- Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9784152092915
作品紹介・あらすじ
私はなぜ愛するオリンパスを告発するに至ったのか? オリンパスの元CEOが突然の解任までの全真相を激白!
感想・レビュー・書評
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『日本人はなぜサムライとイディオット(愚か者)がこうも簡単に分かれてしまうのか』本書の筆者であるマイケル・ウッドフォード氏が「オリンパス事件」のきっかけとなる記事を書いた記者に対して発した問いは重い。 「オリンパス事件」の主要人物として、己の会社を告発し、壮絶なプロキシー・ファイト(委任状争奪戦)を繰り広げたオリンパス元CEOであるマイケル・ウッドフォード氏による手記です。
僕はかつて、大学時代に唯一まじめに通っていたO教授の講義で、
「日本のことを理解する上で注意深く見る必要があるのは日本に住んでいる外国人が残したものだ」
という教えを受けたことがあり、それが時を越えて僕に日本人が「集合的無意識」の中にあるものがいったい何かということを、本書は教えてくれました。
筆者が言うとおり、その経歴は「生え抜き」の「サラリーマン社長」であり、ほかの日系大手企業の社長およびCEOとして迎えられた方とは一線を画すということも、そこから明らかになっておりました。しかし、請われてオリンパスのCEO担ってから2週間後、彼は自身の会社が、バブル期に「財テク」によって膨れ上がった損失を隠蔽するため、巧妙な手段を使って行われた「飛ばし」や「不明朗な企業買収」を繰り返し、粉飾決算を行なっていた実態を告発するにいたりました。
彼は長年のボランティア活動から母国である英国で「ナイト」の称号も授与しており、まさに「サムライ」と呼ぶのにふさわしい人間であると思われます。その彼と長年会社を牛耳っていた―のちに逮捕される菊川会長、さらには森副社長との壮絶な駆け引き。ここの描写は本当に緊迫感に満ち満ちており、経験した人間でしか書くことはできないであろうなと思われました。
そのハイライトは要領を得ない回答に業を煮やしたウッドフォード氏が森副社長(当時)に
「森さん、あなたは誰のために働いているんですか?」
とたずねたところ、彼はウッドフォード氏の目を見つめ返して、
「菊川さんです。私は菊川さんに忠誠を尽くしています」
という場面でした。僕はここに旧日本陸海軍に端を発し、現在に至るまでわれわれを苦しめ続けている「病理」があるのだと個人的にはそう確信しております。
そして、委任状をめぐる闘争や、メインバンクとの不毛なやり取りの末に、彼はCEO復帰を断念せざるを得ないという決断を下すにいたります。彼は現在、母国のイギリスにいるのだと思われますが、彼抜きで果たしてオリンパスは再建できるのか?また、彼は自分が半生をささげた会社をどのように見つめているのか?それが気になるところです。彼が行った記者会見はほぼすべてYoutube上にアップされておりますので、興味をもたれた方はそちらも参照されてみてはいかがでしょうか?詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
あれだけ社会的な影響のあった経済事件で、その当事者、しかも一番の中心にいた人物がみずから書いた本ということで、読まないわけにはいかないなと思って購入。
買収について疑惑を持ったあと、それを他の経営陣に話した時の反応、その後身の危険を感じて日本を逃げるようにでたこと、すべてが本人の言葉によって生々しく描かれている。
不正のスキームなどの細かい点までは触れられておらず、純粋にノンフィクションものの読み物として読み進めることができる。
メインバンクの三井住友が彼が提示した新経営陣の案を受け入れなかったことは残念でならない。 -
入り込んで一気に読めた。
前職を「正しい事をしようとした」ために、退職に追い込まれた自分の経験と重なった。
「私は彼らが集団自殺に走るレミングのように思えました」という一文に共感。 -
ノンフィクション
ビジネス -
オリンパス元社長の事件にかかわる手記。やはり支援してくれた人への配慮から記述を省いているところもあるようだし、なにか驚きの新事実が具体的にあるというわけではない。しかし、当事者としての心の動きや、菊川氏らの様子を間近から見た記述は一組織人として興味深く読んだ。
・すごい人だし、その勇気や行動力には感服するが、もしかしたら自分の上司にしたいかと言われるとチョット引いてしまうタイプかもしれない。
・グラスルーツを主催していた宮田氏とは元から強固なつながりがあった。
