- Amazon.co.jp ・本 (406ページ)
- / ISBN・EAN: 9784152097132
作品紹介・あらすじ
1888年、フランスに滞在していた画家のゴッホは、己の片耳を切り落とす――現在でも語り草になっているこの衝撃的な事件はなぜ起きたのか? イギリスの気鋭の歴史学者が世界各地の調査をもとに新事実・新資料を発掘し、「狂気の画家」の知られざる一面に迫る
感想・レビュー・書評
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ゴッホの耳 天才画家最大の謎
バーナデット・マーフィー著 山田美明訳
2017 9/25 初版
2019 11/13読了
狂気の天才画家 炎の人 フィンセント・ファン・ゴッホの
あの「有名な事件」の真相を解き明かしたノンフィクション作品。
終始、真実だけを目指して
頑なに貪欲にデータを集める著者。
約130年前、過去にもいろんな人達が
調べに調べ述べに述べてきた題材に
敢えて好奇心だけで立ち向かうってもうホントゴッホ越えの狂気と言えますよ^^;
そんな中から導き出された答えには
愛と思い遣りと情熱がある
血の通った当時の人々の姿がありました。
今でも世界中の人々に愛される理由があったんだね。
ゴッホの作品を改めて観てみたくなりました。
これがノンフィクションだ!
「つけびの○」高橋某よ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
原田マハさんの たゆえども沈まず を読んで
ゴッホに興味が湧き、お試し版から読み始め
結局止まらず本編を購入しました
多くのアーティストがそうであるように
心の葛藤や精神衰弱を抱えたゴッホ。
くらいの感覚でいました。
しかし、この本を読んで、星の数ほどある論文から
丁寧に丁寧に炙り出したゴッホの姿について
苦しみを抱えながらよくもまぁ
あんなに彩豊かな作品を猛烈に描けたもんだなぁ
と、尊敬の念を抱かざる得ませんでした
そしてその人生の深さ、彩りを鮮明にしてくれた
著者の執念とも言える調査力には脱帽です。
一つの点としての論文は数あれど
それが説得力を持って紡がれた糸は極太でした!
文章はストーリー仕立ての部分もあり
非常に読みやすく
著者の調査過程や苦労、悔しさ、喜びを一緒に味わえるものになっています。
この本を読みつつ、ナショナルギャラリー展を訪れ
ゴッホのひまわりを目にすることができたことは
わたしにとって幸運でした。
ギラギラとまるで、そのものが光を放つような
そんな文面の魅力も感じながら本物に触れ合えました。
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ゴッホに関して知っていると思っていたこと。例えば、アブサンの飲み過ぎで精神的におかしくなっただとか。ゴーギャンとの関係は愛憎悲喜交々であったとか。そのような話が如何に後から脚色された虚飾であるかを、膨大な資料を文字通り掘り起こし系統建て積み上げた事実に基づいて質す。その執念のような仕事ぶり。美術史家でもなく伝記作家でもないイギリス人の著者が、ゴッホが切り取ったとされるものが耳たぶのみなのかそれとも耳の大部分なのかを解き明かそうと試みる。徐々に明らかとなるゴッホの人生の一部についても当然興味深いが、著者の積み上げる断片的な資料が徐々に形を成し百年以上昔のフランスの片田舎を活き活きと蘇らせる様そのものがとても興味深い。推理小説から感じる興奮とよく似た感情の高ぶりを覚える。
夥しく挿し込まれる注釈の殆どは一次資料への参照であり、一般的な読者には無機質な文字の羅列のようにしか思えない。しかしそのことが正に著者バーナデット・マーフィーの積み上げたものの確かさを支えている証拠でもある。特にアルルの市井の人々の実在を教会や病院の記録から立ち上げ、署名を一つ一つ突き合わせて真贋を見極め、コッホに係わった人々のその性格のようなものまで詳らかにしようとする徹底ぶりには唖然とさえする。そして、ゴッホが耳を届けたとされる女性に関する事実の解明に関する下りにはよく出来た法廷ものの小説を読むような興奮すら覚える。ラシェルなのかギャビーなのか、何故その混乱が起きたのか、その女性は本当に娼婦だったのか。もちろん最後の最後まで何故ゴッホが耳を彼女に渡したのかという問いに対する確実な答えには辿り着くことは出来ないのだが、手渡した耳とされるものが何であったのかを含め諸々の伝聞を事実に落とし込み解明する。何度も言うがその徹底ぶりには脱帽する。
ゴッホ〜最後の手紙、世界で一番ゴッホを描いた男。何だか最近ゴッホに引き寄せられているようだ。 -
『#ゴッホの耳 - 天才画家最大の謎』
ほぼ日書評 Day706
日本人なら、ほとんどの人が知っているであろう「ゴッホの耳」事件。
ところが、ゴッホが切り取ったのは、どちらの耳で、どれぐらいの大きさか?
なぜ、そんな常軌を逸した行為に至ったのか?
そして、それを渡したとされる「娼婦」とは誰なのか?
その時、(事件の起こったアルルの街でかつてゴッホと共同生活を送っていた)ゴーギャンは何をして過ごしていたのか?
これらの問いに明確かつ自信を持って答えられる人はほとんどいないはず。なぜなら、そこに光を当てた研究がなされてこなかったから。
著者は7年をかけて、各地の公文書館等で当時の人たちが書き残した手紙やメモにあたり、新聞の過去記事を精査し、独自に作成した1万人を超える当時の住民データベースをもとに探り当てた彼らの子孫に対するインタビューを行うことで、その真相に迫る。
なかなかに読み応えのある一冊、ゴッホ好きの方にはオススメだ。
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私は今までゴッホが自らの耳を削ぎ落としたのは、耳の一部、耳たぶだと思っていた。が、著者は丹念な情報収集によって、ゴッホを診察した医師が書いたスケッチ、耳のほとんどを切って耳たぶが少し残っている状態を示しているものを見つけ出した。
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多くの謎を持つゴッホの「耳」だけを取り上げて、当時の報道や書簡をひとつひとつ丁寧に掘り起こし取材して書かれた一冊。ゴッホそのものは勿論だが、当時のアルルの街の閉鎖的な様子や彼を精神異常者として糾弾した人々の偽証されたかもしれないサインの件等、研究論文と言うより物語としても読み易い。オーヴェル・シュル・オワーズの最期をどんな気持ちで過ごしたかを思うと胸が掻きむしられるようだ。
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まず、こんなにも謎が多く、そして謎解きつくされた人をまた謎解こうとした著者に感服。
もう正しいことでは無く好きか嫌いかで言えば、この本のゴッホは好きです。 -
著者は、ゴッホの研究者でもなければ美術の専門家でもない。ただの英国人の女性・美術教師だった。しかし、ゴッホの「耳切り事件」の真相がただ知りたくて、当時のアルル住民1万5000人以上のデータベースを作り関係する書簡、論文を調べまくった。その間7年。いわば素人の執念が、この熱い1冊を生んだ。何と言っても功績は、ゴッホの耳のどの部分をどのように切ったのかが、これまでわからなかったのを、病院で初めて診察した医師のメモを見つけ出し、切った跡を特定したことだ。「偉大なる素人」の感動作だ。