魂に息づく科学:ドーキンスの反ポピュリズム宣言

  • 早川書房
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感想 : 14
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  • Amazon.co.jp ・本 (528ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152098078

作品紹介・あらすじ

ブレグジット、トランプ大統領誕生に象徴される理知軽視のポピュリズム的傾向に異を唱える声明をはじめ、進化学から世相までをとりあげた珠玉のエッセイ・講演録などから厳選。ファンはもとより世情に我慢ならぬ読者の清涼剤となる、待望のドーキンス論文集成

感想・レビュー・書評

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  • 上質な科学エッセイ。中の一つに、こんな話。

    ジェリンオイル。中枢神経系に直接作用する強力な薬物であり、様々な症状を引き起こすが、たいていは反社会的あるいは自傷的なものである。子供の脳を変質させ、治療が難しい危険な妄想や、大人になってからも障害を引き起こす恐れがある。2001年9月11日航空機による自爆テロ。これはジェリンオイルによるトリップだった。セーラムの魔女狩り、コンキスタドールによる南米先住民の大虐殺、中世ヨーロッパで起きた戦争の大部分を煽り、近年ではインド亜大陸とアイルランドの分割に伴う大虐殺に火をつけたのもジェリンオイル。

    今まで生きてきて聞いた事がない。よく知られた薬物の別呼称だろうか。戦争に用いられたアンフェタミン、ヒロポンの事か。いや…、gerin oil、
    これは、アナグラムでreligion。つまり、宗教。科学を論じる大家が、ここで宗教を極限まで皮肉ったという訳である。

    宗教は科学の対立にある。知の及ばぬ、未だ到達できぬ解析の過程を埋めるのが宗教であり、巨人の肩に乗った科学の蓄積に対し、肩に乗れない人たちにとっても、そこから見える世界は全て宗教観なのかも知れない。考えさせられる。

  • 正直なところ、本書を読んでドーキンスの話を理解できたとは言い難い。途中で辞めちゃおうかと思うくらいに。身内の方々の思い出話とか、追悼文のようなものも、別に俺ファンというわけじゃないから、ちょっと距離感あったし。でも、最後まで目を通したのは、読んでみて何か、ここからくみ取るべきものがあると感じたからだ。

     社会には合理的じゃない部分、理不尽な部分、時代を変えたり、時代が同じでも別の角度から見たら、愚かとしか思えないことがたくさんある。自分自身の中にも、別角度から見たら、何やってるんだお前、というところがたくさんあるだろう。それはどうしようもないことだよね、と思うと同時になんとかしたい、もっと良い考えや行動を取りたいと思うところはあってさ。ドーキンスの本を読んでいて、少しでもより良い方向に進む手がかりはあるような気がしたんだよね。科学という方法を使ってさ。

     一回読んだくらいで、その方法が理解できたとは言えない。ただ、そういう方向があるとは少し知れたような気はする。折にふれ、繰り返し読むことは必要だろうなぁ。

  • リチャード・ドーキンスによる科学エッセイ集(41篇収録)。

    原題「SCIENCE in the Soul:Selected Writings of a Passionate Rationalist」

    p.5のエピグラフに「クリストファー・ヒッチェンズの思い出に」とあり、第8章に「ビッチをたたえて」(2011/10/08に、テキサス自由思想大会でクリストファー・ヒッチェンズに、アメリカ無神論連盟のリチャード・ドーキンス賞を授与する式典でのスピーチ)が収録されている。クリストファー・ヒッチェンズ(Christopher Hitchens、1949/04/13-2011/12/15)は、p.518の引用・参照文献(引用箇所は、多分、p.504の「[マザー・テレサ]は貧しい人の友ではなかった。彼女は貧困の友だった。苦しみは神からの贈り物だと言っている。そして、知られている唯一の解決策、すなわち、女性の地位向上と家畜のような強制的生殖からの女性の解放という方策に反対することに生涯を費やした」)にも引かれている「The Missionary Position : Mother Tetesa in theory and practice」(1995、日本語訳無し?、リチャード・ドーキンスが「神は妄想である - 宗教との決別」で触れている)の著者だが、もっと注目されていい人物だと思えた。

    [目次]
    第1部 科学の価値(観)
    第2部 無慈悲の誉れ
    第3部 未来の条件
    第4部 マインドコントロール、災い、混乱
    第5部 現実世界に生きる
    第6部 自然の神聖な真実
    第7部 生きたドラゴンを笑う
    第8部 人は孤島ではない

  • ふむ

  • 科学に対する著者の熱い思いが伝わってくる。日経サイエンス2019年2月号ブックレビュー。

  • 理を愛し,理でないもにに立ち向かう姿勢,聡明さを感じる文体
    自然の奇跡に覚える畏敬の念.

    宗教とかいう人類史上最大の毒.
    理屈で説明するすべを持たなかった人が己を慰めるために創り上げた幻想,非現実.

    自然淘汰の産物すなわちあらゆる形の生命は美しく豊かですしかしそのプロセスは悪意に満ち残忍で近視眼的です

    生存価は何だろうか
    遺伝子とミーム
    進化は自然淘汰と突然変異がその誘引

    遺伝子にとっての生存価と、ミーム?社会的?生存価の競合
    エロコンテンツとか

    信仰とは証拠に基づかない信念。信仰は脳のウィルス

    ジェリンオイル

    自然淘汰の産物すなわちあらゆる形の生命は美しく豊かですしかしそのプロセスは悪意に満ち残忍で近視眼的です

    生存価は何だろうか
    遺伝子とミーム
    進化は自然淘汰と突然変異がその誘引

    遺伝子にとっての生存価と、ミーム?社会的?生存価の競合
    エロコンテンツとか

    選挙権に年齢制限(上限 )を設けたらどうか

    信仰とは証拠に基づかない信念。信仰は脳のウィルス

    魂に息づく科学、買う?

