Y氏の終わり (ハヤカワ・ノヴェルズ)

  • 早川書房
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感想 : 14
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  • Amazon.co.jp ・本 (533ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152088796

感想・レビュー・書評

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  • 小説

  • 「Y氏の終わり」(スカーレット・トマス : 田中一江 訳)を読んだ。
    それを読んだら死ぬと言われている幻の書「Y氏の終わり」を偶然見つけた主人公が…。
    ホラーではないからね。哲学や神学や物理学やそういったものをひとつ鍋でグツグツ煮込んだカオスの旨いスープを味わうとでも言おうか。

  • これは途中まで読み進めると、どんだけすごい小説になるんだぁ!という期待を抱かせる。だけど、あらら、途中で何かが足りない!と気がつく。という、ちょっと残念な一冊。まぁそれでもかなり面白いですので一応紹介いたします。設定はちょっとベタなSF風なんですが、哲学的な問いかけに満ちていて興味深い。

    主人公は科学雑誌にコラムを書いたりしていた元ライターの女性アリエル。彼女は最近知り合った英文学の教授バーレムに誘われ、大学院生として「Y氏の終わり」という19世紀に書かれた小説を研究することになる。
    その本は幻の本と言われていて、確認されているのはドイツの貸金庫に保管されている一冊だけという稀覯本。だから読んだことがある人はほとんどいない。そしてその本には呪いがかかっている、という伝説もある。その本を読んだものはすぐに生命を落とすのだという、かなり怖い伝説。

    そんな奇妙な本を書いた作家トマスEルーマスを研究している数少ない人間が、彼女を誘った大学教授バーレム。アリエルはバーレムの指導を受けつつ研究を始めようとしていた。しかしバーレムは突然失踪する。

    その後、偶然にもアリエルは世界に一冊しかないという「Y氏の終わり」を手に入れて読み始める。想像以上の内容に引き込まれる。物語の中でY氏という男はある薬を飲むことにより、他人の頭の中にはいりこむことができるようになるという話。そしてその薬の調合方法はその本には書いてある、はずだったのだが、その該当するページだけが切り取られている。

    彼女はそのページがどこにあるのかと探す。そのページは失踪したバーレムの蔵書の中に挟み込まれていた。彼女は薬の調合を試してみる。薬を飲むと彼女は意識を失う。目覚めたときには、どこかで見たことがあるような、でも思い出せない風景の街角に立っていた。そこはなんと他人の頭の中の心象風景だったのだ・・・・。

    というような感じでストーリーが続いていきます。この設定だけ読むとなかなか面白そうな感じがしませんか。まぁ自分的にはこの設定ならもっと面白くなったんじゃないのか!という感じでこの後話は続いていくわけですが、実はこの本の肝は、そういうエンタメとしてのストーリーの面白さがメインの小説ではないんだろうなぁという気もします。

    といいますのは、作品の中で登場人物たちが議論する哲学的問答がめちゃくちゃ面白いんですね。僕は詳しくはありませんが、サミュエル・バトラー、ハイデッガー、デリタあたりの言葉を引用したり、新たな解釈として掲示されている「ポスト構造主義物理学」なるものの考え方が興味深い。

    例えば「私たちを生み出すのは過去ではなくて未来だったら・・・」みたいな話ですね、意味不明だけど面白い(笑)ひとつ引用しましょうか。

    「さて物質はどのように作られるのだろう。思考と物質が同じものでできているとしたら、物質はどんなふうに作られるのか。私は物質とその正体について考えた。ただのクオークと電子だ。クオークと電子の組み合わせが、ゼロとイチとの組み合わせと、どう違うのかを考えた。」

    これって、ゼロとイチの組み合わせで「思考」も「意識」も作れてもおかしくない、って考え方ですよね。と、先週のAIについて考えていたときに僕の意識は戻りました(笑)というような話を聞いてオモシロそー、という方にはオススメの超傑作になりそこねたなぁという感想を持った一冊です。

  • 全く新しい視点からタイムトラベルをとらえているという点でも興味深い、非常に変わっていて面白い考え方の物語だった。

  • 図書館で借読。
    こういう設定は大好きだ。
    呪われているという伝説の古書をめぐってのお話。
    最後まで気になって一気に読めた。

  • もう少しシンプルなストーリーでも良かったかな。あと、翻訳に気になるところがあったのが残念だった。でも、それなりに刺激的で楽しめたので、いつかメモ帳片手に再読しよう。

  • 7日間で読了。読み出すと止まらなくなる面白さ。深みはないけれど。

  • こういうのは嫌いじゃないです。
    物語が動き出すまでがちょっと冗長な気がしますが、あとは一気に読ませます。
    扱ってるテーマは哲学的で本気で考えるとかなり難しいですが
    ストーリーは純粋にエンターテイメントとして楽しめます。
    サヴァンの子たちの役回りには少々苦笑いしつつも、まあ小説なので。
    気持ち的には星3.5くらいなのですが四捨五入で(笑)

  • 大学院生のアリエルは、指導教官のバーレムが行方不明になったことに戸惑う。バーレムしか研究していない19世紀の作家ルーマスの研究のために大学に来たばかりだったのだ。
    しかも大学の研究棟が地下の構造のために崩落。
    もう存在しないと言われた奇書「Y氏の終わり」を入手したアリエルは、人の思考の中に入り込む事が出来るようになるが、謎の人間に脅かされ…大学の研究者達や、独り身の私生活の描写がやけにリアル。
    ミステリ的要素もある途方もないSF、哲学的ともいえる展開で驚天動地。

  • のろわれた本に誘われて、わたしはわたしを知る旅にでる。

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