ディズニーCEOが実践する10の原則

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152099334

作品紹介・あらすじ

ピクサー、マーベル、ルーカスフィルム、21世紀フォックス……総額9兆円に及ぶ買収劇は、いかにして成し遂げられたのか?ウォルト・ディズニー・カンパニー会長兼CEOが、自身の半生と成功哲学を自ら語る。一人のビジネスマンが覚醒し"王"となるまでのすべて

感想・レビュー・書評

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  • 【感想】
    本書は、2005年から2020年の間にディズニーのCEOを勤めたボブ・アイガーの回想録である。アイガーの経歴を簡単に紹介すると、
    ABCテレビでスポーツ番組のプロデュースに携わる→ABCエンターテイメントの社長に就任→ABC本社の社長に就任→ABCテレビごとディズニーに買収されディズニーの重役に就任→取締役社長兼COO就任→CEO就任
    といった流れだ。
    筆者の人生は、ABCテレビの時代から買収の連続であった。そのため、異なる文化の企業ないしは人材と協働することになった際、どのようにして互いの長所を活かすようなマネジメントを振るうか、を中心にビジネス論が語られていく。

    ディズニーと聞いてイメージするのは、独創的な夢の世界を展開し、世界中のファンを魅了するハッピーな会社だ。だがかつてディズニーは「王様」であり、関係企業(特にピクサー)に自社の文化を押し付ける独善的な会社だったという。筆者自身、入社した頃のディズニーのトップ2人(マイケルとオービッツ)の仲が最悪だったこともあり、「ディズニーでの最初の半年は、これまでの仕事人生の中で最もやる気を削がれ、仕事がやりにくい期間だった」とこぼしている。2004年ごろには、ディズニーのトップであったマイケルを蹴り落とそうと、「(頭をすげ替えて)ディズニーを救おうキャンペーン」というウェブサイトを立ち上げ、顧客を巻き込んで内部闘争を繰り広げていたというのだから、なかなかひどい有様だ。

    ――買収直後から、ディズニーのチームは、新入りの私たち(ABCテレビ出身者)を彼らのいいように扱った。例の戦略企画部がその中心になっていた。戦略企画部のやっていたことすべてが悪かったわけではないが、それまでトムとダンのやり方に慣れていた私たちの働き方とは正反対だったのだ。ディズニーでは権限が完全に中央に集中し、手続きが重視されていたので、私たちは彼らのやり方に苛立ち、反感を覚えた。

    ――作品を公開するごとにピクサーの評判と影響力は高まり、それにつれてディズニーとの軋轢も深まっていった。スティーブは、ディズニーが自分とピクサーにもっと敬意を払うべきだと腹の中で思っていて、力関係の変化を契約に反映させたがっていた。また、ピクサーは芸術性でも商業的な成功の点でもディズニーを凌駕しているのだから、ディズニーの方から制作面での助けをピクサーに請うべきだと、スティーブは思っていた。それなのに、マイケルは自分たちを格下に見て、ただの雇われ業者のように扱っていると感じ、とんでもなく侮辱されたとスティーブは受け取っていた。

    筆者がディズニーのCEOに就任したのは、ピクサーとの関係が悪化し提携が切れた2005年ごろ。就任にあたって、アニメーション部門を立て直すことを目標にする。

    そのための大事業がピクサーの買収である。当時ディズニー・アニメーションは瀕死の状態で、過去10年で4億ドルの損失を計上していた。映画がさっぱりだったためキャラクターも根付かず、家族向けのブランド調査では、ディズニーはピクサーよりも下にランクされる始末だった。
    ピクサーの株はスティーブ・ジョブズが半数を所有していたし、ピクサーの時価総額は60億ドルを超えていたため、株主からは「買収なんてできっこない」と批判されてしまう。加えて、契約満了を目前に両社の仲は険悪状態だった。
    理屈では、ピクサーの買収は割に合わない。だが、ピクサーほどの才能の集積ははるかに価値があり、計算しようとしても計算できないものだと筆者は確信していた。大切なのは認識力と判断力で、すべての情報を吸収し、それぞれの要素を秤にかけてみることが必要になる。買収の目的、信用できる人たちの意見、綿密な調査と分析が教えてくれること、そして分析が教えてくれないことを認識しなければならない。
    必要なのは人材であり、ピクサーをピクサーたらしめている文化を守りつつ、ピクサーを家族に迎える。その信念のもと、筆者は無謀ともいえるピクサー買収を成功させたのだった。

