三人の逞しい女

  • 早川書房
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本棚登録 : 194
感想 : 14
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  • Amazon.co.jp ・本 (339ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152093134

作品紹介・あらすじ

〔仏最高峰ゴンクール賞受賞〕弁護士のノラは、長年会っていなかったアフリカ系の父のもとに帰郷するが、最愛の弟の姿が見えず……。アフリカからヨーロッパに渡ろうとするカディ・デンパは、数々の苦難に……。芥川賞作家の翻訳で贈る、フランス文学の極北!

感想・レビュー・書評

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  • フランスでトップともいえる文学賞 ゴンクール賞をゲットした秀作。
    初めて聞く名前だった。調べるとアフリカ(セネガル)とフランスの混血という出自。
    当作品も連作集というものの、緩やかに繋がっている感じがなくないといったところ。
    ノラ・ファンタ・カジ・デンバ~の3人の女がそれぞれにヒロインとなって生きていく姿を生き生きと描いている。

    読み始め、いま一つ乗れなかった。
    島国日本ではフランスのような移民社会とは全く異なり、各人の【多彩にまじりあう感情】【相互に、時には闘うことも辞さない日々の時間】を熟知の上で人生街道を闊歩、あるいはひたひたと歩いて行かねばならない。
    1話から、そういった社会の力学に圧倒され、もっとそういった社会を知っていかないといけないなと痛感した次第。

    2話も3話もアフリカと対峙する仏社会~時には神経質な、またある時は悲惨ないばらの道を歩く人生が語られていく。

    私からしたら、「これを逞しいというの?」と感じられずにはならなかった作品だった・・・が。
    訳者小野氏の弁による【正解など、どこにも見当たらない不確実、不可解な状況をひたすら耐え忍ぶ】態度・・・英国詩人キーンが言う消極的能力=逞しさ・・だと!




     

  • 読むのが辛い。
    濃密な混乱と悲しみの現実感の濃さ。
    ひとごとではない理不尽さが痛い。

    本当に読むのが辛く、飛ばしたり、でもまた戻ったりしつつ読みました。
    フランスの小説というものをあまり読んだことがないのですが、米英文学とはずいぶん違い、外国の小説なのにどこか日本純文学小説と似ていておどろきました。

  • 3つの作品だった。この作者の作品は2作読んでいて、もっと刊行されないかなー、筆が遅い人なんだなー、と思っていた所、実は多作な人で翻訳されてないだけだった。待ちに待った新作!かと思ったら10年前の作品。しかも重たい内容。多分フランス生まれの、セネガル人の父親を持つ彼女の、移民としての生活という、本筋から発生した物語であり、起源なんだけど、なかなか苦しい読書で、前作までのユーモアさはどこかに置いてきちゃったのかな。それでもとても好きな作家である。現在は家族とともにベルリン在住とのこと。

  • 全体的に読みやすい文体。しかし、物語とその構造は一筋縄ではない。

    Ⅰ 最後の対位旋律がわからない。妄想?父の傲慢さを際立たせているのは紛れもない事実だ。植民地主義のテーマが物語の根底にある。家父長制への批判も。一筋縄ではない家族像も描かれている。

    Ⅱ Ⅰを現実として、Ⅱはそれを夢にしたような象徴性に溢れている。ここでの対位旋律はわかった。暴力、沈黙の描き方がとりわけ象徴的だ。

    Ⅲ Ⅱとは同時代であることがいくつかの表現から判明する。主人公は自己を生きる。沈黙から言語に移る過程が印象深い。主人公に対して、対位旋律で描かれる若者はなんなのか。男性性の器の小ささをあぶり出すためか。

  • 中編3編
    アフリカとフランスの混血という出自だったり、フランス人と結婚しての移民だったり、流されているだけでは生きていけない状況の中でいろんな感情と闘いあるいは殺しあって目の前の一日一日に縋り付いている。その心理描写が巧みで、情けない男たちに腹立ちながらノラ、ファンタ、カディに引き寄せられる。鳥たちも象徴的だ。

  • アフリカとフランスを舞台にした、三つの中編を収めた作品。三話ともそれぞれの「逞しい女」が登場しする。

    各編のつながりはあるものの、そこはさほど重要ではなく、一編ずつ独立した話として読んだ。
    一話目は、フランス人の母とアフリカ人の父をもつ娘の話。横暴な父親に怯え苦労しながらも弁護士になったが、今も昔も家族に翻弄され繊細な神経を張りつめながら生きている。二話目は、人づき合いが下手で何をやってもうまくいかない神経症的な男の目をとおして、アフリカ系の妻の様子が語られる。最後は、夫を亡くしたアフリカ系の女性が、難民となってヨーロッパを目指し悲惨な経験を重ねていく。

