エレベーター

  • 早川書房
3.19
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本棚登録 : 236
感想 : 31
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152098788

作品紹介・あらすじ

15歳のウィルは射殺された兄のかたきを討つため、銃を持ってエレベーターに乗り込んだ。自宅のある7階から地上に到着するまでの短い時間に彼が出会う人々とは……ポエトリーとタイポグラフィを駆使する斬新な手法で文芸賞を席巻した注目作、ついに日本上陸!

感想・レビュー・書評

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  • おととい兄のショーンが銃殺された。「掟」に従ってぼく(ウィル)は復讐する。ショーンの引き出しから銃を見つけ、ジーンズの腰に押し込む。殺したのはきっとリッグスだ。
    アパートメントの8階からエレベーターに乗ると、7階から男が乗ってきた。それはショーンの兄貴分の亡パックだった。6階からは幼馴染の亡ダニが、5階からは亡マーク伯父さんが……。


    各階で止まるエレベーターに乗り込んでくる身近な故人たちとの関わりを通して、短絡的な復讐の愚かさに気づいていく少年の物語。





    *******ここからはネタバレ*******

    横書きで、詩の形で綴られるこの物語は、情報が断片的でパズルを解くように真実が明かされていきます。

    ショーンの兄貴分のパックは強盗で、ショーンに16発入った銃を渡した。
    幼馴染のダニは、8歳の時ウィルとキスした日、撃たれて死んだ。
    マーク伯父は、「結晶」の売人になって撃たれ、
    父さんは、マーク伯父さんを殺した(と思った)やつを殺したせいで殺され、
    フリックはパックを脅すつもりで殺してしまい、
    ショーンは、パックの銃でフリックを撃った(これが減っていた1発分)。

    いやもうここまで来ると、誰がどう読んでも、その虚しさに呆れることだと思います。

    やっと1階に到着して皆が降りていく中、沈黙を通していたショーンの一言が効いていますね。
    「おまえも 来るか?」


    刺激的だけれども、復讐の愚かさや銃や短絡的思考の危険性を気づかせるには充分な内容です。

    私としては、詩の形となっているところが読みにくく感じましたが、だからこその風情もあるので否定はしません。


    生死を扱うので、しっかりした中学生以上におすすめします。

  • 兄の復習を果たしに行く弟のエレベーターでの不思議体験。文章の書き方が独特だが、それがかえってわかりやすくてよかった。

  • 何者かに射殺された兄の復讐を主人公がするために、銃を持ち、自宅を出てエレベーターに乗る、というのが簡単なあらすじです。どんな理由があろうと人を殺したら犯罪になりますが、兄弟、親など、愛する人達から受け継いだ掟の存在により、して当然だという気持ちで主人公はエレベーターに乗り、ロビーを目指して降下するわけです。しかし、ひとつ降りるたびに必ず誰かがエレベーターに乗り込んできて、主人公に介入してきます。その度に主人公は復讐について、改めて考えたり見つめ直したりします。こう見てみると、愛する人を殺した犯人を絶対に許さない気持ちを、何とかして抑えようとしているようにも見えてきます。作者が過去に友人を射殺された経験があった事が、これを書く契機になったことを著者紹介で知り、作者自身がこれを書くことで少しでも癒しにしたかったのかもなどと勝手に思ってしまいました。文章が、詩を読んでいるような構成になっているのが新鮮で、実際、詩的な表現で印象に残る箇所が、いくつかありました。

  • 不思議な話だった。詩とも物語とも、どっちにもつかない話だった。悪い性質を持つ血統のせいなのか、性質を養った悪い環境のせいなのか。連鎖が少年を悩ませている。道を踏み外す少年たちにも、彼らなりのロジックがあるのかな。悪い連鎖が断ち切られることを祈る。

  • 兄のショーンが銃で殺された。15歳のウィルは、ショーンの洋服タンスにあった銃をベルトにはさんでマンションの下りエレベーターに乗った。掟に従ってショーンを殺したやつを殺しに行くのだ。
    8階から乗ったエレベーターは、各階で止まる。そして誰かが乗ってくる。ウィルの知ってる人ばかりだが…

    銃社会がいまだに続くアメリカ。その犠牲になるのは、貧困にあえぐ人たちばかり。そんな社会の悲しさを訴えかけている。

  • 兄が殺された。掟に従い、殺したやつを見つけ出し必ずそいつを殺さなければならない。兄の銃。殺ったのはきっとあいつ、あいつに違いない。銃を持ってエレベータを降りる。エレベータに現れる、身近な死者たち。連れ、幼馴染、伯父さん、父さん、ギャング新入り、そして兄さん。お前も来るか?

    どんな世界に暮らしていたのかが、だんだんわかってくるのですが、皆若くして死んでしまう、そんなことしていたら当然でしょ、な。クリスマスキャロルだ。

  • 詩のような文体でレイアウトも凝っているとのことで興味を持って読みました。
    個人的にこのテーマ、内容は、映画や本でわりとなじみがあるため新鮮みはなかったのだけれど(というと語弊があるが)、寓話風の設定がどこかクリスマスキャロルのようで、次は誰が乗って来るのかと面白く読めた。
    主人公(16歳?)の語りは読み進めるほど意外と抑えめな印象を受けた。もっとやんちゃで砕けた口調にすることもできたのだろうけれど、このビジュアルでそれをやってしまうと、ポップになりすぎて読みにくくなりそうな気もする(そういう翻訳物を読んだ経験あり)。だから、あえての抑制なのかな。さらっとニューベリー賞受賞って書いてあるけど、ちゃんと司書さん等の目に留まり、日本の中高生に届くといいのだが。

  • 読み始めは翻訳やし、読みにくいかもーって思ってたがだんだんとエレベーターの中の世界に入り込んでいく。

    変わった作風で、どうも詩みたいな雰囲気。
    英語の原書を読めばなお良かったかなーと。

    銃社会のアメリカらしいというか、日本で生きてきた自分には、完全に理解や共感は出来ないなーと。

    最後の文章が良かった!

  • 兄を殺された弟の復讐譚かと思いきや話は意外な方向に。エレベーターが降りていくごとに話は進み、悲しみや切なさが深くなった。最後の問いかけに弟はどう答えたのだろう。まだ答えは出ていない。

  • 世にも奇妙な物語的な。短編映画的な。ハッとするラスト。

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