渇きと偽り (ハヤカワ・ミステリ文庫)

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151835513

作品紹介・あらすじ

干魃にあえぐ町で起きた一家惨殺事件。帰郷した捜査官が見出した真相とは。英国推理作家協会賞ゴールドダガー受賞の傑作ミステリ

感想・レビュー・書評

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  • フォークとルーク、エリーとグレッチェンの4人は若い頃の友達。
    エリーが20年前に河で水死体で発見され、持ってたメモにフォークの名前があり、それが元で父子で地元を追い出されてメルボルンに引越す。
    そんな因縁の過去がある町で連邦警察官フォークが地元の警官レイコ―と捜査する。地元民のエスカレートする嫌がらせにもめげず。
    読んでて犯人が早々に推測できてしまう。
    むしろ20年前にエリーがなぜ死んだのか?の真相が知りたい。
    最後の方はバタバタ。ああそうなのね、可哀そうに、という結末。
    読んでみればあっけないが、ページをめくるのももどかしく最後まで一気に読み切ってしまった。

    -------------------内容(「BOOK」データベースより)
    連邦警察官フォークは二十年ぶりに生まれ育った町へ帰ってきた。旧友のルークが自殺を遂げたと聞きつけたのだ。
    妻子を道連れに、なぜか赤ん坊を一人残して―。
    ルークの親から心中事件の真相究明を依頼されたフォークは、干魃にあえぐ灼熱の町で、自身の秘めた過去とも向き合うことに…。
    新人離れした文章力と卓越したストーリーテリングで世界中から絶賛されたオーストラリア・ミステリ。英国推理作家協会賞受賞作!

  • オーストラリアが舞台。描写で印象に残るのは、地平線が見える広い農場、隣の農家ははるか遠く、そして小さな中心部の街では噂がたちどころに広まるという、この土地の広さと人間関係の閉塞感だ。そして原題の「THE DRY」、街は2年続きの旱魃で疲弊している。

    そこに起きた、ある農場主ルークの死。妻子を家で殺した後自身は自殺か?と思われた。20年前街を出たルークの旧友フォークは、ルークの父から息子の死の真相を突き止めてくれ、と頼まれる。

    この今の事件と、フォークが街を出ることになった20年前の事件が交互に語られ、並行的に真相が明かされてゆく。20年前の事件の真相がずっと明かされなかったことで、当事者も街もその闇に絡められてしまっていたのか? という気がした。


    メルボルンから500km離れた架空の街キエワラが舞台。主人公フォークは高校途中までこの街に暮らしたが、旧友ルークが妻と子供を殺し自殺したらしい、との連絡を受け葬儀に戻る。フォークとルークとエリーの農場は続いていて幼いころはよく遊んだ。だが高校生になりエリーが川で溺死しているのが見つかり、エリーの残したメモにフォークという名があったことから、フォーク一家は街にいられなくなり街の出たのだった。

    エリーが水死体で見つかった街を流れるキエワラ川は昔は水量豊かな川だったが、今は川床が見える。
    フォークの家は母がフォークの出生時に死亡し父子二人暮らし。エリーの父は飲んだくれで母は家出。フォークの家だけは父母とも健在。典型的な家族構成を登場させている。



    2016発表
    2017.4.15発行(ハヤカワポヶットミステリブック1918) 図書館 ポケミス版はもう絶版? 表紙は電子版と同じ。

  • 過去が全て明るい人なんているんだろうか。
    世間的に見れば平凡な人生を送っている私でも、苦い思い出や語りたくない時代はある。
    ましてや日々起こる事件や事故の関係者は、その後の人生をどんな風に送っているのだろう。
    更にそれがこの小説のように未解決で、疑わしいのが身近な人間であった場合は、どんな風に折り合いをつけて人生を渡っていくのだろう。

    現在の事件と、それと繋がってるかもしれない過去の事件が交互に語られながら、それぞれの真相が少しずつ明らかになってゆく。
    「事件をきっかけに久しぶりに故郷に帰る主人公」はよくある設定だが、過去の事件の絡め方が異色で新鮮味を感じる。

    田舎特有の閉鎖的な感じや寂れ方など、世界中どこも同じなんだなと思う。
    干ばつは湿気の多い日本には馴染みが薄いが、厳しい自然によって人々が疲弊していく感じはよくわかる。

    解決はしてもハッピーエンドなのかどうかよくわからない結末は、正直自分の好みではない。
    それでも他の終わり方が良かったかと聞かれたら、そうとも言えない。
    思春期特有の拗れや思い詰めた末という安易なオチにしなかったことは、もしかしたら逆に救いのあることなのかもしれない。

