わたしたちが光の速さで進めないなら

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152099860

作品紹介・あらすじ

廃止される予定の宇宙停留所には、家族のいる星へ帰るため長年待ち続けている一人の老婆がいた……冷凍睡眠による家族の別れを描き韓国科学文学賞佳作を受賞した表題作をはじめ、疎外される少数者に温かい視線を送る、新鋭による女性視点の滋味溢れるSF七篇

感想・レビュー・書評

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  • こんなにも叙情的な余韻を残すSFに出会ったのは初めてかもしれない。
    ふとした瞬間にノスタルジーを感じながらも、あてもなく旅を続ける。そんな読み心地。

    どんなに世界が変わっていこうとも、寂しさや孤独は変わることなく人の傍にあって、わたしたちはずっとそれらを手放せずにいる。
    人は幸せを夢見て、誰よりも速く高く遠くへと進む世界に意義を見出だしてきた。
    そして今、そんな世界からぽろぽろとこぼれ落ちていった独りぼっちの気持ちが空を見上げている。
    同じ宇宙にいるのに悲しいな。

    キム・チョヨプさんの短篇7作品には、他の人々から理解されにくい寂しさや孤独を抱えている登場人物たちが多くいるのだけど、同時に彼らを希望の光がそっと照らしもしている。
    暗闇だからこそ光が輝くのなら、寂しさや孤独、そんな気持ちこそ、実は人類が手放しちゃいけないとても大切なものなんじゃないだろうか。
    宇宙から見下ろせば置いてきぼりの気持ちがキラキラ光っていて、本当はそんな気持ちこそが夜空に光る星なんじゃないだろうか。
    いつの間にか、わたしたちは行くべき方向を見失っていたのかもしれないね。

    「わたしたちは宇宙に存在する孤独の総量をどんどん増やしていくだけなんじゃないか」
    『わたしたちが光の速さで進めないなら』より

  • 空を見上げてみよう

    その遥か彼方には宇宙がある

    宇宙って聞くとなんだかワクワクしませんか

    今から数百年後、数千年後、数万年後、遠い未来に宇宙開拓時代がやって来るかもしれない

    そうなると、月や火星だけでなく太陽系外惑星に行くためのワープ航法が発明されるかもしれない
    銀河の果てまで行ける高次元ワームホールの通路も発見されるかもしれない

    未知の惑星を発見するためにトラブルや事故に遭うかもしれない
    そこで、異星人に出会い助けられて共に暮らすかもしれない

    また建造物も変わるかもしれない
    バスや電車を待つような感覚で宇宙船を待つ宇宙ステーションがあちこちにできるかもしれない

    図書館も今とは違った意味合いに変わるかもしれない
    亡き人たちの情報をデータに移植した「マインド」を収集し、接続することで死者の魂に会えるかもしれない

    もっと先の先の未来には、既存の天体でもブラックホールでもない「トンネル」のような新しいなにかが見つかり、「別の宇宙」に繋がるかもしれない

    そんな先の先の未来でも、もしかすると「始まりの地」地球に帰還する人たちもいるかもしれない

    あくまでも全て「かもしれない」の話なので実際はどうなっていくかはわからない
    けど、優しく、どこか懐かしく、心に残る素敵な「かもしれない」物語がここにある!

    • mihiroさん
      1Qさ〜ん、こんばんはo(^_^)o
      なんか今年暑すぎて、そのうち地球ヤバいかもと思ってたところにこのpost!!なんだかタイムリー笑✩︎⡱...
      1Qさ〜ん、こんばんはo(^_^)o
      なんか今年暑すぎて、そのうち地球ヤバいかもと思ってたところにこのpost!!なんだかタイムリー笑✩︎⡱
      色々考えると怖くなるけど、この作品は明るい気分になれそうですね!
      ちなみに宇宙人は絶対いると思ってる派です✌︎(๑˃̶͈̀◡︎˂̶͈́๑)✌︎
      2023/09/12
    • 1Q84O1さん
      mihiroさーん!
      私もいる派に一票です(≧∇≦)b
      こんなに広く宇宙に生命体が地球人だけということはないでしょう
      絶対にいますよー( ̄ー...
      mihiroさーん!
      私もいる派に一票です(≧∇≦)b
      こんなに広く宇宙に生命体が地球人だけということはないでしょう
      絶対にいますよー( ̄ー ̄)ニヤリ
      2023/09/12
  • 韓国の新世代作家、キム・チョヨプ先生が描く7つのSF世界。手がまだ届かない未来を通して、手が届く現実を映し出したSF短編集。『共生仮説』がずば抜けて好き。『館内紛失』も大賞作だけあってSFの仕掛け、ドラマともに読み応えあり。

