- Amazon.co.jp ・本 (372ページ)
- / ISBN・EAN: 9784152089632
作品紹介・あらすじ
自分の知性をひた隠し、アパルトマン管理人の典型を生きようとする未亡人ルネ。大人たちの世界のくだらなさに幻滅し、自殺を志願する12歳の天才少女パロマ。二人は並外れた感性と頭脳を持ちながらも、世間との係わりを拒み、自らの隠れ家にこもっていた。しかし、ミステリアスな日本人紳士オヅとの突然の出会いによって、二人の未来は大きく開かれるのだった-哲学、映画、音楽、絵画、文学、そして日本文化へ自由自在に言及しながら、パリの高級アパルトマンに住む人々の群像をユニークに描き上げ、今世紀フランス最大のベストセラーを記録した感動物語。フランスの「本屋大賞」受賞。
感想・レビュー・書評
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訳者のあとがきにギフトとしても売れていると書いてあった。正に、読んでいてあの人に読んで欲しいなと思った。身近な誰かと共感したくなる本なのかもしれない。
出会えて良かったと思えた本だった。 -
ちょっとまったくおもしろさがわからなかった
階級社会がどうとか言われても入り込めないし
自分は他人とは違う、周りは愚鈍なやつばかり
そういう悪口を言ってるだけにしか読み取れなかった
こうあるべきと押し付けられているということだと思うけど
破ろうと思えば破れるものであって
それに甘んじているのは自分自身なのでは?という気がする
日本ってスバラシイ!と思ってくれるのはうれしいが
どの国にもスバラシイ文化はあるので
美化しすぎないで頂きたいと感じた
ほんとにとにかくシニカルなので
周りはバカばかり!と思ってる人は共感できるかもしれない
自分はまったく共感できなかった
ところどころオ?と思うところがあったので
ギリギリ星2つにしておく
バカばっかりと思うのはよくあることだけど
それをあけすけに見せられるのは気分悪いです -
日常のように淡々と時が過ぎ、日常のように終わりが曖昧なまま過去となる。そうやって心のどこかに小さなトゲが残される。容赦ない自然の惨禍も玄関先の蔓薔薇も同じように傷痕を残しはするが、突きささったトゲはいつまでも小さな痛みを与え続け、誰ひとりその終わりに気づくことはない。日常のみが、ただ終わりを告げる。それが日々を過ごすということである。
通勤電車のつり革に必死でしがみつき、その日のちっぽけな出来事を思い返しながら、子供時代に過ごした遠い田舎の小さな町の嫌な出来事が通り過ぎるのを眺める事も、朝の出がけに郵便受けを覗き込み、その日のくだらない予定を反芻しつつ、ふと見つけた差出人に忘れていた記憶を呼び起こす事も、全てが区切りのはっきりしない時間の中に刻まれた昨日の断片でしかない。オレンジ色に反射する幸せに満ちたレンガの壁も、忘れてしまいたいくすんだ会議室の壁も、同じ空間を共有している。それが過ぎて行く日々である。
そうした変わることなど無い日常は、唐突にねじ曲がる。不意の出会いも思いがけない偶然も、ある日突然日常の一部となって踏み込んでくる。だから誰もが後ろめたい何かを隠している。自分の息をするのに必要な半径の中に誰かが不意に入って来ないように。
最初に粗削りな印象を強く感じたことだけは、あらかじめ告白しておかなければならない。決してネガティヴな感情を抱いた訳ではないが、だからと言って、しばらくは洗練された作品といったポジティヴな印象には程遠いものでだった。それが、ページを繰って新たな段落に出会うたび、いつの間にか粗削りなことが必然であるように思えてくる。そうした不思議な作品だ。幾重にも折りたたまれた異質な層が、後半になって急に滑り出す。慌てて前のページを見返しても、どこかに適切なページが見つかる訳でもない。読み終えてからようやくもやもやとした影が見えたりする。売れるわけだ。 -
哲学的だったり頭の中だけの文章だったり、、中盤までは読むのになかなか骨が折れたけれど最後まで読んで良かった。
終盤のキラキラするような疾走感とラストのあっけなさに、読んだ後は余韻がじぃんと襲ってきた。 -
最初から最後まで引き込まれるように読んだ。近年で一番面白かった小説。これからも何度も読むだろうと思う。感性がとてもやわらかで繊細なので、女性の方が好む本かも。
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友人のおすすめ本。最初は文が硬くて読みづらいと思ったが、読み進めるうちにはまっていった。
心の闇があって、本当の自分をさらけ出してはいけないと思っていた主人公ルネ、人との出会いによって自分をさらけ出しても良いと思えた。また、人の一生を考えさせられる。 -
“夏の雨は私たちの心にしっかりと棲みつく―”
自分の知性をひた隠し、無知な一アパート管理人として生きる未亡人ルネ。大人の世界のくだらなさに幻滅し、死を望む少女パロマ。並外れた感性と頭脳を持ちながらも、世間との係わりを拒み内にこもっている二人の前に突如現れた日本人オヅ。彼との触れ合いによって、二人の運命は次第に変化していく。
「無欲だった私は、謎めいた波に揺れる無能なわらしべのよう」ルネ・ミシェル
身分にあった喜びと苦しみの中で、強者は生き弱者は死ぬ。それでもありのままの自分でいることを辞められないのなら、選択肢はふたつ。隠して生きることと隠れて生きることは、紙一重にして正反対。
「わたしも額に運命が書いてあるの?」パロマ・アルサン
ほんの僅かだとしても、今とは違う自分になれる可能性があるのなら。先の見える運命などありはしないんだと、翅の存在を知らない孵化したばかりの蝶のように、飛び立てることを信じていられるでしょう。
「とても開化した閉鎖的な人ですね」オヅ・カクロウ
他人を見ていても、実は自分を見ているだけの人もいます。確実性の向こう側を見たいと望んでいれば、たとえ真の理解者ではなくとも、少しでも相手に通づる部分を見つけ出すための最初の一歩となり得るかもしれません。
交互に描かれる二人の独白で進んで行く本書には、哲学・心理・文学・日本文化など様々な標題の片鱗が含まれており、各登場人物目線のその捉え方がとても個性的。にも関わらず内容は小難しくは無く、脈絡もしっかりしているので最後まで非常に面白く読み通せます。もしかしたらあなたの良く知るあの人も、本当の心をするどい棘の中に隠したハリネズミ?
そんなお話。 -
素敵な本。あたしは12歳の少女の考えてることにどんどん引き込まれていきました。