ガン・ストリート・ガール (ハヤカワ・ミステリ文庫)

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (592ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151833069

作品紹介・あらすじ

富豪宅で起きた二重殺人。関係者が次々と不審な死を遂げ、ショーン・ダフィは錯綜する事件の渦中に身を投じる。シリーズ第四弾!

感想・レビュー・書評

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  • 久しぶりにハードボイルドを読んだ
    ミステリーでもサスペンスでもなくハードボイルドだ
    フォローしている誰かのレビューを読んでエイドリアン・マッキンティに興味をもったのだが誰かは忘れた
    くそったれ

    ハードボイルドを構成する要素は4つある
    ドラッグとセックスと暴力、そして能書きだ
    こいつには全て詰まっている
    そしてハードボイルドの主人公つまりこの場合はショーン・ダフィの野郎は決して幸せにはなれない
    それがハードボイルドだからだ

    文章がハードボイルドになっている
    影響を受けたということだ
    つまりは面白かったということだ
    高倉健の映画を見たあとに無口になるように(例えが古い)寅さんを見たあとに「お兄ちゃんやめて!」と言ってしまうように(そっち?!)

    北アイルランドの特殊な状況下は残念ながらハードボイルドの舞台にぴったりだった
    今は多少なりともまともになっているといい

  • ハードボイルド系の物語。
    あまりに大きな敵に立ち向かうことになったダフィ刑事。
    人、金、権力が混ざり合う。

    あんまり集中して読むことができなかったのが本音。
    たぶん、シリーズの最初から読んでいないことが原因かも。ダフィ刑事の人柄が謎のまま終わった。なんでこんな執着する人なのかわからないから、なんか熱く共感や応援が出来ずにエンディングを迎えた。

    読了。

  • 管轄、域を超える事件
    事件は富豪家族の不可解な殺害で大胆に素早く動くダフィー刑事らが捜査する。原因は「主犯格3人の分配金問題で仲間割れ」、一人の男が兵器密約計画を立てた男の両親、その男、その恋人、友人を殺害、さらに兵器製造工場のもう一人の主犯格管理専任者へと証拠隠滅を図り殺害計画。事件は国家機密と警察の域を超えるまでに発展する。「仲間割れ」ほど後味が悪いものは無い。共同経営など企業でもそうだが、些細なことで分裂始めると派閥になり、会社が倒産するような事態にもなりかねない。そこにはこの小説にある「欲に絡んだ分配」だ。 人は貪欲になると必ず問題を起こすのだ。

  • 富豪の夫妻が射殺される事件が発生した。当初は家庭内の争いによる単純な事件かと思われたが、容疑者と目されていた息子が崖下で死体となって発見される。現場には遺書も残されていたが、彼の過去に不審な点を感じたショーン・ダフィ警部補は、新米の部下と真相を追う。だが、事件の関係者がまたも自殺と思しき死を遂げ……。

    シリーズ第4作。ジャック・ヒギンズの作品で言えば、「嵐の眼」と同時期ぐらいか。
    中盤まではやや中だるみかなと思っていたが、見事な着地であった。
    当時のポップス以外に武満徹の作品が登場。

  • ショーン・ダフィシリーズ四作目。

    裏表紙には「第四弾にして最高潮」とあったし、
    訳者もぜひここまで翻訳したいと力を入れていたけど、
    ちょっと肩透かしに遭ったような感じ。

    金持ちの夫婦が殺され、息子が行方不明と単純な事件だと、
    部下のクラビーにまかせるダフィ。
    だが、息子は自殺で見つかり、その恋人も後を追う。
    なにか裏があると事件を追っていく。

    意外と使えることが次第にわかってくる新人刑事の存在が
    面白かったが、
    事件よりもダフィがMI5に誘われたことの方が気になってしょうがない。

    ちなみに、
    武満徹という日本人の作曲家の曲が出てきて「隠れた宝石」と書かれていたが、
    全然理解できなかった。

    結局、事件解決は不完全燃焼だし、
    (このシリーズは犯人がわかっても逮捕できないらしい)
    悲しい結末になってしまい残念だった。

  •  今年初に出版された『ザ・チェーン 連鎖誘拐』には驚いた。この素晴らしい現代のハードボイルドのショーン・ダフィ・シリーズ三作を味わった後では、まるで異なる作家によって書かれたとしか思えないさサービス満点のハリウッド映画みたいなスーパー・エンターテインメントに度肝を抜かれた形だったのだ。それもそのはず、作品が売れず生活に困窮し、作家という仕事を放り出してウーパーの運転手に身を落とそうとしていたマッキンティが、新たに売れ、そして稼げるための創作に鞍替えして、完全イメチェンを図った上の作品が、当該作品であったのだ。なるほど、この面白さ、スピード感なら売れる。それはわかる。