    『巡礼者たちはなぜ帰らない』
    デイジーが生まれ育った村には巡礼のしきたりがあった。十八歳になった巡礼者たちは「始まりの地」から移動船に乗って一年間旅立つのだ。だが、巡礼者たちは全員帰ってくるわけではなく、欠けている者は忘れられる。その不可解さに疑問を抱いたデイジーは、しきたりの謎を探っていく──。

    デイジーがソフィーへ送った手紙の形式で語られるストーリー。平和な村に潜む謎を追いかけるジュブナイルの香りで始まる。そこから謎が明かされるほどに砂煙の色が濃くなって、まさに子どもが大人へと変わっていく苦さや決断が重なって描かれていく。SF的な仕掛けが大きいだけに、ドラマも掘り下げてほしいと欲が出る。この設定だけで長編が書けそうなぐらい。有能であるはずの“彼ら”があんな政策をするというのが何とも皮肉。

    『スペクトラム』
    40年前に発生したワープ事故で、祖母・ヒジンは宇宙で遭難した。その40年後、彼女はなんと個人用脱出シャトルで漂流しているところを救出される。しかもその間には、偶然に見つけた地球型惑星で人間と似た姿の地球外生命体と接触していたという。言葉も通じない彼らの中で、ルイという個体が彼女を助けてくれて──。

    地球外生命体との接触はロマンあるよね!姿が似てはいるものの、ルイには言語がまったく通じない。人間とは全く違う生態、別の環境で生きている彼らを少しずつ理解していくドラマがよかった。過去からやってきたラブレターを思わせるラストもロマンチック。言語表現は星のように遠くても、そこに映し出される意味は隣人のように近い。

    『共生仮説』
    リュドミラ・マルコフが幼少期から描き続けた惑星の風景。彼女の死後、それとまったく同じ惑星が発見された。だが、天文台が捉えたのは、その星が母星の爆発に巻き込まれる寸前の姿だった。なぜリュドミラはその星を知っていたのだろうか?その一方で、脳解析研究所のユン・スビンたちは、赤ん坊の泣き声と頭の中で考えていることに決定的な食い違いを発見し──。

    リュドミラが描いた絵と同じ星が見つかった!それなのに、その星は遥か前に滅んでいる!提示される謎が思わぬ方向から解釈されていくのが面白い。幼児期健忘という現実的なキーワードが紐付けされるのもワクワクした。人類そのものを揺るがす衝撃的な真実を差し出されながらも、郷愁も感じられるラストは見事だなと。あと、鳴き声から動物の思考を解析する技術はいずれ生まれたらいいのにね。人間が何を考えてるのかわかる技術にも繋がっちゃうけれど(笑)

    『わたしたちが光の速さで進めないなら』
    古ぼけた宇宙ステーションにきた男と、そこにいた老女・アンナの物語。アンナはコールドスリープ技術の一つ「ディープフリージング技術」を実用化させた研究者だった。ワープ航法でも遠い場所へ行くために必要な技術。彼女はその研究を無事に完成させ、夫たちが待つスレンフォニア惑星へと向かうはずだったが──。

    コールドスリープってロマンあるよね!ただ、読んでいて実現するのはぼくが生きている内には無理だろうなあって感じた。ちなみに、日本では行われていないが、クライオニクス(人体冷凍保存)というサービスはあるらしい。これは死者を対象にしており、医療技術が発展した未来に復活の希望を託すもの。すでに破壊された細胞はそのままだし、解凍技術の目途も立っていないのでこれも難しそう。

    「わたしたちは宇宙に存在する孤独の総量をどんどん増やしていくだけなんじゃないか」
    ワープやワームホールで行ける場所が増えても、それは広すぎる宇宙では個を点在させるだけじゃないかという問いが切ないね。光の速さで進めなくても、行きたい場所があるというのは幸福か、それとも不幸か。

