ゲノム革命―ヒト起源の真実―

  • 早川書房
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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152096104

作品紹介・あらすじ

現生人類がネアンデルタール人と交配していたとか、犬と一緒に絶滅させたとか、定説を覆す発見の裏には、隆盛著しいゲノムサイエンスが必ずありました。そこまで断言できるわけを丁寧に解説します

感想・レビュー・書評

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  • ここ30年ほどで急速に進歩したゲノム(DNA)の研究によって、人類の進化について調べる方法論やその結果わかったことを解説する。
    化石の研究にくらべて、研究者個人の考え方などに左右されにくく、わかった事を再検証によってさらに詳細に調べる事も可能であり、我々人類の進化の流れについてかなりクリアになりつつあるという感じを持った。
    他の人類進化の本には無いゲノム研究の詳しい考え方などが説明されている部分が良かった。

  • さらっと読んでみたがあまり興味を惹かなかった。

  • くどい。

    言いたいことのほとんどは図版で説明されてて分かりやすい。
    にもかかわらず、文章をあわせて読むと、かえって混乱する。

    ただし、最近の説を一通り確認できて、面白くはあった。
    全体を通して、「見かけ別の種であっても、交雑が可能ならば遺伝は続く」という話で、学者が大混乱している。
    という印象。

    ここまでくると、「人とチンパンジーやゴリラは、本当に雑種を作れないの?」という気分になる。


    いろいろ細かく書いてあるにもかかわらず、
    「現人類にネアンデルタール人の遺伝子が混入」するのは、実際には「ネアンデルタール人に現人類の遺伝子が混入」してるのかが読み取れず、残念。
    ぼくの頭が悪いのか?

  • 人類進化の歴史を自然人類学やゲノム解析の観点から解説してくれる。化石だけではなく、遺伝子研究からの進化のストーリーが実に興味深い。

  • 本書は、現代のヒトが、類人猿から分かれてどのように進化をしてきたのか、ネアンデルタール人やデニソワ人との関係はどのようなものであったのか、という進化の過程をゲノムの研究が明らかにしてきたことを解説したもの。女系で伝達されるミトコンドリアの遺伝子情報の研究を紹介した『イヴの7人の娘たち』や男系のみに継承されるX染色体に着目した研究を紹介した『アダムの呪い』(両書ともブライアン・サイクス )でも紹介されているが、今では人類は東アフリカの大地で生まれ、そこから全世界に拡がったという出アフリカ説が定説になっている。本書では、さらにその威力を高めている遺伝子解析技術によって勧められている人類の物語の詳細化と修正が描かれている。「本書の狙いは、ゲノムを使って古い疑問を新しい証拠に基づいて調べ直すための方法を紹介すること」という通りだ。

    ヒトゲノムの研究は、この数年においても急速な進歩を遂げている。ゲノム研究の大きな目的のひとつは間違いなく医療への適用だろう。しかし、われわれがどのようにして今のわれわれのようになったのかを明らかにするという知的探究もそれに劣らない価値を持つものである。

    アフリカが人類の起源の地であることは間違いなく、あらゆる遺伝的証拠がアフリカ単一起源説を裏付けている。ただ、現生人類が比較的最近の短期間に狭い地域で発生したという見方については揺らいでいるという。
    ヒトの有効個体数(現生する子孫に自分の遺伝子を伝えることができた個体数)は非常に小さくて約一万人だったということも重要な知見だろう。しかもこの有効個体数が少ない時代は100万年間から300万年間という比較的長い期間続いたという。また、このことがヒトの進化に大きな影響を与えたことが分かっている。具体的には、遺伝的浮動の影響が自然淘汰の影響よりも大きくなるという影響である。共通の祖先の有効個体数は一万人よりもかなり大きかったことから、現生人類は種分化の後にぐっとその数を減らすことがあったということになる。この事実は非常に重要な示唆を含むことになるらしい。