     でも思えば、『ザ・チェーン』のおかげで、こちらショーン・ダフィ・シリーズの続編邦訳も刊行もきっと無事潮流に乗ったのだ。ぼくとしては、こちらのほうがマッキンティの実物大作品として大のお気に入りなので、ほっとさせられる話でもある。

     ショーン・ダフィは役職などには興味がない代わりに、実力派の警察官であり、そして何よりも世界に対して突っ張っている。その気高きハードボイルド精神と野良犬のような生存感覚が何とも頼もしく、ぼくは今やこのシリーズを大のお気に入りに入れている。

     本書の作者あとがきにある通り、背景には歴史的事実とされる事件がちりばめられており、シリーズ中最も北アイルランドと英国との関係が重要なファクターとなっている作品となっている。前作『アイル・ビー・ゴーン』では、密室ミステリーとして島田総司の影響をマッキンティが受けているとして、別種の脚光を浴びたみたいだが、本書はより国際冒険小説の色合いを濃くし、スケールの大きさを見せている。

     しかし何よりもショーン・ダフィという人間の生きざまそのものが、昨今失われているように感じるハードボイルド精神の気高さや底なしの意地というものを感じさせて、この武骨で喧嘩っ早い主人公刑事を応援する側につい回ってしまう、というのがシリーズの最たる魅力となっているのだ。

     是非、作中で、様々な政治的葛藤のるつぼに足掻く、プロ根性の警察官ショーンの生き様、彼の背景に鳴り響くメロディに耳を傾けて頂きたいと思う。 

  • 随分読みやすくなって取っ付きやすくなった。
    『あい』は一作目から響き好きやったよ、訳者さん。いい仕事してはる。

  • 王立アルスター警察に復帰したショーン・ダフィ。北アイルランドの富豪の夫婦が殺され、直後に彼らの息子の遺体も発見される。息子が両親を殺した後に自殺したと思われるが、ダフィは納得がいかない。部下たちと捜査を進めると意外な繋がりが見えてくる。一方ダフィは、前作で知り合ったMI5の幹部から、警察を辞めて移ってこないかと誘いを受ける。ダフィがどんな答えを出すか。そしてたどり着いた事件の結末は・・。今回もダフィの読みは冴え渡るし、クラビー巡査部長や新人たちとのチームの捜査も楽しい。北アイルランドの複雑に絡まりあった政治状況の中でも、平穏に暮らしたいと願う庶民がいることを教えてくれる。今後のシリーズがどうなっていくのか楽しみ。

  • ショーン・ダフィ・シリーズ!
    無事に4巻が出たことに感謝!
    3巻で終了かとハラハラしていたが、そうはならなかった。
    こんなに厄介で面倒くさいシリーズなのに、だから却ってはまる人が少なくないと見える。

    厄介というのは、ページをめくって、いきなりの用語説明だ。
    IRA(アイルランド共和軍)だのUDA(アルスター防衛同盟)だのが、ずらりと並んでいる。
    これは、手強い・・・・・・
    店頭でここを目にして、諦めた人は多いと思う。

    面倒くさいというのは、ショーン・ダフィだ。
    言わずと知れた主人公、物語の語り手、王立アルスター警察隊の警部補である彼は、何事につけ一家言ある男だ。
    詩や文学の心得もあり、よって語り口が長い。まわりくどい。

    『後方に花火。前方に暗闇。それがアイルランド問題のメタファーでなければなんなのか、俺にはわからなかった。』 (21頁)

    なにを言っているかわからない。話がちっと進まない。なんとまだるこしいなどと感じたことは、数知れずある。
    酒、煙草、薬物、それらの取り合わせから、サッカー、ゲーム、映画、美術、詩、etc...
    なににつけても一家言あるこの男が、しかし、もっともうるさいのは音楽だ。

    「俺はディスコ向きじゃないんだ。音楽のこととなるとうるさすぎてね」 (100頁)

    ロックはもちろん、クラシックにさえ造詣が深い。さらにはその範囲が広い。
    ハイドンなどの古典から、ベルリオーズ、エルガーを経て、武満徹、果てはフィリップ・グラス(※)にまでいたる。
    『(ハイドンの)この交響曲三十四番、ニ短調はすこぶる名曲だった。上品な第三楽章は精巧につくり込まれており、いつの間ににか気分が少し上向いていた。』(326頁)
    『エルガーは大変結構だが、毎日九時五時で聴かされるのはうれしくないだろう。』 (287頁)
    ショーン・ダフィとは面倒くさい男なのだ。

    「あなたって、いつもケチつけてばっかりだよね。自覚はある?」(433頁)

    しかしこの一家言づくしも、ここまでになると、いっそ快感になってくる。
    そして親切でもある。
    『一九八五年十一月。レーガンが大統領、サッチャーが首相、ソヴィエト社会主義共和国連邦では、少しまえにゴルバチョフが政権を掌握していた。国内第一位のアルバムはシャーデーの《プロミス》。げんなりするほど長いあいだチャートのトップに君臨していたジェニファー・ラッシュのトーチングソング《The Power Of Love》はいまだにそこに居座っていて・・・・・・』 (12頁)