    『感情の物性』
    エモーショナル・ソリッド社が作った新商品「感情の物性」。「オチツキ」や「キョウフ」など、ポジティブからネガティブな感情まで形にして売り出した。それを手にすると、種類に応じた感情になるという。雑誌編集者のジョンハはその効能を懐疑的に思っていたが、商品は想像以上の反響を生んで──。

    様々な感情が置物やせっけんのように物質化して手元にあったら?という着眼点が面白い。目に見えない感情を実在しているものとして感覚できる。これは確かに魅力的かもしれない。その中でも、「キョウフ」や「ユウウツ」などのネガティブな感情でさえも売れていくという不可解さが興味深かった。目に見えない感情より、目に見えた感情の方が安心するのだろうか。それでも、「フアン」なんてオブジェがあったら嫌だなあ。「フワフワ」のしろたんで癒されるだけで充分だなあって思ってしまう。それで完全に不安を取り除けないとしてもね。

    『館内紛失』
    「館内紛失のようですね」
    母であるキム・ウナに会いに来た娘のソン・ジミンは、司書から母が失踪したことを聞かされた。ずっと関係が悪かった母は三年前に亡くなっていた。ジミンが訪れたのは、亡くなった人の意識が保存してある図書館。しかし、何者かによってインデックスが削除され、データはあるもののアクセスできない状態になっていた。初めての妊娠を経て、ジミンは母の意識と対面を望むが──。

    館内紛失という響きから図書館の話かな?と思っていたら、所蔵されているのは死んだ人の意識!毎度のことアイデアが面白い。これは現実でも遠い未来で実現しそうかも?その前に、攻殻機動隊みたく脳がネットに接続できるようになるかな?死んだ人の意識に会えるってどんな気持ちなんだろう。自分だったらと想像がふくらむのもいいよね。ぼくも両親とはあまり上手くいっていないけど、ジミンみたいな心境になる日が来るのだろうか。

    『わたしのスペースヒーローについて』
    宇宙で発見されたトンネルの向こう側を調査する宇宙飛行士に選ばれたガユン。彼女は前任者であり、同居人でもあったチェ・ジェギョンを“スペースヒーロー”だと信じていた。しかし、ジェギョンはトンネルで事故死したわけではなく、そもそも宇宙船に乗っていなかったという真実を聞かされ──。

    48歳という高齢かつ前庭異常など体調面で不安要素を抱えながらも、トンネル宇宙飛行士に選ばれたジェギョン。彼女に向けられた世界中からの期待と、不適格ではないかという非難の重さは計り知れない。民衆が勝手に期待や失望をして、その言葉をぶつけるのは現代社会でも変わらない。そんな圧倒的な重圧を投げ捨てて、自由を求めたジェギョン。身勝手ではあっても、後任のガユンの分まで重圧を放り投げてくれたようにも感じる。

    「こんなにたくさんお金をつぎ込んでまでわざわざ見る必要があるのかしら。どうせ同じ宇宙だと思うけど」
    このあっけらかんとした物言いが印象深い。トンネルの向こう側へ行くという行動。それは偉大とか挑戦という以前に、すべてはただの好奇心なのかもしれない。しがらみを取っ払ったその奥にある純粋な輝きを最後の風景に見ることができた。

  • >人は誰しも、この世界の外のどこか別の場所、遠くて美しいもの、広大で圧倒的な何かを希求する心を、少なからず持っているのではないでしょうか。きっと、そうしたものに人一倍強く惹かれる人たちが、SFを読んだり書いたりするのだと思います。(中略)この本に収録されている作品には、そういった遠い場所や見知らぬ存在に長年抱いてきた愛情が込められています(日本語版への序文より)


    SF短編集です。韓国SFです。
    タイトルが好きです。タイトル買いです、
    SFはやっぱりタイトルです!と言いたいけど世界SF会議やらで色々評判を聞いておりました。
    柔らかくてノスタルジックで、めちゃくちゃ面白かった。素晴らしいSF体験でした。

    著者は1993年生まれの女性。若い!
    SF会議での発言も理性的で感傷的で好感でした。
    日本の若手SF作家って、どのへん?狭い知ってる範囲で若そうなのって小川哲とか宮澤伊織とか草野原々あたり…でも30台かな。
    韓国SF初体験でしたが、中国SFとはまた違う方向だなーと思いながら読みました。国で括ることに意味はないのですが。