    その後、ディズニーは2009年にマーベルを、2012年にルーカスフィルムを買収している。

    ピクサーの買収は、ディズニー・アニメーションの立て直しという差し迫った問題を解決するための策ではあったが、同時により大きな成長戦略の第一歩でもあった。良質なオリジナルコンテンツを増やすこと、テクノロジー面で進歩を遂げること、魅力あるグッズを作り消費者に届けること、そしてグローバルに成長することが、筆者の目指すところだった。そして、これを実現するための次の候補がマーベル、ルーカスフィルムだった。

    どの買収も、一番大切なことは変わらない。ディズニーとマーベル、ルーカスフィルムがそれぞれ「らしさ」を保ちながら一緒になれるかどうかだった。

    ――ピクサー、マーベル、そしてルーカスフィルムの買収を振り返ると、そのすべてに共通していたのはこの三社がディズニーを大きく変えてくれたこと以外に、どの案件の行方もひとりの支配的な所有者との信頼を築けるかどうかにかかっていたという点だ。いずれの交渉にも複雑な問題がいくつもあり、それぞれの買収にあたったチームは何日も何週間もかけて合意に達していた。だが、どの案件でも交渉がうまくいくかどうかは、個人的な要素にかかっていて、誠実さがすべての鍵だった。ピクサーの本質を守るという私の約束をスティーブが信じていなければ、買収は成立しなかった。マーベルのチームが価値を認められ、新しい会社で大活躍できるとアイクが信じられなければ、話は進まなかった。そしてジョージは彼の遺産、つまり「我が子」がディズニーで大事にされるはずだと信じられなければ、スター・ウォーズを手放すことはできなかったのだ。

    ――――――――――――――――――――――――――――――――――
    【まとめ】
    1 ディズニーCEOが実践する10の原則
    ・前向きであること
    ・勇気を持つこと
    ・集中すること
    ・決断すること
    ・好奇心を持つこと
    ・公平であること
    ・思慮深いこと
    ・自然体であること
    ・常に最高を追求すること
    ・誠実であること

    私がルーンから教わったことは、私のすべての仕事の指針になった。彼が残してくれた教訓は、イノベーションを起こさなければ死ぬということだ。そして、新しいものや証明されていないものを怖がっていたらイノベーションは起こせないことも、ルーンに教えてもらった。
    ルーンの口癖は単純だった。「もっといいものを作るために必要なことをしろ」。ルーンから学んだ数多くの教訓の中でも、何より今の私を作ってくれたのはこの言葉だ。私はリーダーの大切な資質としていつも、「完璧への飽くなき追求」を挙げている。


    2 リーダーの原則(詳細版)
    ・優れた物語を語るには、優れた人材が必要だ。
    ・イノベーションか、さもなくば死か。
    ・ほどほどで満足しない環境を作る。
    ・自分の失敗を認める。
    ・周囲の人に親切にしよう。どんな人にも公平に共感を持って接しよう。
    ・経験よりも能力を評価・信頼し、その社員が難なくできると思う以上の力量を必要とする役割を与えよう。
    ・聞くべきことを聞き、わからないことは堂々とわからないと認め、学ぶべきことをできるだけ早く学ぶよう努力しよう。
    ・手間がかかる割には見返りのほとんどない小規模なプロジェクトに、自分と会社のリソースを注ぎ込むな。
    ・リーダーは優先順位をはっきり繰り返し伝えなければならない。
    ・買収で手に入れるのは「人」であり、クリエイティブな産業では、そこに価値がある。
    ・誰かを雇い入れる時、仕事ができて善良な人を周りに置くように努めよう。
    ・リーダーは純粋に謙虚な気持ちで仕事と人生に取り組まなければならない。私が成功できたのは、ひとつには努力したからだが、それ以上に多くの人たちの努力と支えとお手本があったからであり、私の力の及ばない運命のいたずらに恵まれたおかげでもある。
    ・世間からいくら権力者だと言われたり重要人物だと持ち上げられても、自分が何者かをしっかりと持っていなければいけない。自分を過信しはじめ、肩書きに頼るようになったら、自分を見失った印だと思った方がいい。


