカ』に続く物語です。エドの魅力的なキャラクターと、歴史的背景に基づいた複雑な謎が、読者を引き込むでしょう。皆川博子さんの作家生活50年目を迎える集大成となる傑作です。



    作家生活50年目を迎える著者の集大成、
    魂を揺さぶる傑作歴史本格ミステリ、
    エドワード・ターナー三部作、ついに完結!


    18世紀、独立戦争中のアメリカ。記者ロディは投獄された英国兵エドワード・ターナーを訪ねた。なぜ植民地開拓者(コロニスト)と先住民族(モホーク)の息子アシュリーを殺したのか訊くために。残されたアシュリーの手記の異変に気づいた囚人エドは、追及される立場から一転、驚くべき推理を始める。それは部隊で続く不審死やスパイの存在、さらには国家の陰謀にかかわるものだった……『開かせていただき光栄です』シリーズ最終作。

    出版社からのコメント

    本格ミステリ大賞受賞作『開かせていただき光栄です』
    その続篇となる衝撃作『アルモニカ・ディアボリカ』
    そして――

    インタヴュー・ウィズ・ザ・プリズナー
    INTERVIEW WITH THE PRISONER


    囚人探偵エド、最後の事件。

    18世紀、独立戦争勃発中の新大陸。
    船上の不審死、部族小屋の焼死体、砦のスパイ……
    そして、なぜ、英国兵エドワード・ターナーは、
    コロナストとモホークの息子アシュリーを殺害したのか?


    作家生活50年目を迎える著者の集大成となる
    傑作歴史本格ミステリ・シリーズ、ついに完結!

    著者について

    1930年旧朝鮮京城市生まれ。東京女子大学英文科中退。73年に「アルカディアの夏」で小説現代新人賞を受賞し、その後は、ミステリ、幻想小説、歴史小説、時代小説を主に創作を続ける。『壁 旅芝居殺人事件』で第38回日本推理作家協会賞を、時代小説『恋紅』で第95回直木賞を、幻想小説集『薔薇忌』で第3回柴田錬三郎賞を、歴史ミステリ『死の泉』(早川書房)で、1997年の「週刊文春ミステリーベスト10」の第1位に選ばれ、第32回吉川英治文学賞を受賞した。2011年に上梓した『開かせていただき光栄です―DILATED TO MEET YOU―』(早川書房)が各誌の年間ミステリ・ベストで上位を占め、2012年に第12回本格ミステリ大賞を受賞。さらに同年にはその功績を認められ、第16回日本ミステリー文学大賞に輝き、2015年には文化功労者に選出されるなど、第一線で活躍し続けている。

  • 随所で心がチクチク痛む一冊。

    18世紀。独立戦争、先住民族との対立を描き盛り込まれる争いの愚かさ、クラレンスのバートンズの追憶、アルへの心の語りに随所で心が痛む。

    それもごく細い小さな針で刺されるかのように。

    クラレンスがエドに抱く想い。
    そしてその想いはそのまま読み手のエドへの想いへ追憶へと重なり一番チクチク痛んだ。

    終盤はじっくりと謎と物語の行く末を追い、誰もの心を思い描き、寄り添いたくなるほど。

    エドは心に孤独をずっと抱えていたのかも。
    その孤独もようやく今消えた、誰もがエドの心を掴んだ、そう思いたい。涙の終幕。

  • 「開かせていただき光栄です」「アルモニカ・ディアボリカ」に続くシリーズ3作目にして最終作とのこと。
    「クロコダイル路地」で彼らのその後を知ったときは、もう続きは出ないのかなと思っていたので、読めて嬉しい。

    独立戦争中の新大陸を舞台に、獄中のエドがある手記から真相を探っていくミステリー。
    事件が起きた当時の話と、それを推理する場面とが交互に展開する。
    エドはまた何をやったんだ、と思いながら、予想外のことが見えてくるのが面白く、モホークの生活についても興味深かった。

    クラレンスは相変わらずのチャターボックスぶりで楽しい。でもロンドンの時のような賑やかさが恋しくなる。
    「エドはもっとずぼらに生きるべきだ」という彼の内心には、ほんとそう、と激しく頷いてしまった。
    そして最後の手紙がもう。
    胸が張り裂けそうだ。

  • 志願兵として、独立戦争真っ只中の新大陸アメリカに渡ったエドとクラレンス(言わずと知れた、ダニエル先生の弟子、ハートンズの一員)。新大陸では、国王派と独立派、国王軍と大陸軍(植民地叛乱軍)の間で激しい対立、戦闘が繰り広げられていた。だが、それ以上に酷いのが、白人達(コロニスト)のネイティブ・アメリカンへの人種差別だった。私有概念や貨幣を持たない(そして目には目をの)ネイティブ・アメリカンの独特な思想・文化は、白人達の目からはただただ野蛮で残虐なものに映ったのだろう。この人種差別に比べれば、独立戦争は白人同士の身勝手な内輪揉めに過ぎない。

