- Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
- / ISBN・EAN: 9784152098948
作品紹介・あらすじ
1986年にロサンゼルス中央図書館で火災が発生。200万冊の蔵書のうち40万冊が焼け、70万冊が損傷した。この火災の経緯を軸に、放火犯として逮捕された男の半生、図書館の歴史、公共空間としての図書館の存在意義を語る、本と図書館好き必読のドキュメント。
感想・レビュー・書評
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エピソードとしては面白いと思ったところはいくつかあったのですが、文章や章立てとの相性が悪かったかなあ。
プロローグ的な第1章が終わり、続く第2章は本当に素晴らしいと思いました。自分も図書館はちょくちょく行くのですが、開館前から並ぶということは、今のところしたことはありません。第2章で図書館開館前の様子が描かれるのですが、それがとても生き生きと瑞々しく描かれています。
警備員にまだ開かないのか、と尋ねる人がいる一方で、図書館内では職員たちが忙しく働いている。ここを読んだだけで、開館前の図書館に行ってみようかな、と一瞬思ってしまった自分がいます(笑)
そして図書館の火災の描写もまたすごい。あっという間に燃え広がり、あまりの高温に消防士たちからも多数の負傷者が出るという大惨事。火災はおよそ7時間半後ようやく収まったそうです。
続く第3章では火の手からは免れたものの、消火活動による放水でビシャビシャになった本の乾燥作戦が語られます。その数約70万冊。そして火災の翌日に集まったボランティアの数は2000人。さすがアメリカというか、このスケールの大きさには、不謹慎ながらもワクワクしてしまいました。
他に面白かったエピソードは、ロサンゼルス図書館の歴史が語られる中で出てきた図書館館長の”チャールズ・ラミス”
彼は元新聞記者でオハイオ州からカリフォルニアへ異動することになるのですが、その際旅行日記を出版するため、その距離を徒歩で移動したという変わり種。
その後、図書館館長になってからは、利用者のために図書館や職員の意識変革を行う一方で、私生活のだらしなさや、その変革意識から上層部から煙たがられて……
図書館をやめた後ラミスは、仕事に飽きていた、時間を無駄にした、と語ったり、日記には解雇された後に「とても気分がいい」と書いていたりしたそうです。
でも、自分はとてもそうは思えませんでした。例えば図書館の蔵書の整理や、職員に利用者に声をかけるよう積極的に促したりと、利用者の視点に立ったエピソード、
エセ科学本の間に「この本は図書館で保有できる本の中で最低レベルのものです。あなたにもっと分別があれば、これを読まなかっただろうに残念です」と、警告のしおりを挟もうとした、というエピソード、
あるいは鉄道会社に「本は人間になくてはならないもの」と手紙を出し、従業員に図書館を利用するよう勧めてほしい、と依頼したエピソードなんかを読んでいると「そんなわけあるかい!」と思わずツッコみを入れそうになってしまいます。
そんな彼が「とても気分がいい」とうそぶきつつも、晩年は破産状態で人生を過ごしたという話を読むと、もっとこのラミスという男のことを知りたいと思うのです。
他にも電子化が進む中での図書館の役割の話であるとか、なぜか著者が本を燃やす話もあるのですが、それも面白かった。本を燃やすといえば思い出すのはレイ・ブラッドベリの『華氏451度』ですが、この本でもそのことについて言及されています。
『華氏451度』の本が燃やされる描写は、行為自体は許せないもののその描写は幻想的で、美しかった記憶もあります。この著者は本を燃やしたとき昏い興奮を覚えた、といったことを書かれているのですが、それもなんとなく理解できるかもしれません。
本は書き手の想いや物語と、これまでの読者、そしてこれからの読者の歴史が、詰まっているものだと思います。それが炎によって、一瞬で消し去ることが出来るという事実。それは、書き手の想いも読者の過去も未来も征服できるということのように思うのです。
だからブラッドベリの美しい描写や、この本の著者が感じた高揚感というのは、そうした本の偉大さと人間の支配欲や破壊衝動の裏返しなのかな、と個人的に思いました。
とまあ、こんな風に面白いエピソードは多かったのですが、話が全体的に散漫に感じたのも事実。火災の話かと思ったら、現代の図書館の職員の話に移り、次に図書館の歴史になり、また火災の話に戻り、という風に章ごとにまったく内容が変わってしまうことが多く、話に感情移入しきれませんでした。
もっと上手くまとまっていたら、図書館の歴史やエピソードに対し、感情移入して読めたと思うのですが「それもっと知りたい」となったら話が変わってしまうので、エピソードや歴史が、上手くつなげられず、単なる事実の羅列のように感じるところが多かったです。
原題が『The Library Book』なので、火災の話だけでないのは仕方ないのですが、それにしてももうちょっと、話と章立てはまとめてほしかったかなあ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
全てを焼き尽くす火事は、いかなる場合でもぞっとするが、図書館の大火災はことさら恐ろしい。
鎮火後も、煤け、濡れながらも生き残った本を、どう運び出し、保管し、修復へ道筋をつけるのか?
山積みの問題が興味を引くし、折々にあらわれる多くのボランティアにも感動する。
タイトルのわりに、大火災の話は少なく、ロサンゼルス中央図書館や、公共図書館の歴史に話が飛び、文章も散漫。
結論もはっきりしないため、ややもの足りない。
原題は『The library Book』なので、邦題の問題のよう。
また、筆者が実際に焚書を行うが、必然性が感じられなかった。 -
1986年4月29日、ロサンゼルス中央図書館で火事が発生。火事は7時間も燃え続け、40万冊が燃え、70万冊が消火の放水などを浴びて損傷したのち、鎮火された。
火の気のないところから出火したと推測されたため、放火が疑われた。
一方で、ハリー・ピークという白人青年は友人に、自分は火災の時、図書館にいたと語り、ある時は放火したのは自分だとまで語っていた…
ロサンゼルスの公共図書館に放火したと語る青年が本当に放火犯なのかを追跡する話かと思いきや、それはあくまでもサイドストーリーで、この火事に見舞われたロサンゼルス中央図書館の歴史、図書館長やロサンゼルス市の図書館、分館を統括する統括長の役割、そこで働く司書と呼ばれる人々、そして図書館を利用する市民、特に図書館が生命線となるホームレスの人たちへの支援など、街や市民に対して図書館が果たしてきた役割や、これからの図書館像についてがメインテーマだった。
昨年見たドキュメンタリー映画「ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス」、そして最近見た「パブリック 図書館の奇跡」、アメリカの地域において図書館の果たす役割を語る作品に触れる機会が多いが、どれも驚かされる。 -
九州産業大学図書館 蔵書検索(OPAC)へ↓
https://leaf.kyusan-u.ac.jp/opac/volume/1339031 -
やっぱりどの国でも火事は大事件なんだな…
こういう場所なら、なおさら…