ネザーランド

  • 早川書房
3.09
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感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (344ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152092359

作品紹介・あらすじ

ある春の夕方に届いた訃報。ロンドンに暮らすオランダ人ハンスの思いは、4年前のニューヨークへさかのぼる-2002年。アメリカを厭う妻は幼い息子を連れてロンドンに居を移し、ハンスは孤独で虚ろな日々を送っていた。しかし、ふとしたきっかけで遠い少年時代に親しんだスポーツ、クリケットを再開したことで、大都市のまったく違った様相をかいまみる。失うとは、得るとは、どういうことか。故郷とは、絆とは-。数々の作家・批評家が驚嘆した注目の作家がしなやかにつづる感動作。PEN/フォークナー賞受賞。

感想・レビュー・書評

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  • アメリカでの主要な文学賞の一つらしいペン/フォークナー賞を授賞した作品ということで買ってあった作品ジョセフ・オニール氏作『ネザーランド』を読了。

     9.11のあとのニューヨークを舞台に元々アメリカ人ではない人たちが繰り広げる報われない夢にむかって街で蠢いている毎日の物語だ。

     ニューヨークを舞台と行っても、主人公を残してニューヨークをはなれ戻ってしまった家族がいるロンドンと主人公が幼少の頃に家族や友達と暮らしたオランドの街を舞台に語られるサイドストーリーが主人公の人となり悩みの根幹だったり、人となりだったりを読者に伝える重要な役割をもっていてメインのストールとの織り交ぜ方が巧みだ。

     そのメインの物語はインド、パキスタン、バングラデシュ、スリランカ、オーストラリア、ニュージーランド、南アフリカ、ジンバブエ、西インド諸島など旧英国連邦からアメリカに移住してきた人たちがなんとニューヨークでクリケットをプレーしていて、主人公は彼らと出会ったことで混沌に陥った自分の私生活から逃げるように幼少期にやっていた彼らが楽しむクリケットを自らプレーする事ににはまって行くところから始まる。

     そこで助演男優の役割のトリニダードドバゴ人の友人と出会い彼が夢見るクリケットスタジアムを作るという荒唐無稽な夢へのチャレンジにつきあいながら転勤でロンドンに戻るまでの混沌とした毎日の様子が様々な登場人物を交えて描かれている。お話を読み込んで行くとトランプ大統領が四苦八苦している僕が知っていたアメリカの姿とは大きく違った白人がマイノリティーであるかのように感じる事もあるだろう今のアメリカの姿を少しばかり感じられたような気がした。

     海外転勤とそれに伴う家庭の問題などはどこかで経験したようなちょっとほろ苦いシンパシーを感じた小説を読むBGMに選んだのがNorah Jonesの"Don't know why"。優しい声だなあ。
    https://www.youtube.com/watch?v=tO4dxvguQDk&list=PLVkOlxom3V_lhA4LnA2vPmcO8ODwdsg4W

  • 不思議な話。残るんだか残らないんだか。
    物語は、チャック・ラムスキーンという男の死の知らせから始まる。
    その男との交流と当時の夫婦関係の不和と様々な出来事を思い出してくる。
    そう、人のことは分からない。
    なぜそうなってしまったのかも。
    ふわふわしたような本。

  • 9.11後のアメリカ、日常は流れ、家族や友人との間で様々な事柄が起き、愛する人や自分の人生について考え悩む。9.11はあくまで背景だが拭いがたく存在し、日常を少し歪める。今の日本と自分を想起させる。主人公の微細な心情の揺れを優れた描写力で描き、Google Earthで妻のいるロンドンや友人が死んだNYを彷徨う場面などとても印象的。
    後書で訳者(古屋氏もいい翻訳者)ギャツビーに言及しているが、謎めいたチャックがギャツビーのように物語の推進役になっているのも面白い。

  • なかなか入り込めず
    半ば過ぎてからやっと乗れた
    けど、私にはもうちょっと・・・

  • ジョゼフ・オニール著の『ネザーランド』はずっと読みつづけていたいと思わせる小説。もし自分が俳優なら、演じたいと思う場面があちこちにあるし、もし監督なら原作の味わいを損なわずどう映像化するか悩まされるようなそんな本。

    今年出会えた中でいちばん美しい文章がつまった本だった。読み始める前は、9.11を契機としたつながりの喪失の話だと思ってた。それは直接的にはわずかに触れられる程度で、物語を背景から支配している感じかな。前景で主に語られるのは、記憶の世界の彷徨であり、家族の再生、夢の実現をめざす男との奇妙な友情など多岐にわたっている。語り口が独特で、まるで同僚と語らう時のように、あちこちに話が飛ぶ。すぐ次の文章から時も場所も異なる話題に移るが、主人公の記憶の中では関連した話。このリズムに慣れると、ずっと読んでいたくなった。

    いろいろなシーンで主人公は自身の記憶に絡めとられるため、慣れるまでは話の流れについていけなかった。

  • 全体的に平坦でゆったりとした内容。
    それでもロンドンの風景がとても綺麗に描写されている。
    また登場人物の心理描写も素晴らしい。
    「喪失のあとに、かけがえのないものが見つかった」という言葉に惹かれて購入しました。

  • アメリカとイギリスの文化の違い、ニューヨークの嫌な面と街の持つ魅力など、比較対象があるからこそ登場人物の心情に引き込まれる。大筋はクリケットをめぐる話なのだが、これまた馴染みのないスポーツなので、興味深い。
    ネザーランドは筆者の故郷。NYもかつてはオランダ領だったという関連付けもある。

  • PEN/フォークナー賞受賞ということで手に取って読んでみることに。

    「何が言いたいのかまったくわからない」というのが大まかな感想。

    青春でも、冒険でも、喜劇でも悲劇でもない物語に僕らは一体何を感じればいいのだろうか。

    まぁ最後まで読み通せていないから胸張って言えるわけじゃないけど・・特筆すべき点がまったく見いだせなかった小説だ。

  • ジョン・バンヴィルぽいなと思いながらよんでいたら古屋さんのあとがきにもそうあった。ここに描かれているニューヨーク、それも9・11後の、には、ふしぎな温かみがある。著者がそのホテルに住んでるというのはおどろいた。

  • ひとをこの世界に繋ぎとめているものは何なのだろうか。
    飛翔の瞬間は前へ進んでいく中でしか訪れることはないのだ。
    ページをめくりながらそんなことを考えていた。

    小説のなかに現れるクリケットの描写が美しい。

    ラワルピンディの小さな町の食堂で、地元のひとたちとブラウン管に映し出されたクリケットの試合をいつまでも観ていたのを、髭面の男たちの画面に見入る柔らかな眼差しを思い出す。

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