    3 その他メモ
    ●もちろん、両社(ABCとディズニー)の違いは身に着けるものにとどまらず、はるかに深く大きかった。企業文化と仕組みのすべてが違っていた。トムとダンは温かく、いつでも時間を割いてくれた。もし問題があれば、すぐに会ってくれた。アドバイスが必要な時には、惜しみなく相談に乗ってくれた。二人は経営者として経費抑制と利益拡大に集中し、彼らと同じ信念を持ち、彼らのためにとことん身を捧げてくれる重役を周囲に置いていた。また、トムとダンは、企業の権限は分散されるべきだと信じていた。任された予算を守り、倫理に従って行動している限りは、現場の人間に自分の頭で考えて働く自由が与えられていた。CFOと法律顧問以外に本社スタッフはいなかったし、中央集権的な官僚制は存在せず、事業部への介入もほとんどなかった。
    ディズニーは正反対だった。マイケル・アイズナーとフランク・ウェルズは着任早々に戦略企画部という本社部門を設立し、高学歴で攻撃的なスタッフでこの部門を固めた。彼らは朝から晩まで分析に没頭し、マイケルが求めるデータや知見を巧みに提示できた。マイケルはそうしたデータや知見から裏付けを得た上ですべての事業判断を行ない、一方でクリエイティブに関する意思決定もすべて彼自身が行なっていた。戦略企画部は全社にわたって巨大な権限を持ち、事業部を統括する重役全員に対してその影響力を存分に振りかざしていた。

    ●人は誰しも、自分に代わる人間はいないと思いたがる。だが、客観的に見れば、この仕事ができるのは自分ひとりだという考えにしがみついても意味がないとわかるはずだ。優れたリーダーシップとは、代わりのいない存在になることではない。誰かを助けて自分の代わりになる準備をさせてあげることだ。また、意思決定に参加させ、育てるべきスキルを特定し、その向上を助け、時にはこれまで私がやってきたように、なぜその人がまだステップアップできないのかを正直に教えてあげることでもある。

    ●前向きさと明るさは、組織の働きを変える。苦境にある時は特に、部下がリーダーを信頼し、自己防衛と生き残りのために動くのではなく、本当に大切なことに集中しなければならない。前向きな態度とは、うまくいっていないのにうまくいっていると取り繕うということではなく、「何とかなるさ」という勝手な自信を伝えることでもない。それは、自分と周囲の人が最高の結果に向かって突き進むことができると信じることであり、物事が思い通りにいかなければすべてを失ってしまうといった思い込みを周囲に振りまかないことだ。リーダーの姿勢と雰囲気は周囲の人にとてつもない影響を与える。後ろ向きなリーダーについていきたいという人はいない。

    ●三つの戦略的優先課題をはっきりと定めた。私がCEOになった瞬間から、この三つが指針となり、ディズニーを導いてきた。
    1.良質なオリジナルコンテンツを創り出すことに時間とお金のほとんどを費やさなければならない。
    2.テクノロジーを最大限に活用しなければならない。まず、テクノロジーを使ってより良質なプロダクトを作り、次にテクノロジーを使って今の時代に合った新しい手法で消費者とつながらなければならない。
    3.真のグローバル企業にならなければならない。ディズニーは世界中の消費者への訴求力があり、さまざまな地域に事業は拡大しているが、中国やインドといった世界で最も人口の多い地域をさらに深掘りしていく必要がある。

  • 本書は、ロバート・アイガーの長い物語です。

    本書は、10の原則 、長いアイガーの道のり リーダーの原則 となっていて、原則の提示、道のり、振り返りの構成になっています。

    ■真のリーダーシップに必要な10の原則

    ① 前向きであること
    ② 勇気を持つこと
    ③ 集中すること
    ④ 決断すること
    ⑤ 好奇心をもつこと
    ⑥ 公平であること
    ⑦ 思慮深いこと
    ⑧ 自然体であること
    ⑨ 常に最高を追求すること
    ⑩ 誠実であること

