ゴッホの耳 ‐ 天才画家 最大の謎 ‐

  • 早川書房
4.00
  • (11)
  • (15)
  • (6)
  • (1)
  • (1)
本棚登録 : 154
感想 : 19
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (406ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152097132

作品紹介・あらすじ

1888年、フランスに滞在していた画家のゴッホは、己の片耳を切り落とす――現在でも語り草になっているこの衝撃的な事件はなぜ起きたのか? イギリスの気鋭の歴史学者が世界各地の調査をもとに新事実・新資料を発掘し、「狂気の画家」の知られざる一面に迫る

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • ゴッホの耳 天才画家最大の謎
    バーナデット・マーフィー著 山田美明訳

    2017 9/25 初版

    2019 11/13読了

    狂気の天才画家 炎の人 フィンセント・ファン・ゴッホの
    あの「有名な事件」の真相を解き明かしたノンフィクション作品。

    終始、真実だけを目指して
    頑なに貪欲にデータを集める著者。

    約130年前、過去にもいろんな人達が
    調べに調べ述べに述べてきた題材に
    敢えて好奇心だけで立ち向かうってもうホントゴッホ越えの狂気と言えますよ^^;

    そんな中から導き出された答えには
    愛と思い遣りと情熱がある
    血の通った当時の人々の姿がありました。

    今でも世界中の人々に愛される理由があったんだね。

    ゴッホの作品を改めて観てみたくなりました。

    これがノンフィクションだ!
    「つけびの○」高橋某よ。

  • 原田マハさんの たゆえども沈まず を読んで
    ゴッホに興味が湧き、お試し版から読み始め
    結局止まらず本編を購入しました

    多くのアーティストがそうであるように
    心の葛藤や精神衰弱を抱えたゴッホ。
    くらいの感覚でいました。
    しかし、この本を読んで、星の数ほどある論文から
    丁寧に丁寧に炙り出したゴッホの姿について
    苦しみを抱えながらよくもまぁ
    あんなに彩豊かな作品を猛烈に描けたもんだなぁ
    と、尊敬の念を抱かざる得ませんでした

    そしてその人生の深さ、彩りを鮮明にしてくれた
    著者の執念とも言える調査力には脱帽です。
    一つの点としての論文は数あれど
    それが説得力を持って紡がれた糸は極太でした!

    文章はストーリー仕立ての部分もあり
    非常に読みやすく
    著者の調査過程や苦労、悔しさ、喜びを一緒に味わえるものになっています。

    この本を読みつつ、ナショナルギャラリー展を訪れ
    ゴッホのひまわりを目にすることができたことは
    わたしにとって幸運でした。
    ギラギラとまるで、そのものが光を放つような
    そんな文面の魅力も感じながら本物に触れ合えました。

  • ゴッホに関して知っていると思っていたこと。例えば、アブサンの飲み過ぎで精神的におかしくなっただとか。ゴーギャンとの関係は愛憎悲喜交々であったとか。そのような話が如何に後から脚色された虚飾であるかを、膨大な資料を文字通り掘り起こし系統建て積み上げた事実に基づいて質す。その執念のような仕事ぶり。美術史家でもなく伝記作家でもないイギリス人の著者が、ゴッホが切り取ったとされるものが耳たぶのみなのかそれとも耳の大部分なのかを解き明かそうと試みる。徐々に明らかとなるゴッホの人生の一部についても当然興味深いが、著者の積み上げる断片的な資料が徐々に形を成し百年以上昔のフランスの片田舎を活き活きと蘇らせる様そのものがとても興味深い。推理小説から感じる興奮とよく似た感情の高ぶりを覚える。

    夥しく挿し込まれる注釈の殆どは一次資料への参照であり、一般的な読者には無機質な文字の羅列のようにしか思えない。しかしそのことが正に著者バーナデット・マーフィーの積み上げたものの確かさを支えている証拠でもある。特にアルルの市井の人々の実在を教会や病院の記録から立ち上げ、署名を一つ一つ突き合わせて真贋を見極め、コッホに係わった人々のその性格のようなものまで詳らかにしようとする徹底ぶりには唖然とさえする。そして、ゴッホが耳を届けたとされる女性に関する事実の解明に関する下りにはよく出来た法廷ものの小説を読むような興奮すら覚える。ラシェルなのかギャビーなのか、何故その混乱が起きたのか、その女性は本当に娼婦だったのか。もちろん最後の最後まで何故ゴッホが耳を彼女に渡したのかという問いに対する確実な答えには辿り着くことは出来ないのだが、手渡した耳とされるものが何であったのかを含め諸々の伝聞を事実に落とし込み解明する。何度も言うがその徹底ぶりには脱帽する。

    ゴッホ〜最後の手紙、世界で一番ゴッホを描いた男。何だか最近ゴッホに引き寄せられているようだ。

  • 謎に満ちた画家ゴッホ。
    自ら切り落としたとされる「耳」の謎を追う。

    著者の、大量のデータベースを作成し真実を探求していく姿勢にまず驚かされた。
    けれどこれは単なる「耳」の謎解きに留まらず、ゴッホが過ごしたアルルの素晴らしい自然や、数々の絵を描いた背景も丁寧に綴られてあり、ゴッホの魅力を再確認させるものだった。