    ジェリンオイル

    例えば、「◯日ドアが開かなかったら管理会社に警報が鳴る」というシステムを作るのはそう難しくありません。

    カールセーガン 惑星へ

    私の中に宗教的と呼べるものがあるとしたら、それは科学が開かせる限りの世界の仕組み痛いする果てし無い驚嘆です

    宗教という名の人類史上最高のマインドコントロール
    昆虫は天体を使ってまっすぐ飛ぶことができる。
    自然淘汰と突然変異

    カールポパー
    悪霊にさいなまれる世界
    カールセーガン
    子供の選択

    である、と、であるべき、の棲み分け
    アンチダブスタ

    不可能の山に登る
    全フィクション中最も不快な登場人物わ

    ネオナチの少女

  • やっぱりドーキンス先生はいいですよね。
    人間ふくむ動物が進化の産物であり、
    それゆえの制約を受けている。という前提を
    何を考えるにしても基本に据えておかなくてはいけない。

  • 本書は、すでにどこかで発表されたリチャード・ドーキンスの文章を集めて編集して一つの書籍にまとめたものである。その材料には、科学解説、社会批評などの他に、知人の著書の序文や弔辞なども含まれる。イギリスのEU離脱を決めた国民投票やトランプを選んだ米大統領選の結果などにも皮肉を利かせた、ある意味翻訳を通すとわかりにくい類の文章まで集められている。
    回りくどいものあったり、背景の理解が必要なものがあったりと、なかなかすっと楽しめなかった、というのが読後の感想である。


    アインシュタインは「私はとても敬虔な無信仰者である - これはちょっと新しい種類の宗教だ」と言ったという。
    もちろん、これはドーキンスが反対する類の宗教ではない。本書に取り上げられたエッセイにおいても、反宗教の立場を鮮明にしているものも多い。

    そのため、本書において、ドーキンスは、宗教がなくとも、道徳や信頼関係を築くことができると主張しようとしているように感じる。
    ユヴァル・ノア・ハラリが『ホモ・デウス』において、「リチャード・ドーキンスやスティーブン・ピンカーら、新しい科学的世界観の擁護者たちでさえ、自由主義を放棄することを拒んでいる。彼らは自己と意志の自由の解体のために学識に満ちた文章を何百ページ文も捧げた後で、息を呑むような百八十度方向転換の知的宙返りを見せ、奇跡のように十八世紀に逆戻りして着地する」と評したが、本書からもその気が少しする。非科学的宗教観やポピュリズムと戦うためではあるが、こういった一般向けのエッセイやスピーチとなると、ある意味では相手の土俵に乗せられて勝負を仕掛けているように思う。ドーキンスは、いわゆる人間主義的発想から自由ではないように思えるが、それは反宗教としての立場としても正しいものなのかどうか考えてしまう。

    ドーキンスは、「私たちの脳は、目標と目的を設定する能力を与えられています。もともとその目標は、厳密に遺伝子存続のためでした」と書くが、まるで遺伝子に目標があるかのような誤解を与える書き方をしている。さらに続けて、「私たちの脳のような大きな脳は、すでに述べたように、構成要素である自然淘汰された遺伝子の命令に積極的に逆らえます」と書いている。そして少し先の結語として、「利己的な遺伝子の観点からすると、私たちの脳は創発特性によって別の方向へ走ったのであり、私の個人的価値体系はこのことをとても明るい兆しと見なしています」とする。倫理的空白おいて宗教が必要なのではないかとする相手への反論のためなのだが、倫理的空白にこそ黙して耐えなければならないのではと思うのだが、それはこの審級においては間違いなのだろうか。

    ドーキンスがここまで宗教に対して強く当たる理由は、進化論こそが宗教との間での論争の元になっているということである。そして、その肝が実は宗教を信じる側においても、その科学的知見と矛盾するというものではなく、宗教こそが道徳的な生活の根拠になるべきであり、進化論を真として認めて、聖書の誤りを認めることが宗教を支えてきた何かを棄損することになることを恐れてのものなのであろう。ドーキンスもまたそのことを知っている。

    ドーキンスはダーウィンを持ち上げて、このように語る。
    「ダーウィンの自然淘汰による進化説は、地球上の生命の存在と形態を説明する局所理論にとどまらない。おそらく、私たちが生命と結びつける現象を適切に説明できる唯一の理論だろう」

    宗教については以下の通りだ。
    「宗教的信念は合理的でない。宗教的信念はばかだ。ただのばかでなく、超ばかだ。宗教は本来分別のある人々を、禁欲主義の修道院に送り込み、ニューヨークの超高層ビルに突っ込ませる」

    アメリカでは、進化論を信じる人の割合は増えてきているが、いまだに少数派らしい。創造論を支持する人は、1980年代から2010年に入っても変わらず四割を超えているとする調査結果もある。
    ドーキンスにとって、EU離脱とトランプ大統領もその不合理性の先にあるようにも見えているのかもしれない。ドーキンスも米国以外の先進国であれば、ここまで焦らずに済んでいたのではないのだろうか?

  • ドーキンス節炸裂といった感じ。だが、ここまで突き詰めると常人とは付き合えないだろう。

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著者プロフィール

英国の進化生物学者。世界的ベストセラー『利己的な遺伝子』で知られる。ほかの著書に『盲目の時計職人』『神は妄想である』『遺伝子の川』『進化とは何か』など多数。

「2022年 『これが見納め』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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