    少し疲れが溜まっている時に、思い切って手にとってみてよかった。

  • 「ルークは嘘をついた。きみも嘘をついた」意味深な手紙を受けとった連邦警察官フォークは二十年ぶりに故郷を訪れる。妻子を撃ち、自殺したとされる旧友ルークの葬儀に出るためだ。彼は手紙の送り主であるルークの両親から、息子の死の真相を突き止めてくれと頼まれる。生まれ育った町での捜査は、フォークの脳裏に苦い記憶を呼び起こしていく。かつて彼がここを離れる原因となった、ある事件の記憶を…。灼熱の太陽にあえぐ干魃の町で、人々が隠してきた過去と秘密が交錯する。オーストラリア発のフーダニット。

    王道の展開ながら、オーストラリアの苛烈な環境描写で読ませます。

  • オーストラリアのミステリー。

    あらすじ
     経済専門の連邦警察官フォークは、20年ぶりに故郷キエワラに戻る。友人が妻子を撃ち殺し、自殺したというのだ。二人はガールフレンド二人を加え、いつも4人だった。しかし、エリーの死をきっかけにフォーク父子は町を追われたのだった。親友の親切な両親、エリーの問題ありの父と従姉妹、小学校、宿屋…せまい町中でフォークは事件を解決しようとする。現在のも20年前のも。

     面白かったー。オーストラリアの田舎が舞台。水害が厳しくて、牧場を経営している人たちにとっては死活問題。牧場運営では、ウサギは害のある動物で、何でも食べてしまうらしい。あとは、山火事。空気が乾燥しているとあっという間に広がって、民家にも被害が及ぶ。物語全体に、オーストラリア田舎の広大な土地や、スケールが大きい自然の様子が描かれていた。土地は広いけど、田舎だから人間関係は狭い、歴史も考え方もそのまま、みたいな。主人公フォークは初登場としてはまずまず。それより、地元の制服警官が、地道に仕事していて好感もった。

  • 初読。映画化されたけど、結論「読んでから見る」で正解だった。簡潔な文章で綴られ、訳もすっきりしていて、映像の助けを借りなくてもすんなりと入ってくる。これなら、訳文が苦手で海外ミステリはなぁ…という諸兄にもお薦めできる。ディテールの描写を最低限に留めているところも、個人的には有難い。

    舞台はオーストラリアの辺鄙な田舎町。旱魃で困窮する農業地帯、突然の家族無理心中、葬式に現れた招かれざる客、20年前の事件の残響、魅力的な女友達との再会、家庭内の問題、地域社会のパワーバランス…こういった要素が絡み合い、滅びを待つかの様な田舎町に複雑な人間模様が描かれる。

    しかし複雑ではあれど、丁寧な記述のおかげか話を見失うことは一度もなかった。プロットは冒頭から最後まで淀むことなく、引き締まった話運びでページをめくらせる。加えて、描写は簡潔ながら、人物の心情や場所場所の雰囲気を的確に伝えていて、すんなりと没入、感情移入できた。新奇性こそないものの、これだけの筆力を見せられると他の作品も読みたくなる。しかもこれが作者の第一長編というから、また…。

    最後に、「犯人探し」の推理小説としての出来はどうか。それは他の方のご意見を参照されたし。個人的にそこに拘りはないので。自分の意見としては、再読も初読と同じくらい楽しめそうだ、と云うに留めておく。

  • 過去と現在の事件を絡めながら捜査をする休暇中の警部補。
    登場人物が出尽くした感があって、誰だろうと思いながら読み進むと意外なところから糸口が見つかる。
    オーストラリアの自然の中、風景を想像しながら読みすすめます。

  • オーストラリアが舞台で環境、文化の違いはあるけれど閉鎖的排他的な田舎の風習は日本と変わりなく想像しやすかった。全体的にやるせない。登場人物ほぼ全員すね傷だけれど逆に考えて後ろ暗い過去のない人間なんてそうそういないなと思う。

  • 旧友が自殺と聞いて20年ぶりに故郷に戻ったフォーク。町は干魃で悲鳴をあげていてその地域性がうまく作品に活かされている。昔起きた友人の死と今回の出来事との関連は。故郷への懐かしさと変わってしまった町、人。狭い地域の中で起こる事件と人間関係。その裏にあるもの。フォークが過去を振り返り取り戻すことのできない時間を悔やみながらも過去と今に向き合う姿、想いが作品から強く感じられる。

  • 欧米の小説は、どうもとっかかりのところが苦手。
    背景描写が多すぎて、入り込むのに時間を要する。
    この作品もそうだったが、入り込むと、そこからは二転三転する展開に興奮し、一気に読み進めた。
    読後には満足感が残り、次作もすぐに手に取った。
    最初の読みづらさが災いして、個人的には3.5くらいの評価。

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