    気性が激しく些細なことにも思い詰める質のゴッホ。絵を描くことに情熱を注ぎ、どんなに過酷な環境の中においても自分の絵を描き続ける。
    彼が生み出す優しい色使いや筆のタッチは見ている者を癒してくれる。
    病に侵され思うように描けない苦悩や絶望。
    そして最期は非業の死を遂げてしまう。
    そんな常に不安定な状況の中にある彼が、自分の甥の誕生を祝って描いた「花の咲くアーモンドの木の枝」は日本の桜を彷彿とさせる位優しさとおおらかさを感じる作品で、正に「生きる」力を連想させてくれる。
    日本を愛し日本の浮世絵から多大なる影響を受けたゴッホ。
    一度も日本の地を踏むことは叶わなかったけれど、彼の絵が彼に替わって日本の地を訪れ多くの日本人に愛されている。
    それはとても素敵なことだと思う。

  • 『#ゴッホの耳 - 天才画家最大の謎』

    ほぼ日書評 Day706

    日本人なら、ほとんどの人が知っているであろう「ゴッホの耳」事件。

    ところが、ゴッホが切り取ったのは、どちらの耳で、どれぐらいの大きさか?
    なぜ、そんな常軌を逸した行為に至ったのか?
    そして、それを渡したとされる「娼婦」とは誰なのか?
    その時、(事件の起こったアルルの街でかつてゴッホと共同生活を送っていた)ゴーギャンは何をして過ごしていたのか?

    これらの問いに明確かつ自信を持って答えられる人はほとんどいないはず。なぜなら、そこに光を当てた研究がなされてこなかったから。

    著者は7年をかけて、各地の公文書館等で当時の人たちが書き残した手紙やメモにあたり、新聞の過去記事を精査し、独自に作成した1万人を超える当時の住民データベースをもとに探り当てた彼らの子孫に対するインタビューを行うことで、その真相に迫る。

    なかなかに読み応えのある一冊、ゴッホ好きの方にはオススメだ。

    https://amzn.to/3EoW7ys

  • 私は今までゴッホが自らの耳を削ぎ落としたのは、耳の一部、耳たぶだと思っていた。が、著者は丹念な情報収集によって、ゴッホを診察した医師が書いたスケッチ、耳のほとんどを切って耳たぶが少し残っている状態を示しているものを見つけ出した。

  • 多くの謎を持つゴッホの「耳」だけを取り上げて、当時の報道や書簡をひとつひとつ丁寧に掘り起こし取材して書かれた一冊。ゴッホそのものは勿論だが、当時のアルルの街の閉鎖的な様子や彼を精神異常者として糾弾した人々の偽証されたかもしれないサインの件等、研究論文と言うより物語としても読み易い。オーヴェル・シュル・オワーズの最期をどんな気持ちで過ごしたかを思うと胸が掻きむしられるようだ。

  • まず、こんなにも謎が多く、そして謎解きつくされた人をまた謎解こうとした著者に感服。
    もう正しいことでは無く好きか嫌いかで言えば、この本のゴッホは好きです。

  • ゴッホはひまわりを描いた
    酒と女に狂った
    おかしくなって耳を切り落とした
    そして自殺して時がたって絵が売れ出した


    そんなイメージだったけど、これを読んでみてそれらは一新。伝道師になりたかった。女性達を救いたかった。感受性の強い彼は周りの不幸を自分のことのように感じたのだろう。いてもたってもいられなくなった彼は奔走する。

    けれども、それらは成功しなかった。多くの挫折の跡を感じ俺を悲しくなった。

    自分は良しと思ってしていることがから回るなんてことはみんな経験してるんじゃないかなぁ
    俺こそが彼女を幸せにできる!とかね
    でもうざがられる、みたいな
    それをめげずにめげずに何度も何度も繰り返す

    狂ってると言われても不思議ではないけれど、不器用な彼を好きになった。確かに彼の絵からは泥臭さみたいなものを感じるし
    絵というもの、とりわけ思いがこもっている絵は必ず人に届くってことがわかる良い例

    そしてなぜ絵を描き続けたんだろうか
    彼の絵は生前では一枚しか売れていない
    『好きだから』で片付けてはいけない理由がここにあると思う
    趣味や仕事それらとは違う絵の付き合いかたをしたい俺は、このことを考えたい。

    彼の優しさ、不器用さを知れて、自分にとっての絵を考えさせてくれる本だった。

  • 著者は、ゴッホの研究者でもなければ美術の専門家でもない。ただの英国人の女性・美術教師だった。しかし、ゴッホの「耳切り事件」の真相がただ知りたくて、当時のアルル住民1万5000人以上のデータベースを作り関係する書簡、論文を調べまくった。その間7年。いわば素人の執念が、この熱い1冊を生んだ。何と言っても功績は、ゴッホの耳のどの部分をどのように切ったのかが、これまでわからなかったのを、病院で初めて診察した医師のメモを見つけ出し、切った跡を特定したことだ。「偉大なる素人」の感動作だ。

全19件中 1 - 10件を表示

バーナデット・マーフィーの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×