    さて、物語は二つの時間軸で進行する。一つ目は、国王軍のセントジョン砦増援部隊が遭遇する殺人事件やトラブル、そして戦闘。この増援部隊には、正規兵のエドとクラレンス、モホーク(ネイティブ・アメリカンの邦の一つ)の戦士四十三名とその引率者兼通訳のアシュリー(モホークと白人富豪の混血)が従軍していた。

    二つ目は、(アシュリーの盟友で口唇裂のモーリスの依頼で)新聞記者ロディがアシュリー殺害の罪で逮捕・投獄されているエドから殺人事件の顛末を聞き出すパート。

    物語が進行するにつれて、ビセット軍曹の死、シャルレーヌとその伯父伯母の焼死、火薬庫の爆破などの事件の真相が明らかになってゆく。エドが犯した(とされる)罪についても。

    前半、物語の世界になかなか入っていけず、読むのに苦労した。が、我慢して読んでいるうちに、徐々に当時の混沌としたアメリカ社会の雰囲気に入り込めた。とにかく力作だった。

    一人で罪を背負い込み、敢えて命を捨てようと無謀に行動するエドの姿が悲しかった。

    本作、アシュリーの独白(というか手記)のパートが多いのだが、その内容がかなり微妙だった。性格が内省的なのはいいとして、アシュリーがモーリス、ネイティブの〈美しい湖〉、そしてジェイクの3人に対して抱く愛情が異常に強い。父親から蔑まれていることの反動なのかも知れないが、特に、ジェイクへの歪んだ感情(激情)はちょっと理解を超えている(とはいえ、特に行動に移すわけではないので、妄想に過ぎないのだが)。同性愛者なのかな、単にナイーブな表現者、というだけなのかな。この部分がハッキリせず、最後まで消化しきれなかった。

    そう言えば、本作には登場しないダニエル先生、人体解剖の権威という意味で"ヒポクラテス"シリーズの光崎教授と被るなあ。

  • 孤高の作家の知られざる幻想ミステリを集成 皆川博子さん「夜のアポロン」インタビュー|好書好日
    https://book.asahi.com/article/12475802

    インタヴュー・ウィズ・ザ・プリズナー | 種類,単行本 | ハヤカワ・オンライン
    https://www.hayakawa-online.co.jp/shopdetail/000000014856/

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      三浦天紗子が読む『インタヴュー・ウィズ・ザ・プリズナー』〈バートンズ〉よ永遠なれ。 | 本がすき。
      https://honsuki.jp/r...
      三浦天紗子が読む『インタヴュー・ウィズ・ザ・プリズナー』〈バートンズ〉よ永遠なれ。 | 本がすき。
      https://honsuki.jp/review/48234.html
      2021/08/12
  • 18世紀、新大陸。植民地を開拓したコロニストたち大陸軍と、独立を認めない英本国から派遣された国王軍との戦争中。

    前作のラスト、殺人の罪を知ってもなお彼を愛してくれているとわかっているからこそ、彼らの前から姿を消したエド。そんなエドをひとりにさせておけないからと、共に去ったクラレンス。

    物語は、殺人犯として監獄に収監されていたエドに、記者のロディが訪れたところから始まる。
    「なぜアシュリーを殺したのか」

    『調査』と『犯行』。
    英国から志願兵として派遣されてきたエドとクラレンス、そして殺されたアシュリーの生い立ちと彼らとの交流が交互に語られる。
    コロニストの名士と、先住民族モホークとの間に庶子として生まれたアシュリーは、モホークとの通訳として国王軍に従軍し、エドたちと出会ったのだが…

    王国軍と叛乱軍の戦闘、先住民と白人との対立、さまざまな思惑の入り乱れる中、彼らの周囲で次々と起こる不可解な死。
    事件の手がかりだったはずの手記が書き換えられている事を見抜いたエドは、獄中から真相に迫ってゆく。


    シリーズ最終作に、やっと辿りついたという感じ。
    前二作とのつながりは、エドとクラレンスの二人が登場する事だけと言っても良い。
    けれど、エドの振る舞いや、クラレンスの独白の端々にはロンドンでの事件の翳りが常にあって。

    ラストのクラレンスの短い手紙に、涙してしまった。
    ロンドンに置いてきた、ほんの少し前までの、仲間たちとの日々の…失われてしまった、翳りのない明るさが、遠すぎて、かなしい。

    うーむ、シリーズとしてのまとまりやミステリとしての面白さはともかく、混沌の時代に引き裂かれたいくつもの孤独な心のあり方に、そんな時でも失われない信頼や情愛のきらめきに、何ともいえない不思議な魅力を感じた。