    「巡礼者たちはなぜ帰らない」
    大人が少なく子供ばかりで平和な『村』。18歳になると『始まりの地』への巡礼がある。巡礼を控えたデイジーはある時、巡礼から帰らない大人が毎年何人かいることに気づく。始まりの地とは何か、なぜ帰らないのかという話。世界の謎!っていう導入で世界の成り立ちは主題じゃないぞ、と主張するのが現代的。
    萩尾望都に描いてもらったら似合いそうな雰囲気がすごく良い。


    「スペクトラム」
    『それは素晴らしく、美しい生物だ』
    人類初の地球外知的生命との接触者であると主張しながらも、決してその詳細を明かさなかった祖母の研究ノートを紐解く話。
    奇妙だが優しい生き物たちの生活を読むのが楽しい。どこか牧歌的で絵本の世界のようでいて、理知的な魅力に溢れた異星の描写が素敵。


    「共生仮説」
    どこにも存在しない場所の絵を描き続けた画家がいた。彼女は生まれる前にそこにいた、と言うのだ。その風景は人類の誰もが見たことがないのに、誰もが懐かしく思う風景だった。という話。
    なぜそう感じるのか、その場所はなんなのか。乳児の思考を読む機械の実験が事実を明らかにしていく。


    「わたしたちが光の速さで進めないなら」
    打ち捨てられた宇宙ステーションでもう来ることのない遠い星行きの宇宙船を待つ老婆に、彼女を立ち退かせたい男が話を聞く短編。
    たどり着けない場所に別れてしまった家族の元へ行きたい、と願う話。


    「感情の物性」
    『キョウフ』『ユウウツ』『トキメキ』『オチツキ』『ゾウオ』…感情そのものを物質にした商品が流行っている。それを持ったり使ったりすると心がそのようになるという。プラセボ?本物?ネガティブな感情の商品もよく売れるのは何故か。
    感情をモノとして手に持てるというのは面白そう。小川一水の短編「グラスハートが割れないように」を思い出した。


    「館内紛失」
    死後に自我をデータ化できるようになった世界。アップロードされた自己は、紙の無くなった図書館に収められる。その図書館でジミンは母のマインドが館内紛失したと告げられる。データは確かにあるがインデックスが削除されたのだという。
    自身が母になることが分かり、毒親だった母のことを回想する話。母を理解しようとする話。
    死後に死者のコピーと会話できるとしたら、どう思うだろうか。何を聞きたいと思うだろうか。


    「わたしのスペースヒーローについて」
    ワームホールを通過する人類初の宇宙飛行士に選ばれたガユン。失敗した前任の宇宙飛行士の1人、家族同然に暮らした、ガユンにとってのスーパーヒーロー、ジェギンおばさんが実は出発直前に逃げ出していたと聞かされる。彼女は何故宇宙へ行かなかったのか。
    どんな過酷な場所でも生きていけるようになった人は何を望むだろうか。


    後から振り返るお話が多いですね。
    切ない感じが全編漂うのはそのせいでしょうか。


    そういえばネタバレになるかも知れないのですが、「わたしのスペースヒーローについて」のジェギンは、














    AIの遺電子10話(第1巻)に出て来る「海の住人」になったのでしょうかね…。

  • 遠く離れた星に移住した家族を想うコールドスリープの研究者を描いた表題作ほか7編。若手韓国SF作家による短編集。

    韓国SFって若い女性の作家さんが多いのでしょうか。以前読んだ「千個の青」も若い女性だった気がします。「千個の青」のような雰囲気を想像して読み始めたのですが、意外にかっちりした固めのSFでした。内容は遠くの星を舞台に組み込んだものから近未来テクノロジーの話まで。どれもそこはかとない哀しさが漂っていて、中にはマイノリティや社会から居場所を奪われる人たち、つまり現代社会の問題も描き込まれていて、読んでいて胸が痛くなりました。特に、ストレージに人格をコピーする「館内紛失」や共生説と幼児期健忘を絡めた「共生仮説」が好き。「共生仮説」なんかは手塚治虫の短編「ドオベルマン」を思い起こさせたりして、手塚治虫のアイデアの先見性を改めて認識します。

