世界一高いワイン「ジェファーソン・ボトル」の酔えない事情―真贋をめぐる大騒動
- 早川書房 (2008年9月25日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
- / ISBN・EAN: 9784152089601
作品紹介・あらすじ
「建国の父」が遺した奇跡のワインか?史上最高額のサラダドレッシングか?アメリカ第3代大統領ジェファーソンが革命直前のパリで購入したという「シャトー・ラフィット1787」。1985年に競売にかけられて以来、現在もまだワイン界を翻弄するボトルの真実に迫ったノンフィクション。
感想・レビュー・書評
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第3代アメリカ大統領トーマスジェファーソンが所有していたとして史上最高額で落札されたワインを巡る疑惑。
絵にしろアンティークにしろ古物には必ず真贋が問われるし、そのもの自体に希少性があったり、それを巡るストーリーが価値を高めたりする。そういった古物の中でワインは異質な存在だ。その真贋を判断するのが非常に難しい。お粗末なボトルやエチケットの細工が見つかればすぐに分かるだろうが、もしそれらがない場合、特に非常に古い18世紀のボトルになるとボトルやエチケットでは判断できない。となると次の判断材料は当然中身になる。しかし、開けてしまったら最後なのだ。歴史的なボトルを開けないことが重要と考える人がほとんどだろう。もし、飲んでみたとしてもその味わいを誰も評価できない。何故ならそんなに古いワインを飲んだ人がいないからだ。
結局、そういったいくつかの点をついた悪人によって偽造ワインが多く作られた。現在も少なからずあるのではないか?
ワインを飲むものとしてそういったワイン業界の弱点を知ってしまうと少し心配になってしまう。本当にこのボトルは本物かと。信頼できる業者が販売してるから安心か?しかし今回の事件もクリスティーズがお墨付きを与えて販売した。その他作中には多くの業者が被害者のように登場する。
この騒動をきっかけに今までワイン業界が目を瞑っていた偽造問題に取り組み出した。多くの被害を出したこの事件だが、一つのきっかけになったら良かったと一消費者としては思う。 -
社会
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ヴィンテージワインの年代証明に放射性同位元素をもちいるというのに興味を持って読む。怪しげで強烈なキャラの人たちが次々出てくる。
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加熱したビンテージワイン界を襲ったド級の詐欺事件、、、ってことなんだろうねぇ。トマス・ジェファーソンが所有していたといわれる220年前のワインボトル「ジェファーソン・ボトル」を軸に、オークションで巨額が投じられることとなるビンテージワインの市場を描いたドキュメンタリ。コレクターの増加により、ワインそのもの価値とは無関係な価値が付けられバブル化した市場。ワインに数千万相当の金が投じられるのを見れば、ニセモノを紛れ込ませて巨額の富を得ようする輩が居ても不思議はなく、この本ではドイツのワイン商ハーディ・ローデンストックが発見したという「ジェファーソン・ボトル」が真贋を巡る争いに巻込まれるまでが描かれてる。著者はローデンストックがかなり黒に近い(つまり詐欺師であり「ジェファーソン・ボトル」はニセモノじゅないか)と思ってるように感じたけれど、未だ現在進行形の争いなので結論は明らかではない。それでも、きちんとした取材に裏打ちされており人物描写が巧みなので一種のミステリー感覚で読め、ワインに関する蘊蓄も沢山あるので、この妙にシャレの効いた邦題に興味を持った人はオススメ。まあ、所詮金持ちの道楽なんだから、勝手にやっておくれ、という気もするんだけど。