    ■ 学ぶ

    ・まあまあの出来を絶対に受け入れず、締切が目前に迫っていても最高のものを作るためには決して妥協しなかった
    ・感動的な物語を伝えるには秀でた才能が必要だった。一方で優秀な人間に囲まれていないと最高の仕事はできなことも知っていた
    ・人と誠実に向かい合うということだ。つまり、すべての人に対して公平に共感をもって接するということだ
    ・卓越した仕事をすることと、人を気遣うことは両立しないわけではない
    ・二人は無意味なことには目もくれず実務に集中するタイプで華やかな世界にはまったく興味がなかっただけだ
    ・仕事でも私生活でも、人生の転機と呼べる瞬間がある。だが、その瞬間には転機だということがわからなかったり、特別にドラマチックではないことも多い
    ・賢く、誠実で、努力をいとわない人間を雇い、その人たちに大きな責任を任せて、その仕事に必要な支援と権限を与えていた
    ・どんな仕事のチャンスも頼まれたら拒まないのが私の信条だ
    ・必要なことはきちんと聞き、理解できないことははっきりと認め、学ぶ必要のあることはしっかり努力してできる早く学ぶこと。
    ・本物のリーダーシップとは、自分が何者かを知り、誰かのふりをしないことなのだ。
    ・自分にできる最高の仕事をし、この会社のあらゆる面について学べることはすべて学ぼうと思っていた
    ・偉大さが、ほんの小さなことの積み重ねであることを、マイケルは知っていた
    ・未来について話すんだ。過去はどうでもいい
    ・新参者のつもりで考え、計画し、行動するんだ

    ■ 導く

    ・敬意を払う という、一見些細でつまらないことが、どんなデータ分析にも負けず劣らず大切な決め手になった。経緯と共感をもって人は働きかけ、人を巻き込めば、不可能に思えることも現実になるのだ。
    ・そんなやり方では雇えませんよ。カネで動く人たちじゃありませんから
    ・大切なのは、批判する者ではない。強者がつまづくとそれ見たことかと揶揄する人間でもない。行動する人の揚げ足を取るものでもない。実際に舞台に立ち、顔が血と汗と埃にまみえた人間こそ称賛に価する。
    ・スティーブが、最も影響力のある取締役としてよりも、友達として私を助けてくれたことが嬉しかった
    ・だれかを解雇したり、権限を取り上げたりすることは、上司としておそらく最も難しい決断だ。
    ・クビを言い渡すのにいい方法などないが、私には自分の中で決めているルールがある。直接言い渡すこと。電話ではいけないし、メールやメッセンジャーなどはもってのほかだ。
    ・相手の目をみること。誰かのせいにしないこと。決断を下すのは自分だ。ただし、その人の人間性ではなく、仕事の成果を評価すうrこと。そして、あなたが決断を下したことを相手に知らせなければならない。クビにすると決めて呼んだら、世間話などいらない。
    ・ほとんどの場合、私たちは、企業価値とそれほど違わない買収価格を提示する
    ・本当の自分を見失わないことが、リーダの本質だ。自分を過信しはじめた瞬間に、肩書に頼りはじめたその瞬間に、人は自分を見失ってしまう。人生のどの段階にいても、あなたという人間は昔も今も変わらないことを心に留めておいてほしい。それが何よりも難しく、何よりも大切な教訓だ。

    目次は次の通りです

    プロローグ

    第1部 学ぶ

      第1章 下っ端時代
      第2章 大抜擢
      第3章 首位奪還
      第4章 ディズニー入社
      第5章 ナンバーツー
      第6章 内紛
      第7章 後継者選び

    第2部 導く

      第8章 最初の100日
      第9章 ピクサー買収
      第10章 マーベル買収
      第11章 スター・ウォーズ継承
      第12章 イノベーションか、死か
      第13章 正義の代償
      第14章 未来への布石

    付録 リーダーの原則

    謝辞

  • 「ディズニーCEOが実践する10の原則」

    1.購読動機
    書き下ろし、ノンフィクションだから。
    また、この15年間の間に、ピクサー、マーベラス、ルーカス、Hulu買収の実績を残した道のりを知りたかったから。