    冒頭である。語り手ダフィは、今がいつかを具体的に知らせてくれる。
    トップチャートがわかれば、ああ、あの頃と、読者は思い至ることがある。
    政治家の名前を見れば、新聞の見出し、ニュースの画面が思い浮かぶ。
    そして、あの頃、私は・・・・・・と、自身の1985年に思いが巡るのだ。

    1985年、日本がバブルに踊っていた頃、北アイルランドは混乱と暴動の中にいた。
    ショーン・ダフィ、アイルランドのオマワリ(309頁)、とくに失うもののない無頼派のぷっつん刑事(168頁)は、乗る前に必ず車の下を覗き、爆弾がないかチェックをする。
    それでも時にはタイヤがパンクし、ガラスが割られ、腐った卵を投げられる。
    プロテスタントの強い社会で、「フェニアン(カトリック教徒)」と罵られ、殴られ、蹴られ、あばらを折られ、怒鳴られ、怒鳴り、啖呵を切り、二重殺人のヤマを他の署からぶんどり、粘り強く、頭を使い、怯まず、臆さず、時に銃に任せ、体当たりに、解決へと持っていくのだ。
    人生に悩み、部下を育て、女性と出会い、その女性とは――

    自分でも、何故このシリーズをこんなにも面白いと思うのか、実はわからない。
    つまりはきっと、この面倒くさい男、ショーン・ダフィにはまってしまったのだろう。

    シリーズ中、訳者が一番訳したかったのは、この『ガン・ストリート・ガール』だったらしい。
    巻末のあとがきがたいそう熱く、これもまた読みどころだった。
    第5巻も無事刊行が決定したと知って、私もほっと喜んでいる。



    シリーズの順番は以下のとおり。

    『コールド・コールド・グラウンド』
    『サイレンス・イン・ザ・ストリート』
    『アイル・ビー・ゴーン』
    『ガン・ストリート・ガール』

    1、2巻はいくぶんとっつきにくいものがある。脂がのってきたのは3巻からかと思う。
    ただし、密室殺人の名作のトリックを、いくつかばらしてしまっているので、『ビッグ・ボウの殺人』『モルグ街の殺人』チャーリー・チャン警部シリーズの映画、それらを未読未見の方は要注意。
    『ガン・ストリート・ガール』については、犬好き、熱帯魚好きは注意。ただしそれを悼む言葉もある。


    ※(ここからは私が書きたいだけの駄文なので、奇特な方だけどうぞ)

    フィリップ・グラス!

    この作曲家の名を小説で目にしたのは初めてのことだった。
    『ザ・チェーン』エイドリアン・マッキンティ著である。
    それは嬉しい驚きだったが、さらに驚愕したのは、『アイル・ビー・ゴーン』で、ショーン・ダフィがこう言ったことだ。

    『ラジオ3はフィリップ・グラスの《浜辺のアインシュタイン》をながしていた。俺はこのオペラが作曲家のまえで演奏されたのを、ニューヨークで実際に見たことがある。』 (117頁)

    私はフィリップ・グラスのファンである。
    オペラ『サチャグラハ』(1980)は素晴らしい。『アクナテン』(1983)は言葉にならないほど美しい。
    しかしこの『浜辺のアインシュタイン』(1976)はダメだ。
    さっぱりわけがわからない。鈍い頭痛がする。
    やはり誰しも第一作というのは――との思いを強くする。

    しかし、ショーン・ダフィは、ひょっとするとエイドリアン・マッキンティは《浜辺のアインシュタイン》を見たのだ。
    上演に4時間半かかるこれを。私の頭痛の種、ひたすらわけのわからない空間を!
    作曲家とともにそれを見たというのは、自慢できることだ。が、しかし、

    『その話をしようとしたが、全然反応がなかった。』 (117頁)

    彼は言葉にしなかった。声に出して言わなかった。だから私は知ることができない。
    ショーン・ダフィ、あるいはエイドリアン・マッキンティ、私はあなたのあのオペラ評が聞きたかった。
    残念。

  • 4作目も凄かった。ショーンのメンタルが心配になるラストの衝撃の余韻がなくならない。そこに至るまでの、よくある殺人事件から話がどんどん大きくなり国際スケールな陰謀に繋がっていく様は圧巻だった。ショーンは話が進むごとに勘が冴え渡り、さらに元来の行動力が話をどんどん前に進めるので、長い作品なのに停滞感がほとんど感じられなかった。昔の男性なので時代錯誤な価値観もあるが、ショーンの語りが面白く癖になる。美女にうつつを抜かすが長続きしないのは定番になってきた。巨悪に対峙する一匹狼、ベタだけどやっぱりカッコいいなぁ。

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