・取締役責任調査委員会の<a href="http://www.olympus.co.jp/jp/corc/ir/data/tes/2012/pdf/nr20120110_2.pdf" target="_blank">報告書</a>を併せ読むと、9月30日のウッドフォード氏をCEOにした取締役会の受け止め方に、ウッドフォード氏と他の取締役(菊川他の事件関与者をのぞく)との間で齟齬があったような気がする。しかし、事ここに及んでは、ミスコミュニケーションがなかったとしてもソフトランディングは望むべくもなかったろう。
・オリンパスの経営陣を見ると、集団思考の怖さがよく分かります。
・なぜオリンパスはウッドフォード解任を翻さなかったのか。なぜ銀行はウッドフォードの復帰を門前払いしたか?そこが今ひとつよく分からない。それなりの理由もあるかもしれないが、単に「余計なことをしおって」という本音があったとしても驚かない。さらに言うと、まだまだ不都合な事実があるのでは、とも思わせる。。。
・出直しオリンパスの主導権を誰がどう取るべきだったかはよく分からんが、債務超過寸前の会社なので、金貸しが主導権をとるのはそれはそれで普通かもしれない。ウッドフォード氏の主張する、オリンパスの独立性を守りながらの再建は現実的には難しかったのだろう。
・なぜ、菊川氏はウッドフォード氏を社長にしたか。逃げ切ったと思っていたというのはあるだろうが。いまひとつ腑に落ちない。外人の方が、不都合な情報からの遮断して、院政を敷きやすいと踏んだのか?
菊川氏こそ手記を出版して賠償金の足しにしないかね。消されてしまう? -
オリンパス事件は、日本のガバナンスの歪みを象徴する事例であることがよく分かる。大株主が銀行など日本の大手企業である以上、ガバナンスなんていつまでも画餅のままなのではないかと思えてくる。最後の宮田氏が語るエピソードはなにより経営の本質を語っているように聞こえる。
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しょ
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休暇を利用して一気に読みました。
とある監査の本で紹介されていたので、遅まきながら読んでみました(寄り道)。
ガバナンス・コードが策定された一因とでもいえるオリンパス事件。この「解任」後の状況はほとんど知らないけど、とにかくこれが日本の悪いところの集大成(もたれあい、事なかれ主義、秘密主義)だよねと非常に残念な気持ちになってしまう。曲がりなりにもガバナンスの一翼を担う監査という仕事をしているのだけど、この「ガバナンス」が世界でどう捉えられているか、ウッドフォード氏のこの開示からよく伝わってきます。
自分がこのような場面に直面したときに、彼のように行動することができるか。彼のように行動するのが仕事だと観念する。そうでなければなんでしょう。
「技術は一流ながら・・・(中略)・・・低級なガバナンスや二流の経営がはびこり、世界で戦うための力が失われているのです。」
最後、ウッドフォード氏を支援してきた、元オリンパス専務の宮田氏の稿にて、グッドナンバー2とグッドナンバー1について紹介されているけど、これもまた印象深い。腐る程いるグッドナンバー2を経営者に選んだときから、組織の衰退が始まる。両者を見分ける力も持ちたいもの。 -
この世の中には、掃いて捨てるほどたくさんのグッドナンバー2とごく一握りのグッドナンバー1がいる。
グッドナンバー2が知識、経験を積んでグッドナンバー1になれる確率は驚くほど小さい。
だから、経営トップの後継者探しは、グッドナンバー1を探し出し、それに必要な教育を施すことが不可欠になる。それができず、手近なグッドナンバー2を後継者に選んだ時点から、組織の衰退が始まる。
経営トップは修羅場の舵取りだ。綺麗事だけで何とかなるほど単純ではない。だからこそ企業は間違ったことをやらないこと、正しいことをやり通せることが大切になる。グッドナンバー1とグッドナンバー2の差は、この点に関するスタンスの強靭さの差である。
修羅場に臨んでも、絶対に揺るがない、強靭な軸を持つこと、これが経営トップに求められる最大の資質だ。
欧州オリンパスの子会社のレディホフ社長は、29才のマイケルウッドフォードに社長を譲り、その後マイケルは、オリンパスの社長になる。
マイケルも凄いが、レディホフ社長も凄い。
オリンパス本社本体は腐っていたが(^^;; -
読了。何もかもが世界とは別のルールで動く老害達。しかたがない、それが日本だよ。危険の少ない島国村社会ではガバナンスは育たない。優秀な人ですね。朝から一気読み!!