    2.著書の印象
    日本語訳が、語りべ調一人称で展開されているため、リアリティさが向上している印象です。

    3.面白さ
    やはり、書き下ろしです。
    ①ピクサー買収
    ジョブスとの交渉、そして買収発表当日のジョブスからの病の告知。

    ②ルーカス買収
    スターウォーズ。このブランドを汚さないために、買収後の一作めの発表時期をずらしても完成度を優先した選択。

    ③Twitter買収断念
    D2Cのプラットフォーム候補。検討するも、自ら断念。ディズニーの経営理念に照らしての判断基準。

    4.こんな方にオススメ
    ①ディズニーファンのひと。
    ②ディズニーの経営に関心があるひと。
    ③目の前と仕事と将来の仕事のバランスに悩んでいるひと。

    CEOのロバート・アイガー氏がテレビ局の裏方から始まり、どのような道のりを経て、CEOに到達したのか?
    彼が語る仕事への理念、考えかたは、一つのモデルとして多くの人に気づきを与えることでしょう。

    「まず、目の前の仕事で成果をあげよ。
     やりたい仕事、ミッションの機会をまて。
     それまでに、力をたくわえよ。
     機会がきたら、いっきに解き放て。」

    #ビジネス書好きなひとと繋がりたい

  • 読んでいて何度か身震いするほど電流が走った。
    それくらいに素晴らしいビジネス書。

    ピクサー買収に始まり、数々のコンテンツ買収を成功させたディズニー前CEOによる自伝的ビジネス書。
    単に、自伝だから楽しく気軽に読めるだろうと思ってたら、
    全然違った。いい意味で期待を裏切られた。

    読んでいて、久しぶりにビリビリと電流が脳に流れた。
    一度だけではなく、何度も何度も。
    こんな自伝は、「「愚直」論」以来だろうか。。
    (ちょっと記憶があやふやだ。)

    ※「愚直」論
    https://booklog.jp/users/noguri/archives/1/4478733066#comment

    著者のことは全く知らなかったが、
    元々はディズニーの生え抜き社員ではなく、
    ディズニーに買収されたテレビ会社(ABC)のイチ平社員。
    しかも、スタートはバイトみたいな立ち位置。

    そこからメキメキと頭角を現し、
    どんどん出世街道を登っていく。
    (その辺りの記述は簡潔で、あっという間に社長になってしまう、笑。)

    そして、ABCがディズニーに買収される。
    前CEOのもと、時期CEOを目指し、必死で努力する姿勢。
    CEOになるプロセス(このプロセスを開示してくれている書籍は珍しいような気が…)も
    多くの人が経験できるものではなく学びが多い。
    著者の立てた戦略三本柱の先見性。
    今でこそ、当たり前と言えるかもしれないが、当時そのことがここまでクリアに見通せただろうか、自問させられる。
    CEO就任後、ピクサーとの関係修復と買収。
    自身も買収された側だったが故に、買収された社員の気持ちが理解できるのだろう。
    著者なくしては、ピクサーの買収は成り立たなかっただろうし、
    アニメーション部門の復活もあり得なかった。

    その後のコンテンツ買収に続き、Twitter社買収も検討していたのか(その後、直前でキャンセル)。
    スティーブ・ジョブズが生きていたら、アップルとの合併もあったかもしれないだって!?
    しびれる場面がどんどん出てきます。

    プロローグの痛ましい事故からグイグイ引き込まれていきます。
    これは、絶対に読みでしょう!

    唯一のイケてないポイントは、タイトルが意味不明なところ、笑。
    なんで、こんなタイトルにしたんだろうか。。
    訳がすごくいいだけに、残念でなりません。。

  • 以下、本書より抜粋。

    「経験がないことは何の言い訳にもならない。まずは、自分を偽らないことだ。謙虚に、誰かのふりをせず、自分が何を知らないかを知ることからはじめなければならない。必要なことはきちんと聞き、理解できないことははっきりと認め、学ぶ必要のあることはしっかり努力してできるだけ早く学ぶこと。本物のリーダーシップとは、自分が何者かを知り、誰かのふりをしないことなのだ。」

