彼女たちの部屋

制作 : 髙崎 順子 
  • 早川書房
3.86
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本棚登録 : 684
感想 : 61
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152099389

作品紹介・あらすじ

現代。ソレーヌは、困窮した女性が避難できる施設のボランティア。百年前。ブランシュは、その施設創設のため奔走する。背景の異なる人との連帯に苦労しつつ、手をとりあうソレーヌ。理解と資金を得ていくブランシュ。だが、2人の前に最後の壁が立ちはだかる

感想・レビュー・書評

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  • 前作「三つ編み」では、同じ時を生きるイタリア・インド・カナダの女性たちの人生を、まさに三つ編みのように交差させて描いていたが、今作は、フランスの同じ場所を舞台に別の時代を生きる女性たちを描いている。
    それぞれ横軸と縦軸で紡ぐ物語。
    その切り取り方がすごい。

    100年ほど前、救世軍の創成期の頃に幾多の困難を乗り越え、女性のための居場所を造った女性ブランシュと、現代に生きるバーンアウトしてしまった敏腕弁護士ソレーヌ。自分を含め女性が抱える困難に寄り添い、立ち向かう二人の女性の生き方に、諦めずに進めと言われているような気がする。

    救世軍は、年末になるとターミナル駅などで募金を募る「社会鍋」を、子どもの頃よく見た。
    その名前が印象的だったが、日本ではあまり知られていないのではないだろうか。この物語を通して、思いがけず救世軍のことも知ることができきた。

    2020.12.18

  • パリの女性会館。現在と過去、二人の女性の苦闘。現在のソレーヌ、女性会館で代書人のボランティアをすることになる。100年前、救世軍のブランシュは女性・子供を救う施設を作る。ソレーヌは自分とは違う境遇の女性たちに最初は戸惑うが、代書を通じて心を通じ合わせる。ブランシュは病気であっても女性のために奮闘する。
    ブランシュの方は女性会館ができるまで、ソレーヌの方は、うつ状態を脱し、自信を取り戻し、立ち上がるまで。タイプは違うが二人の強さが描かれる。二人の物語でもあるが、現在のところで描かれる女性会館に登場する女性たちも、私に、読者にエールを送る。様々な境遇で戦う女性たち。どの女性もなんと力強かったことか。信じること、進むこと、この本から得られる者は多い気かった。できることは少ないかもしれない、でも確実にすることが大事なのだな。

  • 困窮女性のための住宅施設、パリ11区にある女性会館を舞台にした100年を行き来する物語。創設した救世軍のブランシュ&アルバン夫妻の情熱を描いた伝記小説部分にも、もがきながら生きる女性たちが紡ぐ現代パートにも深く感動した。
    フランス人の作者でさえ存在を知らなかったという女性会館Palais de la Femme、この本を読むと、創設できたことも、それが今もあることも奇跡のように思える。人を助けること、寄り添うことの難しさと、理解しあい連帯できる希望が描かれているし、冒頭の詩をはじめ、祈りの言葉があふれている。

    ただ、原文がそうなんだろうけど、短い文章をリズムよく重ねていく文体で、日本語訳だと体言止めが多く、一文の長いのが好きなわたしとしては読み進めるのに引っかかった。

  • 「三つ編み」や今作、「82年生まれ、キム・ジヨン」などの所謂フェミニズム文学に弱い。共感と、連帯感。
    私自身女性として生きてきて、女性ならではの生きにくさを感じることがあるけれど、特にレティシア・コロンバニの作品に描かれる女性たちの人生というのはとても過酷で、同じ世界・同じ時代に生きているとは信じられないほど。
    偶々生まれた環境が違うだけ・偶々ボタンを掛け違えただけでここまで違ってしまう人生に、罪悪感のようなものを感じてしまう。なにか自分に出来ることがあればしたいけれど、無力な自分に何ができるのか、そこまでの責任が負えるのかと思うと、躊躇してしまうー 今作の主人公の一人、ソレーヌの気持ちがとてもよくわかる。
    救世軍というとミュージカル「ガイズ&ドールズ」しか思い浮かばなかった。こんなに尊い活動をしている団体なのだと初めて知った。ただただ、圧倒されるような気持ち。

    今作の中で紹介されていたフランスの思想家ピエール・ラビ氏のハチドリ運動の話がとても胸に刺さった。
    大きな山火事に、小さな嘴に運べるだけの水をかけ続けたハチドリのように、自分は自分にできることをするのだと、私は動けるだろうか。

  • 『三つ編み』の作者の第2作。

    順風満帆の弁護士のソレーヌは仕事の失敗すなわち顧客を破滅に陥らせたことから燃え尽き症候群になり、医師からボランティアを勧められる。様々な職種の中から選んだのは困窮した女性の避難施設の代書人(Écrivain public)。