  • 7編の短編集からなるSF小説。

    普段、日常の延長線上にあるような小説や、ファンタジーでもこの世界と地続きな感じのものばかりを読んでいたからか、SFって、読むと結構疲れるのだなぁ…と。
    悪い意味ではなく、自分の想像力の限界というか、宇宙空間や別の天体で生活する様を想像することが、死滅していくばかりの脳細胞を総動員することだと実感したのである。
    しかし、それは未知への扉で、新鮮なゾクゾク感も味わえた。

    著者のキム・チョヨプさんは化学系の大学院で学んだ方だそうだが、それゆえの(と勝手に思っている)論理的な物語の設定、運びと、それとは対照的にも思える抒情的な表現が美しく融合している物語を書かれる作家さんだ。

    7つの物語は、どれも同じ人が書いたとは思えぬほど設定や背景に違いがあるが、マイノリティ(と言うと単純化されすぎな気がするが良い言葉が見つからない)の声を聴く物語であることには、共通性が感じられる。

    中でも私が好きだったのは「スペクトラム」
    印象に強く残ったのは「館内紛失」

    中学生には少し難しいかもしれないが、読める子もいるはずなのでぜひ置いてほしい。
    2021.10.3

  • SF短編集。どの作品も読みやすく、根底にやさしさを感じるものだった。
    なかでも「スペクトラム」が印象的だった。行方不明になっていた祖母が孫に語る、異星人と過ごした日々。自身の感覚では理解できない他者に対して抱く感情。
    「巡礼者たちはなぜ帰らない」「共生仮説」もよかった。

  • 初めて韓国のSFを読みました。93年生まれ(若い…!)、化学で修士を取った作家による短編集。
    テクノロジー寄りではなく、着想のユニークさが根幹でしょうか。あたたかい感じの、人が真ん中にある短編が7編。非常に読みやすく、SFと取るよりもファンタジーの方が適切とも思えるような印象です。
    本著をキッカケに未来の世界の在り方を考えると言うよりは、未来の人と人との繋がりに想いを馳せるという感じでしょうか。
    夜更かしに最適な1冊かも。お酒を飲みながらのんびりページをめくりたいものです。穏やかに、安心して読める1冊。

    短編7編は、それぞれ全く別の世界を描いていて、著者の幅の広さを感じさせます。
    読んでいて、シンプルさゆえか寂寥感に似たものを感じます(ある意味無印良品的と言うか)。刹那的、感傷的な感じはするけれど、悲しいものではない。
    読んでいてその発想が面白くて、「館内紛失」については、人の人格をコピーして…というところまでは様々なアプローチが既に為されている中、あぁこういうやり方があったんだなぁと感心させられました。

    ちなみに、解説はなぜかマイノリティーにフォーカスしていて、個人的には同意しかねました。本著の登場人物たちは、そんな定義に関係なく自由に生きていただけで、居場所を希求していた訳でもなかったと思うのですが。

  • 『今日のSF #1』|kolere|note
    https://note.com/kolere68/n/n65f196bda356

    わたしたちが光の速さで進めないなら | 種類,単行本 | ハヤカワ・オンライン
    https://www.hayakawa-online.co.jp/shopdetail/000000014710/

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「生きることの意味を問いかけている」「SFが苦手な人にもぜひ手にとってほしい」「こういう話こそ今必要とされている」『わたしたちが光の速さで進...
      「生きることの意味を問いかけている」「SFが苦手な人にもぜひ手にとってほしい」「こういう話こそ今必要とされている」『わたしたちが光の速さで進めないなら』レビューと感想|Hayakawa Books & Magazines(β)
      https://www.hayakawabooks.com/n/n36143613fc14
      2022/12/06
  • 地球外生命体を、異物ではなく他者として捉える感覚が新鮮で、繊細な描写が美しかった。

    「わたしのスペースヒーローについて」
    オリンピック選手を見ていて苦しくなることがある。その感じを思い出した。
    国中からの過剰な期待とプレッシャーと、掌を返すような極端な反応。
    国のお金が注ぎ込まれていようが、努力による成果は本人の所有物だと思うので、
    自分のためにそれを使おうとしたジェギョンは
    私にはとても正しい姿に見えた。

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著者プロフィール

1993年生まれ。浦項工科大学で生化学修士号を取得。在学中の2017年、第2回韓国科学文学賞中短編部門にて「館内紛失」で大賞、「わたしたちが光の速さで進めないなら」で佳作を受賞。

「2021年 『最後のライオニ 韓国パンデミックSF小説集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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