一角獣・多角獣 (異色作家短篇集 3)

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (301ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152086815

感想・レビュー・書評

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  • SFアンソロジー『猫は宇宙で丸くなる』の解説で、
    選に漏れた一編としてスタージョン「ふわふわちゃん」が
    挙がっていたので、また手に取った。
    七年ぶりの再読、但し、
    二編は『海を失った男』収録の新訳で読んだので、三回目。
    少し・不思議(SF)で不気味な短編集、全10編。

     一角獣の泉(The Silken-Swift)
     熊人形(The Professor's Teddy-Bear)
     ビアンカの手(Bianca's Hands)
     孤独の円盤(A Saucer of Loneliness)
     めぐりあい(It Wasn't Syzygy)
     ふわふわちゃん(Fluffy)
     反対側のセックス(The Sex Opposite)
     死ね,名演奏家,死ね(Die,Maestro,Die!)
     監房ともだち(Cellmate)
     考え方(A Way of Thinking)

    以下、今回特に心に引っ掛かった作品について。

    ■ビアンカの手
     若島正による新訳を『海を失った男』(河出文庫)で
     読んだので、これで三度目のチャレンジ。
     食料品店で働く青年ランの前に現れた客、
     少女ビアンカとその母。
     ビアンカの世にも美しい両手に魅せられたランは、
     母娘の家の下宿人となり、
     誰にも心を開かないビアンカの外見にも内面にも
     まったく無頓着なまま、
     ただ彼女の愛すべき両手だけを鑑賞しようとする。
     一種のフェティシズムが招いた悲劇。

    ■ふわふわちゃん
     ベネデット未亡人の愛猫、
     牡の白猫「ふわふわちゃん」は人間の言葉を理解し、
     話し、とんでもない行動に。
     主人公(語り手)に好意を示す者、
     逆に悪意を以て向かって来る者、いずれにしろ、
     彼の鏡像のような存在である……
     といった構図の短編が多くないだろうか、
     スタージョン作品には――と、再読して感じた。
     何となくわかるんだよなぁ、寂しがり屋の人間嫌い(笑)。

    ■反対側のセックス
     男女二人の他殺体が法医学者の許に担ぎ込まれたが、
     それは……。
     医師とスクープを追う女性記者の歯痒い距離感が
     何ともカワイイ。
     二人の前に現れた地球外生命体は
     恋のキューピッドだったのかも。
     タイトルの"opposite"は「反対側」というより
     「向こう側」のニュアンスで、
     地球上の「それ」とは異なる形式を
     指しているのかもしれない。

  • まさにすごいの一言に尽きる作品。
    どの作品を読んでもはずれのない作品たち。
    どれもお勧め、といいたいですが
    私は短いながらもひとつの映画を見たようなごとくの
    感動を得ることのできる「孤独の円盤」をお勧めしましょう。

    もうひとつはミステリー要素の強い
    「死ね、名演奏家、死ね」ですね。
    これは追い詰められていく描写が非常に強烈です。

    彼のSF、読んでみたいです。
    無論現在入手困難なサンリオSFで!!

  • 何かわけがわからないけど、わかる。一度読み始めるとページを捲らずには居られなくなる、そんな短編集。
    「孤独の円盤」は読んで泣きました。

  • 二段組で読み応えあり。奇怪な話で理解に時間がかかり、読了までけっこう時間かかった。図書館で借りたけど、手に入れるならAmazonで9,000円だと。ベスト3をあげるならば「孤独の円盤」「死ね、名演奏家、死ね」「考え方」。

    「一角獣の泉」
    男をもてあそぶ処女の地主の娘ではなく、心根優しい非処女の女性を一角獣が選ぶという話。「ざまあ」展開で、スカッとする。被害者とはいえ男もどうかと思うが。

    「熊人形」
    熊人形は四歳のぼくに未来の姿を夢でみせる。ぼくは熊人形に食事となる知識を話す。熊人形はぼくに夢の中で事件を起こすようにそそのかし、未来のぼくの周りではその通りに人がよく死ぬ。4歳のこどもとおもちゃのテディベア(原文タイトルはテディベア)が子供部屋のベッドの上で夢の話をしているという光景がより奇異さを引き立たせる。

    「ビアンカの手」
    白痴の少女ビアンカの手に魅せられ、ビアンカの手を手にいれるためにビアンカ(の手)と結婚する手フェチな男の話。一応、ハッピーエンドなのだろう。