    百年前、当時の女性としては道を外れた生き方を貫き、この施設の設立のために尽力した救世軍の女性・ブランシュ。

    一人で住む部屋を得るというのは一度堕ちてしまうと困難を極める。ソレーヌは目の前のたった一人でも救えるのか。

    フランスの女性というと、日本では雑誌で特集を組まれるほど憧れの対象であったりするけれど、施設の女性たち社会から爪はじきにされている。日本でもありそうな事情から滅多になさそうな事情まで施設に身を寄せる理由は様々。

    「運も実力のうち」ということばがありますが、運がなければ、出自が恵まれていなければ、普通の生活にも辿り着けないという状況には心が痛みます。

    「鍵を手にする、それはなんでもないことではない。人生を手にすることだ。」(P229)

    フランスの作品ということで読む前は「言い回しが独特かも?」などと思い込んでいましたが、かなり読みやすいです。著者は小説家、映画監督、脚本家、女優、だそうで、確かに端的かつ正確にイメージを伝える文章が特徴的です。

    施設設立のブランシュのパートは、歴史的なものはブランシュが体験したこと感じたこと、ブランシュがどうだったかというところが重点的に描かれていて、歴史的事実というより物語のテイストが強く、それもまた読みやすさにつながっていると感じました。

  • オンライン対談 レティシア・コロンバニと中江有里 : アンスティチュ・フランセ関西
    https://www.institutfrancais.jp/kansai/agenda/colombani-nakae/

    話題のフランス女性作家が描く、女性の人生を考える本【斎藤美奈子のオトナの文藝部】 | Web eclat | 50代女性のためのファッション、ビューティ、ライフスタイル最新情報
    https://eclat.hpplus.jp/article/58359/02/

    「物語に、全員の居場所を作りたかった」 世界的フェミニズム小説『三つ編み』作家が、女性の保護施設を描いた理由 | ハフポスト NEWS
    https://www.huffingtonpost.jp/entry/story-laetitia-colombani_jp_5fb1cd70c5b6a37e7e331805

    声なき女性の物語を語る『彼女たちの部屋』。|インタビュー|madameFIGARO.jp(フィガロジャポン)
    https://madamefigaro.jp/series/interview/201004-attitude-01.html

    ※間違って電子書籍を登録していた。
    https://booklog.jp/users/nyancomaru/archives/1/B08B3Z61GP

  • 知らなかったことをたくさん知った。アフリカ大陸に根深く残る女性器切除、フランスの貧困、難民のこと…。
    何もしないより、ちょっとのことでもした方が何倍も良い。小さいくちばしで汲んだ水を山火事に掛けるハチドリみたいに。
    自分のことだけで手一杯、他のことは気になっても何もできない…それは本当か?何かほんの少しでもできることを探して、やりたくなった。

  • 面白かった。
    今回は二つの時代を行き来する話。(前作の「三つ編み」では場所を行き来していた)。
    エリート女性の主人公が、依頼者の人生を聞いてぼろぼろと泣いてしまうところが、生きてきた境遇は違えどエンパシー(共感)で繋がれるんだというシスターフッドの希望を表しているようで、とてもよかった。
    またアフリカの国で「女は男の名前で呼ばれる。(男の名前)の妻、娘、妹……」という説明書きのところを読んで、強制的夫婦同姓(そして96%の女性の姓が夫の姓に変更になっている)の意味についてすごくピンと来た。前々から「夫婦別姓を許すと誰が誰の妻か、既婚か未婚かわからないじゃないか」と言っている国会議員がいるという話を知っていて、「そんな、女を男の所有物として見るから生まれる発想する人いるんだ」と変なものを見る目で見ていたけれど、多分「倫理的に正しくない」けれど「普遍」ではある認識で、それが事実なんだとそのフレーズで初めて思い至った。

    レティシアさんの作品はめちゃくちゃ心揺さぶられるしその割にするする読めて本当に心地良い読了感をくれるので、好き。

  • 世界の女性の生きづらさを、改めて考えさせられる本だった。いつの時代も強く闘う女性達の姿に、勇気とパワーで満たされた。受け継がれる正義感。
    読み終えた後、暖かい感情が全身を駆けめぐり、しばらく涙が止まらなかった。
    強い勇気をもらえる一冊。ずっと持っていたい本。

  • 知らない世界を教えてもらった。

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著者プロフィール

レティシア・コロンバニ(Lætitia Colombani)
1976年、フランス・ボルドー生まれの映画監督・脚本家・作家・役者。刊行前から16言語で翻訳権が売れて話題をあつめた初の著作『三つ編み』は、2017年春に刊行されベストセラーとなり、フランスで85万部を突破、32言語で翻訳され、邦訳もされた。2019年5月15日に2作目の小説"Les Victorieuses"を刊行し、こちらも翻訳が待たれる。

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