インタヴュー・ウィズ・ザ・プリズナー (ハヤカワ・ミステリワールド)
- 早川書房 (2021年6月16日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
- / ISBN・EAN: 9784152100313
作品紹介・あらすじ
1775年、独立戦争中のアメリカ。収監された謎の男エドワード・ターナーを記者ロディが訪ねた。ロディはエドに、何故コロニストとモホーク族の息子アシュリー・アーデンを殺害したのか訊ねるが……本格歴史ミステリ『開かせていただき光栄です』シリーズ最終作
感想・レビュー・書評
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随所で心がチクチク痛む一冊。
18世紀。独立戦争、先住民族との対立を描き盛り込まれる争いの愚かさ、クラレンスのバートンズの追憶、アルへの心の語りに随所で心が痛む。
それもごく細い小さな針で刺されるかのように。
クラレンスがエドに抱く想い。
そしてその想いはそのまま読み手のエドへの想いへ追憶へと重なり一番チクチク痛んだ。
終盤はじっくりと謎と物語の行く末を追い、誰もの心を思い描き、寄り添いたくなるほど。
エドは心に孤独をずっと抱えていたのかも。
その孤独もようやく今消えた、誰もがエドの心を掴んだ、そう思いたい。涙の終幕。 -
「開かせていただき光栄です」「アルモニカ・ディアボリカ」に続くシリーズ3作目にして最終作とのこと。
「クロコダイル路地」で彼らのその後を知ったときは、もう続きは出ないのかなと思っていたので、読めて嬉しい。
独立戦争中の新大陸を舞台に、獄中のエドがある手記から真相を探っていくミステリー。
事件が起きた当時の話と、それを推理する場面とが交互に展開する。
エドはまた何をやったんだ、と思いながら、予想外のことが見えてくるのが面白く、モホークの生活についても興味深かった。
クラレンスは相変わらずのチャターボックスぶりで楽しい。でもロンドンの時のような賑やかさが恋しくなる。
「エドはもっとずぼらに生きるべきだ」という彼の内心には、ほんとそう、と激しく頷いてしまった。
そして最後の手紙がもう。
胸が張り裂けそうだ。 -
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三浦天紗子が読む『インタヴュー・ウィズ・ザ・プリズナー』〈バートンズ〉よ永遠なれ。 | 本がすき。
https://honsuki.jp/r...三浦天紗子が読む『インタヴュー・ウィズ・ザ・プリズナー』〈バートンズ〉よ永遠なれ。 | 本がすき。
https://honsuki.jp/review/48234.html2021/08/12
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『開かせていただき光栄です』三部作の最終巻。
独立戦争中のアメリカ。新聞記者のロディは依頼されて獄中のエドワード・ターナーを訪ねる。依頼の趣旨は彼がアシュリー・アーデンを殺したのは何故かを聞き出すことだったが、アシュリーの手記を読み解きつつエドが語る話とは‥
前作をほぼ覚えていなかったし舞台がいきなりアメリカなので混乱したが、ストーリー自体は前作を覚えてなくても大丈夫。ただある意味前の作品のネタバレになっているので、シリーズ全部読むならこれは最後の方が絶対によい。
ミステリでもあるが、一般市民からみた独立戦争の様相、コロニストとモホークのアイデンティティなど歴史小説として大変面白かった。 -
前作以上に続編感は薄く、ミステリーというよりはアメリカ独立戦争時代の大河ドラマのつもりで読んだほうが良い。「開かせて〜」の冒頭から、エドのこんなに哀しい結末は予想出来なかった。
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1775年、独立戦争中のアメリカ。叔父の営む小さな印刷会社で新聞記者をしているロディは、地元の有力者ウィルソン家の三男モーリスから、ある囚人に面会するよう依頼される。囚人の名はエドワード・ターナー。モーリスが知らされた情報によると、彼の友人で、モホーク(※先住民族の部族名)と裕福な白人との混血であるアシュリー・アーデンを、殺害したのがエドであるという。ロディはアシュリーの書いた手記を携えて、エドにインタビューに出向くが…。
『開かせていただき光栄です』シリーズ最終巻。『アルモニカ・ディアボリカ』のあと、新大陸へ渡ったエドとクラレンスのその後が描かれる。…といっても、主人公は彼らではなく、本作ではアシュリー。先住民族の母から生まれた庶子ではあるが、植民地の有力者アーデン家の息子である彼は、国王派の父の命令で、国王軍に協力するモホークの戦士たちを連れて、ケベックへむかう英国軍に合流する。ここで彼は英国軍の志願兵であるエド&クラレンスと知り合う。しかしこの船で事件が起こり…。
アシュリーの手記の内容と、ロディとエドが面会している現在とが複雑に入り乱れる構成。クラレンス視点はあるが、エドの内面はアルモニカ~の時と同様、一切描かれない。クラレンスがバートンズを懐かしみ、心の中でアルやベンに語りかけるたびにとても切なくなる。クラレンスの相変わらずのチャターボックスぶりが垣間見えるとちょっと嬉しくなるけど、エドの心はもう死んでしまったのかと思うと悲しくて悲しくて…。彼の気持ちを知りたいと思うと同時に、もはやナイジェルを失った後悔と苦悩でどろどろであろう彼の心を知るのは怖い。
読み物としては流石の面白さ、とくに先住民族が独立戦争にどうかかわっていたかの部分は興味深かった。『ラスト・オブ・モヒカン』は、これよりもちょっと前の話だけれど、共通する部分がありそう。
単独作品として十分な読み応えだった反面、開かせて~シリーズとしては、なんというか、こんな結末なら知りたくなかった的な、複雑な感慨を抱いてしまう。その後のエドが気になっていた反面、どう考えてもナイジェルを失ったあとの彼が幸福になるわけがないと思うと、知らないほうが良かったような気持ちになってしまう。キャラクターに思い入れがありすぎて辛い。1作目のわきあいあい、青春時代が懐かしくて涙目。
本作のキャラクターとしては、モーリスと「美しい湖」が好きでした。モーリスは生まれつき口唇裂で、口元を隠すためにずっと派手なマスクを付けており、『天国でまた会おう』のエドゥアールを思い出した。