    誰にでも気軽に勧められる類の作品ではないが、読んで良かった。

  • 『開かせていただき光栄です』三部作の最終巻。
    独立戦争中のアメリカ。新聞記者のロディは依頼されて獄中のエドワード・ターナーを訪ねる。依頼の趣旨は彼がアシュリー・アーデンを殺したのは何故かを聞き出すことだったが、アシュリーの手記を読み解きつつエドが語る話とは‥
    前作をほぼ覚えていなかったし舞台がいきなりアメリカなので混乱したが、ストーリー自体は前作を覚えてなくても大丈夫。ただある意味前の作品のネタバレになっているので、シリーズ全部読むならこれは最後の方が絶対によい。
    ミステリでもあるが、一般市民からみた独立戦争の様相、コロニストとモホークのアイデンティティなど歴史小説として大変面白かった。

  • 開かせていただき〜シリーズ最終巻
    (公式シリーズ名称が本当に欲しい)

    1作目の「開かせていただき光栄です」の時は
    それでも明るく別れた彼らに
    2作目、3作目でこんな未来が待ってたなんて。

    全てを自責にして死に向かおうとするエドを
    一人にせず寄り添ってくれていたクラレンスが
    心のアルに語る様がつらかった…

    エドとクラレンス
    ふたりにそれぞれ穏やかに過ごせた時間があっただろうか
    あったらいいなぁ

    これがクロコダイル路地の
    あの1節に続いたんだね

  • 前作以上に続編感は薄く、ミステリーというよりはアメリカ独立戦争時代の大河ドラマのつもりで読んだほうが良い。「開かせて〜」の冒頭から、エドのこんなに哀しい結末は予想出来なかった。

  • 1775年、独立戦争中のアメリカ。叔父の営む小さな印刷会社で新聞記者をしているロディは、地元の有力者ウィルソン家の三男モーリスから、ある囚人に面会するよう依頼される。囚人の名はエドワード・ターナー。モーリスが知らされた情報によると、彼の友人で、モホーク(※先住民族の部族名)と裕福な白人との混血であるアシュリー・アーデンを、殺害したのがエドであるという。ロディはアシュリーの書いた手記を携えて、エドにインタビューに出向くが…。

    『開かせていただき光栄です』シリーズ最終巻。『アルモニカ・ディアボリカ』のあと、新大陸へ渡ったエドとクラレンスのその後が描かれる。…といっても、主人公は彼らではなく、本作ではアシュリー。先住民族の母から生まれた庶子ではあるが、植民地の有力者アーデン家の息子である彼は、国王派の父の命令で、国王軍に協力するモホークの戦士たちを連れて、ケベックへむかう英国軍に合流する。ここで彼は英国軍の志願兵であるエド&クラレンスと知り合う。しかしこの船で事件が起こり…。

    アシュリーの手記の内容と、ロディとエドが面会している現在とが複雑に入り乱れる構成。クラレンス視点はあるが、エドの内面はアルモニカ~の時と同様、一切描かれない。クラレンスがバートンズを懐かしみ、心の中でアルやベンに語りかけるたびにとても切なくなる。クラレンスの相変わらずのチャターボックスぶりが垣間見えるとちょっと嬉しくなるけど、エドの心はもう死んでしまったのかと思うと悲しくて悲しくて…。彼の気持ちを知りたいと思うと同時に、もはやナイジェルを失った後悔と苦悩でどろどろであろう彼の心を知るのは怖い。

    読み物としては流石の面白さ、とくに先住民族が独立戦争にどうかかわっていたかの部分は興味深かった。『ラスト・オブ・モヒカン』は、これよりもちょっと前の話だけれど、共通する部分がありそう。

    単独作品として十分な読み応えだった反面、開かせて~シリーズとしては、なんというか、こんな結末なら知りたくなかった的な、複雑な感慨を抱いてしまう。その後のエドが気になっていた反面、どう考えてもナイジェルを失ったあとの彼が幸福になるわけがないと思うと、知らないほうが良かったような気持ちになってしまう。キャラクターに思い入れがありすぎて辛い。1作目のわきあいあい、青春時代が懐かしくて涙目。

    本作のキャラクターとしては、モーリスと「美しい湖」が好きでした。モーリスは生まれつき口唇裂で、口元を隠すためにずっと派手なマスクを付けており、『天国でまた会おう』のエドゥアールを思い出した。

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著者プロフィール

皆川博子(みながわ・ひろこ)
1930年旧朝鮮京城市生まれ。東京女子大学英文科中退。73年に「アルカディアの夏」で小説現代新人賞を受賞し、その後は、ミステリ、幻想小説、歴史小説、時代小説を主に創作を続ける。『壁 旅芝居殺人事件』で第38回日本推理作家協会賞を、『恋紅』で第95回直木賞を、『薔薇忌』で第3回柴田錬三郎賞を、『死の泉』で第32回吉川英治文学賞を、『開かせていただき光栄です―DILATED TO MEET YOU―』で第12回本格ミステリ大賞を受賞。2013年にはその功績を認められ、第16回日本ミステリー文学大賞に輝き、2015年には文化功労者に選出されるなど、第一線で活躍し続けている。

「2023年 『天涯図書館』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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