    「孤独の円盤」
    突然、空飛ぶ円盤からメッセージを受け取った少女は、世間の注目の的になりスパイと疑われる。居場所を失い、入水自殺を試みたところを彼に助けられる。夜の、静かな海、月の光の中、宇宙を、海を、漂ってきた孤独の円盤のメッセージを受け取った二人の出会い。孤独は必ず終わる。

    「めぐりあい」
    シジジイ!
    出会った瞬間お互いを理解しあえる様な、理想の人との出会い。彼女が家に来るようになってから、不思議なことが起こり、奇妙な顔が現れシジジイの話をするようになる。
    世の中のほとんどが、少数の人間がみている幻覚かもしれない。

    「ふわふわちゃん」
    仕事で訪れた家の飼い猫ふわふわちゃんとぼくの口論。お互いがお互いを嫌い、最終的にはふわふわちゃんが僕をはめようとする。タイトルの可愛らしさに似つかわしくない血生臭い内容。

    「反対側のセックス」
    運ばれたシャム双生児の死体が何者かに焼却されてしまう。素敵な女性に出会い、待ち合わせ場所に行った先で、女性の正体と生態について明かされる。その死体はシャム双生児ではなくシジジイ状態であったという。
    再びシジジイ!解剖医と新聞記者のじれったい関係を、天使様がとりもった感じ。

    「死ね、名演奏家、死ね」
    性格良し、顔良し、人望ありのクラリネットの名演奏家ラッチに嫉妬したフルークは、ラッチ殺害を試みる。ラッチ殺害後も残ったメンバーによって「もしラッチならどうするか」を合言葉に「ラッチ・スタイルの曲」は演奏される。ラッチは殺しても死なない!
    タイトルが良き。ラッチがイケメンすぎる。肉体が滅びてもみんなの心の中で永遠に生き続けるってやつだ。フルークの「幸運が一人前に俺のところにもきてほしい」という望みには同情はできる。ただラッチだってそれ相応に努力し、悩むこともあっただろう。ラッチから逃れられなくなった男の末路は切ない。

    「監房ともだち」
    監房で一緒になった男は胸に弟がいた!この弟には逆らえず、あれこれ世話を焼いてしまい、終いには脱獄にも手を貸してしまう。
    ぜったいやってやらねえと言いながら結局やってあげる主人公が気の毒だけど微笑ましい。

    「考え方」
    女から扇風機を投げつけられた仕返しは、扇風機に女を投げつける、という考え方をするケリー。彼の弟は奇病に苦しんでいて、その病の原因はどうやら弟に恨みを持つ女が持つハイチの呪いの人形のせいではないかと考える。女の使う人形が弟を殺した、その報復は…
    最後を飾る話。見事なオチ。寝る前に読むもんじゃない。

  • 理解できなかった話が多いが読みやすかった。

  • 「一角獣の泉」
    「熊人形」
    「ビアンカの手」
    「孤独の円盤」
    「めぐりあい」
    「ふわふわちゃん」
    「反対側のセックス」
    「死ね、名演奏家、死ね」
    「監房ともだち」
    「考え方」

  • 一角獣・多角獣 (異色作家短篇集)

  • SFでもなく、ミステリーでもない作品群で異色ジャンルだと実感するというか両方の要素がミックスされているというか、まぁ不思議な世界でありリアルな感情も生き生きと描かれている。『一角獣の泉』はグリム童話のようで古典的だし、『死ね, 名演奏家, 死ね』は映画の原作になりそうなほどの臨場感。どの短編も個性的でもっと読みたい作家になった。

  • この異色作家短篇集はどれも厭ミスとして面白いが、本書は作者得意の新人類物が中心。
    有名な「死ね、名演奏家、死ね」も良いが、「孤独の円盤」が方が好み。

  • シジジイ
    ラッチ
    午前五時に電話ボックスを探したことがありますか。

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著者プロフィール

シオドア・スタージョン(Theodore Sturgeon):1918年ニューヨーク生まれ。1950年に、第一長篇である本書を刊行。『人間以上』(1953年)で国際幻想文学大賞受賞。短篇「時間のかかる彫刻」(1970年)はヒューゴー、ネビュラ両賞に輝いた。1985年没。

「2023年 『夢みる宝石』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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