    「今ある仕事をうまくやり遂げ、じっくり構えて、出番を探して成長しながら可能性を広げ、何らかのチャンスが現れた時に、自らの勤勉さと熱量と集中力を発揮して、上司から頼りたいと思われる人間にならなければならない。逆に、上司の立場ならばそんな人間を育ててほしい。昇進を追い求め、自分が活用されていないと文句を言う人間ではなく、自分がかけがえのない人材であるこを日々証明し続けている人間に目をかけてほしい。」

    「優れたリーダーシップとは、代わりのいない存在になることではない。誰かを助けて自分の代わりになる準備をさせてあげることだ。また、意思決定に参加させ、育てるべきスキルを特定し、その向上を助け、時にはこれまで私がやってきたように、なぜその人がまだステップアップできないのかを正直に教えてあげることでもある。」

    かつての上司だった部下を動かすソフトな独裁
    「こんなアイデアを思いつくのはあなたしかいないとみんなが思うはずです。大胆で大掛かりな計画ですからね。普通ならで​​きないと思うでしょう。でも、不可能を可能にしてきたのがあなたじゃないですか?」

    「苦しい時こそ粘りと忍耐が大切だ。自分にはどうしようもないことに怒ったり不安になっても仕方がない。プライドを傷つけられたことにいつまでもこだわって、自分を消耗させてはいけない。みんなに褒められている時は、誰でも前向きになれる。だが、自分を否定された時、しかもみんなの目の前で自信を傷つけられた時こそ、難しくても前向きにならなければいけない。」

    「世界中から、権力者だ重要人物だと祭り上げられたとしても、本当の自分を見失わないことが、リーダーの本質だ。自分を過信しはじめた瞬間に、肩書きに頼りはじめたその瞬間に、人は自分を見失ってしまう。人生のどの段階にいても、あなたという人間は今も昔も変わらないことを心に留めておいてほしい。それが何よりも難しく、何よりも大切な教訓だ。」

    「交渉ごとにおいて、敬意を持って相手と接することの大切さがわかっていない人は多い。少しの敬意が大きな見返りを生み、逆に敬意がなければ大変な損をすることもある。」

  • ビジネスハウツー本ではなく、ロバートアイガーの人となりが伝わってくる一冊。
    ピクサー買収の件は、ジョブズの自伝で読んでいたので改めて感動した。
    「だからボブ(ロバートアイガー)は好きなんだ」ースティーブ・ジョブズ

    「『あいつはいやなやつ』などという人が周りにひとりもいない、エンタメ界では稀有な存在」ー訳者あとがき

    こんな素敵な人がディズニーの後にひっそりと余生を過ごすなんてもったいない。
    いつまでも活躍してほしい。

  • ディズニーCEOが実践する10の原則 ロバート・アイガー(CEO of Walt Disney Company)