    フランスでは最高の文学賞を受賞ということで初めて読んだ作家だったが、一、二話は病的なほど神経質な主人公の言動に、神経が逆なでされる思いだった。移民の多いフランスの、アフリカとの関係を含めた背景をもっと詳しく知っていれば、より魅力を味わえたのかも。暗喩も多く、深く考えながらの読書で、重厚さに息苦しくなる一冊だった。

  • ・マリー・ンディアイをはじめて知りました
    ・ガイブンキョウクの読書会の課題本でした。
    ・3つのパートに分かれていて、それぞれアイデンティティの問題を抱えた人々がでてくるんだけどどこかでそれぞれがつながってたりそうは見えなかったり曖昧で五里霧中の中を進んでるようでした。
    ・一話目の弁護士のノラと父の関係。弟のソニーとの関係。話の辻褄が合わなくていったい誰が真実を語ってるのか?って思ったけど、真実なんてないのかもしれない。
    ・2話目の移住先で教師の職を捨てなければならなかったファンタ、沈黙を通すことで主張できる何かがあるのかもしれない。夫のルディの話ばっかりだが、車でひいたノスリはいったい誰の化身だったのかが読書会の話題にでた。そしてときどきでてくる太字の謎
    ・3話目かカディ・デンバの話。自分がカディであるという以外何もなく流されているようにみえるが徐々に力をもっていく。この話賛否両論に分かれた。
    ・マリー・ンディアイに詳しい方が来ていて彼女の生い立ちやらなんやら聞けた。現代フランスの最重要作家らしいが少々読みにくいし読み取ることができればもっと楽しめると思った。

  • 主人公(女)ごとに構造化され三部作。三人は肉体的にも精神的にも弱い。おびえ、懐疑的になり、悩みまどう。自分のやっていること、来歴を信じられなくなる。それでも最後まで"自分"を捨てない、逞しさをもっている。私は二、三部が良く分からなかった。

  • タイトルからアフリカのどっしりとした女たちの姿を想像するが、登場するのは脆く繊細な女たちと男。
    フランス人の母とアフリカ人の強権的な父の間にフランスに生まれ、苦学して身を立てたが父に請われてアフリカにあるその家を訪ねるノラ、幼い頃アフリカに移住し、成人したものの、ある事件をきっかけにフランスに舞い戻った男、ルディ、そして身一つで必死にヨーロッパへの亡命を試みる貧しいカディ。
    三人の「女」? おそらく、ルディがフランスに連れ帰ったアフリカ人の妻のことか。
    先に書いたように、この二人の女と男、「逞しい」どころか、自らをも信頼できずに危うい精神状態にあり、だれかにひょいと背中を突かれたらそのままどこかに転がり落ちそうな人たちである。しかしその奥底に熾火のように消しきれぬ愛があり、生きることへの執着がある。目を覆い耳を塞ぎたくなるような話もあるが、描かれるのは絶望ばかりではない。特に第2話の終わりは、まるで自分が見たかのように映像がありありと残る。
    三作はゆるく繋がる連作とも読め、どの章においても鳥たちの存在が目を引く作り。
    とにかく訳文が素晴らしい。このリズムと迫力と美しさ、おそらく一筋縄ではいかなかったろうと思わせはするが、その苦労を滲み出させることはない。長い詩を読むかのようだった。

  • 「ロジー・カルプ」(早川書房)、「心ふさがれて」(インスクリプト)、「ねがいごと」(駿河台出版社)の邦訳3作が一度に出て話題になった、マリー・ンディアイの作品

    早川書房のPR
    「〈ゴンクール賞受賞作〉ノラは父の暴君のような振る舞いのもとで恥辱に耐えながら生きてきた。だがやがて、同じ境遇の二人の女と己の尊厳のために戦い始める。仏最高峰の文学賞に輝いた傑作」

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      読書の秋 マリー・ンディアイを迎えて 【オンライン】アンスティチュ・フランセ関西
      https://www.institutfrancais....
      読書の秋 マリー・ンディアイを迎えて 【オンライン】アンスティチュ・フランセ関西
      https://www.institutfrancais.jp/kansai/agenda/marie-ndiaye-wo-mukaete/
      2021/11/07
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