    本書ではさらにさかのぼって、チンパンジーとゴリラと人間の種系統樹、ヒト族の三分岐法の問題、の解析に多くの紙幅が充てられる。個々の遺伝子単位で見ると必ずしも三分岐法に従っているわけではない。「遺伝子系統樹と種系統樹が一致する確率は、祖先の集団の大きさに対して、種分化から種分化までの期間(節間)がどれだけ長いかによって決まる。なぜなら、合着はランダムなプロセスであって、節間が長ければ長いほど、より古い時代でなく節間で二つの遺伝子のコピーが合着する可能性が高くなるからだ」。チンパンジーとゴリラが分かれてからの節間は比較的短いため合着が起きる可能性は比較的高い。ここからチンパンジー、ゴリラから現生人類の遺伝子の流れが必ずしも一本調子でないということもわかる。樹形図のようにある時点をもって二つの種が分かれるというものではないのだ。しばらくは二つの種は互いに交雑をしていただろうが、二つの種が地理的に完全にわかれてから遺伝的浮動や自然淘汰を繰り返して進化を独自に果たしたのかどうかも不透明だ。
    しかし、遺伝子をつぶさに見ることで、どのようにして二つの種が分かれていったのかということもある程度分かるようになってきている。また共通の祖先から分かれただけではなく、交雑により他の類人猿からも少しづつゲノムは取り込まれてきたこともわかっている。その複雑性についても徐々に理解をされるとともに、そのことを確認することもできるようになってきている。その研究の進展には、最近におけるゲノム解析の効率化の向上や、計算能力の飛躍的な向上によるところが大きい。

    特にゲノム解析技術が発展することで最近得られた新しい知見のひとつは、ネアンデルタール人などの古代人のゲノムが解析できるようになったことによるものだろう。本書でも言及されているスヴァンテ・ペーボの『ネアンデルタール人は私たちと交配した』にその内容が詳しいが、人類進化の道を辿る上での非常に重要な知見だとみなされている。そもそも、自分たちのような一般人の興味もそそる話題でもある。

    ヒトゲノム解析研究の中で、ヒトをヒト足らしめる遺伝子とその働きの解明が次の大きなステップだ。ヒトとチンパンジー、ヒトと古代人とをわける適応形質は何か、その適応形質はゲノムのどこに見つかるのか。 わかっているのは、少なくとも言語などの能力は単一の遺伝子だけではなく複数の領域で発生した変化が積み重なって生じたものであるということだ。言語関連の遺伝子としては、FOXP2遺伝子が有名だが、その遺伝子だけがヒトの言語能力を実現しているわけではない。それ以上のことは本書の中でももちろん明らかにされない。しかし、今後の研究の進展により、それらは思ったよりも早く解明されるのではないだろうか。そうしたとき、遺伝子編集技術の発展を前提とすると何が起きるのか、想像力を働かせることが大切だろう。

    とても魅力的な本なのだが、本の装丁やタイトルが少し残念。原題は、”Ancestors in Our Genome: The New Science of Human Evolution”。こちらの方がやはり内容をよく表しているし、惹きつける題名をつけることができるような気がする。例えば、『遺伝子の痕跡 - われわれはどのようにヒトとなったのか』とか。装丁ももちろん変えてほしい。


    ちなみに白内障になりやすい遺伝子というのが特定されているのもこの本で読んで初めて知った。GRYGDという遺伝子の変異体がある人は罹患しやすいらしい。しかし、この変異体は哺乳類でも共通してもっているが、それらでは有害な変化を抑えるためのDNA変異体が1個か2個存在してるらしい。40代のくせに白内障の手術をするはめになった自分のこの遺伝子の変異を検査してみたくなった。だからといって何かできることもないのが、遺伝子解析の難しさなのだけれども。



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    『ネアンデルタール人は私たちと交配した』のレビュー
    http://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/416390204X

  • 人類はそうなんですね(^_-)

  • 469.2/H 33

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