    表題は最後のまとめ分に対するもののみで、実質的にはロバート・アイガー氏の自伝。
    前半は、ABCのアシスタントから、ABC社長、そしてディズニーCEOになるまでが描かれる。そして、後半はCEOになってからのM&A秘話など、現在のWDのD2Cビジネスを確立するまでの奮闘劇が描かれる。訳者あとがきにも記載があったが、ロバート・アイガーは良き部下であり、良きリーダーである。前半は良き部下とはいかなるものか、後半では良きリーダーとはいかなるものかが描かれる。
    アイガー氏の中で一貫しているのは、常に周囲の人から学び、そして正直であること。一見シンプルに見えて、本当に難しい2つのことを実践してきたことにより、アイガー氏の今のポジションがあるということが本書ではよくわかる。
    ABC時代にルーンから教わったイノベーションか死かというレッスンや完璧への飽くなき欲望が彼を駆動している。周囲に恐れられるリーダーに仕える中でも、自分自身で正直に非を認め、心から謝ることを実践することで、リーダーに一目置かれる存在となっている。
    後半部分は非常に面白い。ピクサー買収の際に、前アイズナーCEOと険悪であったスティーブジョブズとの対話や、クリエイティブな業界におけるM&Aの真の価値が人材やその人材を生き生きとさせる企業文化であることなど、クリエイティブに対するリスペクトや企業文化という無形財産への畏敬の念が感じ取れる。スティーブは非常に頑固で徹底的な人間であることはよく知られているが、そんな彼と何度も対話をしていく中で、信頼を得るアイガー氏の所作は非常に参考になる。ただ、迎合するだけでなく、アップルにとって何が必要か、そしてその必要なもののうち、自分に貢献できるものは何かを絶えず考え、そして丁寧に、簡潔に伝えることが、ビジネスマンとしての模範であろう。
    ディズニーCEOになってからのコンテンツ・テクノロジー・グローバルという一貫した方向性は、今のようなコンテンツの帝国を築き上げる道しるべになっている。彼がCEOになった際に、グッズビジネスでの付加価値向上のために、ディズニーコンテンツへの注力、そして、そのコンテンツを際立たせるためのピクサー買収、そして、グッズビジネスへの展開を踏まえたマーベル、ルーカスフィルム、FOXの買収という戦略は、一見全方位外交に見えて、とても太い線が通っている。
    最後に、Netflixなどの勃興を初期から見極め、D2Cビジネスに舵を切るために、報酬体系を変えたことを非常に驚くべきことである。経営層の報酬は、基本的に担当する事業部の業績によって決まるが、業績をベースにしてしまうと長期スパンの創造的破壊は起こらなくなる。年度の数字を追いかける人間にとって、数年後のビジネスのためにあえて自分の事業の一部破壊をすることはばかげている。そのため、イノベーションを起こすために、経営層の報酬をいかに会社の将来に貢献したかというものに定め、そしてその判定者を自分にするという大胆な人事制度に変更した。中央集権的ではあるものの、まさしく腹をくくったリーダーの施策であろう。誰かが真似しようと思っても人望や能力が伴わないとすぐに形骸化してしまう、アイガー流のマネジメントであろう。

  • タイトルがビジネス本の極みのようなタイトルだが、読んでみると全く違う。というか10の原則が後付けだよ、というふうに暴露される。どちらかというと、彼の資質がどこにあるのか、ストリートスマートとはこういうふうに仕事をするのか、というところに感動がある。ブルックリン、ロングアイランドで育ったあと、メディア企業の下っ端として入社、そこからメディア企業を渡って歩き、ディズニーのCEOまで上り詰める。その間に、ピクサー買収など多くの買収を仕上げ、上海ディズニーのオープンなども実現した。その上海ディズニーのオープン前夜に起こったワニ襲撃事件のことが非常にエモーショナルに描かれていて、企業人としてどのようにバイアスをかけずに振る舞うべきか、というところが非常にクリアに伝わってくる。

  • ビル・ゲイツが勧めていたので読んだが、本人の昇進についての自伝の色合いが強く、出世のための処世術を学びたいなら良いかもしれないが、仕事そのものに対する気づきは多くなかった。
    一方で、彼の数々のエピソードからは、『ほんの少しの敬意を払うだけで、信じられないようないいことが起きる。逆に、敬意を欠くと大きな損をする。』という学びは、現実的であり実践の価値があるかもしれないと感じた。

  • ディズニー元CEOのラバーアイガーが、今までのキャリアの中で得られた教訓と実践する原則をまとめた本。誰もがこの通りにやれば成功するわけでも無いが、当たり前の様に見える教訓、原則はやはりためになる。


    良いと思った内容は以下のとおり。

    大失敗したら責任を取らないといけない。自分の失敗を認め、失敗から学ぶことが大事。一番いけないのは、嘘をついたり自分のせいでないフリをして、誰かになすりつける事。

    経験が無い業務のリーダーになった場合、自分を偽らない事。謙虚に、誰かのふりをせず、自分が何わ知らないからを知ることからはじめなければならない。ただし謙虚と卑屈はちがう。本物のリーダーシップは、自分が何者かを知り、誰かのふりをしない事だ。

    リーダーは周囲に悲観的な見方を振りまいてはいけない。それが社員の士気をくじき、活力とひらめきが消えてしまい、守りの姿勢で意思決定が行われてしまう。

    未来について話す。過去はどうでもいい。

    最善の判断をするためにはプライドは脇におけ。

    ほんの少し敬意を払うだけで信じられない様な良いことが起こる。逆に敬意を欠くと大きな損をする。

    到底できっこないと思える事が、意外と現実になる。

    もし何かが違うと感じたらそれは自分にとっては正しい道ではないのだろう。

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